実力至上主義の学校にオリキャラを追加したらどうなるのか。   作:2100

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結末

「これがラストのディスカッションか」

 

 部屋にいる三宅に声をかける。

 

「ああ。ただ、やってもやらなくても変わんねえだろう、ってのが正直な感想だ。Aクラスにあんなことされちゃ、まともに話し合いもできやしない」

 

「はは、まあな……」

 

 やっぱりほとんどの生徒は、Aクラスが断固として話し合いに参加しないことに対して何も手出しできず、指をくわえているしかない状況だ。

 

「……でも行くしかないだろ。行かなかったらペナルティなんだから」

 

「分かってるよ。行ってくる」

 

「ああ」

 

 そう言って三宅は部屋を出ていき、ドアが閉まる。

 

「……さて」

 

 俺はここから約1時間、ある人物からの連絡を待つことになる。

 部屋に流れるのは沈黙のみ。

 常に端末は肌身離さず……時々端末を弄り、時々持参した参考書を読み、時々部屋を出てあてもなくぶらぶらし……そんな感じで、時間をつぶしていく。

 そうして三宅が出て行ってから約1時間後。

 一件のメールを、幸村のアドレスから受け取った。

 

「……そういうことになったか」

 

 もちろん、想定していなかったわけじゃないが。

 ただ俺も……そして綾小路も、発生する確率としては低いとみていたからな。

 そのさらに後、俺は1通のメールを受け取る。

 

『グループLの試験が終了いたしました。グループLの方は以降の試験に参加する必要はありません。他のグループの妨げにならないよう、注意して行動してください』

 

 グループLの誰かが裏切ったというメールだ。

 こうなれば、俺にはもうやることは残っていない。

 そう考えて、ベッドに倒れこんだ瞬間。

 俺の携帯に、立て続けにメールが4件届いた。

 それは、試験が終了した旨を伝える学校側からのメール。

 

「……っと、こっちも少し意外な展開になったか」

 

 その呟きが誰かに聞かれることはない。

 俺はそのまま、少しの間仮眠をとった。

 

 

 

 

 

 1

 

 夜10時50分ちょっと過ぎ。

 俺は約束の場所へと足を運んでいた。

 その場所は、屋上のカフェ。

 高円寺の裏切りの話を堀北に報告しに行き、龍園に突き飛ばされた場所だ。

 そこに到着すると、すでに予定されていた人数は集まっていた。

 

「あ、速野くん。よかった。来ないんじゃないかと思ったよ」

 

 真っ先に俺に声をかける平田。

 それ以外には、平田のガールフレンドである軽井沢、それに綾小路、堀北。

 そして堀北の隣には、なぜか須藤がいた。

 須藤は集合する予定はなかったはずなんだが……まあ、堀北が不機嫌な顔をしているところを見ると、勝手に堀北についてきたんだろう。

 

「いや……仮眠してたら寝すぎてな。正直遅刻するところだった」

 

「そ、そうだったんだね……」

 

 平田も戸惑っている。

 後ろの堀北は呆れたようなため息をついていた。

 ……いいだろ別に。結果としては時間に間に合ったんだから。

 

「でも、これでようやく全員がそろったね。さあ座って速野くん」

 

「ああ」

 

 目の前にあった椅子を引き、平田と堀北の間に腰かける。

 

「それにしても今回の試験、あのアルファベットの意味は結局なんだったんだろう」

 

 早速平田が、まだ解けていない謎を口にする。

 

「結局、特殊グループがどこなのかも分からないままだね」

 

「あのアルファベットはかなり徹底されていたようだし、意味のないブラフという線もないはず。私も試験が終わってから考えてはみたけれど……分からないわ」

 

 堀北にも解読は不可能だったらしい。綾小路にも目配せするが、首を振られた。こいつにも解けていない。

 この分だと、誰かが解いて公開するまで真実は闇の中だな。

 

「ねえ、さっきの立て続けのメールって……」

 

「うん、僕もそれが引っかかってるんだ」

 

 先程きた、延べ4通ものメールは全て、試験終了を告げるものだった。

裏切りを受けたのは、それぞれグループA、B、F、J。

メールの受信はほぼ同時だった。

 

「グループAは南くんが優待者だったわね」

 

「うん。つまり正体を見破られてしまった可能性がある、ってことだね」

 

「なあ平田。残りの3つのメール、Dクラスの誰かが送ったって可能性は?」

 

 一応確認をとる。

 

「僕もそれを危惧してみんなに連絡を取ったんだ。でも、男子の中からメールを送ったと思われる人は出てこなかったよ」

 

「山内は大丈夫だったのか」

 

 山内の動向を気にする綾小路。

 それもそのはず。

 綾小路は山内に堀北を泥だらけにさせる際、佐倉のメールアドレスを餌にしてやらせたらしい。

 しかし綾小路としては、佐倉に断りなく山内にアドレスを教えるわけには行かない。やむを得ず連絡先を持っていないと嘘をつき、その後なんやかんやと上手く話を持っていって、この試験で優待者が誰かを見抜けば50万ポイントが入るから、そのポイントでデジカメを買って佐倉を喜ばせてやれ、みたいなことを吹き込んだらしい。

 池や須藤が「山内が妙に張り切っていた」と言っていたが、そのせいだ。

 つまり山内には、勇み足で優待者メールを送ってしまうリスクがあるのだ。

 

「あ、うん。山内くんはグループEだったんだけど、メールを送ろうとはしてたみたいなんだ。でも、最後まで悩んで、最終的に送らなかったようだよ」

 

「どこの誰かは知らないけれど、先に裏切ってくれたのは好都合ね」

 

「そうか」

 

 それで綾小路も一安心したようだ。

 

「女子の方も私が確認した。誰も送ってない」

 

 軽井沢はそう力強く言い切る。

 

「……そう」

 

 そんな軽井沢を見て、堀北が少し考え込む表情になる。

 こういったクラスのまとめ役は堀北にはできない。軽井沢の長所、そして自分の短所を自覚しているところだろう。

 

「綾小路くん、それに軽井沢さん。あなたたちのグループは、ちゃんと手はず通り行ったのよね」

 

「ああ」

 

 この場にいる人間———須藤を除く———は、綾小路が決行した作戦を知っている。まあ大っぴらには堀北が考案したことになってるが。

 その作戦とは、端末の入れ替え作戦。

 まず前提として、グループLの優待者は軽井沢。これは試験が終わった瞬間に平田からメールで聞いた。だが綾小路はそれより前……少なくとも昨日の時点でこのことを知っていた。

 そして次に、綾小路が軽井沢と端末の入れ替えを行う。

 それも単なる入れ替えじゃない。SIMカードごと入れ替えるのだ。

 SIMカードは所有者の電話番号と紐づけされている。つまり、ある人物AのSIMカードを別の人物Bの端末に差し込むと、Bの端末の電話番号はAのものになってしまうのだ。

 SIMカードは端末ごとにロックがかかっており、別の端末に別のSIMカードを入れると端末は使えなくなってしまう。だが、そのロックはポイントを払うことによって解除が可能だ。

 綾小路と軽井沢はこの作業を行い、端末の交換を行った。結果、優待者に指名されたというメールを受け取った軽井沢の端末の電話番号は綾小路のものに。そしてその端末は綾小路が手にした。この作業は、あとから重要な意味を持ってくる。

 次に綾小路は幸村と接触。その際、自分が優待者だと名乗った。証拠としてメールを見せれば、幸村としても信じざるを得ない。その後、綾小路からの提案で、その端末を幸村の端末と入れ替え、ディスカッションの場で優待者として接するよう頼んだ。

 ここで行った端末の入れ替えは、SIMカードの入れ替えを伴わない普通の入れ替えだ。

 SIMカードを入れ替えるか否かによって変わること。それは、端末の入れ替えの気づかれやすさだ。

 SIMカードを入れ替えていない端末同士の入れ替えは、誰かが電話をかければバレてしまう。

 そして俺が綾小路に頼まれたのは、まさにその役割だった。

 最終ディスカッションの際、幸村のアドレスから「今」というメッセージが届けば、俺は綾小路の端末に電話をかける。そして空メールが届けば、電話はかけない。後者は、グループ内の誰かが入れ替えに気付き、綾小路に電話を掛けた場合を想定していた。

 そしてあの時、俺のもとに届いたのは空メールだった。あとで聞いた話では、一之瀬が見破っていたらしい。

 電話をかけた結果、綾小路と幸村の間での端末の入れ替えはバレてしまい、本当の優待者は綾小路だと誰もが思い込む。

 嘘の後に出てきたことを、人間は真実だと思い込みやすい。嘘の裏にあったまた別の嘘、つまりSIMカードの入れ替えという発想に至らない人間が、回答時間前に裏切り、綾小路が優待者だと回答する。そして外す。結果4となり、Dクラスには50のクラスポイントが入るという流れだ。

 一つ驚いたのは、一之瀬はそのすべてを見破っていたこと。というより、まったく同じ作戦を思いついていたということだ。

 裏切るとすればAかCだと踏んでいたため、あの場でSIMカードのロック解除については言及しなかったらしいが。

 一之瀬の高い実力。協定がある今はまだしも、今後脅威になってくる可能性は否定できない。

 

「それよりも気になるのは、あの4通のメールがほぼ同時に届いたってことだね」

 

「ただの偶然じゃねえのか?」

 

 須藤はそう思っているらしい。

 

「裏切る時間が30分しかないとはいえ、あのメールの届き方はどう考えても不自然よ」

 

「高円寺くんが裏切りのメールを送ってから、試験終了を伝えるメールが届くまで、ほとんどタイムラグがなかったんだ。自動返信になっているんだろうね。ということはこの4件、裏切った4人は同時にメールを送ったってことになる」

 

「1つのクラスが示し合わせて、同時に送ったのかもしれないわね。自分たちが送ったと誇示するために。そしてそんなことをしたがる人物は一人だけ」

 

 そんな堀北の言葉と同時に、一人の人物が姿を現す。

 

「あなたね、龍園くん」

 

 龍園翔。

 Cクラスをまとめるリーダー……否、独裁者だ。

 

「よう、やっぱりここにいたのか鈴音」

 

「あ? 誰だてめーは」

 

 須藤は龍園を知らないようで、堀北をファーストネームで呼ぶこの男にかみつく。

 しかし龍園はそれに構うことなく、堀北に近寄っていく。

 

「クク、今からメールで送られてくる結果をお前と楽しもうと思ってな。結果はどうなってるだろうなあ」

 

「何を白々しいことを。あのメールはあなたの指示でしょう?」

 

「はっ、にしても鈴音、お前にしちゃ大所帯だな。どういう風の吹きまわしだ?」

 

「そうね。あなたにしつこく付きまとわれて困っている、と相談していたところよ」

 

 堀北のそんな言葉に須藤がヒートアップする。

 

「な、マジかよ堀北! おいてめえ、堀北につきまとってんじゃねえぞ!」

 

「あなたは黙ってて」

 

「お……おう」

 

 吠える須藤を堀北が制止する。

 

「あなたの方は随分と余裕そうね。手応えはあったのかしら」

 

「クク、そうでなきゃわざわざ出向いたりなんかしねえぜ」

 

「そう。けれどあなたはこの試験では何もできなかった。違う? 今回も失格なんて事態にならないといいわね」

 

「おいおい虚勢張るなよ鈴音。あとで後悔するのはお前だぜ? 俺は自分のグループの優待者も、お前らのグループの優待者も分かってたんだからな」

 

「そう。それは良かったわね」

 

「だが安心しろ。俺の慈悲深さを知れば、感動で股を濡らすだろうな」

 

 なんとも下品な言葉を使い、堀北を挑発する龍園。

 

「……なら聞かせてもらおうじゃない。あなたが見抜いた優待者」

 

 当然、堀北は答えられるはずがないと思って聞いたはずだ。

だが龍園は、堀北のその言葉を待っていたかのように不気味に笑う。

 前の時と同じだ。

 そして射抜くような視線でこちらを見て、言った。

 

「櫛田。そして菊池。そこの軽井沢もだったなあ」

 

「……え?」

 

 この場にいる者全員に衝撃が走った。

 どちらもまさしく、Dクラスの優待者だったからだ。

 

「ど、どうして……? それを見抜いていたのなら、あなたは自身のグループの試験も終わらせていたはずよ。試験終了までそれをしなかったってことは、少なくともグループKの優待者は、試験が終わってから知った。違う?」

 

「悪いが俺は2日目の時点で気づいてたぜ。こいつが必死にバレないようにしてんのが面白くってよ。俺に見抜かれてるとも気づかずにな」

 

「そんな……」

 

 龍園は平田を見て嘲笑するように言う。

 

「鈴音がその場にいたらどんな顔すんのか想像してたら、時間が過ぎちまったってわけだ」

 

 嘘か本当か分からない龍園の言葉。

 だが、現に龍園は優待者を的中させている。全員の表情に動揺が走っていた。

 

「どうやって……あなた、何をしたの……?」

 

「クク、そいつはすぐに分かるさ。まあ安心しろ。一番悲惨なのはAクラスだろうからな」

 

 余裕の笑みを浮かべる龍園。

 そして時刻は午後11時を回り、生徒全員にメールで結果が通知される。

 

 

グループA…結果3とする

グループB…結果3とする

グループC…結果2とする

グループD…結果2とする

グループE…結果3とする

グループF…結果3とする

グループG…結果4とする

グループH…結果2とする

グループI…結果3とする

グループJ…結果3とする

グループK…結果1とする

グループL…結果4とする

グループM…結果2とする

 

各クラスポイント増減

Aクラス…マイナス150cl プラス300万pr

Bクラス…マイナス50cl プラス250万pr

Cクラス…プラス100cl プラス550万pr

Dクラス…プラス100cl プラス400万pr

 

 

 Aクラスが最下位。次点にBクラス。CクラスとDクラスはクラスポイントでは同率で1位だが、プライベートポイントも考えると、結果としてはCクラスがトップだ。

 誰もが予想していなかった結果となった。

 

「これは、いったい……」

 

「よかったなあ。俺に情報が漏れたグループKはみんな仲良く結果1だ」

 

 そう、一番の疑問はそこだった。

 

「俺は今回、厳正なる調整、その裏にある優待者の法則を見つけ出し、全ての優待者を把握した上でAクラスだけを狙い撃ちしたのさ。だが、もう容赦はしねえ。これは宣戦布告みたいなもんさ。次の標的はお前だ、鈴音。身も心もズタズタに引き裂き、絶望を味わわせてやるよ。2学期を楽しみにしとくことだな」

 

 そう吐き捨て、龍園は立ち去った。

 Cクラスの勝利。

 その結果に堀北は言葉が出ない様子だ。

 

「龍園くんが情報を集めて優待者を見破ったまでは理解できる。でも、僕らのグループKはどうしてこんな結果に……」

 

 平田もやはりそこが気になるようだ。だが、その言葉に続く者は誰もいない。

 正解が思い浮かばないのだ。

 全員のそんな困惑を打ち破ったのは、意外にも綾小路だった。

 

「別に難しいことじゃない。やろうと思えば可能なことではある」

 

「どういうこと?」

 

「優待者が櫛田であることを龍園が見破ったことは、ひとまず前提として考える。試験終了直後に、優待者が櫛田であることをDクラスのメンバー以外に吹き込めばいいだけだ。龍園の言葉には全く信用がないから、裏切る者は出てこない。優秀な生徒がそろっていたグループKならなおさらな。でも、正式な回答時間になれば話は別だ。たとえ龍園の言葉が嘘で、櫛田が優待者でないとしても、回答するのに何もリスクがないだろ?」

 

 このままでは、どうせ優待者の逃げ切りを許して結果2になってしまう。

 ならば、龍園の言葉を全く信じていないとしても、結果1になるわずかな可能性に賭けて一応櫛田の名前を書いてメールを送る。

 そして全員が正解。それで結果1になったという話。

 確かに話の筋は通っている。

 だがそれでも、全員が全員そういう発想になるかどうかに疑問は残るが……。

 

「堀北。……もしかしたら俺たちはこれから、窮地に立たされるのかもしれないな」

 

「窮地って、龍園くんにかしら? 彼が今回上手く立ち回ったのは事実だけれど、これからも苦戦するかしら。たまたま勝利を手にして調子に乗っているだけとも考えられる。それに、事実あなたのグループは勝っているわ。違う?」

 

 そんな堀北の言葉。

 たしかに、綾小路が属するグループLは結果4。

 

「……そうだな。俺の考え過ぎかもしれない。気にしないでくれ」

 

 綾小路はこの試験結果に……特に、グループKが出した結果1に、何か危ういものを感じているようだ。

 火のないところに煙は立たないというが、まったくその通り。俺も危うい何かを感じていないといえば嘘になる。

 なぜ全員が櫛田の名前を書いたのか。

 龍園の言葉以外にも、何か根拠があったんじゃないか。

 

 

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