実力至上主義の学校にオリキャラを追加したらどうなるのか。   作:2100

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今回もかなり短めです……。


無人島サバイバル 5日目

「ちょっと男子、集まってくれる?」

 

 試験5日目の早朝。

 やけに怒気を含んだ女子の声が耳に飛び込んできた。

 恐らく篠原のものと思われる声に反応した男子は1割ほど。他の男子は深い眠りについている様子だった。

 しかし女子の声はそれに続き、さっさと出てこいだの何だの、穏やかではない口調で男子テントに向かって叫んでいる。

 その騒々しさに耐えかねた俺は、テントの入り口のジッパーを開けて外の様子を見る。

 

 同時に、平田がテントの外に出て女子の話を聞きに行った。

 

「どうしたの?」

 

「あ、平田くん……悪いんだけど、男子全員起こしてきてもらえる?」

 

 平田に対しては口調が和らぐ篠原。しかしテント前の女子生徒は全員、こちらを強く睨んでいた。やはりかなり怒っている様子だ。

 ただ事ではない空気を感じ取った平田は、篠原の頼みに従って男子に呼びかける。

 

「ごめん、みんなちょっと起きてくれるかな」

 

 女子生徒の声で目が覚めていた者は、その呼びかけで体を起こし、立ち上がる。

 それでもまだ起きない生徒に関しては、体をゆすって無理やり起こした。

 もう一つの男子テントの方でも同様にし、男子全員が目を覚ましてテントの外に出た。

 

「それで、こんな早朝にどうしたんだい?」

 

「ごめんね、平田くんには関係ない話なんだけど……今朝、軽井沢さんの下着がなくなってたの。これ、どういうことか分かる?」

 

「え、下着が……?」

 

 平田も俺も、恐らく男子全員が衝撃を受ける。

 

「今、泣いてる軽井沢さんをテントで慰めてる……」

 

 一瞬視線を女子用テントに向けた篠原だが、すぐに男子たちに戻し、強く睨みつける。

 

「え、なに、俺たち疑われてんの!?」

 

「当たり前でしょ。どうせ、男子の誰かが夜中に荷物漁って盗んだんでしょ? 荷物はテントの外にまとめてあるから、誰にでもできたわけだしね!」

 

「いやいやいや、え!?」

 

 池は大慌てだ。

 確かに篠原の言う通り、テントのスペースを広く使うために荷物はテントの外に置いている。

 

「そういや池、お前遅くにトイレに行ったよな、結構長かったし……」

 

「いやいや、あれは暗かったから苦労しただけだって!」

 

「ほんとか?」

 

「マジだよ!」

 

 男子の中でもなすりつけ合いが始まる。

 

「とにかく、これ大問題だと思うんだけど? 下着泥棒がいるなかで一緒に生活とかありえないし!」

 

「だから平田くん……犯人、見つけてもらえないかな?」

 

 懇願するような女子の声。

 平田は困り顔だ。

 

「で、でも……男子が犯人だって証拠はないんじゃないかな。紛失しただけっていう可能性もあると思うし」

 

「そうだ! 俺らは犯人じゃねえ!」

 

 必死で無実を主張する男子一同。

 

「平田くんが犯人じゃないのは分かってるけどさ……取り敢えず、男子全員の荷物検査させて」

 

「は? 意味わかんねえし。断れよ平田」

 

 女子は一貫して男子が犯人であると疑っている。

 もちろんそれは自然なことだが、男子からすれば理不尽に疑いをかけられているに過ぎない。反抗する声が生まれるのも、また自然なことだ。

 

「取り敢えず、男子で集まって話してみるよ」

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 俺は、この場で自分の意見を言うことにした。

 もちろん、こんな目立つ行為は苦手だしできればやりたくないが、この場ではそうした方がいいと判断した。

 

「何よ」

 

「荷物検査をするのには反対しない。でも、もし平田のバッグから出てきたらどうする?」

 

「は? 馬鹿じゃないの? そんなことあるわけないでしょ」

 

「決めつけるなよ。俺だって平田が犯人だなんて思ってない。仮定の話だ。いいから少し考えてみてくれ」

 

「そんなの、盗んだ誰かが平田くんのカバンに入れたに決まってるでしょ。……」

 

 自分のセリフに、はっとしたような表情になる篠原。

 

「そう、そういう可能性もあるんだよ。下着が誰かのカバンから出てきたとしても、そのカバンの持ち主と犯人が一致してるとは限らない。だから荷物検査をして誰かの鞄から出てきたとしても、犯人の特定はできない。それを理解してくれ」

 

「何よそれ。あんたが自分で盗んで、自分のバッグに入れたのを誤魔化すために言ってるだけなんじゃないの?」

 

「勿論、その可能性もあり得る。それも含めて、全員が平等に犯人の可能性があるってことだ」

 

 俺の主張が理にかなったものであることを証明したのは篠原自身だ。それを否定すれば自己矛盾に陥る。そのため、篠原は俺に何も言い返せなくなってしまう。

 

「……とにかく、荷物検査はさせてもらうから」

 

「ああ。わかった」

 

 

 

 

 

 1

 

 荷物検査を終え、平田が俺に駆け寄ってきた。

 

「さっきはありがとう、速野くん。女子のみんなも、あれで少し冷静になれたと思う」

 

「あ、ああ……もし自分のカバンから出てきて、犯人にされたらたまったもんじゃないからな……」

 

 そうなった場合、当然俺は断固として無罪を主張するが、そんな状況になれば女子たちが聞く耳を持つとは思えない。むしろ主張すればするほど、犯人のレッテルを貼られてしまうだろう。あーもう想像するだけでも恐ろしい。こうやって冤罪が生み出されていくんだな……。

 

「それでも、助かった。……実は、綾小路くんが軽井沢さんの下着を持っていたんだ」

 

「……は?」

 

 突然、衝撃の事実を告げられる。

 

「でも綾小路くんが言うには、池くんの鞄から下着が見つかって、それを押し付けれてしまったらしい」

 

「そうなのか……」

 

 言われて、少し前の記憶を思い出す。

 なるほど、荷物検査の時にやけに池の周辺が騒がしかったのはそのせいか。

 でも……そうか。池のカバンから出てきたか。 

 

「下着はもう返したのか?」

 

「うん。僕から返しておいたよ。一応彼氏だからね。これは僕の役目だ」

 

「はは……まあそうだな。池のカバンから出てきたことは話したのか?」

 

「それは話してないよ。誰のカバンから出てきても犯人の特定ができない以上、話しても仕方がないと言ったら、何とか納得してくれた」

 

「……そうか」

 

「正直、君のアシストがなければ、僕は下着が見つかったことすらも隠していたと思う。だから君には感謝しているんだ。ありがとう」

 

「いや……さっきも言ったけど、俺は自分の身を守っただけだから……」

 

「それでもだよ。ただ、女子のみんなはまだ男子を強く疑ってる。大きな溝ができることは避けられないね……」

 

 悲しそうにつぶやく平田。

 クラスの平和を誰よりも願う平田だからこそ、こんなのは最も望まない展開だろう。

 

「……まあ、でもそれはもう仕方がないな」

 

 おそらく、それが犯人の狙いだったんだろうし。

 下着泥棒をやらかす人間の心情なんてわからないが、もしこの環境下で誰かのものを盗んだとして、俺ならこのうんざりするくらい広い森のどこかに隠す。カバンなど、自分の身の回りの物なんて真っ先に調べられるのがわかりきっているからだ。事実俺たちは荷物検査と身体検査を受けた。

 下着を抜き取ったことそのものを露呈させたくなければ、自分やほかの人間のカバンに隠すなんてことはせず、軽井沢のカバンに元通りに戻せばいい。

 つまりどんな場所であろうと、男子から下着が見つかった時点で、犯人の目的は下着そのものではなく、このDクラス内に亀裂を生むことだと推測が立つ。

 そしてそんな目的を持ちうる人物はただ一人。

 状況証拠のみで確証はないが……高い確率で、下着泥棒は伊吹だ。

 もちろん、犯人が男子の中にいる確率も、完全に捨てきることはできないけどな。

 

 

 

 

 

 2

 

 男子の中に犯人がいると確信する女子たちの要求によって、男女の生活区画を分割。また平田と綾小路、そして俺が女子用テントの場所を男子テントから遠ざけた。

 当初の予定では平田だけが協力する予定だったのだが、堀北の謎の推薦によって俺と綾小路も手伝わされることとなった。

 なんでも、平田一人では信用できないとかなんとか。

その時篠原や軽井沢からはむっつりスケベだの人畜無害だの言われたが、気にしていない。……気にしてないんだ。気にするな俺。クソが。

 作業を終えて一息ついたところで、日陰に突っ立っていた堀北を見かける。

 近くに伊吹がいることを確認しつつ、声をかける。

 

「何やってるんだこんなところで」

 

「見ての通りよ。何もしていないわ」

 

「……そうか。ならお前、テントで横になっといた方がいいんじゃないか」

 

 そんな俺のセリフに、ぎょっとしたような表情の堀北。

 

「……何を言ってるの」

 

「お前、船にいたときからずっと体調崩してるだろ」

 

 今まで黙っていたが、このタイミングで本人に直接告げた。

 船の中で堀北に遭遇した時に感じた違和感の原因はすべて、体調不良だ。

 白いビニール袋はおそらく、船内の医務室でもらってきた薬か何かだろう。

 そしてこの無人島試験中も、堀北はあまりにも行動をしていなさすぎる。今のように何もせず、ただ突っ立っていたり座り込んでいたりがほとんどだ。

 

「……気づいていたのね」

 

「俺で気づけるんだから、ほかにも気づいてる人いると思うけどな」

 

「どうかしらね。私を気にかけている人なんていないんじゃない?」

 

 まあな。いないとは言わないまでも少ないだろう。ただそれはこいつが入学から今までどんな学校生活を送ってきたか、その帰結だ。特に堀北の場合は望んで作り出した結果、という言い方もできる。

 

「……なんにせよ、横になっとけ。茶柱先生も言ってただろ。この腕時計は体温や脈拍が測れて、学校側はそれを管理してる。このまま悪化したら、強制的にリタイアなんてこともあり得るぞ。そうなればマイナス30ポイント。でも、寝るだけなら昼寝したって言い訳もたつ」

 

 我ながら思うが、こんなのリーダー情報をAクラスに流した裏切り者の言うことじゃないな……。

 

「……そうね、分かったわ」

 

 俺の主張にも一理あると考えたらしく、素直に従うようだ。

 病人への一応の配慮として、いけるところまで付き添う。

 男女の生活区画の境目に差し掛かったところで、急に堀北が立ち止まった。

 

「……どうした?」

 

「……あなたにも報告しておくわ」

 

「は? 何を」

 

 報告されるようなことがある覚えはないが……。

 

「あなた、テントを持ち上げた時に何か感じなかった?」

 

「テント? ああさっきの作業中のことか……さあ、3人で運んでもやっぱり重いなーとしか思ってなかったから……」

 

「テントを運ぶ直前、女子がテントの入り口を閉め切ったのは分かったわよね?」

 

「あ、ああ、なんか慌ただしかったな……」

 

 閉めるから近づかないで、中見ないで、など色々と強く言われた。

俺はただ単にこの件の反動で男子の視線に過敏になっているだけだと感じていたが、堀北の口ぶりからしてそれだけじゃなさそうだ。

 

「あの中には、軽井沢さんたちが勝手に購入したものがあるのよ。勿論、女子用テント両方にね」

 

「は? マジで?」

 

「ええ、私が見た時には全てが揃った後だった。綾小路くんにもこのことは言ったけれど、あなたたちの反応からして平田くんは男子には情報を共有していないようね。だから彼は信用ならないのよ」

 

 予定外の出費だ。堀北の話によれば、テント2つ分で8ポイント。もし平田が床の件を解決していなければ、恐らくフロアマットまで購入されていただろうとのこと。

 確かにこれは大問題だな。クラスのコンセンサスも取らずにポイントを使い込むとは。

 ただ平田も悪意があって隠したわけではないだろう。事実、軽井沢の下着が池のカバンから出てきたことも女子には話していない。混乱を避けるためのあえての黙秘。だが、堀北はそれが気にくわないらしい。

 

「物資の購入って、誰にでも申請できるんだな」

 

 確かに、マニュアルにはそこらへんのルールの記述は特になかったが……。

 

「ええ。大きな欠陥だわ」

 

 堀北はそう言うが、学校側としてはそれも試験の一環だと捉えているんじゃないだろうか。

 全員がクラスの一員としての自覚を持っていれば、こんな勝手な行動はしない。

 Dクラスの管理能力がなっていないことの証左だな。

 

「正直ちょっとむかつく気持ちがないわけじゃないが……もう使ったポイントは戻ってこないからな。取り敢えずお前は今は休め」

 

「分かってるわ。リタイアするわけには行かないもの」

 

 そう言い残し、堀北は女子用テントに戻っていった。

 リタイアしない決心は堅そうだな。安心した。

 軽井沢たちが勝手に購入した物資も、堀北の体調面ではプラスに働くだろう。

 

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