◆登場人物紹介◆
フィニッシュヒム諸岡/疑似徳サイボーグ
武器はレールガン、回転体は納豆。
ワニツバメの東京襲撃によって仲間と友人である生天目を失う。生天目に再び会うため降霊術に救いを求めてエジプトへ。
エジプトのシャーマン(クラッシュトリガー生天目)/バリツシャーマン
カラフルなサングラスにスーツの男という、奇抜なシャーマン。その正体は、ワニツバメとの戦いで死亡したサイボーグが、降霊術によって意識のみ復活し、シャーマンの体を乗っ取り現世に蘇ったもの。
精神はサイボーグであるが肉体は人間であるため、徳の供給を必要としない。
グラインドグリッド古賀(サドナー)/疑似徳サイボーグゴースト
日本の疑似徳サイボーグ・グラインドグリッド古賀に、解き放たれたゴーストの一体・サドナーが憑依。
ドラゴニュート(プレイジア)/ドラゴニュートゴースト
アメリカのドラゴニュートに、解き放たれたゴーストの一体・プレイジアが憑依。
◆ ◆
残る二体のゴーストを封印するため、諸岡と生天目は空路で日本へと向かっていた。生天目の肉体はシャーマンとはいえ人間であるため、旅の途中であれこれ防具を揃えて、戦闘で死亡するリスクを減らしていた。
上着の下にきっちりと防弾ジャケットを着こむ生天目は、どこかむず痒い気持ちで諸岡に話しかける。
「やっぱ人間の体に入ってるのはへんな感じだなあ。こんなに服を着こむことも今まで無かったし」
サイボーグは排熱のため薄着でいることが多い。生天目にとってここまで厚着をすること自体が初めての経験だった。
「早く別の体を探してあげたいけど、シャーマンの体と知識を使わないとゴーストを封印できないので……もう少しだけ我慢してください」
「分かってるって」
飛行機は成田空港に到着。諸岡たちが機内を出ると同時に、生天目は不穏な気配を感じ取った。
「待て諸岡」
「敵ですか?」
気配は付近からじんわりと近づいてくる。
「ああ、たぶん……こっちに来てる」
「生天目はどこか物陰で待機していてください! そして、私が戦って弱ったところを封印して」
そう言って諸岡は警戒しつつ外へ。
生天目は諸岡が飛び出したのを見て、逆方向にひっそりと足を進めた。
「ムッ」
諸岡は影を視認した。空港の滑走路に影が見え、それはどんどん大きくなる。そして、
「哀しい……あの憎きシャーマンでなかったことが」
それは瞬時に諸岡の眼前まで近づいてきた。
「!!」
とっさに身を翻すが、敵は諸岡のサイボーグとしての速度に追いつきその腕をつかむ。
「熱いッ!!」
諸岡の悲鳴が響き渡る。
敵の手は諸岡のボディから煙を上げる程の温度で掴まれていた。
遠くで待機させていたスレーブユニットの箸が高速で突撃し、敵の腕を振り払う。
「助かった!」
バックステップで距離を置き、改めて諸岡は敵を見据える。
熱を帯びて煙を放つ左腕。鉄砲型の右腕。足に装備された爆弾。
そして何より、縦に割れたようなドラム式洗濯乾燥機……
「グラインドグリッド古賀……ゴーストに乗っ取られたのか」
横須賀データセンター所属の疑似徳サイボーグで、洗濯係として諸岡も彼女とは面識があった。
しかし、その瞳の奥と口調は全く異なり、深い哀しみのような感情が読み取れた。
「哀しいことだが……邪魔者は消す」
ぼそぼそと呟いた瞬間、再び敵が諸岡に接近する。腕を突き出し、ヒートポンプユニットによって熱せられたパンチを振るう。
「その技はもう、見切った!」
諸岡はスレーブユニットの箸を呼び寄せ、両手に一本ずつ構える。そして敵の高熱パンチに合わせて突き出した!
箸は高熱の腕に触れることなく敵の手首に突き刺さり、攻撃を食い止めた。
「フン」
箸を振り払い、一歩後ずさる敵。すかさず諸岡は追い打ちをかけようとレールガンの砲塔を向ける。
「洗濯モード」
だが、敵は瞬時にドラム式洗濯乾燥機へと変形。レールガンによる攻撃を弾いた。
「哀しいが……そんな攻撃はこの私には効かない」
敵が防御形態を取ったのを見て、諸岡はすかさず生天目に合図を出した。それと同時にスレーブユニットに指示を出し、肘部分の納豆をかき混ぜさせる。
「効かなくてもいいんです。私たちの目的は、お前を倒すことではないから」
「何?」
防御形態を解除しようとする敵。しかし、ドラム式洗濯乾燥機からサイボーグの姿へ戻ろうとするも、洗濯機本体が開かない。
「どうなっている!?」
内側にいた敵には分からないが、外からだと一目瞭然。
諸岡の徳納豆が、サイボーグにさえ敗れぬ強度の網となり洗濯機ごと敵を絡め捕っていたのだ。
合図を見て走り寄ってきた生天目が、すかさず古賀の体からスピリットを引きはがす。
そして、瓶状の封具へと封印。三体目ともなると鮮やかな手際で、敵は抵抗する間も無く再起不能となった。
「やったな、これであと一体だ」
「そうですね。でも……」
諸岡も生天目も、先ほどの敵とは比べ物にならないほどの強大な力を感じ取っていた。それは空港上空から近づいてきている。
「あれが最後の……」
「ああ、四体目だな」
ドラゴニュートの体に憑依したゴーストが、その翼を広げゆっくりと降下してきた。
「楽しいなぁ、自由って。でも、その自由を邪魔する奴を消すのは、もっと楽しい。そう思わない?」
そう問いかけた敵は、瞬きした後には諸岡の視界から消えていた。
隣にいた生天目――――バリツシャーマンの体を爪で引き裂いていた。