善逸、獪岳の"雷一派"が上弦の鬼を倒したのと同時刻、承太郎と炭治郎の二人は"とある鬼"と対峙していた。
「久しぶりだな、空条承太郎。お前とこうして再び会えるのを頚を長くして待っていたぞ」
承太郎たちの目の前に現れたのは、以前"無限列車"の時に出会った"十二鬼月・上弦の弐 猗窩座"だった。
「誰かと思えば、無限列車の時の鬼か」
「そうだ、改めて名乗ろう。俺の名は猗窩座、十二鬼月・上弦の弐だ」
猗窩座は改めて自己紹介をする。
「
承太郎は親指で自分の左側を指差し、退くよう言う。
「冗談、貴様のような"強者"を前に逃げるなど」
『術式展開 破壊殺・羅針』
だが猗窩座はそれを一蹴し、構えを取った。
「さぁ、俺とお前、どちらが強いか決着を着けよう!」
猗窩座は足に力を込め、床を踏み、承太郎に詰め寄ろうとした。
「グハァッ!?」
その時、猗窩座が突如後ろに"吹っ飛んだ"。
…
……
………
時は猗窩座が吹っ飛んだ数秒前に遡る…。
承太郎は猗窩座と対峙していた時、既に自身の《
そして猗窩座が足に力を込めた瞬間、
「
ドゥ~ン…、コッチ…、コッチ…、コッチ…
《星の白金》の特殊能力を使い、"時間を止めた"のだった。
《オラオラオラオラオラオラ、オラオラオラオラオラ、オラオラオラオラオラ、オラオラオラオラオラ!》
《オ~ラァ!オラオラオラオラオラ!オラオラオラオラオラ、オラオラオラオラオラ、オラオラオラオラオラ!オラァ!》
そして猗窩座を文字通り"タコ殴り"にし、最後に《星の白金》に自分の日輪刀を渡し、猗窩座の頚を横一文字に斬った。
「10秒、"時は動き出す"」
「グハァッ!?」
そして止めていた時を動かした瞬間、猗窩座は吹っ飛ばされたのだった。
…
……
………
「(ばっ…、馬鹿な!?奴は指一本たりとも動かしてはいないのに、俺の体をぶっ飛ばした挙げ句に頚を斬っていたなんて!?奴の動きには細心の注意を払っていたはずなのに…、奴は…俺の、予想の遥か上を…、行って…いる…のか……)」
猗窩座は斬られた頚を繋げようとしていても、腕は既に使い物にならなかったため、頚を繋げることは叶わず、崩壊してしまった。
「やれやれだぜ…」
崩壊する猗窩座の姿を見ていた承太郎は、ため息を一つ吐くと、被っていた帽子を被り直した。
「あの…、師範。あいつはどうして吹っ飛ばされたのでしょうか?」
今まで疑問に思っていた炭治郎が、思い切って承太郎に質問をする。
「奴が吹っ飛んだ理由…、それは俺が"時を止めた"からだ。俺の《幽波紋》、《星の白金》の
「そして時を止めた空間で起きた"衝撃"は、時を動かした瞬間に一斉に襲い掛かる」
承太郎の説明に炭治郎は身震いをした。
「だが、この能力には"欠点"がある。再び時を止めるためには"止めた時間の倍の時間"を過ごさなければならない」
「例を上げるなら、"5秒時を止めた場合、次に時間を止められるのは10秒後"と言う訳だ」
「???」
承太郎が幽波紋能力の欠点について説明をするが、炭治郎は理解が追い付かず、頭に『?』を浮かべていた。
「……ハァ、つまり"一度能力を使ったら、再び使うのに少し時間が掛かる"と思えばいい」
承太郎の2回目の説明で、ようやく炭治郎は理解した。
…
……
………
承太郎が猗窩座との
『月の呼吸・伍ノ型
『月の呼吸・参ノ型
『月の呼吸・陸ノ型
技を繰り出しているのは"十二鬼月・上弦の壱
しかも彼は呼吸をする時、『ホオオオ』という音を出していた。
それもそのはず、彼が鬼になる前の名は『
「くっそ!全集中の呼吸が使える鬼ってのは、つくづく厄介だぜ!」
「同感だな!」
黒死牟と戦っていたのは、時透兄弟に不死川兄弟、更にポルナレフに花京院の六名だった。
「ふむ…、六人の内、呼吸を……使えるのは、三人…か」
黒死牟は"透き通る世界"を使い、全集中の呼吸を使える者を見破っていた。
「全集中の呼吸が使えないからって、見くびるなよ?"
玄弥は波紋を使い、黒死牟に近寄る。そして黒死牟の"髪"を一部分だけ斬ったのだった。
何故玄弥の攻撃が黒死牟の髪だけを斬ったのか?それは玄弥の刀が黒死牟の頚を捉える寸前、黒死牟が"しゃかみ"、刀が結っていた髪房だけを斬ったのだった。
「くそっ、髪だけしか斬れなかった!」
「焦るな玄弥ァ!"急いては事を仕損じる"って言うからなァ、落ち着いて隙を見定めればいい!」
「……ごめん、兄ちゃん」
玄弥は黒死牟の髪だけを斬ったことに焦りを感じるが、それを実弥が落ち着かせた。
「しかしこれじゃ埒が開かねぇ。花京院、援護頼むぜ!」
「了解した!」
玄弥が下がったのを見計らったポルナレフは、花京院に援護を依頼し、レイピア型の日輪刀を持ち、黒死牟に向かって走り出した。
「無策で来る……か。なら、その頚…、斬り落として……やろう」
「そうはいくかよ!《
黒死牟がポルナレフの頚を斬ろうとしたその時、ポルナレフの《幽波紋》である《銀の戦車》が黒死牟の刀を"受け流した"。
「今だ!《
そして黒死牟の隙を突いた花京院が《法皇の緑》を出し、技を繰り出す。
だが、黒死牟は《エメラルドスプラッシュ》を"避けてしまった"のだ。
「なに!?《エメラルドスプラッシュ》を避けただと!?」
花京院は自分の技が避けられたことに驚きを隠せなかった。
「無駄な…こと。私には……"見えて……いる"…」
「"見えている"……だと?」
黒死牟の"見えている"発言に、ポルナレフは疑問を感じた。
「まさか…、《幽波紋》使い?!」
「んなバカな!?奴は《幽波紋》を顕現させていなかったそ!」
花京院は黒死牟が《幽波紋》使いではないかと勘ぐるが、ポルナレフはそれを否定した。
「そこの…宍色の髪の……男の言う…通り。私は《幽波紋》……使い…だ」
黒死牟は自らを《幽波紋》使いだと暴露すると、突如俯いた。
「フッフッフッ…、"久しぶり"だな。ジャン=ピエール・ポルナレフ!」
顔を上げた黒死牟は、雰囲気が変わり、ポルナレフに久しぶりと挨拶した。
「この感じ…、テメェまさか!"アヌビス神"か!?」
「その通り!俺様はかつてエジプトの地で貴様の体を乗っ取った『エジプト九英神』の一体、"アヌビス神"様だ!」
なんと黒死牟の雰囲気が変わった正体は、かつてエジプトの地で、ポルナレフの体を乗っ取り、最後は偶然と自らのミスによって倒された『エジプト九英神』の一体、刀に宿る《幽波紋》、"アヌビス神"だったのだ。
「なんでテメェが…」
「"ここにいるのか"って?正直ぶっちゃけちまえば、俺様もよくわからねぇんだわ」
「……は?」
「いや気づいた時には既に黒死牟の旦那の刀に宿っていてな?それで体を乗っ取っても主導権は変わらなかったし…」
アヌビス神の暴露にポルナレフは目が点になっていた。
「アヌビス神…よ……、そろそろお喋りは……終わり…だ」
「そうかい旦那?なら、俺様が持つ"記憶"で、奴らを細切れにしてやんな!」
「承知!」
『月の呼吸・捌ノ型
『月の呼吸・玖ノ型 降り月・連面』
『月の呼吸・拾ノ型
『月の呼吸・拾肆ノ型
主導権を戻されたアヌビス神は、刀身を変貌させ、黒死牟は型を次々に繰り出した。
「くそっ、野郎刀を変形させた途端、攻撃の頻度が増して来やがった!」
「どうするポルナレフ?!《幽波紋》が奴に見える今、僕たちの攻撃も見切られてしまうぞ!?」
ポルナレフと花京院は黒死牟の攻撃を避けながら打開策を考える。
「ンなこたぁ分かってるよ!(奴は俺の
ポルナレフは自分の奥の手である刀身を飛ばす攻撃を"知られて"いるため、使うことはできなかった。
ガキュン!
すると、玄弥が南蛮銃を構え、散弾を撃った。
しかし、散らばった銃弾は全て黒死牟に斬られてしまった。
「……ん?」
だが、黒死牟の刀を見てみると、散弾を斬った箇所が僅かではあるが、"欠けていた"のだ。
「玄弥、一体なにを…」
「《波紋疾走》の応用で弾に波紋を纏わせて撃ったんだ。ひょっとすれば隙を少しでも作れるかなって」
「でも、無駄骨に終わっちゃったけどね」
玄弥は頬をポリポリと掻き、落ち込んだ。
「いや、そうでもねェみてぇだ。玄弥が撃った弾を斬った奴の刀が欠けた、つまり波紋を加えた攻撃なら、有効打があるって訳だァ」
しかし実弥が先程起きたことを玄弥に話した。
「それじゃ、波紋が使える俺が…」
「あァ、"勝利の鍵"になるかもしれねェ」
実弥の話を聞いていた玄弥は、やる気を取り戻した。
「お前らァ!ここが正念場だァ!気合い入れて行くぞォ!」
「「「「「応!」」」」」
実弥の喝に全員が返事をした。
「無駄な……こと…、この刀は…我が血肉で作られた物…。刃が欠けても……元に戻る」
『そう言うこった!旦那の技と俺様の記憶があれば、鬼に金棒って訳だ!』
黒死牟は静かに、アヌビス神は意気揚々に話す。
「そんなもん、やってみなけりゃわからねぇだろ!《銀の戦車》!」
ポルナレフが《銀の戦車》を呼び出し、黒死牟に斬り掛かる。黒死牟は《銀の戦車》の攻撃を避けようとする。
「《エメラルドスプラッシュ》!」
しかし避けた先には既に花京院が技を繰り出していて、反応が遅れた黒死牟は花京院の攻撃を喰らってしまった。
「ぐうぅっ!?」
『ぬおっ!?』
しかもその攻撃は黒死牟とアヌビス神にはかなり効いたようだ。
「波紋を使えるのは彼"だけ"とは、思わないことだね」
そう、花京院もジョセフ指導の下、波紋を会得していたのだった。そして《エメラルドスプラッシュ》に波紋を加えて撃ったことで、黒死牟に予想以上のダメージを与えることができたのだ。
「まだ終わらねぇぜ?喰らえ、《銀の戦車》&波紋!」
ポルナレフもまた、花京院同様、ジョセフの指導により波紋を会得しており、《銀の戦車》のレイピアに波紋を流し、黒死牟に無数の切り傷を与えた。
「こいつはオマケだ、遠慮無く受け取れ!」
更に玄弥も波紋を加えた銃弾を撃ち、黒死牟にダメージを与えた。
「貴様ら…、図に乗るのも今の……内だ」
黒死牟は苛立ちを隠せない様子で、玄弥たちを6つの目で睨む。
「俺たちは最初から、図に乗ってなんかいないぜ?図に乗れば油断をする、その油断は敗北を招く恐れがあるからな」
ポルナレフは黒死牟の殺気をものともしない感じで言い放つ。
「お前らァ!一斉攻撃だァ!奴に攻撃する暇を与えるなァ!」
『風の呼吸・捌ノ型
『『霞の呼吸・漆ノ型
「《エメラルドスプラッシュ》!&波紋!」
実弥の合図で全員が一斉に攻撃を開始した。ポルナレフはレイピアに、玄弥は銃弾に波紋を加えた攻撃をし、黒死牟の体力は徐々に減っていった。
黒死牟もまた、反撃を試みようとするが、鬼殺隊の攻撃が多すぎるため、全てに対応することはできなかった。
そして…、
「これで…、止めだ!」
玄弥の波紋を加えた刀が、黒死牟の頚を斬ったのだった。
「まだだ…、まだ私は……終わらぬ!」
黒死牟はなんと斬られた頚を辛うじて繋ぎ止め、自身の姿を鬼と呼ぶに相応しい姿に変貌させた。
『おい旦那!その姿は…』
「五月蝿い黙れ!貴様は大人しく私に使われていればいいのだ!」
黒死牟はアヌビス神の言葉を遮り、玄弥たちに襲い掛かろうとする。
「グゥッ、ガアァ?!」
だが、黒死牟は動きを止めてしまった。
「なっ…、なんだ?」
「一体、どうしちまったんだ?」
花京院やポルナレフたちもまた、黒死牟の動きに疑問を感じ、動きを止めた。
「アヌビス…、貴様……!」
『悪いな旦那、旦那のこと、結構好きだったのに、残念だぜ…』
なんと黒死牟の動きを止めたのはアヌビス神だったのだ。
『お前ら!俺様が動きを止めている隙に旦那を倒せ!』
「なんだと!?一体なぜ!?」
『今の旦那は"生への執着"しか無い!俺様だって今の旦那に使われるのはまっぴら御免だ!』
『ポルナレフ!"今回"もお前たちの勝ちだ。だがなぁ、もし次があれば、絶対に負けねぇ!』
「……次があれば…な」
ポルナレフはレイピア型の日輪刀で黒死牟の頚を斬った。
『……あばよ』
頚を斬られた黒死牟は黙ったまま崩壊し、アヌビス神は別れの言葉を呟いた後、黒死牟の後を追うように消滅した。
…
……
………
「………」
「ポルナレフ…」
黒死牟とアヌビス神が消滅した後、ポルナレフは黒死牟が着ていた服をじっと見つめ、花京院はそんなポルナレフに声をかけることしかできなかった。
「
「…えっ?」
不意に話し始めたポルナレフに、花京院は言葉を詰まらせた。
「一緒に戦える相棒がいて、嬉しかったんだろうな。本当なら意識を乗っ取ることもできただろうに…。今までは他人の体を乗っ取って戦っていたのに、自分を行使してくれる"仲間"がいたから…」
ポルナレフはアヌビス神に同情していた。
「ポルナレフ…」
「って俺っぽく無いな!…よしっ!惨めな俺はここでサヨナラだ!さぁ、残りの鬼を倒しに行くぞ!」
ポルナレフはスタスタと歩いて行った。が、その背中には哀愁が漂っている風に見えた。