人類最強の男や約30名の完全武装した兵士と過ごすドキドキ♡の巨大樹生活。
ジーク・イェーガーは常に視姦プレイを受けながら、
マーレで負傷兵を装う弟と話したジーク。
妹の「寵愛の子」の事実を知らされる中、ジークもまたエレンに「安楽死計画」を行う上で、その意思の確認をとった。
少なくともイェレナに計画の真の全貌を明かされ、それに首肯したからこそ弟は兄と密会に及んだはずだ。
しかし当のエレンは、真っ向からジークを否定した。
「安楽死計画」に、到底賛同できないことを。
鋭い目つきで、射抜くように向けられた翡翠の瞳は、夕陽に照らされながらもそれに侵されぬ色を放っていた。
やはり────やはり、エレンはグリシャ・イェーガーの洗脳を受けていたのだ!
ジークはそう確信をもって言えた。
幼かった自分にエルディア復権派の思想を植え付けて、さらに娘を狭い家の中に閉じ込めた男。
ジークにとっての“父”はトム・クサヴァーであり、グリシャを「父さん」と呼ぶことは決してない。
そしてエレンもまた、父の思想を植え付けられた
『違う』
だがエレンはそれすら否定して誰の思想にもとらわれていないことを強調し、自分が進んでいる道は自身の意志で選び進んでいるものだ、と語る。
『オレは自由なんだ、兄さん。グリシャでも、フクロウでも、あんたでも、姉さんでも……ましてや始祖ユミルでもない。これはオレが選んだ“道”で。オレが進むことによって、はじめて切り開かれるものなんだ』
エレンはむしろジークの方が未だに父親に縛り付けられていると、キッパリと告げた。
父に反発して進んだ先に生まれたのが、「安楽死計画」であると。
『グリシャを否定しようとするあまり、逆にあんたは自分を縛り付け、未来のない生き方を選んでいる。その先にあるエルディア人の行く末はなんだ?少しずつ少しずつ、老いていくだけ。夢も希望もないじゃないか』
ジークは淡々と話す弟の言葉を黙って聞きながら、憐れんだ。
そして、弟を救い出す方法を考えた時耳に入った、とある言葉。
『兄さんは結局、アウラ・イェーガーを巻き添いにして死にたいんだろ』
瞬間ジークは声を荒げ、「違う!」と叫んでいた。
相手のウロコをわざと逆立てるように会話を進めていたエレンは、話の主導権を握る。
その時二人はどちらも己の道のために真剣で、本気だった。
『目でわかる。兄さんはオレを「可哀想でしょうがない」と思っている。だがオレからすればジーク、あんたの方が可哀想だよ。だってもうあんたは戻れないところにまで来ている。それについては、オレも同じだけどな』
『………わかった風な口を利くな』
『あんたは姉さんとあんまり似てないが、やっぱり兄妹なんだな。似てるよ』
──────死にたくて、仕方ない。
エルディア人は生まれてくるべきではなかったと、クサヴァーに話していた当時の少年。
裏を返せばそれはつまり、一種の自殺願望が透けて見える。
生まれてくるべきではなかった。
生まれない方がよかった。
自分の存在価値を見出すことができない。
家族を「楽園送り」にし、ずっと苦しみ続けていたジーク。来るところまできていた段階でもたらされたのが、クサヴァーの始祖の力にまつわる話。
それは記憶の改ざんどころか、エルディア人の肉体へ干渉することすらできる──というもの。
そこに一つの可能性を感じた時、ジークは自分自身に、“
その使命は恩人が肯定してくれたことを受けて、より強固なものとなる。
「安楽死計画」とはクサヴァーとの約束であり、父親のしがらみから解放されるためのものでもあり、
そしてジーク・イェーガーが死ぬための、最良の選択である。
簡単に死ぬことは許されない。己は“罪”を持っているのだから。
だからこそ世界を救い、同時にエルディア人も救う。その上で死を果たす。
でなければジークは生きることができなかった。
父を、母を、復権派の人間を、そして妹を殺したジーク・イェーガーが生きることはできなかった。
エレンは兄の根底にある感情をめざとく見抜いていた。
恋愛話になればポンコツだが、元々その他の感情の機微には聡い。
ジークは歯を噛みしめ、思わず手が出そうになりながら拳を握りしめる。
王家の血を引く巨人の力を持つ兄と、始祖を持つ弟。接触すればひとたび事は動く。
準備が整っていない状況で接触を起こせば、世界はおろかパラディ島全土が混乱状態に陥る。
『酷だな。殴りたくても殴れない』
『……俺の計画を否定して、お前は何が目的なんだよ』
『オレはただ、兄さんに違う提案をしたいだけだ』
世界を犠牲にして、自分たちが生きる。
「地ならし」を用いた究極の排他行為の過去最悪の進撃脳な弟の提案に、ジークは絶句した。
人類のほとんどを殺す。
倫理観がどうとかいうレベルの話ではなく、もはや自然の理を完全に冒涜するような行為である。
人間どころか多くの生き物が、自然が、その過程によって破壊される。
『お前は、何を……かんが、えて』
『オレたちがレベリオ区を襲撃しようとしなかろうと、いずれ世界の脅威はパラディ島の人間を殺し尽くした。将来はユミルの民自体が一人残らず駆逐されるかもしれない。なぜだ?なぜオレたちが死ななければならない?自由を奪われなければならない?オレには今の世界の在り方そのものが許せない。だからこそ壊すしかないんだ』
『バカ言うな。お前は正気じゃない。それもグリ──』
『すべて、オレの意志だって、言ってんだろ』
長い前髪の隙間からのぞく大きく見開かれた翡翠の瞳。
有無を言わさぬその視線に、グッと、ジークは押し黙った。この弟怖い。
『それに、あんたは妹を道連れにしたいと思いながら、それ以上に生きてほしいと願っている』
『…断言するような物言いだな』
『戦争帰りに姉さんを抱き上げて、振り回すくらいには好きだもんな』
『え?──────あ、えっ、見っ……!!!』
しどろもどろになった男は顔を真っ赤にして、どうにか弟へ弁明しようとする。しかし羞恥に染まった脳は、都合のいい答えをそう簡単に与えはしない。
『……お前に罪の意識はないのか?』
兄の問いに、エレンは口を一瞬つぐむ。
『オレには大切な人がいる。守りたいと思う奴らがいる。オレの分だけアイツらに長生きしてほしい。幸せになってほしい。誰にも侵害されることのない本当の自由を、掴んでほしい』
『………』
『それにアウラ・イェーガーにも────姉さんにも、幸せになってほしい』
『…アイツはテコでも動かず、俺より先に死ぬ気だぞ』
『全身全霊でどうにかしろよ、ジーク』
『え、えぇー………?』
脳の処理が追いつかない男は新鮮な空気を肺に取り入れて、吐き出す。
このままではエレンの返答もままならないと察した。ゆえに一つの提案を持ち出す。
『……先に、お前のお姉ちゃんに話をさせてくれ』
心の整理をつけてからでないと、ジークは本来の「安楽死計画」にも影響を受けると感じた。
一度妹と話し合う。そうして答えを導き出す。
エレンは兄の提案を呑み、異母兄弟の話し合いは幕を閉じた。
その一件から、ジーク・イェーガーは悩み続けている。
巨大樹での生活が続いた今、ついにエレンが動いた話を補給・連絡をつとめる兵士がリヴァイに話しているのを、耳にした。
ちょうど兵士長を「絶対アンタ、非モテ男ぢゃんww(ギャル感)」と称したばかりであり、目の前にいる男は気が立っている。
アッカーマンの恐怖に怯えるばかりの戦士長殿ではない。マーレに裏切りがバレた以上、「元」をつけるのが正しいが。
エレンが自分の計画を進めるためにもアウラを救い出し、イェーガー派閥の人間とともにジークの元へ送らすだろう。
さすがにかなり日が経った今、妹も目覚めているはずだ。
まずはここから逃げ出すのがファーストミッション。
すでにジークの脊髄液入りのワインを監視を行う30名あまりの兵士が飲んでいる。
意図的に兵士らにワインが渡るよう仕組んだのはイェレナだ。
巨人化実験の副産物であるアッカーマンには飲んだところで効かない。
しかし少なくとも、巨人にされた仲間に刃を向けることに抵抗を受けるはずだ。そんな中での巨人約30体VSリヴァイ。勝機はある。
向こうはイェーガー派にジークとエレンを引き合わせる交渉を持ち込むように見せかけ、その道中でエレンの始祖を他人へ奪わせる気だ。
だがそれに待ったをかけたのはリヴァイ。
兵士長はエレンではなく、ジークを巨人にしたイェーガー派の人間のエサにしようとしている。
妹の救出時間を含めて、まだ動くタイミングではない。
リヴァイがジークを捕食させる旨を伝えるように補給・連絡人員に頼んだ後、ジークへ視線を向ける。
「自分が食われるってのに随分余裕そうじゃねぇか、クソヒゲ」
「冗談言えよ、リヴァイ。怖くて今にもションベン漏らしそうさ」
パチパチと鳴る、焚き火の音。
高い木々に囲まれ、陽が出ていようと薄暗い森の中を淡く照らす光源。
己の真意を悟らせまいと、ジークは息を詰めながら文字の羅列を視線で愛撫する。
そんな男の様子を見ていたリヴァイは深緑のマントを翻し、離れていった。
⚪︎⚪︎⚪︎
シガンシナ区の本部を訪れた、フロックとその一部を除くイェーガー派。
そこを占拠した彼らはついで、シガンシナ区の防衛訓練に当たっていた訓練兵に同志を募った。エルディアの民を救う救世主の一員として。
その上で訓練兵らに、旧体制を象徴するキース・シャーディスを粛清させた。
しかし幾人もの訓練兵が拳を血で染める中、教官は煽るような態度を取りながらも、一度とて反撃を行わなかったのである。
その一方で、アウラ・イェーガーを加えた後、巨大樹へ向かったフロック含む数名のイェーガー派とハンジたち。
連れられたアウラは馬に乗れる状態ではないため、団長殿が前へ座らせるようにして乗せている。
最初は男の兵士が乗せる予定だった。
だがアウラに触れたのち生唾を飲みこんだ様子を見て、ハンジが回収した。
彼女がアウラを抱えたまま逃げる可能性もあったが、周囲は銃持ち。ハンジがアウラを連れて逃げたところですぐに撃たれる。ゆえに許されていた。
そして馬を走らせてから間もなくして、起こった異変。
ハンジの前でうなだれるように乗っていたアウラの体が突如、痙攣したのだ。
ぼんやりと虚空を眺めるのみだった女はうめき、痙攣の衝撃に耐えきれず落馬する。
持続的に体が震えたわけではない。一瞬、まるで雷に打たれたように体が跳ねた。
女が落馬した際に巻き込まれかけたハンジは、慌てて手綱を引き馬を止める。
異変に遅れて気づいたフロックたちも、その少し先で馬を制止させた。どうどう、となだめられた馬の足音が地面に響く。
落馬した女から一番距離の近いハンジはその時、仰向けの体勢で上半身を反らせ、口をうっすらと開けているアウラを見た。
見開かれたその瞳は、白銅色ではない。
不思議な色だ。銀とも、白とも、薄紫とも取れる色。
その中に散りばめられた無数の光。さながらそれは夜空に浮かぶ星のようである。
あ、と声を漏らした直後、アウラ・イェーガーの体が発光した。
「ッ………!?」
吹き荒れた強風が、ハンジのかぶったフードをはらう。
現れたのは、目測13m級の巨人。仰向けの体勢で転がる巨人に、ハンジは一瞬恋に落ちる。
腹は平たく、無数の長いあばらが皮膚を突きやぶって飛び出ている。
顔は眼球と鼻がなく、ヒトの頭蓋骨をそのまま一部露出させたような造りをしている。顔を覆うバサバサとした髪は金色だ。
人間が側にいるにも関わらず、その巨人は顔を向けるどころか、動く様子がない。
「何が、起き……て」
興奮に早鐘を打つ鼓動とは裏腹に、状況を理解できないハンジの額から汗が吹き出す。
その後ろからポツリと聞こえたのは、フロックの声。側にいた彼女にしか聞こえないほどの微かなものである。
「
ハンジはとっさにフロックへ視線を向ける。
何が、「まさか」なのだろうか。アウラ・イェーガーが巨人になったことに、思い当たる節でもあるというのか。
「君は何を知っているんだ、フロック。…いや、待て────
ふと彼女の脳内でよぎったのは、アウラが起きたばかりの一場面。
フロックは咳き込む女に、水筒の中身を飲ませていた。アレはしかし、透明だった。ただの水だったはずだ。
だが何も混入していなかった、とは限らない。
ワインの色という先入観があったため、怪しむこともなく流してしまった。
もし数滴その中身が水に混じっていたとしたら?色はほとんど変わらない。
そもそも脊髄液入りのワインは、レストランを訪れたときにでも手に入れることができた。
しかしもし本当に飲ませたのだとしたら、理由がわからない。
眉を寄せた団長に、フロックは瞳を細める。
「そう睨まないでくださいよ、ハンジ団長」
空にはだんだんと、雲が増え始めていた。
【問題】
Q.妹弟に精神的圧力をかけられる兄の気持ちを考えなさい。
A./(^o^)\