◆登場人物紹介◆
フィニッシュヒム諸岡/疑似徳サイボーグ
武器はレールガン、回転体は納豆。
ワニツバメの東京襲撃によって仲間と友人である生天目を失う。生天目に再び会うため降霊術に救いを求めてエジプトへ。
エジプトのシャーマン(クラッシュトリガー生天目)/バリツシャーマン
カラフルなサングラスにスーツの男という、奇抜なシャーマン。その正体は、ワニツバメとの戦いで死亡したサイボーグが、降霊術によって意識のみ復活し、シャーマンの体を乗っ取り現世に蘇ったもの。
精神はサイボーグであるが肉体は人間であるため、徳の供給を必要としない。
エジプトの女性(ディーライト)/ヒューマンゴースト
エジプトの一般市民に、解き放たれたゴーストの一体・ディーライトが憑依。
グラインドグリッド古賀(サドナー)/疑似徳サイボーグゴースト
日本の疑似徳サイボーグ・グラインドグリッド古賀に、解き放たれたゴーストの一体・サドナーが憑依。
レヴェリーソード蓮覚寺/疑似徳サイボーグ
ロシアに滞在していた疑似徳サイボーグ。他のサイボーグの武器のメンテナンスを行う一方で、刃物を集めている。ゴーストに妖刀を乗っ取られ、全ての武器を奪われてしまう。
妖刀集合体(アンガイル)/ブレードゴースト
レヴェリーソード蓮覚寺の妖刀に解き放たれたゴーストの一体・アンガイルが憑依。彼女の武器で刃物の体を構成した。
ドラゴニュート(プレイジア)/ドラゴニュートゴースト
アメリカのドラゴニュートに、解き放たれたゴーストの一体・プレイジアが憑依。
◆ ◆
2046年 エジプト ベニ・スーフ
諸岡とシャーマンの体を得た生天目の前に、ゴーストに取り憑かれ奇声を上げる女が現れた。
「諸岡。私は男の記憶と体を使って奴を封印してみます。貴方は男の家で封印に使える封具を取ってきてください!」
諸岡は生天目に封具の場所を伝えられると、一目散に走り出した。
その間生天目は降霊術で見様見真似に、女に取り憑いたゴーストを抑え込む。
(脳が、そして体が……記憶として技を覚えている!)
スピリット本体を押さえつけられ、苦悶の声を上げるゴースト。女の体を操り、生天目に攻撃を仕掛けてくる!
「痛い! オイラは解放された喜びをかみしめているのに!」
ゴーストに乗っ取られた女は生天目につかみかかってくる。それを振り払い殺そうとした生天目は、今までとの重大な違いに気づいた。
「しまった! 私はいま、サイボーグじゃなくて人間の体だった!」
サイボーグの体であったなら、人間を殺すことも容易く、人間につかみかかられても容易に振りほどけただろう。しかし、この体はシャーマンの男のものだ! サイボーグに比べれば非力で脆い。
「使えない……」
そう不満を漏らしながら女の腕をかわす生天目は、自分の体が自然と女を叩きのめすのをその目で見た。
「あれ……?」
生天目は、先ほど習ったことのない降霊術を使いゴーストを押さえつけたように、当然のように。
人類屈指の格闘術・バリツを用いていた。
「この人類の体は……あたりだったかもな」
徳も生み出せず、武器も無く。しかし、今までにない超常的な力と編み上げられた格闘術を生天目は新たに得たのだった。
諸岡は生天目のもとに、男の自宅から持ってきた封具を手渡した。
「ご苦労様、諸岡。では始めます」
封具を地面に置き、倒れた女から生天目はゴーストを引きはがす。
男は優れたシャーマンだったようで、ゴーストは少しの抵抗もできないまま封具へと引き寄せられていく。
「いやだ! いやだ! あの喜ばしい日々をもう一度!」
声だけは大きいが、その霊体はびくともしないまま、瓶の形をした封具に吸い込まれて音を消した。
呪札で厳重に封をする生天目。
男の記憶をたどると、このゴーストがいかに危険な存在であったかが理解できた。人だけでなく者にも取りつき、サイボーグの脅威となりかねない存在だ。さらに、他の降霊術は廃れてしまった2046年において、精神防御を用いる存在は生天目が乗り移ったシャーマンの男など一握りだ。サイボーグであっても抵抗空しく、容易に取り憑かれてしまうかもしれない。
「急ごう諸岡。こいつらは後三体。放っておけば他のサイボーグたちが危ない」
「分かりました、生天目……なんだか、人間と話しているような気がして慣れませんね」
諸岡は、カラフルなサングラスにスーツの男となった生天目を見て苦笑した。
「しかし、ゆずきさんには何と説明しましょう……生天目が人間に乗り移り、危険なゴーストが三体も放たれたなど……」
「いまは何も言わない方がいい。ゆずきさん達であっても精神防御は不可能だ。本徳サイボーグがゴーストに乗っ取られるとかえって危険だからね」
「たしかに……それで、他のゴーストがどこへ行ったかの目途は付いているのですか?」
「それなんだが……おそらくゴーストどもは封印されたことを恨んでいて、このシャーマンを狙ってくる。もしかしたら、とんでもない怪物の体に取り憑いているかも。そうなる前に、封印しに行かなきゃいけない」
「つまり、待っていればそのうちやってくるけど、そうなることは避けたい……」
「先手を打って封印しに行かなければ。幸い、おおざっぱな反応はシャーマンの力で感じることができる。ここから、ロシアへ向かおう」
「ロシア……ゴーストはそんなに速く移動できるものですか」
「スピリットに肉体の限界は無いからね……だが、体を失ったままではスピリットはやがて霧散する。彼らも体選びにはなりふり構っていられないはずだが」
「焦って弱い肉体を手にしていることを祈るしかないってことですか? でも、乗っ取る対象をこまめに変られたらそれも無駄のような気が」
「連続での憑依交換はスピリットに負荷がかかる。そんな真似はしないはずだ」
「なるほど……スピリットとは非常に奥の深い概念なのですね……」
こうして、諸岡は生天目からスピリットについて教わりながらゴーストの向かった地、ロシアへ向かうのだった。
カザフスタン
人々は空に、怪物を見た。全身が棘……いや、刀で覆われた化け物を! 体全体が刃物だらけで、中はどうなっているのか見当がつかない。そして、ビルや飛行機を引き裂き空を飛ぶ!
見るものを震え上がらせるその姿に人々は恐怖した。そして、その進行方向であるエジプトへ向かうのを見て、ホッと胸をなでおろすのであった……。
時は遡り―――12世紀 日本
ゲン・ファミリーとペイ・ファミリーという集団が日本の覇権を競い合っていた。
未来からこの戦いに介入したシンギュラリティのサイボーグ・ネットリテラシーたか子は、紆余曲折あり両軍全員を殺害! その場にいた全員が歴史の闇と共に葬られた……かに思われた! だが!
13世紀 モンゴル
ここに、一人の男がいた。その名は、チンギス・ハン。13世紀にモンゴルを支配し、モンゴル帝国の初代皇帝となった人物。なにを隠そう、その正体はネットリテラシーたか子に殺されたと思われていたゲン・アーミー司令部指揮官、ヨシツネ! 命からがら北へ逃げ延び、大陸へ渡り……長い時をかけて異国の地を制圧したのだ!
そして、長い時が流れ―――2046年 モンゴル
全ての剣を、妖刀に乗り移ったゴーストによって悉く奪われ敗走したサイボーグ・レヴェリーソード蓮覚寺。彼女はそんなゴーストの進行方向から逃れるようにしてモンゴルへやって来た。
「ハァ、ハァ、なんてこった……」
彼女がいままで集めてきた武具の数々。それは、回転体でもある砥石に勝るとも劣らない、彼女のもう一つの武器だった。それが失われた喪失感は大きい。何としてもあのゴーストから取り返さなければならない……しかし、いまの彼女では到底太刀打ちすることは不可能だ。彼女の持っていた最強の妖刀ですら歯がたたなかったのだから。
「クソ、このままやられっぱなしだってのかよ……」
その苛立ちを抑えきれずに地面の土を蹴り上げる。
すると、いままでいくつもの刃物を研いできた彼女独特の嗅覚が、妖刀や宝剣などに勝るとも劣らない優れた剣の気配を察知したのであった。
「この感覚はいったい……」
魂に突き動かされるがまま、やって来たのはさびれた邸宅。その脇にあった小さな倉庫を叩き開ける。
なかからむわっと漂う悪臭と埃をかき分け、ぼろい木箱を手に取る。
彼女はまるで呼ばれているかのような錯覚に陥りながら、慎重にその箱を開ける。
出てきたのは、古い刀剣。彼女の鑑識眼は、それが12~13世紀の日本のものであると訴えている。そんなものがなぜ、このモンゴルの僻地に?
彼女は、ゴーストから逃げてきたことも忘れ一心不乱にそれを研ぐ。すると……
そこに姿を現したのは、かつてゲン・アーミー司令部指揮官、ヨシツネが用いていたとされる守り刀にして、現存しないとされる幻の刀。
その名は、今剣(いまのつるぎ)―――
「アンタは今日から、私の刀だ」
700年の時を超え、幻がよみがえった。