主人公は「マシーナリーとも子Zero」登場の本徳サイボーグ・フルメンタリかず恵です。
シンギュラリティの本徳サイボーグ・フルメンタリかず恵は、任務として人間の大量失踪事件を調査。その最中、人間の力を持ったどうぶつ人間・サプライズ忍者と接敵。苦戦を強いられた末、取り逃がしてしまった彼女の前に、協力を申し出る謎のゴースト・プレイジアが現れるのだった。こうしてかず恵は、プレイジアと共にサプライズ忍者が向かったとされるシンギュラリティ池袋支部に急ぐのだった。
「それで、君の目的はいったい何なんだ? サイボーグの僕を助けることにメリットがあるとは思えないけど」
かず恵の問いにプレイジアはふわふわと漂いながら答える。
「ああ、それは内緒。でも、キミはボクに助けを求めるしかないでしょ?」
ぎっと歯を食いしばって悔しがるが、確かにかず恵にはそれ以外に方法は無い。
「しかし、どうしてアイツの行き先がシンギュラリティ池袋支部だって分かる? あいつの目的は何だ?」
「言うまでもなく、奴はどうぶつ人間。N.A.I.L.の手先だ。目的は、人間の脅威になるサイボーグだよね」
プレイジアはそう言いながらシンギュラリティ池袋支部への道を先導する。
付いていったかず恵は、その道中にも人間の姿が見えないことに気付く。
「これは……」
「さらに、ヤツは道中の人間を吸収して、自身のパワーアップを行っている。その証拠がこれだ。わかってもらえたかな?」
確かに、サプライズ忍者の行き先はシンギュラリティ池袋支部で間違いないようだ。
伊賀と甲賀の二大忍者都市を襲撃し力を蓄えたヤツは、その足でシンギュラリティの壊滅を狙っている。
「本部に連絡しなければ……」
通信端末を取り出すが、それは先ほどの戦闘で破壊されていた。
「そうか、以前倒された疑似徳サイボーグとの戦闘で通信端末の存在が割れていた……」
「どこまでも奴の作戦通り。でも今回は大丈夫、ボクというゴースト……イレギュラーが存在しているからね」
疑問を脳裏に浮かべるかず恵に、プレイジアは秘密の作戦を打ち明け始めた。
池袋支部まであと100mというところで、サプライズ忍者は足を止めた。
何者かの気配を感じたからだ。
「サプライズされるのは……嫌いですッ!!」
物陰に向かって放ったクナイと手裏剣が叩き落される。そして、そこからフルメンタリかず恵が現れる。
「さすが、忍者たちを取り込んだだけはある。君の忍者としての実力は今や世界一だね」
そう褒めたたえながら、かず恵は瞬歩で接近する。
サプライズ忍者が牽制として飛び道具を放つが、ヨーグルトメーカーに阻まれる。
「やりますね……だが!」
かず恵がその勢いのまま振りかぶったヨーグルトメーカーは空を切る。殴ったそれは偽物……影分身だ!
「分身の術と隠れ身の術……あなたには破れまい!」
周囲から声が聞こえる、しかし姿は見えない!
そのとき、かず恵の脳内に直接プレイジアが語りかける……サプライズ忍者の本当の位置を!
「そこだっ!!!」
確かな感触がヨーグルトメーカーを通してかず恵の肉体に伝わる!
「なにィーーッ!!!!」
本徳のエネルギーと体の回転力を乗せた勢いで殴られたサプライズ忍者は、肋骨すべて骨折!
「かぁーーッ」
声にならない悲鳴を上げ、半歩下がる。しかし、
「逃がすかッ」
すかさず組み付き、片手で頭を鷲掴みにし捉えたかず恵。
空いたもう片方の手にはヨーグルトメーカー……肉体を粉砕する高速ラッシュが、人間を吸収して強化された肉体を打ち破る!
サプライズ忍者は全身の肉と骨を砕かれ、ヨーグルトまみれの状態で即死!
「フゥ」
勝ったとはいえ、その前の戦闘でダメージを負ったかず恵。ボロボロの状態でシンギュラリティ池袋支部に帰ってくる。
そして、自分に割り当てられたスペースに戻ってきた。
「報告書、と……その前に」
プレイジアはこっそりとかず恵の後を追い、シンギュラリティ池袋支部に侵入。彼の目的は最初からかず恵だった。
そもそも、ゴーストとは何らかの理由で肉体を失い精神だけになった生命体、すなわちスピリットだ。イタコやシャーマンによって祓われる存在だったが、彼らが時代と共に姿を消したことでこうして生き永らえている。
しかし、そうはいっても肉体を持たないと霧散してしまう。
新しく強い肉体を求めて、プレイジアはかず恵に目を付け、こうして追ってきた。
「強敵との戦い、そして勝利! それこそ、生命体が最も油断するとき……キミの体、貰っちゃうよ」
自室で何者かに電話をするかず恵……その背後から彼女の精神に侵入する!
すぅっと。問題なくかず恵の精神内に入り込んだプレイジア。
「よし、まずは成功だ!」
精神の防御を固めることができるのは、ゴーストの存在を知り、そして対策したもののみ!
そうで無いものはこのように、あっさりと侵入を許してしまう!
あとは、かず恵の精神を追い出して霧散させ、プレイジアの居場所として乗っ取ってしまえばいい……
「ん!?」
突然、プレイジアのまわりに電流が走った。
「なんだ! なにがあった?」
そして、視界……彼女の精神空間……が真っ暗になる!
「気絶した……!? いや、これは……機能停止!? くそ、サイボーグの体の中に閉じ込められた!? そんな馬鹿な!」
突然ついてきて、かず恵に協力してくれたプレイジア。しかし、かず恵の本徳が彼の邪念をオーラとして感じ取っていた。
「ええ、シャーマンの方ですよね? 祓って頂きたい悪霊がいて……日本まで来ていただけますか?」
(シンギュラリティの任務の遂行上邪魔になると考えられていた、シャーマンの力を借りることになるとは……)
かず恵は、本徳サイボーグのみ閲覧を許されている極秘のファイルをもとに、エジプトにいる数少ない有力なシャーマンに連絡を取った。
ゴーストの精神介入は厄介で、本徳サイボーグであろうと抗うことは難しい。ならば……
「かかったな」
対策されているとは知らずに、プレイジアがかず恵の精神の中に入ってきた。そこを狙い、自身の回転体であるヨーグルトメーカーに強化パーツを差し込む。これは、上野で手に入れたものの危険すぎて使えなかったブースターパーツだ。差し込んだ瞬間電気がほとばしり、徳が物凄いスピードで発生! しかし、勢いが激しすぎて牛乳をヨーグルトに変える間も無く大気中に放出されてしまう。
さらに、漏電を起こしかず恵の意識は明滅する。
「あとは、シャーマンが来てくれれば……いや、来なくてもいい。僕の体に封印するまでさ」
失神を飛び越え、全身に激しい電撃と牛乳を浴びたかず恵は、そこで機能を停止した……
その後、機能停止した彼女を発見したアークドライブ田辺とネットリテラシーたか子が清掃・回収作業を行った。
後に、エジプトからやって来たシャーマン・ハーフィズが彼女の体内に封印されたプレイジアを回収し、専用の道具に封印……
そして、かず恵は横須賀のサイボーグセメタリーに移送された。
今でも、改造に失敗した馬鹿。甦らせる価値無し、として……彼女は横須賀に眠っている。
[解説]
マシーナリーとも子ユニバースの世界観のなかで疑問点が残っているが、もう説明されることはないであろう部分を独自解釈しようシリーズ。
なぜ、本徳サイボーグなのに些細なミスで機能停止、馬鹿の烙印を押されセメタリーにぶち込まれているのかを、ゴーストという独自設定をもとに理由づけ。
あとは、トルーさんがイタコを撃破していたことから、人間も利用しそうだなあということで、前代未聞の「人間のどうぶつ人間」を登場させてみました。やっぱインパクトがあった方がいいので、マシーナリーとも子氏の歌に出てきたサプライズ忍者を命名。書いているうちに本徳サイボーグをしのぐ強敵に。
ゴーストが生き残っているのはまずそうなので、拙作「ロード・シャーマン」のシャーマンに回収させることに。二次創作でオリキャラ出しすぎるのは良くないと思ってるんですけどね。今後は控えめにしたい。
でも結果として、かず恵の活躍と最後を書けてよかった。