あの暴走から一週間が経った。自室待機を命じられているので、外での訓練ができない。少しでも体をなまらせないよう筋トレはしているが、剣の練習ができないのは痛い。そして今もっとも悩ましいのは…
「何が正しいんだよ…」
茨木童子に今までの覚悟を否定され、一から改めなおしているのだがやはり真っ先に浮かぶのはネウロイに対する憎悪だ。
「なぁ、どんな覚悟があいつをねじ伏せれるんだよ?」
『何度も言っておるじゃろう、自分で見つけるしかないと』
「そうは言っても何もわかんねぇよ」
『しょうがない…なら一つ昔話をしよう」
そういうと茨木童子は語り始めた。
むかしむかしある村に一組の夫婦がいました。その夫婦は腹の中に子を授かっていましたが、一年をゆうに超えてもその子は産まれませんでした。そして一年と四か月。ついにその子は腹の中から姿をあらわしました。しかし体は大きく、歯は生えそろい、髪は長く、力は大人を凌駕していました。その赤子を見た母親は衝撃のあまり命を落としてしまいました。怒り狂った父親はその赤子を外に放り出しました。さらにその赤子を見た村人はその子を忌み子として山の中に捨ててしまいました。その赤子は村人が抱えているのは”恐怖”だと知りました。それに対して赤子は村人に“憎悪”を覚えました。そこに一人の翁が通りました。赤子はこの翁も自分を痛くするのかと思いましたが翁は赤子には何もせず、ただ黙って赤子をおぶさりました。赤子は不思議に思いました。この翁は自分を怖がらないのかと。翁は赤子を自分の家に招きました。そこにはお婆さんがいました。老夫婦は赤子を温かく迎えいれました。赤子は初めて愛情を知りました。その老夫婦は床屋を営んでいました。赤子は老夫婦の元ですくすくと育ちました。三歳になった赤子は老夫婦に恩返しをしたくなりました。赤子は床屋の仕事を手伝い始めました。最初は失敗ばかりでしたが、赤子は上手にできた時褒められるのが好きでした。赤子は沢山練習して、翁の代わりができるまでになりました。老夫婦も赤子の成長を喜んでくれました。ある日、赤子が一人の客の髪を切っているとき手を滑らして怪我をさせてしまいました。赤子は慌てて客の血を拭い口に含みました。赤子は血をおいしいと思ってしまいました。それ以来わざと手を滑らせては血を舐めつづけました。翁は赤子を叱りました。“そんな事をしてはならん”。赤子は後悔をしました。また別のある日、床屋に一人の客が来ました。その客は赤子を見るとこう言いました。“何故生きているのか”。その客は赤子が生まれた村の人だったのです。客は逃げていきました。そして三日後、突然夜に家の扉が開けられました。老夫婦は何事かと見に行きましたが、大きな声を上げるとそれ以来声がしなくなりました。赤子は心配になり様子を見に行きました。そこで見たのは血まみれで横たわる老夫婦でした。赤子が生きている事を知った村人が討伐するために大勢で押しかけていたのです。赤子は老夫婦の亡骸を強く抱きしめました。でも体はもう冷たかった、自分に温もりをくれた二人はもういないのだと現実を押し付けられました。村人の一人が刀を振り上げました。赤子はその時長らく忘れていた感情を思い出しました。すなわち“憎悪”を。村人は刀を振り下ろしました。しかし刀は赤子に触れた瞬間半ばから折れ、村人の体は遥か遠くに吹き飛ばされていました。赤子はこの時もう甘えられる事は出来ないと知りました。赤子は“大人”になり、人であることをやめました。人をやめた“大人”はその場にいた村人を全て喰らい尽くし、村に戻り破壊の限りを尽くしました。人に復讐をするために生きると誓いました。その後、人をやめた“大人”は人を見つけては喰らい、探しては殺しました。ある日、人をやめた“大人”は自分を討伐に来た人と戦いました。しかし人は周りにたくさんの仲間を隠していました。意表を突かれた“大人”は体中に傷を負いました。それでも殺してやると再び襲いかかろうとした時、一体の異形が人を薙倒しました。“大人”は驚きました。異形は振り向くとこういいました。“なんだ、まだまだ子供か”。“大人”は怒り、異形に襲い掛かりました。しかし異形は軽くあしらい“大人”の攻撃はすべて空を切りました。“お前はまだまだ幼い。想いがない。何も分かっていない”。“大人”は自分の勘違いに気付きました。自分は“大人”にはなれていないと。“だから俺についてこい、俺が教えてやる。俺がお前を大人にしてやろう”。“子供”は初めて“理解者”を得ることができました。“子供”は異形について行く事にしました。異形は様々な事を教えてくれました。世の中の生き抜き方、人がどのような生き物なのか、自分達はどのような存在なのか。“子供”は異形が教えてくれた事をかつての自分である“赤子”に教えてあげました。そのような事を何年も続けていました。気付くと“子供”の周りには自らを慕ってくれる、仲間が沢山いました。異形は“子供”に“もう一人前だ”と言いました。いつの間にか“子供”は本当の“大人”になっていたのです。ある日、沢山の人が武器を携え異形達の討伐に来ました。いつものように追い返そうとした時、人間たちの武器が特別な力を帯び、異形達の体をいとも容易く貫きました。異形は“大人”に逃げるように言いましたが、“大人”は自らも残ると言いました。異形は怒りました。“お前は次へと伝えなければならない。生きろ、例え醜かろうが次の者を守り後を残せ”。“大人”は異形の言葉を胸にその場を離れました。それからしばらく”大人”は仲間を引き連れ各地を転々としました。しかし人は巧妙に罠を張り”大人”達を追い詰めました。”大人”は決意しました。ここで次に伝えると。“これは過去の自分への復讐だ。全てを憎み本能のままに行動し、唯々破壊していた自分への”。過去の罪を受け入れるために。 “これは仲間を守る為の復讐だ。次へ繋げる為に人を憎む”。異形に最後に教えられた事、“何かを守る為に自らを殺し、破壊を尽くす。それが我ら…「鬼」だ” この言葉を次の者に託して“大人”は正しく“鬼”となり、力を持ちし人と戦った。その後、この“鬼”は人と異形達により語り継がれていった。
『と、こんな感じじゃな…おい、坊主』
「んあ…?」
『主寝ておったじゃろ…』
「…ごめん」
話が長くていつの間にか寝ていたようだ。最近遅くまでどんな覚悟があいつを捻じ伏せられるのかを考えていたからあまり寝られてなかったのだ。
『まったく…せっかく答えを喋っておったのにのう』
「!?も、もう一回話してくんない?」
『嫌じゃ。もうはなし疲れたわい』
「そんな…」
まさか答えを話してくれていたとは…寝てしまった自分が恨めしい…畜生…
『まぁやはり自分で見つけるしかないということじゃな。精進せよ、“赤子”よ』
「俺は赤子じゃねぇよ!」
儂は茨木の道を歩みし
先日ようやく一部資料を手に入れることに成功いたしました。これでようやく流れとか分かる…おそらくあと一~二話で本編の方に入れると思います。駄文にならないように頑張りますので応援よろしくお願いします。
今回、今までに投稿した小説の間違いをできる限り修正しました。しかしまだおかしな点があるかもしれないので気付いた方は連絡をくれるとありがたいです。評価、誤字、脱字、アドバイスなどありましたらよろしくお願いします。