隻腕の鬼と魔女   作:砂利道

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今回半分以上がネタ回となりました。中々シリアスのまま進める事が出来ない…でもようやく原作一巻の殆どを書き終わりました。このまま二巻分も突っ走っていきます!


作戦成功、美緒お騒がせ事件

 1937年11月22日。作戦発動より三日目三回目の出撃。未だにあの高速型とは接敵せず。

「どうだい?Bf‐109(それ)には馴れたかい?」

「はい、違和感は無いです」

現在7000メートル上空から魚雷に似た爆弾を抱えているのは駐在武官、ガランド大尉。そしてその僚機である俺、鈴木健人は口に笛、腰には刀を提げている。当初はフジさんが僚機の予定だったがガランド大尉がおそらく世界で唯一の男性ウィッチである俺と飛びたいと仰り、索敵もこなせた為に俺が僚機となることになった。

「ほう…なら私は失業かな?」

「っ!すいません!そんなつもりは…」

「冗談だよ、気にするな」

ガランド大尉は笑いながら言った。

「“上”はどうだ?」

すると無線から美緒の声が聞こえた。

「目標高度に到達しました。少し…風が強いです」

「しっかり頼むぞ、眼が無ければ手足はどうしようもないからな。北郷、そっちは?」

「異常なし。…坂本、焦らなくていい。落ち着けばきっと出来るよ」

無線の向こうで美緒が頷く気配がした。

「よし!今日こそは仕留めるぞ!」

俺は笛を鳴らし索敵をかける。まだ範囲内には感知できない。今回俺は索敵の範囲をこちらが動きだす範囲にまで狭め、代わりにより細かく状況が分かるように密度を高めていた。これは昨日俺が気絶して目が覚めた後、美緒達に聞いてどんな事なら役に立てるかと聞いたとき徹子から“相手の動きを細かく知りたい”と言われ思いついた事だ。これによりすぐ近くのガランド大尉の動きが目を瞑っていても手に取るように分かる。

「目標三機編隊を捕捉!…方位335から180へ南下しているようです。高度は約4000、距離は約20000です!」

ガランド大尉がすかさず確認する。

「…よくやった!こちらでも捕捉した。以降はこちらで誘導する、鈴木君そっちも捕捉できたか?」

俺は少し範囲を広げた。…捉えた。美緒の言った通りだ。

「あいつやれば出来るじゃん…」

無線の向こうでは醇子がはしゃいでいた。

「!今入りました」

「…よし、我々も働くとしよう」

俺達は急降下する。下では囮部隊が奮戦していた。シールドは意味無いのでギリギリで躱している。

「来た…行くぞ!」

怪異へと突っ込んでいく。俺は血染を抜き、正面に突きを構える。その先に()()()()()()()()シールドを展開する。今朝バラキに張り方を教わり一時間で物にしたのだ。その方法はあまりにも簡単で拍子抜けしたほどだ。要するに“元々そんな形だった”と思い込めば良いらしい。それだけであっさりと色んな形のシールドが張れてしまった。今までの苦労は何だったのか頭を抱えてしまった。

「投弾!」

ガランド大尉は二機を巻き込む位置に絶妙なタイミングで爆弾を放った。ものすごい技術だ。俺は音速を超える速度で残った一機に突っ込んだ。それはまるで鬼の爪の鋭き一撃。

貫爪(かんそう)!」

俺は正確に怪異の中心を捉え、大穴を開けた。

「どうやら反応は消えた様です」

少し離れた所にいたフジさんが報告してきた。

「観測員より報告!敵機は確認できず。成功です!」

皆は喜びに沸いた。俺も新たな技に確かな手ごたえを感じ、喜びに手を空へと突き出していた。

 

 

 

 

 「色々と助かったよ」

「あ、ありがとうございました」

北郷さんと美緒が飛行機に乗ろうとしているガランド大尉に礼を言った。美緒は俺とギクシャクしていた時に魔眼の手ほどきを受けていたらしい。おかげで制御がだいぶ楽になったと言っていた。

「なに、気にしないでくれ。こちらとしても良いデータが採れた。何より我が空軍の採るべき方向性も確認できたんだ、安いものさ」

そう言ったガランド大尉の顔には覚悟を決めた表情が浮かんでいた。

「あの、ガランド大尉」

「ん?なんだ?」

「カールスラントに戻っても俺の事は話さないでもらえますか?」

俺は自分の事が世界に広がるのがどうしても嫌なのだ。

「なんでだよ、いいじゃん有名になって」

徹子が能天気な事を言う。嫌なんだって目立つの。

「ふむ…本当は話すつもりだったがまぁ良いだろう」

「ありがとうございます」

俺は深々と礼をした。

「鈴木君にはこれから先、性別の違いや様々な苦労があるだろうからな。今のうちに恩を売っておくのも悪くは無い」

そう言った顔は悪戯な顔が浮かぶ。

「…恩を返せるように精進します」

「ははは…時代は流れている、これから先を担うのは君たちだ。舞台の役者が変わるのもそう遠くないだろうしな。互いに次へと渡せるように頑張ろう、北郷」

そう言い残しガランド大尉は本国へと帰っていった。

1937年12月 この作戦の戦果の報を受け国内外問わず至る所から購入、または提供された様々な武器が前線へと集まり始まる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪降る空に二つの影が銃を撃ちあっている。いや、片方が撃ちもう片方は逃げていると言った方がいいか。すると逃げていた片方に弾が当たった。ピーーー!と高く音がなる。

「先生の勝ちです!」

「…よし、今日はここまでにしようか…」

「はい…」

美緒は息を荒げながらも返事をしていた。

 

 

 「あーもー!なんで一回も勝てないんだー!」

徹子が食事中に大きな声でそういった。

「しかも先生ならともかく健人にも勝てない!」

「…徹子は突っ込みすぎなんだよ。あと食事中に大声出すな、唾飛ぶ」

「あのね…この訓練は勝ち負けじゃなくて回避機動を学ぶためなんだけど…何か掴めた?」

「魔法みたいです…」

「全ッ然分かんない!」

「…分かりません」

三者三様に答える。

「あはは……健人君はどうだい?」

俺は味噌汁を啜りながら答える。

「はい、わかりました。というか分からないと北郷さんの後ろは取れません」

「後ろを取られるのは私としても嬉しいんだか悔しいんだか複雑なんだけどね…」

そう、この訓練において唯一北郷さんの攻撃を回避、更に後ろを取ったのは俺だけなのだ。

「健人!どうやるんだよ!」

「こればっかりは自分で見つけるしかないんだけど…」

「ん~…そうか、ここしばらく出撃に訓練と忙しかったからね、今度のお休みは気分転換にみんなで出かけてみるか」

「先生ほんとか!?」

「うん、偶にはそういうのもいいでしょ」

「やったー!」

醇子も珍しくはしゃぐ。よほど皆で出かけたかったのだろう。

「じゃあ次の休みは軍資金4円をもって街に行くよ」

「えー、4円だけかよ」

「充分でしょ」

美緒が徹子を窘める。

 

 

 

 

 そして休みの日。

「うわぁ~!とても戦争中とは思えない賑やかさですね!」

「ここは内地からも物資が集まる所だからね、物が集まる所には人も集まる。だから今は特に賑わっているんだよ」

醇子の言うとおりすごい人数だ。どこもかしこも活気に満ちている。

「あっ、でも私たちだけお休みを貰っちゃってもいいんでしょうか…」

「それなら交代でお休みすることにしたから気にしなくてもいいよ。というわけで皆軍資金は持ってきたかな?」

「言われた通り4円です」

「私も」

「俺もです」

「4円しかはいってないぜ」

いや徹子よ、それは明らかに4円ではないぞ。

「……まぁいいか」

いいんですか北郷さん!?じゃあ俺ももっと持って来れば良かった…

「それじゃあ街頭偵察訓練始めー」

「「「「はーい」」」」

俺たちは街を練り歩きながら人々の活気あふれる様子を見ていた。途中で北郷さんがりんご飴を驕ってくれたりもした。醇子なんか2つ同時に頬張っていた。そうやって歩いていくと浦塩鎮守府に着いた。

「私はここに用があるからそれまでしばらくどこかに……」

そこまで北郷さんが言うと徹子が使い魔の耳と尻尾を出して反応した。

「よっしゃー!善は急げだ!モタモタするなよ!」

「…やれやれ、いってきます」

「あ、ああ。ちゃんと時間までには帰ってくるようにね」

「はい、了解です」

俺は先に行った三人を追いかけた。

 

 

 

 「おおおーー!なんか何でもあって面白いな!」

めっちゃ目が輝いている。大好物の食べ物を貰った犬みたいだ。使い魔は狼だが。

「はしゃぎ過ぎだろ…」

「あ、あははははは…」

美緒も苦笑いしている。

「で、でも何か見られてない?私達やっぱりおかしいのかな?」

醇子が不安そうに言った。北郷さんと離れてから挙動不審で確かにおかしいが多分違うだろう。

「あー…多分見られてるのは俺だぞ?」

「え、なんで?」

「分からないと申すか?」

そこまで言うと醇子も気付いたようだ。俺も基地にいると忘れてしまうが俺は大分痛々しい容姿なのだ。露出した肌の半分以上が火傷の跡で覆われていて左腕の袖は風に抵抗なく吹かれているのだ。そんな子供がいれば誰でも見てしまうだろう。

「それに帯刀してるもんね」

美緒が俺の左腰を見て言った。血染も北郷さんに置いて行けと言われたがこればっかりは置いていく気にはならなかった。反抗しまくって半ば北郷さんが折れて今の俺の姿である。はっきり言えば異質だ。浮きまくっている。

「こればっかりは手放せなくて…」

「そんなに大切なの?」

「まぁ、バラキの一部でもあるしなるべく一緒にいたいんだよ」

「でも少し怖いよ…」

「…それは我慢してくれ」

この流れで怯えられるとは思わなかった。どれだけ北郷さんに頼っていたんだ。

 

 

「そこのお嬢ちゃん」

 

 

「ヒィ…!」

醇子は俺と美緒の影に隠れてしまった。

「怯えすぎだよ…」

「……そんなに驚かなくても…ショックだよ…」

「す、すいません」

代わりに美緒が謝っていた。徹子もちょうど戻ってきた。

「いや、大丈夫だよ…と、とにかく今うちで売出し中の新製品のサイダーなんだけど試してみないかい?」

店のおじさんが俺たちにサイダーを渡してくれた。若干俺には訝しい顔をしたのは気のせい……と思いたい。

「へぇー、りんごの味がするな。ちょっと苦いけど酒でも入ってるのか?」

「な、何!?」

俺も慌てて口を付ける。…間違いなく入っている。これは…まずいことになりそうだ。

「醇子!美緒!」

二人の方に振り向くと醇子は平気そうだ。やはり誕生会の酒が強かったのか。だが美緒は手遅れだった。一瞬の間に大量のサイダーを買い飲み干していた。

「美緒!そんなに飲んで大丈夫か?」

徹子が珍しく心配の表情を見せる。

「お、おいふらついてるぞ…」

嫌な予感しかしない。

「あっ…うっ…ひっく…」

そして

「ブフッ!」

美緒は無挙動で徹子を瓶で脳天に振り下ろした。手が見えなかった。

「あははっ!あはははははははははっ!」

「美緒ちゃん!?」

「おい美緒!」

美緒は人ごみの中に走って行ってしまった。

「ど、どうしよう、美緒ちゃんがおかしくなっちゃった…!」

「醇子は追いかけて!俺は徹子を担いで行くから!」

「わ、分かった!」

醇子は慌てて追いかけていく。俺も笛を鳴らし今の美緒の位置を割り出す。

ー…いやなんでもうそんなところにいるんだよ!

美緒は既に俺たちの所から遠く離れた場所にいた。瞬間移動でもしたんじゃないかと思う位置だ。すると俺の索敵に北郷さんが掛かった。俺は急いで向かった。

 

 「健人君!遅かったね…!?」

北郷さんは俺の肩に担がれている徹子に目を剥いていた。

「若!?いったい何があったんだい?」

「説明は後でします!徹子をお願いします!」

「ちょっと!健人君!?」

俺は徹子を北郷さんに預け美緒の元に走った。地面を走ると追いつけない。

ー目立つだろうけど仕方が無い!

「バラキ頼む!」

『承知!』

これ以上被害が出るよりはマシだと言い聞かせ俺は魔法力を解放してジャンプした。そして店の屋根に飛び乗りその上を走った。だいぶ速く進める。下からは「なんだあれ?」「妖怪か?」などの声が聞こえる。あながち間違っては無いがやはり少し心にくる。

ー自分から言うには良いんだけどなぁ…

『世の中そんなもんじゃ。心の修行と思えば良い』

心の修行ねぇ…いやいや今はそんなことを考えている場合じゃない。雑念を振り払い走っているとちょうど美緒が屋根の上に立っていた。どう上ったかはもう考えない。

「私は扶桑一のウィッチになるんだーーー!」

何衆人観衆の前で宣言してんだお前は!

『なら主は世界一じゃな』

お前も何言ってんだよ!

「美緒ちゃん危ないから降りてきて~!」

醇子が下で呼びかけるが高笑いして聞き流している。俺は全力疾走して美緒の背後に回る。

「美緒、すまん!」

美緒の首筋に手刀を決める。

「あっははははははうっ!」

気絶。俺は美緒を担いでその場から全力離脱した。

「もう嫌だ…」

『なかなかに楽しかったのう!』

もうバラキはこの状況を楽しんでるし…休暇のはずがとんでも無いことになり疲れが溜まっただけとなった。

 

 

 

 

 

 「……ん、あれ?私…」

私が目を覚ますとそこは見慣れない場所だった。

「気付いたかい?」

声の方を向くと先生がいた。後ろには醇子もいる。私を見ると笑顔になったが反対側に目を向けた瞬間一転泣き顔になった。私もそちらを向くと…

「……」

鬼がいた。いや、私を睨みつける健人君がいた。ただものすごく不機嫌で。後ろにいる徹子でさえも顔を引き攣らせている。

「よう、寝坊助さんこ ん ば ん わ!」

「え、え、…え?」

「とりあえず急いで支度して時間もおしてるから!」

私はなにがなんだか分からなかったがとりあえず急いで支度して先生の後を追った。

 

 

 

 

 北郷さんに連れて行かれたのは広い温泉だった。ほんとここには何でもあるんだな。しかも貸切状態。

『ほう、こりゃまた贅沢じゃのぉ』

今バラキは実体化して湯に浸かっている。行き先が温泉と分かると着くなり実体化して足早に向かって行った。いい歳こきすぎている爺さんが何やってんだという思いだ。

『なにやっとる、主もはよ入らんか』

「分かってるよ」

俺も温泉に浸かる。確かに気持ちいいが気分は優れない。

『…まだ根に持っとるのか』

「…持ってねぇよ」

『やれやれしょうがない。風呂は楽しむものじゃ』

すると何かが流れてきた気がした。今までの倍温泉が気持ちよく感じる。

『儂の心を流した。どうじゃ?気持ち良いじゃろう』

「ああ、すごく気持ちいい…」

もう融けそうだった。ずっと浸かっていたい…さっきまでのイライラはもう忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り、ここに来るまでの不機嫌さはどうしたのかというようなご機嫌さで話していた少年と鬼がいたような…




魔女の酒飲みは怖いですね~…
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