『承太郎…、目覚めるのだ空条承太郎』
目を摘むっていた承太郎は、自分を呼ぶ声が聞こえたため、目を開けた。
「ここは…」
『目が覚めたか。空条承太郎』
承太郎が目を開けると、周りは白一色で地面も何も無い空間だった。そして目の前には、一人の男性がいた。
「貴様は…DIO!」
目の前の男性は、かつて自分の母《空条ホリィ》を助けるため、エジプトで戦い、仲間を失い苦戦を強いられた怨敵だった。
『そう…、私はかつてエジプトの地で貴様に倒されたディオ・ブランドーだ』
「そのエジプトの地でやられた貴様がなぜ俺の前にいる?そしてここは何処だ?」
承太郎はDIOを指差しながら問う。
『ここは"生と死の狭間の空間"。死んだ者の魂が一時的に来ることができる空間だ。そして幽体である私はこの空間で貴様が来るのを待ち焦がれていた』
「"生と死の狭間の空間"…だと?」
『そうだ。貴様は自分の娘を庇い、死んだ。そしてその後、貴様の娘も死んだ』
「……そうか。結局、守れなかったのか…」
承太郎は娘を守れなかったことに肩を落とした。
『そう落ち込むな。奴は強敵だったが、仲間の一人が不意を突いて攻撃し、奴は死んだ。奴の魂は"無限地獄"へと落とされた』
「なら何故貴様がここにいる!?貴様が仕出かしたこと、忘れた訳じゃあ無ぇだろうな!?」
承太郎は声を荒げてDIOを問い詰める。
『無論私も無限地獄に落とされた。だが、貴様は"別の世界"でやるべきことができたため、その案内人として私と"彼"が選ばれたのだ』
「……"彼"、だと?」
『私だよ』
するとDIOの後ろからもう一人の男性が姿を現した。
『はじめましてだね。私は"ジョナサン・ジョースター"、君の祖父、"ジョセフ・ジョースター"の祖父だよ』
「アンタが俺の
『その渾名、懐かしいね』
ジョナサンはフフッと笑い、承太郎を見た。
『君は数々の戦いを勝ち抜いた。しかし今回は相手が悪かった。けど、君はここで死んでいい人間では無い。そこで私は無限地獄にいたディオにお願いして"力の譲渡"をして生き返らせることにしたんだ』
「"力の譲渡"…だと?」
『左様。貴様の
ジョナサンとディオはそれぞれの説明をする。
「……まぁ、貰えるモンは貰っておくぜ。早く"力の譲渡"とやらをしてくれ」
承太郎は力を受け入れることを承諾した。
『ならば行くぞ!我が幽波紋《世界》よ!空条承太郎の力となれ!』
ディオが印を結ぶと、ディオの体から彼の幽波紋《世界》が姿を現し、承太郎の中へと入っていった。それと同時に承太郎の体が若返り、始めて幽波紋を発現させた17歳の姿になっていた。
『これで私の幽波紋は承太郎のモノとなった。時を止める時間も伸び、約10秒時を止めることができる』
『そして承太郎、君は今17歳の姿となっている。これで君を送る世界への準備が整った』
「それで、俺を一体何処の世界へ送るつもりだ?」
承太郎は投げ槍的に質問をする。
『今から送る世界、それは私たちがいた世界とは違う世界』
『その世界には"人を喰う鬼"が蔓延る世界』
『『君にその世界を救って欲しい』』
「やれやれ…、娘一人守れない男に世界を救えだなんて…。ちと規模がデカ過ぎやしねぇか?」
二人の語る世界に承太郎は肩をすくめた。
『これはお前にしか頼めないことなのだ。わかって欲しい』
「やれやれ…。分かったよ行きゃあいいんだろ?行きゃあ」
承太郎は渋々ではあるが、その世界に行くことを承諾した。
『では、向こうを見るがいい』
ディオが指差した先には、やけにバカデカい扉が一つあった。
『あの扉は先程説明をした世界へと繋がっている。その扉を潜ればお前はその世界へと到達する』
『承太郎よ、この先は過酷な運命が待ち受けている。けれど、決してどんな時でも諦めずに進んで欲しい』
「自分勝手が過ぎるぜ曾曾爺さん。けどまぁ、やるだけやってみるさ」
承太郎は手を振りながら扉の前まで進んだ。すると誰も扉に触れていないのに、扉が勝手に開いた。
そして承太郎はその扉を潜っていった。
…
……
………
『行ったようだな』
『そのようだな。ところでディオ、提案があるんだが…』
ジョナサンは手に持っていたワインボトルをディオに見せる。
『良かろう、その提案乗った』
ディオはその場に小さな丸いテーブルを一つ、ワイングラスと椅子をそれぞれ2つずつ出した。
ジョナサンはワインのコルク栓を抜き、ワイングラスに注いだ。
『では、私が無限地獄に戻るまでの間、この一時を楽しもう。乾杯』
『乾杯』
二人はワインを飲み、再び別れるその時まで大いに楽しんだ。
…
……
………
その頃承太郎は無事、転移を終わらせていた。
「やれやれ…、やっと着いたか。それで、ここは何処なんだ?」
承太郎は辺りを見渡すと、建物が多く見られた。しかし、どの建物にも明かりは無く、周囲を暗闇で包んでおり、人一人いなかった。
「どうやら、ここが何処なのか聞くことはできなさそうだな。…うん?」
承太郎は何かを聞き、耳を澄ます。
「これは…、鉄と鉄がぶつかり合う音だな。だが、こんな所に鍛冶屋があるとは考え難い。だとすると…、どうやら誰かが戦っているようだな。やれやれだぜ…」
承太郎は肩をすくめながら、音が聞こえた方へ走って行った。
…
……
………
「ハアッ…、ハアッ…、ハアッ…」
「辛そうに、俺の血鬼術を吸っちゃったんだね。肺胞が壊死して苦しいだろう?今楽にしてあげるからね」
承太郎が見た光景、それはその場で踞っている蝶の髪飾りをしたストレートヘアの女性に男が扇を振り下ろそうとしている所だった。
「チィッ、いきなりだが、使うしかねぇ!《スタープラチナ・ザ・ワールド》!」
時計の針の進む音が遅く聞こえると共に周囲の景色の色が"灰色一色"となり、針の進む音が聞こえなくなったと同時に"全てが停止"した。
「DIOの奴は10秒程時を止めることができると言ったが、今はそんなに長く止める必要は無いな」
承太郎は女性を路地裏に運んだ。その間、約2秒。
「約2秒、時は動き出す」
承太郎は幽波紋能力を解除すると、灰色一色だった世界に色が戻った。
…
……
………
「あれ?」
男が振り下ろした扇は空を斬っただけで、目の前には誰もいなかった。
…
……
………
「大丈夫か?」
「あ…、貴方は…」
承太郎は女性に怪我の具合を尋ねる。
「俺は空条承太郎、流れの科学者だ」
「私は…ゴホッ!」
女性は自己紹介しようとした時に口から血を吐いた。
「おい、大丈夫か!?」
承太郎は女性に近寄り、背中を擦る。
「ゴホッ…ゴホッ…。ありがとうございます。肺胞が壊死してしまって、吐血をしましたが、大丈夫です。私は"胡蝶カナエ"と言います」
女性ことカナエは口元に付いた血を拭いながら自己紹介をする。
「それで、奴は一体何者なんだ?」
承太郎はその場で辺りを見回す男を親指で差しながらカナエに尋ねる。
「アイツは"人喰い鬼"です。しかも"
カナエは承太郎の質問に答えた。
「……アンタはここにいな。奴は俺がブッ飛ばす」
承太郎はカナエにそう言って、路地裏から出た。
…
……
………
「ん?やぁいい夜だね。君にちょっと尋ねたいことがあるんだけどいいかい?」
承太郎を見つけた童磨は承太郎に質問をする。
「ここに蝶の髪飾りをした女の子がいたんだけど、急にいなくなっちゃったんだ。どこに行ったのか知らないかい?」
「その女性なら俺が匿った。どこにいるかは喋る気は無い」
承太郎はズボンのポケットに手を入れながら答える。
「へぇ~、どうやって助けたのかは知らないけど、俺の救済の邪魔をしないでもらいたいな」ジャッ
童磨は畳んでいた鉄扇を広げた。
「"救済"…だと?彼女は明らかにお前に敵意を持っていた。そんな人を救うだなんて、独裁者気取りか?」
「……君は俺が一番嫌いな性格の人だね。君は救済せずに殺してあげるよ」
「殺れるモンなら殺ってみやがれ!」
承太郎は童磨に向かって駆け出した。
「馬鹿じゃない?自分から近づいてくるなんて…。"血鬼術・散り蓮華"」
近づいてくる承太郎を童磨は鉄扇から出した"氷の蓮華"の花びらで攻撃する。
「《星の白金》!」
《オラァ!》
ガシャン!
「あれ?」
しかし承太郎は《星の白金》を呼び出し、
「どうやって砕いたのか知らないけど、これならどうかな?」
『血鬼術・粉凍り』
童磨は鉄扇から小さな氷を霧状に散布した。しかし、突風が吹き氷の霧は承太郎には届かなかった。
突風の正体、それは《星の白金》が童磨に向けて息を吹いていたからだった。
承太郎は以前、霧の幽波紋《
「これも無理…か。もうちょっと粘りたいけど、もう時間なのよね。
ベベンッ
童磨が叫ぶと、童磨の後ろに障子が現れた。
「逃がすか!《スタープラチナ・ザ・ワールド》!」
承太郎は再び時を止める。
《オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ…オラァッ!!》
時が止まった世界で承太郎は童磨に何十、何百、何千、何万もの拳を叩き込む。そして最後にアッパーを喰らわせ、
「3…、2…、1…、時は動き出す」
「グハァ!?」
承太郎はきっちり10秒、童磨を殴り能力を解除する。すると時が止まった世界で受けたダメージが一気に童磨を襲い、童磨は血反吐を吐きながら障子を飛び越え、地面を滑った。
「ガハッ、ゴハッ、ゲホッ(い…、一体何が起きたんだ!?あの男が叫んだ瞬間、体に幾つもの衝撃が走って…。骨は愚か、内臓までもかなりの衝撃を受けてグチャグチャになっている!再生が追い付かない!?)」
童磨は何をされたのか、さっぱり分からなかった。しかも不運なことに、飛ばされた先は何も遮る物が無い路地で、既に朝日が登っていた。
「あぁぁ…、嫌だ…、嫌だ…。死にたくない…、死にたくないよぅ…」
童磨は陽光を浴びてしまい、文字通り塵となった。
…
……
………
「すごい…」
胡蝶カナエは承太郎と童磨の戦いを路地裏から出て見ていた。
「姉さん!」
するとカナエの後ろから一人の女性が走って来た。
「姉さん、十二鬼月の上弦と戦っているって鴉から…」
「それなら今終わったわ…。彼のお陰で…」
カナエは朝日を正面から浴びている承太郎を見据えていた。