いよいよ次回で本作も終わり。巨人に囚われたジークをどうやって主人公が救い、そして物語は結末を迎えるのか。こうご期待ください。
エッ、今日の日付?8月45日です。
私、アウラ・イェーガーちゃん。今広場からだいぶ離れた場所にいるの。
途中後方でまばゆい光が起こったため、戦鎚が登場したと思われる。
それから広場の方角は、まるで怪獣大乱闘のような大騒ぎだ。時折空へガレキが飛ぶ。
両者大暴れしているのだろう。特にエレン・イェーガーくん19歳児は。
無力化されるはずのお兄さま以外の戦士たちは、今頃どうなっているだろうか。
勘のいいアニならば、途中で罠の存在に気づいて無効化してしまいそうだ。そうなると多少の計画の誤差は生まれるかもしれない。そもそもエレンが広場にいる以上、他のマーレ兵が集結する。
今は狭い路地裏に入って、息を潜めながら大通りを監視しているが、兵士を乗せた装甲車が横切るのが何度か見えた。
マーレ兵がいるなら自ずと調査兵団も集まる。タイバー公からの情報で、マーレ国に彼らが侵入していることは確かですから。
そしてアニが罠を無効化すれば、戦士長以外の戦士も広場につどう。
アニたそについては始祖の件を話さないなら、存分に暴れていただいて結構である。
ベルトルトについてエレンから聞きそびれてしまったものの、後で聞けるでしょう。
仮にすでに死んでいるなら、その力を持った人物がマーレに侵入している可能性も大いにある。
ユミルの寵愛や王家の血筋の件において、前者はエレンたちにすでにバレているから、マーレ政府に伝わってもいい。
その政府すら重鎮たちはこぞって殺されたから、指揮はテオ・マガトに回るだろう。
後者はジーク・イェーガーがマーレから逃亡すれば、もう明らかになっていい事実です。
まぁアニも塩梅がわからないでしょう。どこまで話していいのか、ダメなのか。
地雷を踏むリスクを考えたら、ほとんど話さないと思います。
「!」
──と、のんきに考えていた折、強風が襲った。
建物が揺れる衝撃。粉塵と、飛び散る窓ガラスから私をかばうように、お供の方が地面に伏せさせてくれた。
何が起きたのか、制止の声を無視して地面を這う形で、路地裏から顔をのぞかす。
位置はちょうど軍港がある方角。夜を照らす光源の正体は、凄まじい爆発である。
マーレは《進撃の巨人》の登場に合わせて、急いで兵士を集めているはずだ。陸だけでなく、海からも。それを踏まえて現状について考える。
おそらくは軍艦を排除するためにあの爆発は起こったのだろう。であれば、あの爆風の原因は何か。
間違いなく《超大型巨人》だろう。
まさか戦士であるベルトルト・フーバーが、マーレへ反旗を翻すような行為を起こすわけがない。
つまり超大型はパラディ島勢力に奪われた。
継承した人間が誰であるかはともかく、この事実にアニ・レオンハートが気づいたら、どうなるか。
────えぇ、曇るでしょう(ニチャ)
ちょっと広場に行ってきていいですか?もしかしたらカノジョがいるかもしれないので。
しかし、お供の人に「正気ですか!!?」と言われてしまった。
見に行きたい。見に行きたいけれど、私が最高の最期を迎える前に巨人大乱闘に巻き込まれて、死んでしまう可能性が跳ねあがる。
……仕方ありません。ここは苦汁を飲んで諦めましょう。
アニちゃんが発狂していたらどうしよう。きっと可哀想で、可愛らしくて、発狂パワーを片手にエレンくんがフルボッコされているかもしれない。戦鎚もおりますのに。
まぁ、大丈夫でしょう。アッカーマン二人に、ミケやハンジらもいるでしょうから。
こうして改めて考えると、巨人の力を人間ながらに発揮できるアッカーマン(うち一人はイコールで、単体で知性巨人を倒せる規格外の力を持つ)二名に、調査兵団No.2の男、ミケ・ザカリアス。
それに104期生たちも相当強くなっているでしょう。新しく入った新兵も強いはず。
アウラちゃんも適度なトレーニングはしていましたが、すっかり体力が落ちてしまった。頭に知識を詰め込んだ分だけ、失った力。
それでも立体機動装置を使いこなせない──とは思わない。七年慣れ親しんだ感覚は、そう簡単には忘れない。
「ヌウッ!」
その時聞こえた、ワイヤーが巻かれる音。路地裏に引っこみ、なるべく姿勢を低くして、壁に張りつき息を殺す。
上から聞こえる音は間違いなく立体機動装置の音。頭上で兵士が動いているのだろう。
すると間もなく夜空の灯りしかなかった空に、光がついた。
何か照明のようなものを屋根に設置しているようである。
こちらに気づかれないように静かに動いて大通りへ近づくと、道を挟んだ向かい側の建物の上にも兵士が照明を取り付けている。
ついでに調査兵団の服が進化していることもうかがえた。しかも無数の長い筒状のものを、腕に複数セットしている。
お試しで始祖の力を試していた時に兵士の情報で得た、新兵器の内容と一致する。それが正しいなら「雷槍」という名前だったはずだ。
ハンジ・ゾエがウォール・マリア奪還作戦に向けて、技術班に開発させていたもの。
彼女がやたらと私の病室へ訪れていたのも、その武器について意見交換をしたかった旨もあったのかもしれない。私の側に近寄るな(迫真)
従来の武器と比べて、その総重量はさらに増えているだろう。榴弾の類の武器である。
「灯りね……」
なぜ調査兵団は、照明を取り付けているのだろうか。
その場所を制圧したことの証としては、少し違和感がある。明かりは一つの道に沿うようにして取りつけられていた。
──いや、待て。そもそもエレンたちが仕掛けてきたのはいいけれど、帰りはどうする気なのだ。
行きはアズマビト家の力を借りるなりし、船などを使った移動はできるだろう。
だが超大型が暴れた海上側は、そこに隣接する建物含めてぶっ飛んだはずだ。ゆえに立体物がない。立体機動で移動することはできまい。
ならば帰る手段は何を使うのか。
陸はダメ。で、あるなら後は……。
「────空、か」
アズマビト家なら飛行船の一つや二つ、提供することはできるだろう。あるいは混乱に乗じて、奪うこともできる。
立体機動でそのまま乗り込めば、スムーズに逃げることもできますし。
とすると、照明は飛行船へ送る目印のようなものだろう。
この方法を思いついた人間は中々に上手いやり方を考える。エルヴィン団長だとは思いますが。それかトロスト区の大岩の案を編み出した、アルミンくんの可能性もある。
ひとまず飛行船が来るとしたら、タイミングを見て兵士に捕まっておいた方がいいだろう。
ここら辺でお供の方ともお別れだ。タイバー公もラーラも私の望みは知らない。私の最高の最期への望みを。
一時、逃げる際の車椅子の揺れで吐き気を覚えていた体で、路地裏へと隠れていた私。
ただ敵兵士が現れてこの場もまずいから──と、お供におぶるよう頼む。護衛を任されている男はうなずき、私を背負った。
最初から背負われなかったのは私が女性なので、過度な接触を避けるためです。
タイバー公から任務を仰せつかった護衛相手に、そりゃあ不埒なことをするわけにはいかない。
そして、自然な動作で背後から伸ばした両手で相手の頭をつかんで、そのまま横へと動かす。
グキッ、という音とともに「あ゛えっ?」と声を漏らしたお供の方は、そのまま倒れた。これならば松葉杖も携帯させた方がよかったですね。
地面を四つん這いで移動するのは中々骨が折れそうですから、車椅子を杖代わりにしましょう。ドレスも動きが制限されて動きにくい。
そのため裾を太ももの際どいところまで裂いて、私は大通りへと向かった。
⚪︎⚪︎⚪︎
広場では《戦鎚の巨人》の正体を見抜いたエレンが、ミカサの助力を得つつ、結晶に包まれ巨人を操っていた地中のラーラ・タイバーを引きずり出した。
その直後、パンツァー隊により助けられたアニが到着し、進撃VS女型の火蓋が再び切られたのだ。
ピークは武装をする必要があるため、少し遅れての登場となる。
広場には進撃のほかに、アッカーマンが二人にミケ班もいた。歴戦の精鋭ぞろいである。
特にリヴァイに関しては《獣の巨人》を単独で討ち取る、もはや人外じみた戦績を残している。
ただ女型はアニ・レオンハートの戦闘能力の高さも相まって、そう易々と勝てる相手ではないことは、調査兵団もまた女型の捕獲作戦や、ストヘス区での戦いで経験している。
リヴァイであっても勝てる相手ではない、と思わせる相手。
しかし彼らには鎧の装甲を打ち破った雷槍が存在する。
その新武器の脅威について、ライナーの報告によりマーレ側も認識していた。
ゆえにアニは前提として刺さらないように硬質化した手で雷槍をはらいのけながら、広場の周囲の建物を
辺りには建物が多く存在する。一見パラディ島勢力だけでなくマーレ側も「何やってんだ?」と思ったアニの行動は、立体物をなくす方法。
調査兵団が飛び回れないように。また、散らばるガレキを避けざるを得ない状況を作り、ヘタに動けないようにする意図があった。
この際建物の被害など、やすいものだろう。
この時の彼女の中には間違いなく、不在のライナーに対する怒りもあったに違いない。
当のナイスガイはファルコを守り、巨人化したまま地中に埋まっている。生きる意思を失った状態で。
広場中央で戦鎚の本体を硬質化した手で殴り破壊しようとするエレンと、その周囲を回りながら建物を破壊するアニ。シュールな光景がしばし続いた。
だが、散らばるガレキがエレンにぶち当たり、戦況は動く。
あらかた調査兵団の立体物となる建物を、破壊し終えたアニが放った攻撃。
ちょうどそこに武装を終えた車力も到着。
《獣の巨人》もついで現れ、戦士とパラディ島勢力の戦闘が始まった。
この際に矛となる獣を守るため、車力と女型は倒壊していない建物がある近辺にまで移動した。
そして起こった、軍港の大爆発。
超大型がパラディ島に奪われていたことが明らかとなった。
爆風の衝撃とともに突きつけられた事実にアニの思考が止まった中、敵の総攻撃が襲来。
港の爆発に気を取られていた獣の隙をつき、リヴァイがうなじを削いだ後、そこに雷槍を爆破。
ピークもまた車力の上で武器を操作するパンツァー隊がねらわれ、彼女も雷槍の攻撃に遭い重傷を負った。
彼女は悲惨な状況を受けて、エレン・イェーガー絶対殺すマンと化していたガビを追って、戦場まできていたファルコに助けられた。それがなければ、死んでいた可能性が高い。
ちなみにトドメの雷槍を外したのはジャンである。彼は現れた子どもを前にして、判断が鈍った。
またファルコについては、少年を守るようにして巨人化した鎧の隙間から、外へと脱出していた。
鎧の体は確かに地中に埋もれていたものの、ファルコがいる部分は地上へと吐出していたのである。
相次いで戦士が倒され、残るはアニと、エレンとのハートフル面談で生きる意思を失っているナイスガイ。
戦鎚はすでにエレンとの戦闘で戦う体力が残っていない。
硬質化によって武器を作るその力は強大であるが、同時に消耗も激しいのだ。
アニはそんな中、空を仰ぎ、咆哮した。
それは巨人を呼び寄せる叫びと似ているようで、違う。彼女の心の中で生まれた痛みが、外へと漏れ出る。
涙は、不思議と出なかった。
彼女もまたベルトルト・フーバーが生きていると思いながら、その可能性を──この世にはもういないかもしれないとを、わかっていたからかもしれない。
見舞いに定期的に通っていたベルトルトの母親が亡くなった時は、涙が出たというのに。
それとも彼女は知っているからだろうか。
世界が、残酷だということを。
自分と同じ形をしている生き物を潰していた彼女もまた、潰される側になる。
奪う側が、奪われる側になる。
女型は叫んだ後、視線をエレンに向け、駆け出した。
四年前はストヘス区の時、進撃が女型へと殴りかかったが、今度は逆だ。
怒れる
エレンとアニの戦いは、激化する。
体術を交えて戦う両者。リミッターが外れているのか、アニの動きはかつてエレンが体験したものとキレが違う。
しかしその周囲には、絶対エレン・イェーガー殺すマンの少女とは正反対の、セコムが控えていることを忘れてはならない。
周囲の建物が破壊されている中で、巨人同士の戦いに巻き込まれないように瞬時に判断しながら、正確に、最大限の力をもって体を操る。
そうしてミカサは二者の巨人にアンカーをかけながら、縦横無尽に宙を翔ける。
“アッカーマン”でなければ、到底マネできない芸当だ。
女型はエレン一人に意識を集中させていれば雷槍を食らい、かといって周囲へ意識を向けていればエレンの攻撃が襲う。
そしてそんな状況が続けば、いくらアニとて隙はできる。
それをねらいエレンの決め技が入り、拘束された彼女の足の腱が、ミカサによって切られる。
抵抗が弱くなるとさらにエレンが優位となり、大きく開かれた口が女型のうなじへと近づいた。
その時。
ひとりの寵愛を受けし者が、稲妻とともに立ち上がる。
絶望した状況の中で、助けを求めたガビやファルコの声を受け、彼は瞳を開けた。
────頼んでも、静かにさせてもらえない。
────願っても、死なせてもらえない。
そんな彼には守りたいと思う家族や仲間、そしてガビたちがいる。
拳を向け殴りかかった男はしかし、エレンの硬質化した拳を受けて吹っ飛び、建物へとぶつかる。
「ライナァァァ」と叫んでいたガビとファルコも、一瞬固まった。
だがライナーはただ殴ったのではない。彼の放った拳は女型を掴んでいたエレンの手にブチ当たり、アニを離させることに成功した。
彼女はその間に切られた腱を再生させながら立ち上がり、青い瞳を向ける。
エレンは背後の彼女へ体を向けるように飛び退き、一旦地面へ転がしていた戦鎚の結晶体の側へと移動した。
ライナーは力を使いきったのか、再起不能。あとはアニだが、すでに飛行船が着いている。
時間的にも残された体力的にも、撤退せねばならない頃合いとなっていた。
戦鎚を食らう算段がエレンにはあったが、肝心の結晶が壊せず食らうに至っていない。
回収するにしても重量と大きさがあり、もし飛行船の中で巨人の力を使われた暁には、全員に危害が及ぶ。
そのため置いていくしかないか──と彼が考えた時。
女型の視線が彼より少し下の場所で、止まっていることに気づいた。
エレンが同じ場所へ視線を向けると、そこはちょうど下。地面に転がっている結晶体の場所。
そこに一人のボロ切れのような服を身にまとった少女が、結晶の横に立っている。その後ろ姿はうっすらと透けており、その先に少女を見つめているであろう戦鎚の本体の姿が見える。
エレンは思わず、息を呑んだ。
それは少女が結晶に触れた瞬間、その硬質化がパシャン、と一気に溶けたこともある。また少女が透けていることからも、人間ではないとわかるところも。
しかしそれ以上に少女が振り返った際、見えた顔。
エレンを見上げるようにのぞいたその顔は、あまりにも姉と────アウラ・イェーガーと似ていた。それこそ同一人物と言ってもいいほどに。
異なるのは金の髪と蒼い瞳に、その身長くらいだ。
少女は大きなあくびを一つ溢すと、そのまま消えていく。
突然の事態にしかし、エレンの手は戦鎚の本体をつかみ上げる。チャンスは今しかない。
理解の追いつかないラーラは体を握りつぶされ、くの字に曲がり、進撃の口の中へと招かれた。
一連を目撃し固まっていたアニは行動を起こそうとしたが、不意をつく形でミカサに背後からうなじへ雷槍を叩き込まれる。
咄嗟に硬質化で防ごうとしたものの、不完全に終わり人体に爆撃を受ける結果になった彼女は、地面へ倒れ込んだ。
最後まで立っていた巨人は、進撃のみ。
エレンはうなじから体を出し、小さく呟く。
始祖、ユミル?──────と。
【誕生日】
過去に妹から、子どもには見せられないーー見せるわけにはいかないご奉仕をされそうになってきたジーク。このご奉仕は、完全にプレゼントとは別途である。
今年はどのような胃痛が待ち受けているのかと思いながら、男はその日帰宅した。
プレゼントについてはネクタイだった。過去にせがむ妹に任せたのち、首を絞められる結果になったことを思い出す。本人曰く、縛り方がわからなかったらしい。お詫びにリビングで縊死を図った妹を全力で止めた。夜にこっそり行おうとするものだから、余計にタチが悪い。
「おにーちゃんおかえり!」
して、今年の妹は、兄が望むであろう妹の理想像を再現することにしたようである。
年齢を問うたら、そもそもの話になってしまうので割愛するとして、兄は不覚にも、きゅんとしてしまったのだった(チョロイン)。