ライナー曇らせ?…いや、曇らせお兄さまだ!   作:栗鼠

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トップのヒロインの座を勝ち取っているユミル……最強かな?次点でジーク、そして圧倒的な差が開いてのライナー。

個人的にミカサの0を見て、「ミカサはエレンのヒロイン」という、みんながisym先生と始祖ymrによる調教済みな思想を持っていることが知れて、私は嬉しいんだ(ドM)

アンケは引き続き、個人の気がすむまで設置しておきます。投票してくださった方ありがとナス!


鬱だナー

 私アウラ・フリッツちゃん。フリーダム始祖様の子孫なの。

 

 

 現在劇が始まり、私はそれをタイバー家の関係者という体で、各国のさまざまな名家がいる場所でコッソリと眺めている。

 

 衣服は華美すぎないシンプルな漆黒のドレス。首元が広く見えるもので、袖部分は生地が薄いため肌が透ける。

 浮かび上がる花の紋様と生地の質感に「ゴッツ高いヤツやん」と実感する。

 

 その上には白いカーディガンを羽織っており、金髪のウィッグを付けていた。これで瞳を青に変えられれば完全にユミルちゃんである。

 

 車椅子に乗る美女ちゃんに、複数の男性に「お美しいですね」から始まって、どこの家の者か尋ねられる私。これだから美女って罪深い。その度に「お忍びですの、ですから…」と言い、はぐらかす。

 

 口元に手を当てて、クスリと微笑むだけで、相手は息を呑んでしまうのですから。

 普段あまりしない化粧と高価な衣装の効果で、いつもの数倍アウラちゃんの魅力が増してしまっていた。

 

 ちなみに車椅子を押してくださっているのはタイバー家の近衛兵の方で、スーツを着ていらっしゃいます。

 

 

 ここに至るまで、ヴィリー・タイバーの協力を無事得られたのは幸いでした。

 ユミルちゃんの存在は偉大なんやね。

 

 歴史の転換点に現れた存在に、当主殿は運命を感じ、そして己の立場を悟った。

 

 巨人大戦の真実を語る彼は、今宵タイバー家と英雄へーロスの名誉を捨て、その上で迫る脅威───始祖の力を持ったエレン・イェーガーの存在を明らかにする。

 そして争い合う世界の人間たちに、武器を取らせるのだ。

 

 すべては幾千もの壁を構成する、大型巨人の脅威から世界を守るために。

 

 

 たとえ敵がマーレに侵入し、ねらわれることが分かっていても、己を犠牲にして世界に変革をもたらさんとする。

 

 そんな男は本当の“英雄”となるのだろう。

 

 その姿をヴィリー・タイバーは王家の血を継ぐ私と、始祖ユミルに見届けてもらいたいそうだ。

 当日、敵の奇襲に遭う可能性が高いと知りつつ、それでも立ち会って欲しかった。

 

 私としても是が非でも行きたかったので、相互の意見は一致していた。もし危険でも「ユミルの寵愛があるから大丈夫」とごり押しすれば、問題ない(モーマンタイ)

 

 ウィッグをしていても既知の人間には見抜かれてしまう可能性はありますが、そこは仕方ないでしょう。

 バレてもこちらは来賓客の席だ。来ると不自然なため近寄れない。

 

 

 

 

 

 そしていよいよ壮大な音楽が鳴り響き、舞台が始まる。

 

 

 こういった劇を鑑賞する機会は何気にはじめてなので、純粋に楽しめた。

 

 一番の見どころは巨人の被害に遭った人間たちをイメージするため、役者たちが呻いていたところですね。少しわざとらしさも感じられましたが。

 

 もっとリアルに叫んでもよかった。こちとら本当に巨人に食われる仲間たちの姿を経験しているのでね。採点は厳しいですよ。

 

 

 それから順当に進んでいく劇。大戦の真実を明かされ騒然とする周囲は、ひとりの語り手であるヴィリー・タイバーの重い決意からくる言葉に聞き入る。

 彼の男は偽りの地位を抜きにして、純粋に人の上に立つ器量を持っている。

 

 世界を滅ぼそうとする強大なエレン()を前にして、共に立ち上がることを呼びかけるヴィリー。

 鼻を啜る音が聞こえて隣を見れば、男が泣いている。その他も、その他も。

 

 感涙し、盛大な拍手を送る周囲を見て、私もゆっくりと手を叩いた。

 

 

 美しい。一つの脅威を前にして、共に戦おうと呼びかけるヴィリー・タイバーの言葉も。その言葉に感銘を受け、手を取り合い武器を取ることを決める人間たちの姿も。

 

 これが、お兄さまが用意した舞台。

 

 

 涙を流す者たちとは対照的に顔が熱くなり、今自分の顔が恍惚としているのがわかる。

 

 きっとエレンもすでにこの場に潜んでいるのだろう。この劇は一般のエルディア人も見ることができる。ゆえに負傷兵を偽っている彼も入り込むことは可能だ。

 

 いつ戦いの狼煙が上がるのか。

 

 そして混乱の中、どれだけ多くの無垢の命が消えて、死にゆく間際にその煌めきを見せるのか。

 

 知りたい。見たい。堪能して狂いたい。

 

 私が「生」きていることを、実感させて欲しい。

 

 死んではいない証明を、してほしい。

 

 

 

「パラディ島勢力へ、宣戦布告を──────!!」

 

 

 

 その、瞬間。

 

 

 爆発するような音とともに、ヴィリー・タイバーがいる舞台の頭上から、建物の瓦礫を吹き飛ばしながら巨人が生えてきた。

 

 慟哭し、雄叫びを上げる巨人。まさしく今この時、「主人公」がそろったのだ。

 

 タイバー家の件でフリーダムに動いて以来出てきていないユミルは、この光景を見ているのだろうか。見逃していたらもったいないですね。

 

 

 瓦礫が遠くのこちらにも届く中、巨人に宙へ放り投げられたヴィリーは、その口の中へ消えて行った。

 

 どうやら、タイバー家が戦鎚を保有していることもしっかり伝わっているらしい。でないとエレンがヴィリーを食らった理由にならないものな。

 

 突然の事態に、周囲は悲鳴を上げて逃げ始める。近衛兵の方も「逃げましょう」とおっしゃったが、もう少し見ていたい。

 

 どうせ車椅子ですと逃げる際に、どうしても周囲より遅れてしまい混乱に巻き込まれやすい。

 ですので人の移動が落ち着いてから動いた方が安全でしょう。

 

《戦鎚の巨人》が誰であるかは聞かされていないものの、始祖ユミルが見えていたことからも、誰かはわかっている。

 そして私が見当がついていることも、あちらは分かっているでしょう。

 

 

「ん?」

 

 ヴィリーを美味しくいただいたエレンが軍の人間の方へ視線を向けようとした時、一瞬動きを止める。こちらを見ていますね。

 

 お姉ちゃんがより美女になっていることに気づいてしまったのでしょうか(建前)。

 

 来るんじゃねぇ(本音)。

 

 

 すぐに視線を戻すと、エレンは驚異のスタートを決めて軍部の人間を潰した。

 そろそろ戦鎚の彼女も動くでしょうし、逃げるとしましょう。

 

 と言っても、完全な安全圏に逃げる気はない。私をお持ち帰りしたいという話に嘘偽りがなければ、調査兵団は私を見つけ次第回収するでしょう。

 

 四年が経てば私の容姿を知らない者も増えるだろうが、似顔絵なりなんなり、情報はもらっているだろう。

 

 またジーク・イェーガーの側にいることも、大方予想はついているはずだ。少なくとも、私と会った負傷兵エレンくんは。

 

 

 あとは事が終わり次第だ。兄弟が揃った時に、「私」をさらけ出して殺されましょう。ふひ。

 

 車椅子を押されながらウィッグを捨てて、前髪をかき上げながら違和感のなくなった頭部の清涼感を味わう。同時に瓦礫に巻き込まれた人間や四方八方で聞こえる叫び声に、口元を隠しながら笑った。

 

 みな死と生の間で、今の絶望を味わっている。

 まさかこんな事態になるなんて、一部を除いて思いもよらなかっただろう。

 

 

「生」きているって素晴らしい。

 

 だから早く、殺して。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 タイバー家の演説する広場にて起こった、エレン・イェーガーの強襲。

 

 ヴィリー・タイバーとテオ・マガトが、マーレ国内に潜んでいる“ネズミ”の存在に気づきながらも、今宵の演目はとり行われた。

 すべては腐敗したマーレ政府の打開と、「地ならし」の脅威を止めるため。

 

 ヴィリー・タイバーは自らの命がねらわれることを理解した上で、舞台に立った。

 また軍部の中心を一気に抹消するために、わざと舞台の近くに配置して。

 

 結果、タイバー家の当主は《進撃の巨人》に食い殺され、軍部の人間も殺された。

 

 その後、兄の最期を見届けた当主の妹──ラーラが巨人化し、進撃VS戦鎚の火蓋が切られ、ラーラ側の援護としてマガトらが参戦する。

 

 

 ヴィリーとマガトの思惑どおり、各国の主要人物がいた中起きた歴史的大事件。

 

 これで世界はパラディ島を人類の脅威とみなし、スムーズに戦いへ移行することができる。

 

 ただしパラディ島側も今ことを起こせば、戦いが避けられなくなることはわかっていたはずだ。

 その意図を含め、慎重に行動する必要がある。

 

 

 

 

 

 そして、広場から離れた場所。

 

 大勢の人間が逃げまどい、押し合う群れがある程度おさまった中。

 戦士候補生らの姿がそこにはあった。

 

 演目が始まる前、マガトの呼び出しの命を伝えにきた兵士に付いていった戦士たち。そのためヴィリー・タイバーが襲われた際、広場に戦士はいなかった。

 

 

 彼らもまたすでに敵の策にハマっていたのである。

 

 パラディ島勢力の共謀者であるジークは正門へ。

 対し、アニとピークは建物内へ。彼らを案内した兵士こそ、似合わないヒゲをつけたイェレナだ。

 

 床を踏んだ時、一部分だけ感触が違うと感じたアニは、すぐに後方にいた兵士の体を壁に押さえつけ、腕を押し当てるようにして首を締めた。

 

 一瞬のできごとにピークは驚いたが、その前から戦士二人は妙な違和感を抱いていた。

 アニならばその生まれもっての勘で。ピークならば、その鋭い洞察力で。

 

 

 しかしアニは兵士に耳元で何かを囁かれると、目を見開き数歩下がった。

 

 その隙にイェレナはトラップにつながるヒモを切り、二人を床の底へ落とす。巨人化できないようにするための策である。

 

 遠い天井を見上げることになったピークは、やられた──と思いつつ、隣で拳を握りしめるアニを見つめる。

 

 なぜ兵士を離したのか問えば、青い瞳はゆらゆらと揺らいで、小さく「ごめん…」と呟くのみ。

 兵士に言われた内容も、話せないらしい。

 付き合いの長いピークであっても、見たことのないアニの表情だった。

 

 

 ピークは状況を整理する傍ら、深い息を吐く。

 

 ()()()()()()つけヒゲの兵士の件といい、戦士長のみ正門に向かわされた件といい、募る疑問は多い。アニの件も然りだ。

 

 念のためにジークと別れ、建物へ来る途中で出会ったパンツァー隊(車力の巨人が機関銃を装備した時、それを操作するメンバーである)にかけ寄り、こっそりと後を追うよう頼んでいた。

 ゆえに助けはそう時間を要さず来る。

 

 

「……ねぇアニ、「戦士」として戦う覚悟はあるわよね?」

 

 

 そう呟いたピークの言葉に、見返したアニは小さくうなずく。

 車力の女の瞳は変わらず彼女を、“仲間”と信じると、告げているようで。

 

 同時にアニの中で、兵士がささやいた言葉がよぎった。

 

 

 ──────あなたは()()()()()()に逆らう気ですか?

 

 

 兵士の声色はゾッとするような、冷たさを内包していた。

 

 悪魔のご慈悲。

 なぜかその言葉を聞いた時彼女の中には、一人の女の笑みが浮かんだのである。

 

 見る者を魅了する女────アウラ・イェーガーの、その笑みを。

 

 

 

 

 

 

 

 対し話を戻して、戦士候補生たちの現状。

 

 エレンの強襲の直後、舞ったガレキから咄嗟に子どもたちを守るように動いたポルコ。

 位置としてピークの前方におり、子どもたちは彼からみて右側にいた。

 

 ポルコは隣にいたゾフィアとガビを抱きしめ、地面へ伏せさせるように転がった。

 

 そのあと子どもたちやコルトにケガはなかったものの、ちょうどゾフィアが先程までいた位置に大きなガレキが落ち、ポルコの左足に当たってしまったのである。

 

 

 激痛に叫びながら彼は潰れた足をブチブチと、無理やり引きずり出す。

 骨が粉々に砕け、足の形を失ったそこは、靴とともに肉と皮がくっつくように平たくなり、引きずった場所には血が続く。

 

 歩行は困難だと一目瞭然の様にガビは顔を歪め、ゾフィアは恐怖により言葉をなくす。

 一歩間違えれば少女の体全体が、ポルコの足のように潰れていただろう。

 

 その間、広がった恐怖の波紋は周囲に広がり、ヒトの群れが一斉に動き出す。

 

 それに巻き込まれないようにと、コルトはウドを、ポルコはガビと震えるゾフィアを抱きしめ、ガレキの後ろに身を寄せるように隠れた。

 

 人の雪崩が収まったあとは、ポルコはコルトに背負われ、ウドとガビは「ヒッ、ヒッ」と、しゃっくりをあげるように息を漏らすゾフィアの背中に手を回して歩かせた。

 

 

 ポルコをすぐにでも病院に連れて行かねばならない。

 そんな中、ガビは戻ってきていないライナーを、コルトはファルコを案ずる。

 

 一行のスピードはあまり早くない。手負いのポルコをコルトがおぶっているためだ。

 

 身長がコルトの方が5cm高いながら、両者のウェイト差は10kg以上ある。どちらが重いかは明白であろう。ピークの趣味が、筋トレ中のポルコの筋肉をつつくことからも。

 

 

 

 道に転がる大小細かなガレキや、その下敷きになった死体。立ち込めるケムリに見通しは不明瞭である。

 出店を回っていた時とは一転した地獄のような光景に、ガビは喉から意味もなく声がもれそうになる。

 

 泣いたところで、叫んだところで、この地獄は変わらない。終わらない。

 

 悲惨な死体と血生臭い香りに、ゾフィアを挟んでガビの隣にいるウドは、込みあげた胃酸を飲み込んだ。

 

 まさに天国と地獄。

 

 一瞬にして世界は、進撃の足音をその耳にすることになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

「俺を……殺してくれ……!!」

 

 

 時は少し遡り、ヴィリー・タイバーが強襲される前。

 クルーガーの元へライナーを連れてきたファルコが見たのは、四つん這いになり死を乞う男の姿だった。

 

 

 

 クルーガーは最初、旧友であるはずのライナーを見た時、一瞬驚いた表情を浮かべた。

 

 彼はすぐに無機質さを宿す顔へと戻り、少しの間をおいてライナーに座るようにうながした。ファルコについては、その場に残るよう続けて。

 

 幸いイスはクルーガーが座っている分ともう一つ、隅にあった。

 それを引っ張り男の正面に座ったライナーは、ファルコが見たことのないほど、不安定に映った。

 

 

 そして、いくつか言葉を交わしていった二人。クルーガーの様子は変わらなかったが、話が進むごとにライナーの震えがひどくなっていく。

 ちょうど彼らのいる上は舞台となっており、話をしている最中、ヴィリー・タイバーの声や音楽の音がよく聞こえた。

 

「最近はどうだ?」やら、「相変わらずアウラ・イェーガーのことが好きなのか?」やら、他愛ない会話をするクルーガー。

 

 

 だがそんな男の言葉に耐えかねたように、立ち上がったライナーは叫んだのだ。

 

 お前がここへ来た目的は、()()()()()──────と。

 

 

「「お前らができるだけ苦しんで死ぬように努力するよ」と、お前はあの時、俺に言ったじゃないか…!!」

 

 ここにきてファルコが「()()()()」という言葉の違和感や、ライナーの普通ではない状態に一つの可能性───エレン・クルーガーの存在に疑惑を持ち始めた中、クルーガーは耳をかく。

 

 

 

「言ったっけ、そんなこと…」

 

 

 

 まるで今まで忘れていた、と言わんばかりの様子。

 クルーガーの態度に「へ?」と頓狂な声を出し、ライナーは固まる。

 

 

 クルーガーは──否、エレン・イェーガーは、マーレで見たことを語る。

 

 壁の中で見ていた世界と、外で見た世界というのは“同じ”だった。

 善人と悪人。虐げる者に、虐げられる者。支配する者と、管理される者。

 

 そんな世界の同一の部分を目の当たりにした男は、ライナーたちが行った行為も、これからエレンが起こそうとしていることと()()()()()と思った。

 

 大切なもののために、誰かを傷つける。そうしなければ守れない何かが、失ってしまう何かがある。それは人それぞれ違うものの、作りは同じだ。

 

 奪う側だったライナーたちの側に、今度はエレンが回る。

 

 同じなのだ、どこまでも。

 

 

 だがエレンの言葉に、ライナーは「違うんだ」と返す。

 

 エレンの母親を含めて、多くの人間を殺してきたライナー。

 重い十字架にすでに耐えきれなくなっていた男を裁くはずの「罰」はしかし、正常に執行されない。処刑人のはずのエレンに、ライナーを殺そうとする様子は窺えないのだ。

 

 

 

 そうしてファルコの前で涙を流しながら「罰」を乞う、男の姿ができあがった。

 

 少年もまたエレンに利用された件──送り届けていた手紙が、敵の仲間の元へ送られていた事実──を知り、深く項垂れる。

 

 

「顔を上げろよ、ライナー」

 

 差し伸ばされたのは、エレンの手。

 蒸気を発しながら再生していくその右足に息を呑みながら、ライナーは翡翠の瞳を見つめた。

 

「お前も辛かったんだな」

 

「ちがっ、違うんだ!」

 

「何も違わないだろ。オレたちは同じだ」

 

「俺はお前に、殺されないと…!」

 

「なぜそんなに殺されたいんだ、オレに?」

 

「だからそれは、俺がお前の母親を殺して──」

 

 ライナーを引っ張りあげた手が不意に、強く握られた。

 仕方がなかったんだろ、と呟いたのはエレン。

 

 

「進む中で犠牲は生まれる。母さんもその犠牲の一人だった。でも進むしか方法はないんだ。だから、仕方ない(、、、、)。そうだろ、ライナー」

 

 

 濁った瞳はそのままに、エレンは微笑む。

 

 ゾワゾワとした悪寒がライナーの背筋に走った中、部屋につながる階段の上から、人の気配がした。

 おそらくはマーレ兵士だ──と思ったところで、彼が視線を戻すと、目の前の男の口元にあったのは手。

 

 最後に、自身が止まらないことを告げたエレンは手を噛み切り、稲妻とともに発光した。

 ライナーは咄嗟にファルコの元へかけ寄り、その体を抱きしめる。

 

 

 そして進撃の咆哮が、舞台上に響くことになったのだった。




【ハイテンションガール】


砂と光の柱の世界。

そこで製造中の巨人の上に乗り、拳を高く掲げている少女の姿がある。その巨人と少女の周囲では、無数の人間が集まり同じように拳を上へ突き出していた。

「イェイイェイ!」

「ユミル最高!」

「ユミル最高!」

まるでカルト宗教の信徒と始祖のような、カオスな狂気があたりに蔓延している。
気づいた時にその後方に佇んでいた一人のヒゲ面な男は、困惑していた。

そんな男に側にいた、そばかすが特徴的な少女が声をかける。エルボー付きで。


「お前もユミル様最高と叫べ!!」


そのまま顔に激しい衝撃を起こし、軽い脳震盪を起こした男はそのまま気絶する。
そして起きた時、奇妙な体験はすでに忘れ去られていた。
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