共同生活がうまくいかず、ジークおじいさんを◯してしまったリヴァじいさんが川に死体を遺棄しに行くと……。
なんと蘇ったジークが反撃を食らわせたのです。
瀕死になったリヴァイは別居していたハンジおばあさんにかろうじて助けられ、二人は川の中へと落ちて逃げましたとさ。
どんぶらこっこ、どんぶらこ。
ピスピース!疲れてるだろうと少女を気遣ったら、逆に気遣われたものの、その気遣い方が予想の斜め上だった体験をした私はマーレの美女担当、アウラちゃんだゾ〜!
私はそのままラーラとその一味に秘密裏で輸送された。
何を言っているかわからねぇと思うが、私も何をされたのかわからなかった。
催眠術だとか、巨人の力ですとか、そんなチャチなものじゃございません。本当に、恐ろしい(始祖様の)片鱗を味わったぜ…。
冗談はさておき、天井がオープンではない車に乗せられた後、対面式の座席の中で相手の前に座った。
ローブを脱いだラーラは詳しい内容について話し出す。
ちなみにローブの下はメイドの格好だった。年は私と然程変わらないでしょう。
曰く、一週間ほど前に彼女は地平線まで続く砂の大地と、巨大な光の柱がそびえ立つ世界で謎の少女と出会った。
そして『……ケテ…タ…ケテ』というような声が脳内に直接届き、子孫を助けてほしい、と頼まれた。
普通なら不可思議な夢を真に受けるはずがない。ただ透き通ったその少女が現実にまで現れ、ラーラ以外に見えないとなって、彼女はその少女が「始祖ユミル」であると認識せざるを得なくなった。
また調べた所、カール・フリッツがパラディ島に王都を移した時、私の先祖にあたる移住を拒否した王族が一名のみいた────という事実が存在したことを知った。
これはタイバー家に伝わる古い資料に記載されていたもので、政府なども知り得ない情報とのこと。
なぜそんな重大な事実がタイバー家に眠っているのか疑問に思いましたが、さらなる爆弾が投下される。
「それは、巨人大戦の真相に直結する内容でございます」
と言い、ラーラは当時のフリッツ王がタイバー家と結託し、巨人大戦を引き起こしたと語った。
これを知った私の命って危ないんじゃないか?と思いましたが、この内容はのちの祭事でも話されることらしい。
世界が驚愕する事実を一歩先に知ってしまったというわけだ。
カール・フリッツは“不戦の契り”を生み出した通り、平和というものを誰よりも求めている。
そんな王はこれまでのエルディア帝国が行った虐殺の数々を憂いて、巨人の歴史に終止符を打とうと画策した。
その協力者がタイバー家。
また英雄ヘーロスは、仮初の英雄に過ぎないものである、と。
だが皮肉と言うべきか。パラディ島へ移り、つかの間の「楽園」を守るため幾千もの巨人の壁を作り出したレイス王の行いは、回りに回って世界を脅かす脅威として残っている。
平和どころか世界滅亡レベルの案件だ。
そして現在のタイバー家はカール・フリッツに協力した恩恵を受け、約百年経った現在でもエルディア人であるにも関わらず、腕章を必要としない──それどころか、敵国にさえ一定の敬意を抱かれる一族となっている。
密かにエルディア帝国の復権を願い生きていたお母さまとは対照的だ。
華々しい人生。話を静かに聞く私に、ラーラはタイバー家を憎く思うか尋ねた。
現状はまだ、彼女は私の詳しい素性については知らないようである。
しかし「片足の美女」などと調べて行けば、すぐに何者であるか判明するだろう。そうなると、必然的にジーク・イェーガーの存在も明るみになる。
本当にユミルっちは何を考えているのか。
いくら私でもお兄さまを巻き込むなら、「あうら ぱんち!」を繰り出さなければならなくなる。
まぁ、タイバー家の人間はエルディア人ですので、いざという時は彼女に責任を取って
そもそもエルディア帝国の元貴族にしては、動かしている手駒の規模が大きい。
彼女は秘密裏に動いているようだが、通常エルディア人の収容区に入って人を運ぶとなると、いくら何でも誰かの目にはつく。
だがラーラに焦った様子はない。このような行動を勝手に起こせば政府も黙っていないだろう──と質問しても、「大丈夫」という返答のみ。
よってタイバー家は推測するに、政府を欺くだけの力か、あるいは
そんなお家に誘拐されちゃったアウラちゃん。本当に大丈夫なのだろうか。
「前提として、私は自身の血筋について知っています。一族がエルディアの革命を待ち望んでいたことも。ですが一族のことなど、私にとっては些細な問題です。“血”に想うことは多けれど、抱える思想はどうでもよい。私は「私」であって、何者にも染まる気はないのですから」
「…マーレに残った王家の人間は、その姿を晦ましたそうです。実際にその子孫が残っていたとなりますと、容易に看過できる問題ではありません」
私の先祖がレイス王と思想を違えたということがわかっているなら、
だからこそ、私自身の思考を確かめる必要がある。
短い話でそれを為すのは難しいでしょう。
しかし“
ちなみにラーラはユミルに導かれてここにたどり着いたらしい。
時系列にすると、
①彼女の前に始祖様が現れて誘導。
②私が家なきアウ子を堪能している最中に、ユミルが登場する。
(この間ラーラの前から一時的に消えていたようである)
③突如アウラちゃんから逃亡するユミル。
④「た だ い ま(ドヤァ)」
────というような、流れになる。
相当好き勝手に動いている始祖様。
そこまで動く力が残っていたなら、普通に一般家庭のお宅の記憶改ざんを頼んで、そこに居候しましたのに。
いや、大戦の真相を聞いた我が身としては、タイバー家につるんだ方が後々私の思うように動きやすいから──と、彼女は考えたのかもしれない。
当の少女は疲れたのか、ほぼ消えかけながら人の膝の上で寝ている。本当に好き勝手して……イイ夢見ろよ。
「他の一族の者は、始祖ユミルのことが視えるのでしょうか」
「いえ、私にしか視えません。王家の血を持った母も視えませんでした」
「視え
「……さぁ、どうでしょう。タイバー家ほどのお力があるのなら、時間を要さず私については調べられるのでしょう?」
「そうでございますが…、貴女ご自身の信頼を勝ち取るために立ち回られる方が、賢明だと存じます」
「すべて自分の口から吐け、と?」
「強制は致しません。あくまで私はユミル・フリッツの意思を尊重したまでですから」
人の膝で口をモゴモゴと動かしながら眠りについている少女。
そんな少女を見たラーラの表情は、少し微笑ましげだった。
向こうとしては、亡霊であるはずの始祖ユミルが普通の人のように動いているのだから、不思議なものだろう。
事実、私が最初に会った時の彼女と比べれば、よっぽど人間らしくなった。
それまでは初代フリッツ王の呪縛に囚われ続け、巨人生産機と化していたのだから。
ユミルは程よくアウラ色に染まって、私もまたユミル色に染まる。二つは決して混ざることはないけれど、お互いがお互いを影響し合う。
これがあるべき人間としての、理想の形なのかもしれない。
「ユミル・フリッツと私が似ていることに、あなたは驚かないのですね」
「最初見た時は驚きましたが、始祖ユミルが貴女を特別に扱う理由にその容姿が入っているのだと思うと、少し納得がいったのです」
「…それで、私を回収してどうするおつもりなのでしょうか、そちらは」
「最終的な決定は現当主のヴィリー・タイバーが行いますが、危害を加えるつもりはございません」
「……一つ条件をいいですか」
「えぇ、なんでしょう」
どうせ私の素性がバレるならば、その前に先手を打つしかない。
こちらの用件として、私の情報を明かす。無論すべては話さない。
自分の大まかな人生でよいでしょう。それこそ名前や家族について。それに「楽園送り」など最低限話せば、あとは向こうが確認してそれが正しいとわかる。
うっかり話し過ぎてもどこで矛盾を暴かれるかわからないから、その方法が一番良いだろう。
そして代価として、ジーク・イェーガーの安全を保証してもらう。
私も含めた兄の情報をタイバー家以外の外部に漏らさないこと。何らかの危害を被った暁には、俺のユミルっちが黙っていない。
完全に始祖様任せですが仕方ないね。むしろ少女をすでに知っているラーラなら、これだけでも十分な脅しになる。
結果としてユミルも少し動くだけで、タイバー家へ私を取り入れさせることができる。よっぽど路地裏で寝ているより安全である。
考えれば考えるほど、ユミルの手のひらで事が転がされているように思えてならない。
「もし、条件を破った場合は……」
寝ている少女へ視線を向ける。すると私の言葉が続いている途中に開いた、蒼い瞳。
起き上がった少女は私の隣に座って──────
瞬間、ラーラの顔が強張る。かくいう私も今まで見たことのない種類の異なるユミルの笑みに、固まった。
そうだ、忘れてはいけないのです。私がいつも「ちゃん」づけして構っている少女は、光るムカデ野郎に出会って強大な力を得てしまった人間で、その魂の理は私たちから外れているのだと。
単純に考えれば、ユミル・フリッツが亡くなってから約二千年が経つ。しかし現実世界での時間と、あの砂と光の柱の世界では時の進み方は大きく異なるのだ。
あちらの方が体感する時間としては長い印象を受ける。それこそ悠久に続くような。
そんな世界で延々と巨人を作り続けていたら、そりゃあ感情も失ってしまう。
ある意味今の感情豊かになったユミルは、奇跡なのかもしれない。その奇跡が『
そんな、私をもビックリさせたユミルたそは、再び眠りの世界へと戻られてしまった。
訪れる車内の静寂。とても、気まずい。
「……父曰く、特異な私の在り方は、それこそ「ユミルの寵愛」だそうですよ。始祖ユミルを前にして誓ってくださるというなら、私はお話しします」
「貴女への行動一つで、恐ろしい末路もあり得る…ということでしょうか」
「もしそうならご覧の通り、足を失った段階で彼女が黙っていませんよ」
「………それも、そうですね」
行き過ぎた牽制になったものの、ひとまず落ち着いた。
その後ラーラは私の条件を受け入れたので、大まかな素性について話した。
やはりジーク・イェーガーの部分には驚いた様子だった。歴代の《獣の巨人》が持たない特質した力の理由がついたことには、なるほど、といった様子。
自分の素性を語る場合、不利益が多いものの、一つの大きなアドバンテージはできる。
完全に──とは言わないけれど、私がエルディア帝国を取り戻さんとする先祖の思想を持っていないこと。それが証明できる。
私の人生をたどった中でわかるのは、「こいつブラコンやん」という内容だけだ。
そしてそのために何でも為せる異常者である、と。
仮にタイバー家が私を利用するとしてジーク・イェーガーを弱みに使うなら、始祖様が黙っていない。
逆にジーク・イェーガーを利用するために私を利用するとしても、ユミルガードが発揮される。
「兄の任期はあと一年。その任期が終わる頃には、私は死ぬつもりです。今更「楽園送り」となった両親の思想を継ごうなどという気はないですし……ただ、静かに兄と暮らしたい」
「そう…です、か。……ではなぜ現在は離れて居られるのですか?それこそ始祖ユミルが助けを求めて……」
「………それは」
どうしたらいいと思う、ユミルちゃん。どうせ狸寝入りなんだろ。
しかしフリーダム少女は起きない。後の尻拭いは私が行えと…?
この場合事実を言うしかないでしょう。ただ弟と会った、などと言うわけにはいきません。始祖を宿す(嘘)彼はマーレで最重要捕獲対象なのだから。
それこそいることがバレて上層部に情報が渡ったら、その瞬間から戦争開始である。
四年間お国のために働いた戦士たちに、もっと休む暇を与えたらどうなんですかね。ただでさえ戦争のせいで兄といる時間が減ったのに。上層部の首を狩ってそれを並べ、苦痛に満ちた表情を眺める鑑賞タイムをとっても、全く割に合わない。
話すなら、「かつての仲間と遭遇した」と言うのがベストです。
エレンくんも同じ調査兵団の仲間でしたし、嘘は言っていないんだな、コレが。
壁内を裏切った身ですので、私が元仲間に出会ったらどうなるか、想像に容易いですね。本当は問答無用で捕まってパラディ島に連れてかれてしまうのでしょうが、向こうが私を「寵愛の子」だと知っていることは話していない。
元仲間に遭ってねらわれたアウラちゃんは逃げた、という体だ。
当然、政府のお膝元である軍事基地にいるのが最善策だろ、とツッコまれる。
その点はパラディ島にいるはずの調査兵団がマーレに潜入していた部分を踏まえ、彼らをここまで招いた「
仮に政府の内部に「協力者」がいるなら、必然的にねらわれている自分が近づけば、兄を巻き込んでしまうかもしれない。
肝心のその協力者が兄なのですが。ここまでの矛盾も中々ないですね。
「……本当に、兄君が大切なのですね」
ラーラは一応納得してくれたようだった。
同時にマーレ内にすでにパラディ島の人間が侵入していることを受け、調べる必要性が出てきた──とも。
エレンの話が正しければ調査兵団はかなり前から、すでにマーレにたどり着いている。
それに未だ気づいていない政府。兵団自体もおそらく少人数で、できる限り隠密に行動したに違いない。
ただエレンが動き、お兄さまの用意した舞台が完成しつつある今、調査兵団も大きく動かざるを得なくなる。少人数ならともかく大きな動きを見せれば、流石に政府も勘づくだろう。
「────わかりました。当主にこの件は申しますが、貴女の身はこちらでお守りすることになるでしょう。ご安心ください。タイバー家には他の息のかかった人間はおりませんから」
「…それは政府も、ですか?」
「はい。むしろタイバー家は
「え?」
マーレはなんとタイバー家の権限下にあるらしい。統治自体はマーレ政府に委任しているが……え?
「今のマーレの在り方はあくまでマーレ自身の意思。タイバー家の意思ではありません。ただ、我々が巨人の力を託した結果生まれた多くの犠牲を思えば、その贖罪は決して目を逸らせぬものにまで膨れ上がっています」
「………」
「当主は……いえ、
「ヴィリー・タイバーの妹なのですか、あなたは…」
「はい。私の、自慢の兄さんですよ」
頬を少し赤く染めて微笑んだラーラは、私と同胞だった。
さすがに恋愛感情はないでしょうけれど、絶対にお兄ちゃん子ではある。私のブラコンセンサーが「YES!YES!」と喧しいもの。
「わ、私のお兄さまの方がカッコいいですから!!!」
と、ジーク・イェーガーが国宝級の人間である事実を語ってしまったアウラちゃん。
私の言葉を受け、瞳を丸くしたラーラはにっこりと微笑んだ。両手を合わせて、ふふ、と息をこぼす。
「兄さんという存在は、格好いいですよね」────と。
それに私は無性に敗北感を味わったのである。
少なくとも彼女は言葉の矛を握らなかった。
純粋に彼女は、同じ兄が好きなもの同士嬉しかったようですが、それも敗北感を誘う結果になった。
でも「愛」の大きさだけは、絶対に負けません。
ユミル「っま、アウラなら何とかするやろ」