全ての柱稽古をやり終えた炭治郎たちは、炭治郎の師範である承太郎がいる『波紋屋敷』に向かっていた。
「よく戻ってきたな、炭治郎」
すると、門の前に承太郎がいた。
「師範、ただいま戻りました!」
「お帰り、稽古の詳細はアヴドゥルから聞いている。よくやり遂げたな」ナデナデ
承太郎が炭治郎の頭を撫でると、炭治郎は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「この稽古でどれだけ力が付いたか見てやろう」
承太郎は道場を親指で指しながら移動を始めると、炭治郎たちも承太郎の後を追いかけた。
…
……
………
炭治郎たちが道場に到着すると、既に炭治郎の親である炭十郎に葵枝、弟や妹の竹雄、茂、花子、六太、更には蝶屋敷のカナエ、アオイ、なほ、すみ、きよが揃っていた。
炭治郎と承太郎は互いに木刀を持ち、正面に並ぶ。
「では僭越ながら私神崎アオイが審判を勤めさせていただきます。では、始め!」
「《
《オラァ!》
「
『日の呼吸・壱ノ型 円舞』
アオイの号令で試合が開始されると同時に承太郎と炭治郎は弾かれるように接近し、お互いの
ガキンッ
《星の白金》と《太陽の戦士》の攻撃がぶつかった瞬間、金属音が鳴り響いた。そして承太郎と炭治郎もまた、互いの木刀を振るい、鍔迫り合いになっていた。
互いに一撃を繰り出した承太郎と炭治郎は、一瞬で距離を取り、再び接近する。
『日の呼吸・捌ノ型
《オラァ!》
《太陽の戦士》が攻撃範囲が読みにくい技を使用するが、《星の白金》は右の手甲の飾りで受け止め、左拳で迎撃する。
『日の呼吸・拾壱ノ型
しかし、《太陽の戦士》は《星の白金》の攻撃を残像が残るほどの身のこなしで避けた。
『日の呼吸・玖ノ型
《星の白金》の攻撃を避けた《太陽の戦士》は炭治郎と共に承太郎に接近し、技を繰り出す。
しかし《太陽の戦士》の攻撃は"空を斬った"。なぜなら
承太郎は《星の白金》を"戻した"からだった。
《オラァ!》
承太郎の中に戻った《星の白金》は再び承太郎の中から飛び出し、右フックで《太陽の戦士》の左脇腹を殴った。
「うぐっ!?」
それと同時に炭治郎は自分の左脇腹に殴られた"衝撃"が伝わった。
…
……
………
「炭治郎、どうしたんだろう?」
「カナヲちゃん、どうしたの?」
承太郎と炭治郎の試合を見ていたカナヲが呟き、それを聞いた善逸がカナヲに質問をする。
「今炭治郎が脇腹を押さえたような仕草をしたから…」
「脇腹を…?……本当だ、左の脇腹を押さえてる」
カナヲが指摘したことを疑問に思った善逸が炭治郎を見てみると、確かに炭治郎は脇腹を押さえながら戦っていた。
「無理も無いわい、炭治郎は承太郎の《幽波紋》の攻撃を受けたのじゃからな」
そこにジョセフが遅れてやって来た。
「《幽波紋》と《幽波紋使い》は"一心同体"、《幽波紋》が攻撃を喰らえば《幽波紋使い》も同じ所に攻撃を受ける。《幽波紋使い》同士の戦いでは、どちらが先に相手の《幽波紋》を倒せるかが勝敗の鍵となる」
「炭治郎…」
「炭治郎…!」
ジョセフの解説を聞いたカナヲは、手を祈るように組み、善逸は固唾を飲みながら戦いを見守っていた。
…
……
………
《オラァ!》
『日の呼吸・肆ノ型
《オラァ!》
『日の呼吸・陸ノ型
《オラァ!》
『日の呼吸・伍ノ型
ジョセフが解説をしている間にも、承太郎と炭治郎の試合は過激になっていた。
《太陽の戦士》が攻撃をすれば、《星の白金》がガードし、《星の白金》がカウンターを仕掛ければ、《太陽の戦士》がそれを受け流す。先程の《星の白金》が与えた一撃を除けば、一進一退の攻防が繰り広げられていた。
しかし、その戦いも終わりを向かえようとしていた。
バキッ
「なっ!?」
「隙有り!」
バシッ
承太郎の攻撃を受け止めた炭治郎の木刀が折れてしまい、炭治郎は驚きを露にする。そしてその隙を突いた承太郎が炭治郎に一撃を与えた。
「そこまで!この試合、波紋柱・空条承太郎様の勝ち!」
承太郎の一撃を見たアオイが終了の号令を出し、承太郎と炭治郎は正面に向き合い、一礼をした。
「炭治郎、お疲れさま」
「お疲れさま炭治郎、惜しかったな」
カナヲは炭治郎に手拭いを渡し、善逸は炭治郎を労った。
「ありがとうカナヲ、善逸。いやぁ~、柱稽古で強くなったと思ったんだけどなぁ。まだまだ師範には敵わないや」
炭治郎はカナヲから受け取った手拭いで汗を
「いや俺も何回か危うい所があったからな。木刀が折れなかったら、勝っていたのは炭治郎かもしれん」
そこに承太郎が手拭いで汗を拭きながらやって来た。
「師範…」
「炭治郎、随分と強くなったな。これでは何時か追い抜かれるかもしれんな」
「師範、俺はまだまだ弱いです。師範に頼ってばかりです。けど、何時かは師範に頼らずに戦えればと思っています。それまでの間、御指導宜しくお願いします!」
炭治郎は承太郎に深々と頭を下げる。
「……ふぅ、やれやれだぜ」
承太郎はトレードマークとも呼べる帽子を被り直すと、道場の外へと向かった。
「何をしている?早くついて来な」
承太郎に言われ、炭治郎たちは承太郎の後を追い掛ける。そして承太郎が行き着いた所は承太郎自身の部屋であった。
承太郎は部屋の扉を開け、中に入ると、部屋に飾ってあった帽子を1つ取り、炭治郎の下へ向かった。
「これは今俺が被っている帽子と同じ
承太郎は帽子を炭治郎の頭に被せた。
「師範…、ありがとうございます!」
炭治郎は承太郎から被せてもらった帽子を被り直し、承太郎にお礼を言った。
それから炭治郎たちは数日間休息を取った。その間も承太郎やカナヲたちと訓練をしたり、柱稽古に参加していた禰豆子やポルナレフたちが帰って来たりと、日々の疲れを癒していた。
…
……
………
炭治郎たちが波紋屋敷で休息を取ってから数日後、炭治郎は鍛練を終えて自室に戻っている最中だった。
「あら、炭治郎さん。お久しぶりです」
「珠世さん!お久しぶりです!」
すると廊下の向こう側から珠世が歩いているのを見つけた。珠世は炭治郎に挨拶を交わし、炭治郎もまた、挨拶を交わした。
「珠世さん、ここ暫く姿を見ませんでしたけど、何をされていたんですか?」
「私は今、しのぶさんと一緒に"鬼を人間に戻す薬"を研究、開発しているのですよ。丁度区切りが着いたので、休憩を兼ねてお茶を一服貰おうかと」
炭治郎は戻ってからの数日間、しのぶと珠世、愈史郎の三人の姿を見てはいなかったので、何をしていたのかを質問する。すると珠世からは驚くべき発言を口にしたのだった。
「"鬼を人間に戻す薬"…ですか?」
「ええ。その薬が完成すれば、あの憎き
炭治郎は先程の珠世の発言に耳を疑った。
「あの…、珠世さん。もしかして…、今無惨のこと…」
「炭治郎さん、世の中には…、知らなくて良いこともあるんですよ?」ニコッ
「サッ…、サーイエッサー!」ガタガタブルブル
珠世の女性らしからぬ威圧感に炭治郎は思わず震えながら敬礼をしてしまった。
「それでは炭治郎さん、失礼」
珠世は笑みを絶えないまま、炭治郎の横を通り過ぎた。炭治郎は敬礼した格好のまま、未だに動けずにいた。
それから炭治郎は、度々後ろから視線を感じるようになり、背筋が凍る思いをしていた。
「……うふっ」