実力至上主義の学校にオリキャラを追加したらどうなるのか。 作:2100
原作の特典SSと大して変わらない文量になっていますので、気軽にお読みください。
高度育成高等学校オリジナルキャラクターデータベース & 1巻ショートストーリー
雨の日 (速野知幸)
これはある梅雨の日のこと。
その日の登校時間は常にも増して雨が強く、また湿度も高いという、さわやかな朝とは程遠いかなり不快感を感じる天気だった。
こんな日でもラジオ体操のオープニング曲は「希望の朝だ」なんて呑気なことを言いやがるわけだが。俺の耳に入ればその瞬間にクレームの電話を入れているところだ。俺にラジオ体操をする習慣がなくてよかったなN〇K。
しかしどんなに不快な天気であっても、気象警報が出ていない以上、学校はいつも通り生徒に登校を要求してくる。そしてサボればどんな処分が待っているか。おっかなくてそんなことができる生徒はここにはいない。須藤ですら5月以降は一応ちゃんと遅刻なく登校しているのだ。須藤ですらだぞ須藤ですら。それなのにサボりなど、俺のプライドが許しても堀北が許さない。許しちゃうのかよ俺のプライド。
雨の日と言うのは登校に要する時間がいつもより長く感じるが、これは恐らく気のせいではない。水たまりを踏まないように避けたりしているうちに、いつも歩いている最短ルートよりも長い距離を歩いてしまっている。
このように注意していても、結局濡れていない地面はないのだから靴の裏は水気を含み、運が悪ければその水気が靴下にまで侵入して「うぜえええ」となる。
そして濡れた靴で地面を歩くことにはスリップの危険も伴う。
「……っとぉ……」
校舎内に到着して屋根のあるエリアに入り、不要になった傘をたたもうとしたところで一瞬滑りかけてしまった。
なんとかバランスを保ったが、やっぱり危ないな……。
この学校の地面はよく研磨されていて上等だが、摩擦が少ない分滑りやすいのだ。副作用だな。
「大丈夫か」
そんな様子を見ていたのか、背中から声をかけられる。
「……綾小路か」
「こけないように気をつけろよ」
「ああ、肝に命じとく」
そのまま二人で教室に向かう。
校舎内に入ると、不快だった外の空気から一変。気温も湿度も適度に保たれており、当然ながら廊下が滑ることもない。
空調の効いた空間。一緒に廊下を歩くクラスメイト。無料の粗悪品とはいえ確保できるまともな食事。雨風をしのげる居住区で、無料で使える寮の部屋。
これだけ恵まれた環境にいながら、先ほどのようにグジグジ文句を言う方が罰当たりかもしれないな。
世の中には衣食住もまともに確保できる状況にない人間がいるのだ。
外国のスラム街の話じゃない。ここ日本にも、確かに存在している。
ランキング (藤野麗那)
これは、私たちがまだSシステムの正体を知らされていない4月中旬ごろのこと。
「おはよー麗那ちゃん」
登校して自分の席で一息ついていたところで、春香ちゃんから挨拶された。
「春香ちゃん、おはよ」
「ねね、結果見た?」
食い気味にそう質問される。
しかし何のことか分からない。
「え? 結果?」
「ほら、男子のランキングだよ。先週からやってたじゃん」
「あ……あーー、あれかあ……」
どうやら昨日で投票が締め切りだったらしく、教室内でもちらほらその話題で盛り上がっているのが分かる。もちろん男子には聞こえないように。
「その反応まだ見てないでしょ? 私もまだざっとしか見てないから一緒に見よ」
「う、うん……」
イケメンランキング、彼氏にしたいランキング……このあたりのプラスのランキングはまだいいとしても、根暗そうランキング、果てはど直球にブサイクランキングまである。
正直なところ、私も「根暗そう」とか「ブサイク」とか思う人はいる。だけどそれを投票という形でアウトプットするのはかなり気が引ける。
あと細かいところでいえば壁ドンされたいランキングに守ってあげたい男の子ランキングなんてものもあるけど、このあたりになってくると私の感性がついていかない。
なので私は投票そのものを行わなかった。とはいえ結果はちょっと気になるのでそれさえ見られればいいと思っていたけど、今日が発表日なのをすっかり忘れてしまっていた。
「イケメンランキング1位は里中くん、2位が平田くんかあ……順当って感じだね」
男子には聞こえないよう、小さな声で春香ちゃんが結果を呟く。
確かに1位から3位までの3人は入学当日からそこそこ話題になっていたため、意外性はない。
「5位の綾小路くん……って知ってる?」
見慣れない名前がランキングに出てきたようで、春香ちゃんがこちらを向いて尋ねてくる。
「名前は知ってるよ。だけど顔は分からないなあ……」
速野くんと仲が良いらしく、たまにやり取りの中で名前が出てくる。けど知っているのはそれだけだ。
「彼氏にしたいランキングは……1位は柴田くんだね」
それ以降も春香ちゃんが見せてくれる画面を流し見していく。
と、その中に速野くんの名前を見つけた。
載っているランキングは……根暗そうランキング。しかも2位という高順位。銀メダルだ。
正直納得感はある。
実際速野くんは決して明るい性格じゃない。ただ、2位の得票数をもらっているのは恐らく彼の容姿が比較的整っているからじゃないかな、と思う。だからこそ女子の目につきやすい。しかし最終的に整った顔立ちよりも性格が暗そうというイメージが優先されてしまって、このような結果になったのだと思う。
彼の場合は眼鏡をかけるだけでかなりイメージが変わるだろう。イケメンランキングにランクインするかは微妙なところだけど、ラインナップを見ている感じ壁ドンされたいランキングあたりには入ってきそうだ。
ただ、別にそこはどうだっていい。
これはなにも速野くんに限ったことではない。
このランキングに載っている人の中にも私の友だちが何人もいる。
イケメンでもブサイクでも根暗でも、友だちは友だちだ。それが変わることはない。
「これ、絶対に女子だけの秘密だからね?」
「うん、もちろん。絶対だよ」
言わないよ。ていうか言えないでしょ。
データベースの方は元々あらすじの方に載せさせていただいていましたが、このような形にしました。