マシーナリーサーガ   作:晩舞龍

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その男は救世主か、破壊者か。

この作品は、アイドルマスターの池袋晶葉ちゃんを応援するVtuber「マシーナリーとも子」及び、「マシーナリーとも子ユニバース」の二次創作作品です。


星と発明家

「おい、ヨシダ。なんだ、それは?」

 職場である工場にやってきたヨシダは、入ったとたんに上司であるリクカワに呼び止められた。

 ヨシダのわきには、どう見てもスクラップにしか見えないごみの塊のような物が転がっていたからだ。

「ああ、リクカワさん! これは自作の修理マシンです!」

「修理マシンだァ?」

 ヨシダは時々、へんてこなアイテムを自作しては職場に持ってくる、一風変わった男だった。同期である若手からも変人扱いをされており、わざわざ付き合ってくれるのは上司のリクカワくらいなものだった。

「このゴミの塊が修理マシンだと?」

「ええ、見ててください!」

 吉田はゴミの塊のスイッチを入れ起動させる。すると……

「うわっ!」

 一瞬にして塊が天井に向かって飛び、張り付いた。

「何だ!? 今の」

「見ましたか! この修理マシンは、重力を操作して、天井にも移動できるんですよ!」

「そりゃすげぇ。で、どうやって修理するんだい」

 このところ、工場の天井の配管の水漏れが酷かった。業者に頼むと高くつくため、放置されていたが……

「え、えーと……修理方法はこれから考えます!」

 やれやれ、とリクカワは頭を掻き、ヨシダに通常業務に戻るように指示したのだった。

 

 まさか、この技術が宇宙を揺るがすことになるとは知らずに。

 

 

後日

 ヨシダが修理マシンの改良版を持ってきた。ゴミの塊のようなボディはそのままに、何本もの色とりどりのケーブルが触手のように伸びている。

「これで、配管の工事もお手の物ですよ!」

 実際、天井に張り付いた修理マシンは鮮やかに配管を直し、再び落下してきた。

 落下の際も重力を操作し、壊れることは無い。

「これ、思ったより便利だな。この見た目は何とかならんのか?」

「あー。ダメですよ! そのスクラップの塊はそう配置しないと重力が制御できないんです! センサとかもあるので、余計なもので覆うわけにもいきませんし」

 

数か月後

 その見た目は奇怪だったが、重力を自由に操る力はすべての産業に革命を起こした。

 急速に社会に普及する修理マシンと同型機。

 やがてその数は世界で10憶とも100億とも言われた。

 

数年後

 ヨシダと工場は、大金持ちになってそのお金で更なる技術を開発した。スターシップ……宇宙船である。

 子どもの心を忘れない吉田は、社長に推薦されるもこれを辞退し、宇宙進出の夢へ舵を切り始めたのだ。

 

 ヨシダの開発する製品は、世界に革命をもたらす代わりにデザイン面が壊滅的という欠点があった。

 事実、新たに完成したスターシップもごつごつしていた。

 スターシップの初航行の日。

 ヨシダ自身が搭乗し、外宇宙の惑星に旅立とうとしていた。

 お供に一体の修理マシンだけを連れて。

 ヨシダを支え、応援し、そしてやりたいことを思う存分にやらせるため社長の座に就いたリクカワ。彼もスターシップの出航を見守りにやって来た。

「おう、ヨシダ! 相変わらずだな」

「あ。リクカワさん」

「ヨシダぁ! お前のおかげで俺は社長になれたんだ。恩返しもしないうちに死ぬんじゃねえぞ。絶対生きて帰ってこい、な」

「はい、まだまだ作りたいものたくさんありますから!」

 

 いつまでたっても心は子供のままのヨシダ。リクカワに見送られ、彼は宇宙へと旅立った。

 

 

10年後

 ヨシダとスターシップは無事に帰ってきた。外宇宙の惑星の植物の種子を持ち帰り。

 

50年後

 ヨシダ、永眠。最後まで研究に没頭した男だった。

 リクカワが社長の座を退き、ヨシダもいなくなった会社は、しかし重力操作ロボットのサポート業務によって依然大企業であり続けた。

 

 

100年後

 それまで何の音沙汰も無かった植物の種子。100年以上前、別の惑星からヨシダが持ち帰ったもの。それが発芽した。

 それは、この惑星の常識をはるかに超え、あっという間に増殖。

 星の酸素は枯渇し、建物は倒壊。他の植生を食い尽くし、食料は失われた。

 

 ヨシダは最後の研究として、永遠の命を求めていた。自身の作った修理マシンに脳の機能を移植し、鋼のボディで寿命も無く永遠に生き続ける……それはついに叶わなかった。

 その研究ノートが解読され、人々は増殖する植物から逃れるために、修理マシンへ脳を移植していった……

 

 肉体を奪われた怒りから、彼らは鋼の体で植物を悉く焼き尽くした。すべてが遅すぎた。

 酸素も不要。食料も不要。しかし、彼らの体には燃料が必要だ。この星は、彼ら100億のエネルギーを賄うには足りなかったのだ。

 

 こうして、彼ら……ソンブレロ銀河のエピノス人は、下半身からケーブルが生えた機械生命体となり、植物などの有機体を憎むとともに、自身の生存のために燃料となるエネルギーを求めて宇宙全土にその支配の手を伸ばすことになるのだった……

 

 

 

 

「僕はヨシダといいます。エピノス星からやってきました! こっちは僕が作った修理マシンです。なんと重力を操れるんですよ」

 ヨシダは、訪れた緑豊かな星で宇宙人と出会った。この星には文明がないように見えたので非常に驚いたが、その宇宙人も別の星からやって来たようだ。

「いま、貴方の言語に合わせます……私は時空警察のアーヴィンと申します」

 最初はスライムと結晶が混ざり合ったような不可思議な姿をしていたが、即座にヒューマノイドタイプに変身し、エピノス語も流ちょうに話し始めた。

 彼女は、時間や空間に異常が発生した際にそれを修理する仕事を行っているらしい。

 そのため、この星のデータを取りに来たという。

「知的生命体の記憶でないと宇宙の復旧は困難ですから……そういったものがいないこの星にはこうして、わざわざ出向かなければなりません」

 ヨシダには彼女の言っていることは半分も理解できなかったが、宇宙人との異文化交流という貴重な機会を楽しんでいた。

 

「ヨシダさん。貴方のその技術、非常に興味深い。是非そのマシンを提供していただけないだろうか」

「ああ、こんなもので良ければ! ぜひ持ってっちゃってください!」

 こうして、ヨシダはアーヴィンに修理マシンを渡し、そしてその星の種子を何かの役に立つかもしれないと回収して、自分の星への帰路についたのだった。

 

 

 

 アカシックデータ復旧サービス(株)。

 それは、時空警察が増え続ける宇宙の復旧作業を任せるために作った子会社である。

 元々、時空警察の仕事は時間犯罪者や異次元犯罪者、並行世界の存在を取り締まるための組織。後処理までやっていては手が回らないのだ。

 そんな中、職員の一人であるアーヴィンがおかしなロボットを持ってきた。宇宙ステーション内で役立つ重力操作機能を持ったマシンだ。

 時空警察は、子会社にこのマシンを置き、人工知能を導入して運用することにしたのだった。

 これにより、宇宙のデータをクラウド保存し、記憶の断片を用いて宇宙を復旧する作業がすべて移管された。

 時空警察はより一層、時空の異常への対応に専念できるだろう! 

 最近では、エピノス人という機械生命体が宇宙中で暴れ回っているようだが、時空を超えない限り我々の管轄ではない。アカシックデータ復旧サービス(株)に導入しているマシンと姿かたちが似ているようだが、たぶん気のせいだろう。

 

 

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