炭治郎たちが蜜璃の下を訪れてから三日が経過した頃…
「やっと甘露寺さんの柔軟にも耐えられるようになってきたな」
「ああ、最初は死ぬかと思ったぜ…」
「伊之助はともかく、カナヲちゃんがあんなに柔らかかったのは意外だったよ…」
炭治郎、玄弥、善逸の三人は蜜璃が作ったパンケーキを食べながら物思いに話していた。
「それにしても…、相変わらずこの"ぱんけーき"ってやつは甘いな…」
「蜂蜜をふんだんに使っているから甘いよな…」
そう、蜜璃が作ったパンケーキには蜂蜜の元となる
「この甘さも食べ続けると馴れるよな…」
「うんうん、でも…」
善逸がふと炭治郎の方に視線を向けると
「炭治郎、あ~ん」
「あ~ん、…うん、美味しい。カナヲ、あ~ん」
「あ~ん…、美味しい」
炭治郎とカナヲがお互いのパンケーキを食べさせあっていた。しかもその周りには桃色の空間が広がっていた。
「あの甘い空間には何時まで経っても慣れないよな…」
「確かに…」
炭治郎とカナヲの『
…
……
………
「お前たちか、待っていたぞ」
炭治郎とカナヲの『桃色空間』を見て口の中が更に甘くなった日から更に三日、炭治郎たちは蜜璃の合格を貰い、次の柱である小芭内の下を訪れていた。
「早速道場に案内する、着いて来い」
小芭内はそそくさと炭治郎たちを道場に案内する。
「蛇柱様、すみません。質問よろしいでしょうか?」
小芭内が道場に案内している途中、善逸が小芭内に質問の許可を申し出た。
「何だ?内容によってはお前を殺す」
「"蛇柱様は恋柱様と恋仲である"と我々隊員の間ではもっぱらの噂ではありますが、女性と仲良くなる"秘訣"をお教え頂きたいのですが」
善逸の質問に小芭内は足を止め、目にも止まらぬ速さで善逸の前に現れた。
「今の質問、本当か?俺と甘露寺が恋仲だと…」
「はっ…、はい!お二人の仲睦まじい所を、隊員の何名かが目撃していると聞いております!」
小芭内の目力に恐怖を感じた善逸は敬礼しながら小芭内の質問に答えていた。
「……そうか」
小芭内はゆっくりと善逸から離れ、再び道場に向かって歩き出した。
「我妻の質問だが、確かに俺と甘露寺は恋仲だ。そして仲良くなる秘訣だが、"しつこく迫らない"。これに限る」
「女性はしつこい男が嫌いだからな、時に支え、時に支えられたりする方が良い…らしい」
小芭内の答えに善逸は何処からか取り出したのか、紙にメモをしていた。
…
……
………
「お前たちには、この障害物を避けつつ木刀を振るってもらう」
道場に到着した炭治郎たちは、その中にある角材が気になっていた。
「あの…、この角材は?」
「んん?ああ、
炭治郎が意を決して小芭内に質問をすると、小芭内は木刀を用意しながら恐ろしい答えを出した。
「お前たち、これを使え。それと嘴平、お前は二刀流だと聞いている。だから木刀を二本持て、いいな?」
「おう!」
炭治郎たちは小芭内から木刀を受け取り、いよいよ稽古が開始となる。
…
……
………
「今日の訓練はこれで終わりだ、しっかりと体を休めておけよ」
「「「「「あっ…ありがとうございました……」」」」」
その日の夕暮れ、小芭内の稽古が終わりを告げ、炭治郎たちは角材に寄り掛かったり、床に大の字になって寝転がっていた。
「蛇柱様…、凄い太刀筋だったな…」
「うん…、障害物の向こうから的確にこちらに攻撃を当ててくるもんね…」
「あの人の太刀筋…、異様な曲がり方するもんな…」
炭治郎たちは各々思ったことを口にしていた。
…
……
………
炭治郎たちが小芭内の下を訪れてから四日、炭治郎たちは小芭内の攻撃を避けつつ、自分からも攻撃が出来るようになっていた。
そして攻撃が当たり、小芭内の羽織の裾が切れたら稽古は合格となった。
「これで俺の稽古は全員合格だ、次の柱である煉獄の下へ向かうがいい」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
炭治郎たちは小芭内に礼を言って蛇屋敷を去った。
余談だが、伊之助は稽古中に『玖ノ牙 伸・うねり裂き』を新たに完成させた。そして小芭内は蜜璃を卑猥な視線で見ていた隊員を悉く角材に括りつけていったのだった。
…
……
………
「おお竈門少年、栗花落少女、我妻少年、嘴平少年、不死川少年!待っていたぞ!」
「煉獄さん、お久しぶりです!稽古、よろしくお願いします!」
炎屋敷こと煉獄家を訪れた炭治郎たちは、杏寿郎に挨拶をしようとしたら、先に挨拶をされてしまった。
「うむ、元気があってよろしい!では早速俺の稽古を説明しよう!俺の稽古は模擬戦だ!互いに戦い、十回勝利したら先に進めるぞ!」
「だが、型や波紋を使用した場合、最初からやり直しとなる!因みに負けても勝利回数は無くならないので安心したまえ!」
杏寿郎は稽古の内容を説明するが、余りにも声が大きいため、全員耳を手で塞いでいた。
「説明は以上である!ではまず、我妻少年と嘴平少年、不死川少年と栗花落少女の組で模擬戦を始めたまえ!竈門少年は俺自ら相手をしよう!」
「よろしくお願いします!」
こうして炭治郎たちの稽古が開始された。
…
……
………
稽古を開始してから五日が経過していた。炭治郎たちは互いの力量や癖を知っている性か、中々攻撃が決まらず、睨みあったまま微動だにしないことがよくあった。
しかし、この日から小芭内の稽古を終えた隊員たちが来たため、炭治郎たちは難なく十勝を勝ち得たのだった。
炭治郎たちは煉獄家の出立を翌日にし、この日は煉獄家でのんびり過ごすのだった。
…
……
………
「最初はお前らかァ、よく来たなァ」
「「「風柱様、よろしくお願いします!」」」
「兄ちゃん、よろしく」
「よろしく頼むぜ、傷だらけのオッサン」
煉獄家で休養を取った炭治郎たちは実弥の下を訪れ、挨拶を交わした。
「おう、こちらこそよろしく頼むぜェ。けど、稽古は明日からにする、今日はゆっくりと休みなァ」
「ありがとうございます。あっ、それとおはぎをお持ちしましたので、後で食べて下さい」
炭治郎は持っていた包みを実弥に手渡す。実は炭治郎たちは実弥の下へ訪れる前に和菓子屋に足を運び、おはぎを買っていたのだ。
因みにおはぎを選んだのは玄弥である。
「おう悪いな。…んっ?これは俺の一番の好物じゃねェか!良く分かったなァ」
「これを選んだのは玄弥なんです」
「兄ちゃん、小さい時からこのおはぎをよく食べていたからな、覚えていたんだよ」
実弥はおはぎの中でも一番の好物であることに気付き、炭治郎が誰が選んだのかを話し、玄弥は照れ臭そうに頬を掻いていた。
「そうかァ。ありがとうな、玄弥、炭治郎。今日のおやつはこのおはぎにしよう、数が多いみたいだから、お前らにも分けてやるぜェ」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
実弥は嬉しそうに炭治郎と玄弥にお礼を言って、おはぎを炭治郎たちに分けあった。
…
……
………
「全員いるなァ?それじゃ稽古を始めるぜェ。俺の稽古は"無限打ち込み稽古"、お前ら全員で俺に挑んでこい。そして俺に一撃を当てれば合格だァ」
翌日、風屋敷の庭に炭治郎たちが一列に並び、眼前にいる実弥が稽古の内容を説明する。
「煉獄の所では型や波紋は使用禁止だったが、俺の所では使用可能だァ。ここまでで何か質問はあるかァ?」
実弥の質問に炭治郎たちは首を横に振った。
「なら、始めるぜェ。遠慮無く掛かって来なァ!」
…
……
………
実弥の稽古が始まってから三日、炭治郎たちは未だ実弥に一撃を与えることはできなかった。
「よし、休憩だ。しっかり水飲んどけよなァ」
休憩を言い渡した実弥は屋敷の中へと入り、炭治郎たちは縁側に置いてある桶から水を掬って飲み、同じく縁側に置いてある梅干しを頬張った。
モグモグ「不死川さん、遠慮無いなぁ…」
モグモグ「俺たちが四方八方から攻撃しているのに、その全てに反応しているからな」
モグモグ「下手したら、伊之助と同じくらい気配に敏感なのかもな…」
炭治郎、善逸、玄弥の三人は梅干しを食べながら実弥の実力を感じていた。
…
……
………
炭治郎たちが実弥の下を訪れてから更に十日、炭治郎の他にも隊員たちが徐々に集まりだし、流石の実弥も力加減が難しくなっていた。
隊員の一人が実弥に不意打ちをしようとすると、その気配を察した実弥が強く反撃をしてしまい、相手を気絶させる程だった。
しかし炭治郎たちはその実弥の攻撃すらも受け流せるようになっており、遂に実弥の一瞬の隙を突いて一撃を与えた。
「今俺に一撃を与えた奴は合格だァ、次の柱である悲鳴嶼さんの所へ向かいなァ」
構えを解いた実弥は炭治郎たちに合格を出し、そのまま屋敷の中へと入っていった。どうやら丁度休憩の時間だったらしく、隊員たちもその場に座り込んだりして体を休めていった。
…
……
………
「なぁ、悲鳴嶼さんの屋敷ってまだ距離あるのか?」
実弥の下を去った炭治郎たちは、玄弥の案内の下、行冥がいる屋敷に足を運んでいた。
「後もう少しだ、滝の音が聞こえるからな」
屋敷までの距離に愚痴を溢していた善逸に玄弥が残りの距離を言う。
「よくぞ…参られた…」
そして滝がある所に到着した炭治郎たちの前に行冥が待ち構えていた。
「最も重要なのは体の中心…、足腰である。強靭な足腰で体を安定させることは正確な攻撃と崩れぬ防御へと繋がる」
「まず滝に打たれる修行をしてもらい……、次に丸太を三本担ぐ修行…、最後にあそこにある岩を一町先まで押して運ぶ修行…」
「私の修行はこの3つのみの簡単なもの…」
行冥は手にしている数珠を鳴らしながら稽古の内容を説明する。
「分かりました。よしみんな、行くぞ!」ガバッ
炭治郎は着ていた隊服の上着を脱ぎ、伊之助みたいに上半身裸になると、善逸、玄弥も炭治郎に続かんとばかりに上着を脱いだ。
「ヒャッ!」
すると、カナヲが顔に手を当てて踞った。
「カナヲ、どうした?」
炭治郎がカナヲの声を聞いて側に寄ると
「炭治郎の裸…、見ちゃった…//////」ボソボソ
恥ずかしそうに喋っていた。
「カナヲ、いったいどうし……あっ」
炭治郎はどうして顔を隠すのか聞こうとした所で、今自分たちがどんな格好をしているのかを察した。
「カナヲ…、ごめん」
「べっ、別に炭治郎が悪い訳じゃ無いから…、私、向こうで着替えて来るね//////」
炭治郎はカナヲに謝り、カナヲは茂みの向こうに走って行ってしまった。
…
……
………
そして炭治郎たちは上半身肌(カナヲはサラシ姿)で滝に打たれる修行を始めることにした。しかし
「うわっ、冷たい!」
川に入った善逸が声を上げた。そう、川の水は予想以上に"冷たかった"のだ。
「まずは体に水を当てて冷たさに慣れよう」パシャパシャ
炭治郎は自分の体に川の水を掛け始めた。善逸、玄弥、カナヲも炭治郎の真似をし、冷たさに慣れようとする。
「そんなんしゃらくせぇ!俺は行くぜ、猪突猛進!」
だが伊之助は打ち水をせず、滝に向かって突進してしまった。
「ちょっ、伊之助!?」
「あいつ…、この川の冷たさを感じないのか…(-_-;)」
「ただ何も考えていないだけだろ…(-_-;)」
炭治郎は伊之助の行動に驚き、善逸と玄弥は呆れていた。
そして伊之助を除く四名は打ち水をして川の冷たさに慣れた所で滝の所まで進む。伊之助は先に滝に打たれており、炭治郎たちも伊之助の横に並んで念仏を唱えながら滝に打たれ始めた。
何故念仏を唱えるのか?それは炭治郎たちが打ち水をしている時に
「滝に打たれる時には念仏を唱えなさい…、そうすれば集中でき、意識があることも伝えられる…」
と行冥に言われたからだった。
炭治郎たちが念仏を唱えている中、伊之助は水の冷たさに耐えられず滝から出ようとしていた。しかし両隣から聞こえる炭治郎たちの声の性で伊之助のプライドが水から出るのを阻止していた。
…
……
………
「まさか伊之助が死にかけていたなんて…」
「水の冷たさに耐えられなかったんだろうな…」
炭治郎たちは川の側で焚き火をしており、その火で川から獲った魚を焼いていた。
「炭治郎、魚焼けたよ」
「ありがとうカナヲ、それじゃ腹ごしらえをしようか」
炭治郎たちは焼けた魚を掴み、それぞれ口にした。
「…美味しい」
「ああ、脂が乗っていて旨いな」
「焼き加減も絶妙だし、文句の着け所が無いな」
カナヲ、玄弥、善逸の三人は魚の旨さに舌鼓を打っていた。
「…にしても、あの玉ジャリジャリ親父、すげェよ。会った時からビビッと来たぜ、間違いないねぇ鬼殺隊最強だ」ボリボリ
魚を骨まで食べていた伊之助が不意にそんなことを口にした。
「そりゃそうさ、何たって悲鳴嶼さんは兄ちゃんが入隊してからずっと柱を勤めているんだからな」
「私も師範から聞いたんだけど、師範とカナエ姉さんを鬼から助けてくれたのはまだ隊員だった岩柱様だったんだって」
伊之助の予想に同意するかのように玄弥とカナヲが話す。
「へぇ~、悲鳴嶼さんってそんなに凄いんだ…」
「多分兄ちゃんの稽古を悲鳴嶼さんの所でやったら、誰も手出しできないと思うな」
「「「同感」」」
玄弥の予想に同意する炭治郎、善逸、カナヲだった。
因みに焼いていた魚は伊之助が殆んど平らげてしまい、あんまり食べられなかった全員からお叱りを貰ったのは言うまでも無い。