実力至上主義の学校にオリキャラを追加したらどうなるのか。   作:2100

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第3巻
無人島へ


 希望。

 意味は、未来への期待。

 英語では「ホープ」。

 そして、イタリア語では「スペランツァ」。

 この「スペランツァ」こそ、俺たちが乗っているこの豪華客船につけられた名前だ。

 地上5階、地下2階。

 太平洋上に浮かぶ巨大な鉄の塊。

 その中には、俺たちが泊まる宿泊部屋のほか、一流のレストランやカフェテリアなどの飲食施設、演劇シアター、プレイルーム、屋外プール、さらに高級スパなんてものまで……多種多様なものが揃っている。

 あらゆる面が最高といえるこのバカンス。

 期間は2週間と設定されている。

 最初の1週間は、現在向かっている無人島のペンションで過ごす。残りの1週間はこの豪華客船でクルージング、という予定だ。

 そして期間中は、全ての施設をプライベートポイントの消費なしに使用できる。

 慢性的なポイント不足にあえぐDクラスにとっては、文字通り渡りに船というか、とにかく最高の待遇だった。

 もちろん、ここに至るまでに壁がなかったわけではない。

 このバカンスに参加するための条件として、1学期中間、期末テストで一人の退学者も出さないこと、というものがあった。

 他のクラスはともかく、Dクラスはかなり危ぶまれたが……須藤、それに池、山内などの不安要素を含め、全員が条件をクリア。晴れてこのバカンスへの参加を許されたというわけだ。

 それはもう大喜びだろう。

 天気も、さあ楽しめ、と言わんばかりの快晴。

 今の時間なら、屋上のスペースが人気のスポットかな。

 まあどこにいようと、多くの生徒はテンション高くはしゃいでいることだろう。

 しかし、その例に漏れる生徒も当然いる。

 その一人が俺だ。

 俺は出港してから、ほとんどの時間を部屋で過ごしている。

 この船内を一緒に満喫するような友達がいない、なんてことは……まあ、あるにはあるが……それ以上に、俺には船酔いという天敵がいるのだ。

 船以外でも、乗用車やバス、飛行機など、俺は基本的に乗り物には弱い。

 乗船前に服用した酔い止めの薬と、この船の乗り心地がかなりよく、ほとんど揺れないおかげで今のところは大丈夫だが……油断は禁物。

 ちょろちょろ動き回ってもいいことはないと判断した。

 しかし、それもあくまで「基本的には」の話。

 何かやりたいことがあったり、用事があれば当然出歩く。

 そして、今はその用事だ。

 俺はある人物から呼び出しを受け、その人物の元へ向かっている。

 ドアを開けて外に出ると、その人物はすでにそこに立っていた。

 

「おお……もう来てたか佐倉」

 

「う、うん……。ごめんね、わざわざ」

 

 俺を呼び出したのは、クラスメイトの佐倉愛理だった。

 

「それで、どうしたんだ急に。俺に用って」

 

 前置きなしにズバリ問うた。

 

「え、えと、それは、その……」

 

 しかし、佐倉はもじもじとして、口を閉ざしてしまう。

 心なしか顔も赤い。

 俺は手すりに背中を預け、言葉の続きを待った。

 すると、佐倉は意を決したように口を開く。

 

「その、えと、お、教えてほしいの!」

 

「……なにを?」

 

「綾小路くんの、こと!」

 

「……」

 

 綾小路について……。

 

「……知ってどうすんだ?」

 

「ふぇっ! い、いや、それは……」

 

 ……ちょっと意地の悪い質問だったな。

 早い話が、佐倉は綾小路にほの字なんだろう。

 

「悪い悪い、深くは聞かない。ただ、綾小路についてって言われてもな……」

 

「は、速野くんなら、綾小路くんと仲が良いから、何か知ってるかな、って思って……」

 

「いや、まあ、比較的親交が深いのは事実だが……」

 

 ただなあ……佐倉が知りたがってるような、好き嫌いとか、趣味とか、そんな感じのことはほとんど……。

 いや、でも確か……。

 

「……本好き、かもな、あいつは。休み時間とかよく本読んでるし、図書館にも結構行くみたいだし」

 

「そ、そうなんだ……本、かあ……」

 

 佐倉の興味の対象からは外れてるかもな、読書は。

 

「……まあ、勇気出して誘ってみるのもありだと思うぞ。あいつも俺と似て、旅行中は基本暇してるだろうし。考えようによっちゃ、このバカンスは大チャンスなんじゃないか」

 

「そ、そう、だね。大チャンス……え、だ、大チャンス!?」

 

 その単語に驚きを見せる佐倉。

 ああ、綾小路への好意、俺にバレてないと思ってたのか。

 

「ああ……はは」

 

「っぅ~~~~~!!!」

 

 俺に悟られたのがよほど恥ずかしかったらしく、声にならない声を上げて、何やらジタバタしている。

 

「お、おい、佐倉……?」

 

「は、速野くんっ、あの、こ、このことは、ひ、秘密にっ……!」

 

「お、おう……おーけー」

 

 身を乗り出して言ってくる。気迫たっぷりなのは分かるが、色々近い……顔とか……あと胸とか……。

 と、そんなときだった。

 船内全体にチャイムが鳴り響く。

 時報でもなさそうだし、何かのアナウンスの合図か。

 

『生徒の皆様にお知らせします。間もなく、当校所有の無人島が見えてまいります。お時間がありましたら、ぜひデッキにお集まりください。非常に有意義な景色を、ご覧になれることでしょう』

 

 と、そんな内容だった。

 綺麗な、でもなく、素晴らしい、でもなく、有意義な、景色か。

 

「……行くか? デッキ」

 

 足を運ぶことに決めた俺は、佐倉にも呼び掛ける。

 

「う、ううん、私は……その、すごく人が多そうだから……」

 

「……そうか」

 

 今のアナウンスを聞けば、興味本位の生徒が大勢デッキにやってくる。人込みの苦手な佐倉は行きたがらないか。

 

「じゃあ……俺はいくから」

 

「う、うん。ありがとう、本当に……」

 

「いやいい。暇だったし。まあ、他にもなにか相談事とかあれば連絡してくれ」

 

「ありがとう……」

 

 それには軽く左手を上げて応え、俺はその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 1

 

 この場所からデッキまでなら、一度船内に入って、その中の階段から降りた方が速く着く。

 船内を歩き、廊下の曲がり角に差し掛かったとき。

 コツン、と誰かにぶつかってしまった。

 

「おっと」

 

「あ、ごめんなさ……」

 

 ぶつかった相手は、クラスメイトの堀北鈴音。

 その堀北は、相手が俺であると認識するなり、謝罪の言葉を言い終える前にスタスタ歩いて行ってしまう。

 

「おいちょっと、せめて言い終わってから行けよ……」

 

「……なぜ私が一方的に謝らなければならないのかしら?」

 

 

「いや、別に一方的に謝れとは……悪い、不注意だった」

 機嫌を損ねないよう素直にそう述べるが、堀北はそっぽを向き、ふたたび歩き出す。

おい。

 

「こらお前、自分が俺に一方的に謝らせてるじゃねえか」

 

「はあ……何? 謝罪の言葉が欲しいのかしら。なら、ごめんなさい。これでいいかしら」

 

「この……」

 

 ……須藤の事件以来……というか、あの日の電話以来、こんな調子なんだよなあ。

 機嫌を損ねないように、なんてこちらが気にするまでもなく、既に機嫌は思いっきり損なわれていたらしい。

 まあ、俺が無理やり通話切ったのが原因の一つなんだろうが……。

 

「……ん?」

 

 俺は、こちらに鋭い視線を向ける堀北にいくつかの違和感を見つけた。

 船内は適温だが、堀北はジャージの一番上までチャックを完全に上げ切っている。暑くないのか?

 まあそれは個人差の問題だとしても、加えて心なしか少し猫背の気もする。普段姿勢の良い堀北だからこそ気になる。

 それから、手に持ってる白いビニール袋は……?

 

「……お前、デッキに行かないのか?」

 

「デッキ? 行かないわ。私は水を買いに出てきただけよ」

 

「ん、そうか……」

 

 堀北なら、あのアナウンスに違和感を持ってると思ったんだが……そうじゃないのか。

 まあいいか、それならそれで。

 以降は言葉を交わすこともなく別れた。

 階段を降り、デッキへ出る扉を開ける。

 予想してた通り、かなり人が多い。

 開けた場所のため、最初からそこそこの人気はあったが、それにしても多すぎる。やはり、さっきの放送で人が集まったか。

 俺はその中にDクラスのメンバーも見つけ、そこに近づく。

 

「あ、あのよ堀北。ちょっと、いいか?」

 

「オレは堀北じゃない」

 

 そんな、須藤と綾小路の意味不明な会話が聞こえてきた。

 そら、綾小路は堀北じゃないんだから、こんな反応されて当然だろうよ。須藤のやつついにボケたか?

 

「何をやってんだお前ら……」

 

 呆れた顔で俺が聞くと、それに須藤が反応した。

 

「お、おお、速野! じゃあお前でもいいや。今、堀北のことを名前で呼ぼうとしてるんだけどよ」

 

「今話しかけてたの綾小路だっただろ」

 

「だからその練習だ練習! さっきは綾小路を堀北に見立ててたんだよ。いいから付き合えよ!」

 

 ああ、なんだそういう話か……そういや、須藤は堀北に惚れてるんだったな。

 

「近づかないで。気持ち悪い」

 

 俺は少し顔を赤らめてそう言う須藤に、努めて突き放した言い方をした。

 

「な、なんだよそれ! 一緒にバスケした仲じゃねえかクソが!」

 

 須藤は俺の反応に少し切れたようだ。いや別にバスケやったのは関係ないんじゃ……

 だが、こいつは半分勘違いをしている。

 

「いや……お前がさっきみたいなこと言った時の堀北の反応、だいたいこんなもんだと思うが……」

 

 須藤は少し間の抜けたような顔をした後、ああ、と俺の言ったことの意味を理解したようだ。

 そう、俺は須藤の言う通り、しっかりと協力してやったのである。

 

「そういうことか……お前、やっぱいいやつだな」

 

「別にいい」

 

 演技要らなかったし。堀北が言いそうなことと、俺の本音同じだったからな。

 これ以上ここにいるとまた面倒なことになりそうだったので、俺はその場を離れ、デッキの側面に移動した。

 すると、柵から外を見ている1人の女子生徒の姿が目に入った。

 

「あ、速野くんだ」

 

 藤野麗那。

 この学年の最優秀クラスであるAクラスに所属しており、且つ俺の友人だ。

 船を叩く潮風が、藤野のショートボブカットの銀髪をなびかせる。

 俺は軽く手を上げながら、その場所に向かった。

 

「なんか久しぶりだね。最近買い物一緒に行ってなかったからかな?」

 

「まあ、多分そんな感じだろうな」

 

 俺と藤野は須藤の事件の後、一度も連絡を取っていなかった。

 何故かは分からないが、お互いに連絡するのが気まずくなってしまったのだ。

 そのため、約2週間ほど連絡を取らない状況が続いて現在に至るが……なんか、あっさりと話せたな。

 

「あ、島ってあれのことかな?」

 

 藤野が指差す方向を見ると、たしかに島の輪郭が確認できた。

 夏休みのバカンスの日程の一つ、無人島でのペンション宿泊は、この島で行われるのだろう。

 船はどんどん島に近付いていき、島に生えている木の1本1本が肉眼で確認できるまでになる。

 しかし、このまま船着き場に船を停めるのかと思いきや、そこをスルーし、何故か旋回を始めた。

 しかも割と速度が速い。

 

「結構綺麗だねえ……船が着いたら、ここのビーチで自由に泳げるんだよね?」

 

「ん、まあ、自由行動って書いてあったし、それもいいんじゃないか」

 

 答えながら、俺は思わず藤野の水着姿を想像してしまう。

 うーむ……。

 と、いかんいかん。いまは島を見なければ……。

 結局、船は島を一周した後、船着き場で完全に停止した。

 そこで、藤野が口を開く。

 

「……あのね、はや」

 

 しかしそれを遮るようにして、船内にアナウンスが流れる。

 

『これより、当校が所有する無人島に上陸いたします。生徒は全員ジャージに着替え、所定の荷物と携帯電話を確認した後、それらを忘れることのないように持参し、30分後にクラスごとにデッキに集まってください。それ以外の一切の私物の持ち込みを禁止します。また、暫くお手洗いに行けない可能性がございますので、忘れずに済ませてください』

 

 そんな注意事項だった。

 

「……行くか」

 

「そう、だね」

 

「……なあ、お前さっき何か言いかけなかったか?」

 

「え?……あ、ううん、何でもない。気にしないで」

 

「……そうか、ならいいんだが」

 

「じゃあ、また後でね」

 

「わかった」

 

 まあ多少気にはなるが、今はそれよりも、指示に従って下船の準備をしないとな。

 バカンスとはいえ、遅れるとまずい。

 

 

 

 

 

 2

 

『敷地内への携帯の持ち込みは禁止だ。各担任にしっかりと預けるように』

 

 拡声器から聞こえる声に従い、生徒がぞろぞろと船から出ていく。

 太陽が容赦なくジリジリと照りつける中、下船には意外と時間がかかっていた。

生徒からは暑い暑いと不満が噴出している。

 俺も暑いので、ジャージの上を脱ぎ、手に持つのも面倒だったので袖を腰で結んでいる。

 こんなに時間を取っている原因は、タラップの両脇に立っている教師だ。

 降りる生徒一人一人に、厳しい荷物検査を行っている。

 普通登校日は私物の持ち込みは自由なのに、何故バカンスであるはずのこの日だけはこんなにも厳しいのか。ふつう逆じゃないか。

 それ以外にも、気になることはいくつもある。

 客船のヘリポートに停まっているヘリは、一体何のためにあるのか。

 それに、俺たちが事前に聞いてた話じゃ、無人島に建てられているペンションで1週間を過ごすことになっているはず。しかし先ほど高速旋回した際に、宿泊施設らしき人口建造物は一切確認できなかった。

 浮かび上がる疑問。

 あの時の生徒会長との会話を思い出す。

 これは、まさか……。

 しかしほとんどの生徒たちは、まだこれが単なるバカンスであると信じて疑っていないらしい。暑い暑いと文句は言いながらも、その表情は明るいものだ。

 長い時間をかけて下船を終えた俺たちに、茶柱先生の声が響く。

 

「これよりDクラスの点呼を行う。名前を呼ばれたものはしっかりと返事をするように」

 

 素早く40人分の点呼を終え、ピシッと整列する各クラス。

 そんな中、1人の筋肉質の男が、用意されていた壇上に上がった。

 以前藤野から話を聞いていた、Aクラスの担任の真嶋先生だ。

 堅物で真面目。一見体育系だが、頭脳は明晰で、複数の教科を教えることもできるらしい。

 

「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかし、1人の生徒が病欠でこの行事に参加できなかったことは、非常に残念でならない」

 

 それは確かに残念だ。

 まあ、本当にこれが純粋なバカンスであったなら、の話だが。

 そのうち、多くの生徒たちも次第に疑問を持ち始める。

 特設テントに、複数台のパソコン。そして教師の険しい表情。

 どれもこれも、バカンスにしては不自然だ。

 そして、生徒が疑問を持つようになるのを待っていたかのようなタイミングで、一際大きい声が拡声器から鳴り響いた。

 

「ではこれより、本年度最初の特別試験を開始する」

 

 やはり、そうだったか。

 特別試験。

 堀北会長によれば、学力や身体能力だけでなく、様々な面の実力が問われる特殊な試験。

 当然ながら、この単語に聞き覚えのある人間は俺だけだったようで、他の生徒は「特別試験」というワードそのものに疑問符を浮かべていた。

 真嶋先生は説明を続ける。

 

「期間はこれより一週間。8月7日の正午に終了となる。試験の内容は、これから1週間、この無人島でクラスメイト全員と集団生活することだ。また、これは実在する企業でも実施されている現実的、且つ実践的なものであることをはじめに告げておく」

 

「無人島で生活って……この島で、寝泊まりするってことですか?」

 

「その通りだ。その間君たちは、寝泊まりする場所はもちろん、食料や飲料水に至るまで、全て自分たちで確保することが求められる。試験中、許可のない乗船は許されない。試験開始時点で、各クラスにテント2つ、懐中電灯2つ、マッチを一箱支給する。また、歯ブラシに関しては各生徒に1セットずつ、日焼け止め、女子生徒のみ生理用品は無制限で支給する。各クラスの担任に願い出るように。以上だ」

 

「は、はあ!? マジの無人島サバイバルかよ!? そんなの聞いたことないっすよ! 漫画の世界じゃないんですから! 第一、8人用テント2つで全員寝られるわけないじゃないっすか! てか、飯も自給自足とかどういうことっすか!?」

 

 池がその場にいる全員に聞こえるほど大きな声で喚く。

 しかし、真嶋先生はその声に呆れたように返答した。

 

「君は今聞いたことがないと言ったが、それは君が歩んできた人生が浅はかなものであっただけにすぎない。はじめに説明しただろう。これは実際に、企業研修でも取り行われているものだと」

 

「そ、そんなの特別じゃないっすか!」

 

「これ以上みっともないマネはするな、池。真嶋先生が言ったのはほんの一部。これは、誰もが知る有名企業でも取り入れられている内容だ。それを、まだただの高校生に過ぎないお前たちに、否定する権利があると思ってるのか?」

 

 そう池に冷たく言い放ったのは茶柱先生だ。

 確かに、世の中には様々な企業が存在する。成人した社会人でもない俺らには頭ごなしに否定する権利はなかった。

 しかし、それでもいくつか疑問が残る。

 

「しかし先生、今は夏休みですし、この行事の名目は旅行のはずです。企業研修であれば、こんな騙し討ちのような真似はしないと思いますが」

 

 ある生徒が疑問をぶつける。それも俺が気になった部分の1つだ。

 もう1つ気になったのは、中途半端に物資が支給されている点だ。

 食料は全員自給自足、日焼け止めや生理用品は無制限だからいいとしても、池の言った通り、テントが2つでは全員が寝られるようなスペースがない。

 もし企業研修なら、こんな不平等を生み出すだろうか。

 真嶋先生は、質問した生徒に少し感心したように答えた。

 

「なるほど、確かにそういう点では不満が出るのも納得できる。だが試験と言っても、これは苦痛を強いるものではない。この1週間、君たちは何をしようとも自由だ。海で泳いだり、バーベキューをしたり。キャンプファイヤーで、友と語り合うのもいいだろう。この試験のテーマは『自由』だ」

 

「んっ? え、試験、なのに自由って……? ちょっと頭こんがらがってきた……」

 

 そうなるのも無理はない。他の生徒も困惑している。

 そもそも、バーベキューやらキャンプファイヤーやら、支給された物資だけでは不可能だ。

 ということは、それらを入手できる方法が存在するのか。

 そんな俺の思考に答えるように、真嶋先生が言葉を続ける。

 

「この無人島における特別試験では、まず、試験専用のクラスポイント、Sポイントを全クラスに300ポイント支給する。これを上手く使うことで、この試験を乗り切ることが可能だ。今から配布するマニュアルには、ポイントで購入できるすべてのものが載っている。食料や水、無数の遊び道具なども取り揃えている」

 

「つまり……その300ポイントで、欲しいものがなんでも買えるってことですか?」

 

「そうだ」

 

「で、でも試験っていうくらいだから、何か難しいのがあるんじゃ……」

 

「いや。2学期以降への悪影響は何もない。それは保障しよう」

 

 また、この学校は変な言い方をしてくる。

 真嶋先生は「悪影響」という言葉を使った。

 つまり、影響がないとは限らない。

 俺たちにはまだ説明されていない、2学期以降に影響が出る何らかのルールがあるんだろう。

 俺のその疑問を含め、次の真嶋先生の言葉ですべてが明らかになった。

 

「この特別試験終了時には、各クラスに残ったSポイントをそのままクラスポイントに加算し、夏休み明け以降に反映する」

 

 生徒全員に衝撃が走る。

 やはりきた。2学期以降への「影響」。

 つまり、これはプラスを積み重ねることを目的とした試験。

 会長からはプライベートポイントが増えるとも聞いていたが、今のところそんな話は出てない。今回関わってくるのはクラスポイントだけか……?

 

「今からマニュアルを各クラスに1冊ずつ配布する。紛失の際は再発行も可能だが、ポイントを消費するので確実に保管しておくように。また、試験中に体調不良などでリタイアした生徒がいるクラスは30ポイントのペナルティを受ける。今回の旅行の欠席者はAクラスだ。よって、Aクラスは270ポイントからのスタートとなる」

 

 さすがに優秀な生徒が揃っているだけあって、Aクラスに驚きはなかった。しかし、他クラスにとっては無条件でAクラスとの差が30ポイント縮まった瞬間でもある。「おお!」と思った生徒も少なくないだろう。

 

「全体での説明は以上だ。以降は各クラスに分かれて、それぞれ担任の教師からさらなる説明がある。では、諸君らの健闘を祈る。解散!」

 

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