マンハッタンカフェとのお話 作:不敬であるぞ……ウララちゃんは別だ
今回は特殊タグでちょっと遊んでみたよ
もうちょっと内容に厚みを持たせたい気持ちを胸に、明日も頑張るぞい!
「「トリックオアトリート!」」
「よしきた、蜂蜜の飴ちゃんとかぼちゃ羊羹どっちがいい?」
「ボクはアメ!」
「マヤはよーかん!」
「はいよ! カイチョーさんはどっちや?」
「なんと、私も良いのか?」
「もちろんや! お祭りってのはみんなで楽しむもんやからな!」
「ならば羊羹を貰おうか……羊羹無料でもらって感無量、ふふっ」
「カイチョー……?」
10月31日。ハロウィンとは本来どこかの国の宗教行事だったはずが、日本人に見つかってしまった結果「仮装してお菓子を貰うお祭り」へと変貌してしまった。まあ、文化にせよ行事にせよ、ありとあらゆるものを取り込み混ぜて新しい形にする日本は、ウマ娘という異種族と共存し繁栄する下地になったのは間違いないのだろう。
閑話休題。
ともかく、トレセン学園でもハロウィンは一大イベントの一つでもあるので、当然ハロウィンイベントを開催する。あくまでも学園主催では無く生徒主導なのだが、内容は至ってシンプル。仮装したウマ娘達がトレーナー室やカフェテリア等の人がいる所をまわってお菓子を貰う、トレーナーや教員、一部の生徒は逆にお菓子を配るだけ。多くは中等部の生徒だが、中には高等部の生徒も仮装してイベントを楽しんでいるようだ。俺の愛バも、カフェテリアの一角で後輩達に甘いカフェオレを提供して楽しんでいるらしい。
……本当は俺も行きたかったのだが、あくまで主役は生徒。大人は引っ込んでおくべきだろう。
「ありがとうございましたわ!」
「ああ、気をつけて帰るんだぞ」
今も仮装をした中等部達が元気にお菓子を貰いに来ていた。時計を見れば22時7分。今日のハロウィンイベントは22時で終了、それまでに寮に戻らなければいけないハズだが、まあ多少遅れるのもご愛嬌だろう。教員やトレーナー、一部の生徒達が防犯の為に学園内を見回りしているので、彼女たちが見つからずに帰れることを祈ろう。
「ふぅ……あれだけあったお菓子が消えたな」
ロッカーのほうに堆く積まれた空のダンボール。それぞれにぎっしりと詰めていたウマ娘向けのお徳用お菓子が見事に消えていた。先輩から進められたままこの量を見せられた時は思わず目を疑ったが、ウマ娘達の食に対する欲を見誤っていたのは自分だったらしい。結構な出費だったが、彼女たちが楽しそうなのでまあいいだろう。とりあえず、後片付けをしなければ。
「Trick or Treat……」
ダンボールを潰している最中、突然電気が消えたと思えばそんなつぶやきが響く。声の方へ顔を向ければ仮装したカフェが居た。赤い目に鋭いギザ歯、黒とワインレッドの執事服と合わさって、美しくも気高い雰囲気を醸し出している。
「カフェか。その執事服よく似合ってるぞ。さしずめ吸血鬼の従者ってところか?」
そういえば、寮に戻る前に一度トレーナー室に顔を見せると言っていた。わざわざ仮装を見せに来てくれたのだろう。後で写真を撮らせてもらわなければ。
「Trick?」
クスクスと笑いながら手を差し出すカフェ……なるほど、さてはお菓子が無くなったところを見計らってイタズラをしに来たのだろう。この停電も演出の一種か。しかし残念だがカフェ用のお菓子はきっちりと用意させてもらってる。
「残念、トリートだ」
「……Cookie?」
そう、差し出したのはチョコチャンククッキー。カフェが飲むコーヒーに合うよう、甘さを控えめにしてビターなクッキー。もちろん手作りだ。
「……Tha-k y──」
受け取ったカフェは少し考える素振りを見せた後、急にきびすを返しトレーナー室を出ていってしまった。何事かを呟いていたが良く聞こえなかったので、なぜ出ていったのかはよく分からない。
「……なんか怒らせちゃったかな」
もしや計画してたイタズラが不発して拗ねてしまったのだろうか。今日はもう遅いが明日はまたトレーニングがある。その時にちゃんと謝ろう。
おおよそ片付けが終わったあと、コーヒーを入れていたらコンコンとノックがあった。
「どうぞ」
「あぁ、良かった」
入ってきたのはカフェ。先程見た吸血鬼? の仮装のままなので、あの後どこかで時間を潰していたのだろうか。
「こんな時間にどうしたの? というかもう門限じゃ……」
「いえ、副会長に誠心誠意の説得でお目こぼしして頂けました……」
説得……いったいどんな取引があったのか。すごく気になるところだが、それよりも先に。
「あー、カフェ。さっきのことなんだが……」
「さっき? 私はずっとカフェテリアにいましたが……結局トレーナーさんは来てくれませんでしたね」
雰囲気が変わった。耳が絞られ、じっとりとコチラに非難がましい視線を投げつけてくる。怒らせたかも、ではなく怒っている。
「いや待ってくれ、一応このイベントの主役は生徒だし、大人の俺はみんなにお菓子を配る方が合っているかなーって……」
「なるほど、私よりも他の娘達が大切だと」
拡大解釈にも程がある! 何か、何か打開策を!
「ところで話は変わるのですが……Trick or Treat?」
「いや、さっき上げたんですが」
「クスクス、誤魔化そうとしたってダメですよ……」
ジリジリとコチラに詰め寄ってくるカフェ。一歩二歩と下がるが、直ぐに壁にぶつかり追い詰められる。月のように光る魔性の瞳から目が離せない。
「ふふふっ……お菓子を持ってない悪いトレーナーさんはTrickですね」
蝶ネクタイが解かれ、こちらに見せつけるように上着を脱いでいく。あっあっあっ、シャツまではだけて!?
「さあ、トレーナーさん……ひとつになりましょう?」
あ、終わった。トレーナーがメイクデビューしてうまだっちされてしまう。そういうのはちゃんと雰囲気を整えて然るべきで〜! 誰でもいいから助けて!
願いが通じたのか、ドンッ、と。背後からすごい衝撃を感じ、前に倒れ込む。当然、咄嗟のことなので避けることも出来ずカフェを巻き込んで床に転がることになる。
「……大丈夫か!? 怪我はして……」
「トレーナーさん……?」
そんなことが起きれば、まるで俺が彼女を押し倒したような形になる。体は密着し、顔と顔の距離はほんの数センチ。互いの吐息がやけに大きく聞こえ、視線が交差する。紅い唇は色っぽいし、白い首筋は妙に惹かれる。それに先程まで獲物を狩る女の目をしていた筈なのに、今自分の下にいるのは潤んだ目をしてコチラを見つめている。
どれだけそうしていたのだろうか。
もううまぴょいしたっていいんじゃないだろうか。
気付けばカフェとの距離は近づき、そして俺たちは──
「失礼するよ。先程凄い音がしたから見回りに来たんだ……が」
数秒の沈黙、理解。
「……すまない、失礼した」
「待ってください生徒会長!」
「安心してくれ、言いふらしたりはしないさ。愛執染着は男女の常だからな……しかし、次から鍵をかけておいた方が──」
「誤解だーッ!」
幸い、俺もカフェも名誉が傷がつかないように会長の説得が成功した。が、カフェはしばらく不機嫌だった。
それと、これは後でカフェから聞いた話だが。俺が彼女を押し倒した瞬間、俺の背後にクッキーを齧りながらいい笑顔でサムズアップをしている「お友だち」がいたらしい。
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カフェは責められるとよわよわになるよ。それは間違いない。