実力至上主義の学校にオリキャラを追加したらどうなるのか。 作:2100
期末試験まで残り三日。
今日は、作成した問題の提出期限だ。
授業を終えて放課後になるなり、堀北と綾小路は席を立ち、完成した問題を入れた茶封筒を持って職員室へと向かっていった。
そのほかの生徒たちは、寮に戻るための帰り支度を済ませている。
今日からは、これまで講師役を務めていた生徒も自分の勉強に専念する必要があるということで、クラスとしての勉強会は開かれていない。
もちろん、中には自学自習が厳しい生徒もいるため、そこは各自で講師役を用意するなどして対応している。あくまでもクラス全体としての勉強会を取りやめたというだけだ。しかしそれだけでも講師役の負担は段違いに軽くなる。
問題作成の仕事から解放された俺は、今日と明日は須藤、池、山内の勉強の面倒を見ることになっている。場所は図書館。よりにもよってこの三人か、とも思ったが、今まで講師役の方はほぼほったらかしていたので、これくらいは甘んじて受け入れよう。須藤は講師役が堀北でないことに非常に不満そうだったけどな。
俺もそろそろ支度を済ませて向かうところだ。
「速野」
と、教室を出ようとしたところで幸村に声をかけられた。
「どうした?」
「作った問題はこれ以上ない出来になったと確信してる」
「そうだな。やれることはやった」
幸村も問題作成にかかわっていたため、その出来栄えはよく理解している。
「だが前回の体育祭、参加表がCクラスにバレてたんだったよな。それと同じことが起きないかが気がかりなんだ」
Dクラスの面々は、櫛田が裏切り者であるということは全く知らないが、何らかの原因で参加表が漏れてしまったことそのものは平田から説明を受けている。
そのため、そういった心配を抱く生徒がいてもおかしくない。いや、抱いているべきだろう。
幸村の懸念は妥当なものだ。
「……対策は万全にしたはずだ。作った問題は寮の部屋から持ち出してないし、堀北に作った問題を報告するときも画像データで送信する形をとった。今日あの茶封筒に入れるために持ち出したものを除けば、寮の外に出た問題は1問も採用してない」
はじめのころに堀北と幸村に試しに解いてくれといって渡した問題も含めてだ。あの時使った問題はすべて不採用にした。
「ただ、体育祭の時も万全の対策を取ったつもりであのザマだったからな。絶対安全とは言い切れないのが正直なところだよ」
しかも体育祭の時の対策案には俺の提案も含まれていた。そのため一部では俺を責めるような声もあったと後で平田から聞いた。
どうやら平田がそれを収めてくれていたようで、そういった声が俺の耳に入ることはなかったが。
「一応、問題を提出した後は誰であっても開示しないように先生に頼む、って堀北が言ってたぞ」
「そうなのか……」
「だからまあ……そこはもう気にしても仕方がないんじゃねえの。正常な勝負ができる前提で挑むしかないだろ、俺たちは。前に失敗した俺が言うのもなんだけどな」
「いや、お前を責めてるわけじゃない。そうだな。あまり気にしすぎないことにする」
「それがいい。……じゃあ俺は行くから」
「ああ。呼び止めて悪い」
そこで俺たちは別れた。
廊下を歩きながら考える。そして改めて実感した。堀北の成長を。
堀北の取った問題漏洩対策は、先ほど幸村に説明したことだけではなかった。
話は一度、ペーパーシャッフルの説明があった日にまで遡る。
堀北は、作成した問題を必ず堀北に届けること、問題はすべて自身が管理することを俺に確認させた。
これはどういうことか。堀北が問題提出の全権を握るということだ。
直接話を聞いたわけではないが、恐らく堀北はその日の時点で茶柱先生にもこのような話を通していたはずだ。自分が提出する問題がDクラスの正式な問題のため、他の誰が提出しても受理したふりをしてほしい、という感じか。
つまり堀北は、櫛田が勝手に問題を提出してしまう可能性を考慮に入れ、それを潰したのだ。
そしてそれは的中した。櫛田が用意していた手はまさにそれだったのだ。
綾小路はそれを知らない。いや、あいつなら見抜いていたとしてもおかしくないが、もし見抜けていないとすれば驚くだろう。
そして綾小路以上に驚くのは、龍園率いるCクラス。テスト期間中、図書館やカフェなどでCクラスが勉強している姿を一切見かけなかったのは、放っておいても問題と答えが手に入ると高をくくっているからだろう。
このまま何もしなければ、Cクラスからは退学者が出てもおかしくない。勉強不足のまま挑んで攻略できるほど、こちらは甘い問題を用意していない。
そしてそれは本来こっちの望むところだ。
図書館の入り口付近に来たところで、ポケットの中の端末が震える。
堀北からのメッセージだ。
『万事上手く行ったわ』と。
了解、とだけ返信し、俺は須藤たちの待つ席へと向かった。
1
テスト前日。
1年生の教室が集まる校舎内は、来るべき時へ向けての焦りと緊張で空気が非常にぴりついていた。
どこを歩いていても、聞こえてくるのは常にテストに関する会話ばかり。もちろん、それだけ意識を高く持っているということでもあるのだが。
そんな中で授業を終え、放課後を迎える。
俺は職員室でパッと用事を済ませ、そのまま寮への帰り道を歩いている。
12月に入り、それに伴って冷え込みも厳しくなってきた。
俺と同じように通学路を歩く生徒の多くは、歩きながら教科書や単語帳などを広げてテスト勉強にいそしんでいる。
どんな時間も無駄にしないという強い意識が見てとれる。
今日は一段と寒いため、手袋を外さすに読んでいる生徒も中にはいた。しかし本と手袋の摩擦が弱すぎて落としそうになってしまう。だーくそ、寒いけど外すしかねえ、とか言って、覚悟を決めて手袋を外し、しっかりと本を持って再び勉強に戻っていった。
俺はこんな環境でやっても全く集中できないのが目に見えているためやっていない。
「あ、速野くん」
そんな光景を横目に歩いていると、後ろから藤野の声が聞こえたので振り返る。
そこにいたのは声の主である藤野だけではなかった。
もう一人、櫛田桔梗の姿もあった。
「おお……なんか意外と初めて見る組み合わせだな」
二人とも俺の姿を見て、こちらに手を振ってくる。
俺も軽く手を上げて応答した。
以前から交友はあったらしいのだが、今までこのように並んで歩く姿を俺は見たことがなかった。
「二人でどっか行くのか」
「ううん、実は藤野さんの部屋にお呼ばれしたんだ。一緒に勉強しようって」
「そうだったか……」
二人の成績に高低をつけると藤野に軍配が上がるが、それでも櫛田の成績も優秀であることに変わりはない。そんな二人が一緒に勉強すれば有意義な時間になるだろう。
「でも、誘われた時はびっくりしたよー。先週の金曜日だったっけ」
「うん、そうそう」
先週の金曜というと、カラオケルームで話し合いがあった日の翌日だ。
「もちろんクラスは違うけど、せっかくの機会だからと思って。実は櫛田さんと二人って初めてだよね」
「あ、確かにそうかも。よろしくね藤野さん」
「こちらこそだよー」
そんな感じの明るいやりとりが繰り広げられる。
ああ、なんというかしあわせいっぱいの空間だな。周囲も、藤野と櫛田が並んで歩いている光景に自然と目が吸い寄せられている様子だ。俺完全に除け者、というかお邪魔虫レベル。
以前外村……博士が「ゆる百合の間を邪魔する人間はゴミ虫以下でござるよ!」とか言ってたっけ。その時は何言ってんだこいつと思ったが、今なら5%くらいは理解できる気がする。
ま、二人には楽しく明るく勉強してもらって、俺は一人寂しく黙々と勉強しよう。
……いや別に悔しくねーし。一人で勉強した方が効率的だって信じてるし。異論があるやつはかかってこい。点数勝負だ。
そんなくだらないことを考えているうちにいつの間にか寮に到着し、エレベーターに乗り込む。
「じゃあね速野くん。明日のテスト頑張ろうね」
「ああ」
2
そして、いよいよやってきたテスト当日。
これまでの勉強付けの日々。今こそその努力の成果を発揮するときだ。
生徒たちのテストに挑む姿勢は、当然ながら普通の学校とは違う。
この学校はクラスの成績がクラスポイント、つまりクラスの地位と支給ポイントに直接かかわってくる。
勝てば100のクラスポイントが加算される。負ければ逆に100クラスポイントが引かれる。さらにペアの点数がボーダーを下回れば退学処分という、この上なく厳しい措置が待っている。
これほど多くのものを背負って期末試験に挑む高校生は、この学校の生徒のほかにはいないだろう。
しかしDクラスの生徒は、焦りや緊張はありながらも、冷静さを失うことはなく試験までの時間を過ごしていた。中には今までの努力を信じ、敢えてギリギリでの詰込みを行っていない生徒も見られた。
本当に、1学期のころとは見違えるようだ。
予鈴のチャイムが鳴る。試験開始5分前となり、人数分の問題用紙を持った茶柱先生が教室に入ってくる。
それと同時に、生徒たちは広げていた勉強道具をロッカーの中にしまう。机の上や中に残していいのは、当然ながら筆記用具のみだ。
「これより1時間目、現代文のテストを行う。試験時間は50分。原則として途中退室は認められない。トイレなども極力控えるように。どうしても我慢できない場合や、その他体調不良などやむを得ない場合は、挙手して私に伝えろ。では、問題用紙を配布する」
廊下側から順に問題用紙の配布を始め、2分と経たずに最後の綾小路まで全員にいきわたる。
試験開始までの緊張の時間。
聞こえてくるのは、生徒が微動した際の衣擦れの音、そして加速していく自らの心拍音。
それ以外にあるのは静寂のみ。
やがて、チャイムがその静寂を切り裂く。
その音に重なり、先生の「はじめ」という声、そして全生徒が一斉に問題用紙を裏返す音が聞こえてきた。
シャーペンを動かすカリカリという音が教室中に響き渡る。そんな中、俺はいきなり解き始めることはせず、まずは問題を全て流し見する。これによって、問題の大体の性格を把握することから始める。
それを済ませてから、ようやく問題に取り掛かる。
中々に骨のある問題がずらりと並ぶ。予想はしていたが、やはり今までの定期テストのどれよりもレベルが高い。平均点ラインは良くて60点に到達するかしないかだろう。
これは決して悲観するような数字ではない。これは俺が問題作成にかかわったからこそ分かることだが……確かにレベルは高い。しかし、俺たちDクラスが提出した問題に比べれば1段階ほどレベルは低い。そのうえ、幸村の提案した金田対策の中で予想されていた問題がピンポイントで出題されているものも見受けられた。
もしもCクラスが俺たちと同じくらいの勉強量で挑んでいれば、平均点はおそらく55点前後。しかしCクラスは間違いなく勉強不足だ。恐らく半分に満たないだろうな。
平均点勝負での勝ちは固い。あとは誰一人退学者を出すことなく乗り越えられるかどうかだ。
賭けを行っている堀北と綾小路を含めてな。
3
3時間目の地理のテストが終わり、いまはインターバルだ。
「ここまではいい意味で想定通りね」
ふう、と息をつきながら、堀北がそうつぶやいた。
「満足のいく出来みたいだな」
「ええ、まあね。もちろん油断は禁物だけれど」
「そうだな」
そんな短いやり取りのあと、俺は席を立ち、櫛田のもとへいって声をかける。
「櫛田、ちょっといいか」
「え? うん、どうしたの速野くん?」
俺の来訪に少し驚きながらも、快く受け答えをしてくれる。
堀北との賭けもあって気が気じゃないだろうに、さすがといったところか。
「いや……実はな、昨日の夜、勉強会について質問したくて櫛田にメッセージを送ったんだが……既読がつかないからちょっと心配になってな」
櫛田は基本的に即既読、即返信だ。もちろん充電が切れていたり、就寝していれば話は別だが、それ以外の時間ならどんなに遅くても10分以内に返信が来る。
「昨日の夜? 速野くんからのメッセージ……」
思い出そうとするものの、身に覚えがないらしい櫛田。
「もしかしたらこっちの端末の不具合で届いてないかもしれない。いま確認してくれないか?」
「うん、いいよ。ちょっと待ってね」
「悪いな」
「そんな、大丈夫だよ。もし私が気づいてないだけだったらごめんね」
「いや」
櫛田にはおそらく毎日大量の通知が来るだろう。その中の一つや二つ見逃していても不思議じゃない。
端末を起動して操作を行う櫛田。テスト中は当然端末の電源を切っておくことが義務付けられているため、このような手順が必要になる。
それと同じように俺も端末を操作する。
「えーっと……あ、速野くんからメッセージ届いてる」
「マジか?」
「うん。でも届いたのは昨日の夜じゃなくて……ついさっき、3時間目のテスト終わった直後になってるよ」
「……えぇ?」
俺の発言と実際のデータの食い違いに困惑する櫛田。
と、そこで櫛田の端末から通知音が鳴る。
今この瞬間に誰かからのメッセージが来たようだ。
「メッセージか?」
「誰かからのメールみたい……っ!」
そのメールを見た瞬間、櫛田の表情が一気に強張る。
そしてそれとほぼ同時に予鈴のチャイムが鳴り、問題用紙を持った茶柱先生が教室に入ってきた。
「お前たち、席に着け。これより4時間目、数学のテストを始める」
そう指示が出される。
次の科目は数学。櫛田と堀北の賭けの対象となっている科目だ。
「悪い櫛田、また後で」
「あ、う、うん。頑張ろうね」
「ああ」
端末の電源をオフにしつつ、先生の指示通りに席に戻る。
そして、堀北に声をかける。
「準備はできたか堀北」
「ええ。全力を尽くすわ」
覚悟は決めた。そんな表情だった。
先ほど述べた、テスト直前に最後の詰込みをやっていない生徒。その中の一人は堀北だった。
タイトルは分からないが、文庫本を読んでいたな。
できることはすべてやり切ったからこその芸当だ。
自らの退学がかかった試験でこれだけ冷静でいられるということは、相当な猛勉強を積み、そしてそれに自信を持っていることの証左でもある。あとは自らとの闘い。そのための精神集中の手段として、日課である読書という選択をしたのだろう。
いや、本当に立派なものだ。
問題用紙が全員にいきわたり、再びあの独特の緊張感と静寂が訪れる。
そして、チャイムと同時に試験が始まった。
「んなっ……!」
開始直後、そんな焦りとも驚愕ともとれる櫛田の声が前方から聞こえてきた。
「どうした櫛田」
「い、いえ、なんでもありません……すみません」
生徒たちの意識は一瞬だけ櫛田に傾いたが、今はテストの最中。他人のことを気にしてはいられない。
俺もその例に漏れることはない。
しっかりと集中して試験に取り組む。
4
数学の試験が終了した。
「ふう……」
解き終えた堀北は、そんなため息とともにシャーペンを放り出し、天井に目を向けている。
「やり切ったって感じだな」
「ええ。悔いはない。特に最後の1週間、間違いなく私の人生で一番勉強したわ。速野くん、答え合わせをお願いできるかしら」
「はいはい」
1問目から順に、互いの答えが合っているか確認していく。
難易度はやはり高かった。しかし、所感はこれまでと同じだ。悲観するようなレベルではない。
そして最後の50問目。空間図形の応用問題。
「答えは29だ」
「……同じよ。29」
俺と堀北の答えは、50問すべてで一致していた。
「私とあなたが同じ間違いをしていない限り、満点と言っていいということね」
「そうだな」
それだけ言うと、堀北は櫛田の元に向かった。お互いに点数を確認し合うのだろう。綾小路もついていくらしい。
満点なら堀北の勝利だ。間違いない。
とりあえず、一山は超えたか。
一方で櫛田の方を見ると、明らかにどの生徒よりも精神的に疲労していた。
あの様子や、テスト中のあの驚嘆の声から察するに……推測でしかないが、どうやら綾小路の策が効いていたと思われる。
賭けは堀北の勝ちで確定だろう。
これで一つの懸念材料は解消された。
しかし、テストはまだ明日も残っている。
それに向けて、今日はまた勉強だ。
5
テスト終了から2日後。
クラス内は緊張に包まれていた。
「では、2学期期末テスト、ペーパーシャッフルの結果を発表する」
これまでも、テスト結果発表のときは緊張感が走っていた。しかし、今日のそれは段違いに強い。
理由は簡単。この結果次第では、Dクラスはついにクラスが昇格するかもしれないのだ。
しかし、まずはそれよりも先に大事なことが発表される。
「まず、今回の試験でボーダーに至らず、退学となったペアだが……なしだ。全員見事にボーダーを上回った。よくやった」
その瞬間、歓喜の声が上がる。
ボーダーを上回ったことに関しては、全員事前にペアと自己採点の結果を確認し合って自信を持つことができていた。そのため予想外の結果ではない。しかしいざ正式な結果として受け取ると、大きな安堵が押し寄せてくる。
「そして次に、各クラスの平均点を発表する」
そう言って、茶柱先生がゆっくりと結果を張り出す。
1枚目の紙には、個人の成績とペア合計の成績。
そして2枚目に、各クラスの平均点が書かれてある。
Aクラス……70.39
Bクラス……69.75
Cクラス……46.91
Dクラス……61.27
「と、いうわけだ。よく試験を乗り越えたな」
「「「「「うおおおおおおおおーーー!!!」」」」」
平均点は約15点離れている。文句なくDクラスの勝利だ。
これで年明け、1月の頭まで生活態度などで減点されない限り、DクラスはCクラスに昇格することが決定した。
「お前すげえぜ速野! 平均46なんて、Cから誰か退学したんじゃねえか!?」
今まで散々Cクラスにコケにされてきた須藤がテンションを上げて俺に言ってくる。
「お前にとっては残念かもしれないがな須藤、今回の試験で退学者は出ていない。だが、Cクラスには明らかな勉強不足が見られた」
それゆえのこの平均点、ということだろう。
正直、俺も2組くらい退学者出るかと思ってたが、学校側に修正受けたのが大きかったか。どの科目でも、全体の2割ほどは難易度を抑えた問題でなければ認めてもらえなかった。それで何とかボーダーを上回ることができたのだろう。龍園とは別で独自に勉強会を開いていた、という可能性もあるか。
「それにしても……今回はAクラスがかなり危なかったわね。いつもの平均点を知っているわけではないけれど、Bクラスとの差はいつもここまでギリギリなのかしら」
AクラスとBクラスとの差は1点もない。
「Bクラスの調子が良かったんじゃないか。合同勉強会、案外効いたのかもな」
「そういうことなのかしらね……にしてもあなた、本当にペーパーテストが得意なのね」
堀北は黒板に貼られている成績一覧を見ながら、少し呆れ気味に言った。
「褒められてると捉えていいのか」
「少なくとも貶してはいないわね。数学で同点だった以外は全て負けているもの」
俺は必死の勉強の末に現代文、地理でそれぞれ98点、それ以外の科目では満点を獲得することができていた。堀北も点数的には大きな差はないが、それぞれ2、3点ずつ俺に出遅れている。総合点では15点ほどの差がつくという結果に落ち着いた。
「まあ、取り敢えずは良かったな。退学することもなくなった」
櫛田の数学の点数は78点。決して低いわけではないが、もし仮に龍園から解答を入手していたとすればあり得ない点数だ。
「このままいけばCクラス昇格だ。お前のゴールへの第一歩だろ」
「……そうね」
まずはあまり余計なことは考えず、その事実を素直に喜んでおくべきだ。
勝って兜の緒を締めよとはけだし至言ではあるが、それをするのは少し間を置いてからでも遅くはない。引き締め過ぎても息苦しいだろう。