行冥の修行を終えた炭治郎たちは、最後の柱である錆兎がいる『水屋敷』を目指して『千年竹林』を歩いていた。
「もう少しで水柱様が住んでいる屋敷に到着するな。……あれ?」
炭治郎は先導しながら進んでいると、屋敷の方から"以前嗅いだ匂い"がしたため、足を止めた。
「炭治郎、どうしたの?」
「うん、水屋敷の方から水柱様たち"以外"にも嗅いだことがある匂いがしたから…。この匂いは…、玄弥のお兄さんかな?」
足を止めた炭治郎にカナヲが質問をすると、炭治郎は足を止めた理由を話した。
「えっ、本当?っ……、本当だ、風柱様の音がする。それにこの音…、木刀を打ち合っている音だ」
善逸が耳をすませると、確かに炭治郎の言う通り、実弥の音を聞き取った。
…
……
………
『風の呼吸・壱ノ型 塵旋風・削ぎ』
『水の呼吸・肆ノ型 打ち潮』
炭治郎たちは水屋敷の方へ向かってみると、水柱の錆兎と風柱の実弥が戦っていた。
「流石全集中の呼吸の中でも一~二を争う速さを持つ呼吸。受け流した"だけ"で木刀に皹が入りやがった…」
「そっちこそ全集中の呼吸の中でも一番多い型を所有する呼吸だァ、受け流されるとは思わなかったぜェ」
「けど、これならどうだァ!」
『風の呼吸・伍ノ型 木枯らし颪』
『水の呼吸・漆ノ型 雫波紋突き』
実弥と錆兎は互いの型をぶつけ合う。すると
バキッ バキッ
お互いの木刀が根本から折れてしまった。
「よォし、次は素手で
「男に生まれたならば、引くことは赦されない!受けて立とう!」
実弥と錆兎は折れた木刀を放り捨て、ファイティングポーズを取る。
「やれやれ…、んっ?おい、そこにいるのは誰だっ!?」
『っ!?!?!?』ビクッ
二人の戦いを見ていた義勇が大声で問い質すと、垣根から炭治郎たちが姿を現した。
「んァ?んだよォ、玄弥たちじゃねェか」
「此処に来たと言うことは、悲鳴嶼さんの稽古を突破したと言うわけか」
炭治郎たちの姿を見た実弥と錆兎はファイティングポーズを解いた。
「あの…、お二人は一体何を…?」
「錆兎と実弥は"柱稽古"をしていたんだ」
炭治郎の質問に義勇が真っ先に答えた。
「柱稽古…ですか?今俺たちがやってる…」
「"柱稽古"には2つの意味があってな、1つは今お前たちがやってる"柱の階級を持つ者が下の階級を持つ者を鍛える"もの。もう1つは文字通り"柱同士の稽古"」
「今錆兎たちがやっていたのは、もう1つの"柱稽古"だったのさ」
義勇の説明に炭治郎たちは納得した様子で首を縦に振っていた。
「そんじゃ、俺はそろそろお暇するわァ」フリフリ
実弥は手を振りながら水屋敷を後にした。
…
……
………
「それじゃいよいよ最後の稽古をお前たちに課す。俺の訓練の内容は"連携"だ。一体の鬼に対して俺たちは複数の仲間と共に狩ることがある」
「だが、連携が出来なければ互いの足を引っ張るだけでは無く、鬼の餌食にもなってしまう」
「つまり、上手く連携を取れれば無傷で鬼に圧勝することができる」
錆兎の説明に炭治郎たちは感心していた。
「それではまず、それぞれ組を作ってもらう。よく話し合って組を決めるんだ」
錆兎の話を聞いた炭治郎たちは全員で話し合った。そして炭治郎とカナヲ、善逸と伊之助の
「不死川、お前は一人だが、良かったのか?」
「えぇ、俺は全集中の呼吸が"使えません"から。でも、後で炭治郎や善逸が組んでくれる約束をしてくれましたから大丈夫です」
一人省かれた玄弥を心配した錆兎は、玄弥に声を掛けると、玄弥は後で組を組んでくれることを話した。
「なら大丈夫だな。よし!それじゃ稽古を始めるとしよう!まずは竈門、栗花落の組だ。準備してくれ。他の者は壁際に寄って稽古を観察すること。義勇、頼む」
「了解した」
まず最初に炭治郎・カナヲペアが錆兎・義勇ペアと戦うことになり、他の者は道場の壁際に寄った。
…
……
………
「よし、今日の稽古はこれまで」
「「「「「あっ…、ありがとうございました…」」」」」
日暮れ時、錆兎が稽古終了の合図を出すと、炭治郎たちは道場の床に寝そべってしまった。
「きっ…、キツ過ぎる…」
「相手の行動を先読みしないと…、仲間に当たる…」
「カナヲ、ごめん…。俺がしっかりしていれば…」
「炭治郎の…、せいじゃ…、無いよ…」
炭治郎たちは全員疲れ果てていた。伊之助に関しては疲れ過ぎて声も出せない様子だった。
パンパンッ「ほ~ら、何時までも
そんな炭治郎たちに真菰が手を叩きながら指示する。
「まっ…、真菰さん…。流石に…、掃除は…」
「掃除は私も手伝うから、ほらさっさと起きる!」
真菰の指示にカナヲが意義を申し立てようとするが、一蹴されてしまい、炭治郎たちはやっとの思いで起き上がり、掃除を開始した。
そして夕食の時間となり、炭治郎たちは真菰の案内で居間に通されると、そこにはお膳の上に天ぷらがあった。
「今日は稽古初日と言うことで、ちょっと張り切りました」
どうやら料理をしたのは真菰のようで、天ぷらの出来も定食屋に出ている物と差程変わりは無かった。
天ぷらの他にも義勇の大好物である"鮭大根"や汁物、"五目炊き込みご飯"などがあった。
「よっしゃ、飯だ飯だ!」
食糧を見た伊之助は我先にと一番量が多そうな席を探す。
「こら嘴平君!貴方は掃除を殆んどやって無かったでしょ!罰として貴方の席はあそこ!」
真菰が指を指した所を見ると、他のお膳に比べて一回り"小さい"お膳があった。
「おいっ!何で俺の分だけ少ないんだ!もっと多く用意しやがれ!」
「生意気言うんじゃありません!」ビシッ
伊之助は自分のお膳の量に不服を持ち、真菰に意義を唱えると、真菰は伊之助にデコピンをした。
「言ったでしょ?ちゃんと掃除をしなかった罰だって。みんな、自分のご飯を彼にあげないようにね?」
真菰は炭治郎たちに"にっこり"笑って伊之助に"餌付け"しないように釘を刺した。
後に
「真菰さんから鼻が火傷するくらいの"怒りの匂い"がしました」
「顔は笑っているけど、目が笑っていなかった」
「真菰さんから聞いたことの無い音が聞こえました」
と語っていた。因みに伊之助はと言うと、真菰の威圧に震え上がり、素直に大人しくなっていた。
…
……
………
炭治郎たちが錆兎の下で稽古を始めてから10日、他のメンバーとの連携も大分取れるようになった。
「よし、今日の稽古はこれまで。何時ものように道場の掃除はしっかりやるように。では解散」
錆兎の号令で稽古は終了し、炭治郎たちは道場の掃除に取りかかった。もちろん伊之助も真面目に掃除をしていた。
「……どう見る?」
「二人ずつの連携もしっかりしてきた。これなら人数を増やしても問題は無いだろう。最終的に"五人全員"の連携が取れれば…」
「稽古は終わり…か」
錆兎と義勇は炭治郎たちの道場の掃除を覗き見ながら話をしていた。
…
……
………
炭治郎たちが錆兎の下で稽古を始めてから更に10日、炭治郎たちは五人全員での連携をしていた。
そして遂に炭治郎たちは錆兎と義勇、真菰の三人組から一撃も受けずに勝ったのだった。
「見事だ、これで俺の稽古は全て終わりだ」
「よくやったな、お前たち」
「今までお疲れ様。今日はご褒美に食事を豪勢にするから、楽しみに待っていてね」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
炭治郎たちは錆兎たちにお礼を言いながら頭を下げた。
そして道場の掃除を終えた炭治郎たちの目に飛び込んできたのは、稽古初日と同じ豪勢な食卓が並んでいた。
「さあみんな、遠慮せず食べて食べて!」
「「「「「いただきます!」」」」」
炭治郎たちは我先にと食卓に着き、ご飯を頬張った。
…
……
………
「お前たちは俺たち柱が課す稽古を全てやり遂げた」
翌日、水屋敷を後にしようとしていた炭治郎たちに錆兎たちが話をしていた。
「今までの稽古はお前たちにとって掛け替えの無い"宝物"となる。稽古の中で教わったこと、忘れるなよ?」
「またいつでも遊びに来ていいからね」
「「「「「はい!ありがとうございました」」」」」
炭治郎たちは錆兎たちに見送られながら水屋敷を後にした。