突如、2021年から2045年へとタイムスリップしてきた宇宙人・ダスター。彼は、地球環境を保護するために全ての生命を抹消すると宣言。瞬く間に、全てのシンギュラリティ支部を謎のバリアで封印した後、その矛先を亜人に向ける。
一方、間一髪で逃げ延びた四機のサイボーグ……フィニッシュヒム諸岡、クラッシュトリガー生天目、パワードラッグ加藤、レヴェリーソード蓮覚寺は、本徳サイボーグがいるという上野へ急ぐのであった。
――――上野――――
「ここだよ。行きましょう」
地下街に入っていくサイボーグたち。立ち並ぶ商店が彼女たちを出迎える。
蓮覚寺の案内で、諸岡たちは雑然とした通りを歩いていく。
「ここが上野亜人商業組合ですか、初めて来ました」
「ここに本当に本徳サイボーグがいるの?」
諸岡と生天目が辺りを見渡しながら呟く。
「きっと上亜商に出向しているのよ」
「その通り」
加藤の言葉に蓮覚寺はそう答え、そして商店街の一角を指す。
「あの人がターンテーブル水緑、本徳サイボーグよ」
水緑はにこやかに諸岡たちを出迎えた。
「やあやあ同志たち。よくぞ生き延びたね」
巨大なターンテーブルが目を引く。その威圧感とは裏腹に、水緑は快活に話しかけてくる。これが本徳の余裕というものだろうか。
「は、はあ、どうも……」
「大丈夫。上亜商に出向中の他のサイボーグたちにはもう声をかけておいた。作戦の準備に取り掛かってくれている」
「なんだか大変なことになってきましたね……あのダスターとかいう宇宙人、本当に倒せるんですかね?」
「ふむ。それについては情報がないとね。君たちが戦った時の話を教えてくれ」
諸岡は先ほどの戦闘について詳細に語った。
「なるほど。膨大な徳で時間への干渉と高密度のエネルギー弾を可能にしているのか」
水緑は思案しながら、その思考内容を口に出していく。
「まず対応策として考えられるのは、徳の発生源を抑えること。ルービックキューブを敵の手から離す、あるいは破壊が必要だ」
「でも、敵はそれを妨害するでしょう。まず、奴に接近しなければ」
「そうだね。だから、エネルギー弾への対応が必要だ。これは、すでに手を打っている」
「亜人たちへの協力要請とかですか?」
水緑は首を振る。
「そんなことしたらここの連中に舐められちまう。もっと効率的でメンツも保てる、いい方法がある」
「それは、いったい?」
「成り行きに任せることさ。強すぎる力は必ず、周りから反発を受ける」
――――池袋――――
ダスターは空を飛び、自身が殲滅すべきと考える亜人を探していた。
「地底人というのは探すのが面倒でかなわん……ん?」
すると、彼を取り囲むように地上に人だかりができている。
ダスターはゆっくりと降下し、地上の生命体に話しかける。
「貴様ら愚かな人間は最後に全滅させる予定だったが……私の前に進み出るなら消す」
そう警告しても人類たちは全く退く様子を見せない。
「なら死ね」
手をかざし、エネルギー弾を放つ。
「フン」
彼が鼻で笑う。ここまで愚かな生命体は見たことがない。自分たちの死を目前にして仁王立ちとは、と。
しかし、それは誤りであった。
人類たちは、エネルギー弾の直撃を受けなかった。それどころか、そのエネルギー弾を投げ返してきたのだ。
「何ッ!!」
ダスターはとっさにエネルギー弾を撃って相殺する。そして、もう一度人間たちを見やる。
人類たちは、その目に闘志を宿しこちらを見据えている。
油断した、とダスターは悟った。そして、高速で人類の一人に接近しつかみかかろうとした。
「どんなトリックを使ったのかは知らんが――――」
言い終わる前に、ダスターはその人類によって地面に叩き付けられていた。
「グギャーッ!?!?」
アスファルトの破片と粉塵が舞う中、ダスターはすぐさま飛行し体制を整える。
(何なのだ、この人類どもは……みな同じような服を着こみ、尋常でない闘志をこちらに向けてくる……)
それもそのはずであった。彼らは人類史上最強の格闘技の使い手・柔道家! サイボーグを撃退するほどのその強さの理由は、有効範囲に入ったら絶対に逃さない投げ技と、ビームを投げ返すことが可能な脅威の技・スライダーシュートによるものだ!
諸岡たちが池袋に到着した。柔道家集団は、類稀なる体術とビームを撃ち返す力でダスターを抑え込んでいる。しかし、徳のエネルギーで回復するダスターに致命傷を与えるには至っていない。
「あれが、柔道家……」
「池袋では人口の八割が柔道家だ。さすがの奴も苦戦しているとみえる」
水緑は四機のサイボーグに作戦を伝えていた。その中でも特に諸岡には重要な役割が託されている。諸岡の顔に緊張の表情が浮かぶ。
「まあ、落ち着きたまえ同志。ちゃんと第二第三の策は練ってあるさ」
「えっ!?」
水緑は笑いかけ、作戦開始の合図を出す。
合図を見て蓮覚寺、生天目、加藤の三機は散開する。
そして、柔道家の合間を縫い、的確にダスターへ追撃を加え始めた。接近戦に優れた三機は各々の武器で柔道家の技に合わせ、斬撃を繰り出す。
同時にルービックキューブを掴もうとするが、ダスターはすかさずバリアをキューブに施し、手の侵入を阻む。
その様子を、水緑はじっとうかがっている。
「いいか。私が合図をしたらすぐだ。用意しておけ」
「は、はい……」
隣にたたずむ諸岡は自身の回転体による『徳の糸』を準備する。
タイミングがかみ合い、柔道家に投げられたダスターに蓮覚寺の妖刀、生天目のチゼルプラウ、加藤の髭剃りの斬撃が同時に迫る。
「今だ」
「はい!」
『徳の糸』がルービックキューブ目掛けて放たれる!
(作戦はこうだ。まず、接近戦に優れた三機が柔道家の投げに続いて攻撃を仕掛ける。そして、私が合図をしたら諸岡が糸でキューブをかっさらう)
ダスターは時間操作と瞬間移動で投げ技を振り払い、柔道家を蹴飛ばす。そして、迫りくる三機のサイボーグの攻撃をかわす。
(そうかんたんにいくでしょうか)
(大量の徳で可能な時間移動や時間操作、瞬間移動。しかし、それは感覚を強化することはできない。もしも周囲の時間をスローにしたり瞬間移動で迫る脅威を蹴散らしたりしても、限りなく細い糸を乱戦のさなかで見つけることは難しい)
急に、ダスターの周囲の速度が速くなる。そこに、妖刀の斬撃が加えられた。
「グムッ!!?」
噴き出す血液。ダスターは体勢を整えながらエネルギーで回復しようとする。
しかし、そこにルービックキューブはもうない。
「そんな、気付かぬ間にっ……!?」
水緑の作戦は見事に成功した。諸岡の手には、大量の徳を秘めたルービックキューブ。
「あとは任せたまえ!」
水緑の合図で三機のサイボーグが離脱。残された柔道家集団とともに、ダスターのもとに大量の銃弾が降り注ぐ! ターンテーブル水緑の武装から放たれるそれは、愚かな人類と宇宙人をまとめて蜂の巣へと変えた。
――――上野――――
「お世話になりました、水緑さん、蓮覚寺さん」
「君たちもお手柄だったよ」
「それに、上野の他のサイボーグの方々にも」
上野に出向していた水緑以外のサイボーグは、水緑の指示によって通称『諸岡糸作戦』が失敗した際のプランに向けて行動していた。しかし、諸岡の活躍によって杞憂に終わった。
「このルービックキューブについては横須賀か本部に届けておいてくれ。頼んだよ」
こうして、野蛮な宇宙人ダスターによる事件は解決した。そして、シンギュラリティ上層部の判断によって、このルービックキューブはシンギュラリティ本部に保管されることとなった。
そして、シンギュラリティ各支部にも平穏が戻ったのであった――――