マシーナリーサーガ   作:晩舞龍

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生天目との連絡が途絶え、一人で任務に向かう諸岡。しかし、異星人と会敵し、かつてないほどの危機が彼女を襲う!


フィニッシュヒム諸岡EX~停止する回転体篇~

「ち、ちょっと。そこの人」

「あぁ?」

「ヒッ」

 

 ガラの悪い異星人に睨みつけられ、諸岡はたじろいだ。すぐに心を落ち着かせようとする。

 しかし、聞き取りだのなんだのという作戦は、緊張ですべて頭から抜け落ちていた。

 

「その血痕はなんです!」

 血痕は、異星人が先ほどまで何かと戦っていたことを如実に指し示していた。しかも、その異星人の服の破れ方は等間隔で、非常に独特だった。これは、チゼルプラウを武器とするクラッシュトリガー生天目に付けられたものに違いない! 

「チッ……めんどくせえ」

 苦虫を嚙み潰したような表情をした異星人は、喫茶店を出ていこうとする。

 

「待てッ!」

 それを諸岡は制し、素早く何かを放った。

 異星人が喫茶店の入り口を見やる。すると、何という事だろう! ドアが蜘蛛の糸のようなもので封じられている! 

 

 そう、これこそフィニッシュヒム諸岡の回転体にして武器! 彼女は納豆をかき混ぜることによって徳を得、この納豆の糸を自在に使いこなして戦うのだ! 

 

 納豆の糸がドアに続いて異星人の足に飛ぶ! 

 危険を察知しステップでかわした異星人は、窓を割り外へ! それを諸岡が追う! 

 

「止まれーッ!」

 

 二人は広い大通りに出た。逃げる足を止め、異星人は振り返る。

「止まるのはお前だ、サイボーグ」

「なに?」

 異星人が手を諸岡に向ける。

 まずい。

 そう思った時には既に遅い。

 諸岡は急に身体が苦しく感じた。

(くそっ……何をされた!?)

 手足が上手く動かせない。狭まる視界のなかで、彼女は肘の小鉢に目をやった。

 

「回転が……止まってる!?」

 

 サイボーグはマントラの刻まれた回転体の回転、または回転体を回したときの『徳を積んだような気もち』から徳を得る。フィニッシュヒム諸岡は後者だが、それはサイボーグにとっての呼吸に等しい。

 

 寝る間も回っているはずの回転が止まっている! 

 苦しくもなるはずだ。しかしなぜ!? 

 決まっている、原因はあの異星人だ。

 諸岡は走り出す。異星人の能力圏外に逃れるために。

 

「逃がさん!」

 当然、異星人も追ってくる。

 

「いけぇっ! お前たち!」

 諸岡がそう言うと、用意していたハンドバックの中から納豆を混ぜていたものとは別の、予備の箸が飛び出した! 

 これはフィニッシュヒム諸岡のスレーブユニットである! 普段は交代制で諸岡の納豆を混ぜ、回転体の役割を果たしているが、予備の箸は武器として敵に襲い掛かる! 

 

 ドスッ! ドスッ! 

「グムーッ!!」

 

 二本が異星人の両足に突き刺さり、その動きを止める! 

 

「ぷはぁっ!!」

 それとほぼ同時に、彼女の回転体である納豆が回転を再開する。

 どうやら異星人から十分離れたことで、回転を止める何らかの超能力の範囲から外れたようだ。

「ハア、ハア、よくもやってくれたな」

 息も絶え絶えに、彼女は背中のレールガンを構える。

 そして、無慈悲に発射! 

「死ねーっ!!!」

 敵は爆発四散! 飛ばしたスレーブユニットの箸たちが慌てて帰ってくる。

 

「やばい、生天目さんたちの居場所聞くの忘れた……」

 

 

(血中徳が先ほどの戦闘で大幅に減ってしまった。頭がくらくらする……)

 諸岡はその場にバタンと倒れる。すると、遠くから足音が聞こえる。どうやら、上司が応援を呼んでくれたようだ。

「気を付けて……奴らは……回転を……止める……」

 

 

 

 

「はっ!」

 諸岡は目覚めた。

「ここは……」

「バーチャル病院だよ」

 下を見る。諸岡はベッドの上だ。

 横を見る。諸岡の隣のベッドから話しかけてきたのは、同じ任務に就く予定だったクラッシュトリガー生天目だった。

「無事だったんですね、生天目さん! えっと、どうなってるんですか」

「それがさあ」

 

 クラッシュトリガー生天目は早めに集合場所にやってきていた。しかし、チームを組む予定の異星人が過激派とグルだった……

 というか、結論から言うと過激派はデマだった。シンギュラリティに友好的な異星人を脅し、嘘の通報をさせ、生天目を攻撃してきたのだ。

「その邪悪な異星人というのは……」

「カイテイン星人だと。聞いたことある?」

 諸岡は首を振る。

「だよね」

 生天目が説明する。

 

 ある時、超能力を持った宇宙人が内乱により星を逃れた。

 命からがら脱出したため燃料も尽き、たどり着いた惑星は自転がとてつもないスピードであった。

 彼らは自転の速度を抑えるため超能力を行使し続け、遂に回転停止に特化した種族へと変化を遂げた。

 何百年もかけて彼らはついに別の惑星の侵略を行えるまでになった。しかし、回転を止める能力だけではとても侵略など不可能だった……。

 

「それで、地球で幅を利かせてる私らを襲ってきたってわけ」

「そうだったんですか……私、生天目さんを襲った奴は倒したんですけど」

 心配そうに言う諸岡を生天目が落ち着かせる。

「大丈夫、大丈夫。後は全部燐さんが片付けてくれたから」

「燐さん……って、本徳の?」

「そ。デジカルビ燐さん。潜伏してた残りのカイテイン星人全部やっつけてくれた」

「えーっ! 回転を止める能力がすげー厄介なのに、どうやって!?」

 回転体を止められれば、本徳サイボーグも彼女らと同様生命の危機に陥る。しかし。

「ほら、本徳のサイボーグの中には膨大な徳ため込んでるのいるだろ」

「そうか、それで回転を止められても平気だったんだ!」

 疑似徳サイボーグが月1万avt以下の徳しか生み出せないのに対し、本徳サイボーグは月10万avtを発生させられる。さらに、膨大な徳には時間の干渉などの使い道があるため、貯め込んでいる者もいるのだ! 

 

「私たちももっともっと努力して、はやく本徳サイボーグにならなければ!」

 拳を握り、意気込む諸岡。

「いや、私はいいかな……」

 生天目はめんどくさそうにベッドにもぐりこんだ。

 

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