隻腕の鬼と魔女   作:砂利道

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 今回はほぼネタ回です。大分健人が柔らかくなっていますがこちらがもともとの性格です。どっかでこのような話を入れなきゃ後々が詰まってしまうので少し強引に入れました。


爺さん使い魔お騒がせ事件

 今日で二週間、ようやく自室待機が解かれた。いくら世界でも珍しい男性ウィッチだからといってもここまで慎重にならなくてもいいのに。しかもご丁寧に精神鑑定付き。確かに不安定だけども、俺だけ手厚くないか?しかも精神鑑定の先生が最後に

「君は我々男性軍人の希望なんだ、頑張ってくれよ」

って。俺は男性の尊厳を守る為のシンボルじゃない。俺はただ自分の目的を果たすために軍に入ったのだから。

 しかしそれはそれとしてこの間に答えを見付けられなかったのは痛すぎる。これからは考える時間も無いだろうし、剣の修行もしなければならない。俺は久しぶりに飛行場の方に向かった。

「おお!健人君、久しぶりだな!」

「お久しぶりです」

「様子を見に行けなくてすまなかった。上層部と話し合いがあってね、それが立て込んでしまったんだ」

「…俺のことですか?」

そう言うと北郷さんは優しく笑った。

「安心しなさい。健人君の事じゃないよ。ちょっと上に相談事を持ちかけられただけさ」

「大分信頼されてるんですね」

「まぁ昔は駐欧武官をやった事もあったし、上も私を覚えていてくれているんだろうさ」

これには驚いた。駐欧武官といえばかなり優秀でなければ任命されない筈だ。俺はどうやらすごい人に教えてもらっていたらしい。

「北郷さん、俺は何をすればいいですか?」

「そうだな、今から坂本達が飛行訓練をするんだ。それを見ておきなさい」

「わかりました」

自室待機の間に飛行訓練をそれなりにやっていたらしい。少し先を行かれた気分だ。そう思っていると三人が空へ飛び出していった。坂本と竹井はふらついているが若本は安定している。三人は空を自由に飛び回っている。俺はそれを見て羨ましいと思った。

 

 

 健人君は飛び回っている三人をじっと見ていた。その目はただ空に憧れている少年のそれだった。

ーやはり変わったな

彼は気付いていない様だがどこか雰囲気が和らいでいる。もしかしたらこっちが本当の彼かもしれない。

 

 

 

 「どうだい、三人とも。空中機動には馴れたかい?」

「もうとっくに」

「まだ大変です…」

「私も…」

今俺たちは滑走路で昼飯を食べている。しかし北郷さんの手料理なので俺は遠慮させてもらった。三人は顔をひきつらせながらもお腹が減っているらしく咀嚼している。

「というかお前はもう暴れないんだよな」

突然若本さんが聞いてきた。

「…模擬戦さえしなければ多分」

「たぶんだぁ?頼むから俺たちに怪我はさせないでくれよ」

「ちょっと徹子ちゃん!」

竹井さんが若本さんを諫めてくれている。俺は唇を噛んでそのなじりに耐えていた。俺のせいで皆を危険に晒したのは事実なのでその言葉を受け入れるしかない。

「け、健人君の使い魔は鬼なんだよね?先生からそう聞いたよ」

坂本さんが話を変えようとしてくれた。正直その気遣いはありがたかった。でもそんな簡単に教えてもいいのか?北郷さんを見ると少し申し訳ないように片手を上げた。

「まぁね…」

「でも鬼が使い魔ってありえるのか?つかいるのかよ?」

若本さんは半信半疑だ。前見せた時のも見間違いと思っているらしい。

「いる。出てこいよ」

『よかろう、ついでに驚かしてやろうぞ』

すると俺の後ろに光が集まり凝縮した。こいつは魔力以外は割と人間に近いから怖がられることは無いかな?でも驚かすって…?

「ひっ!」

竹井さんが異様な怖がりを見せた。坂本さんも涙を浮かべ震えている。若本さんは口を開け唖然としている。

「健人君!」

北郷さんが二刀を引き抜いてこちらに向けた。俺はゆっくり後ろを向いた。そこにいたのは三メートルを超える筋骨隆々の赤い肌をした本とかでよく見るまさしく鬼だった。

「はぁ!?」

オオオォォォォォォォ!!!

茨木童子は雄叫びを上げた。竹井さんは完全に気絶している。坂本さんも怖がって動けない。若本さんは正気を取戻し北郷さんと戦おうとしている。雄叫びを聞いた整備兵や他の訓練生、魔女も出てきて臨戦態勢を取ってしまい一大事になってしまった。俺はほぼ反射的に

 

 

 

思い切り振り向き、全力で血染を叩き込んだ。

 

 

 

思いのほかよく飛んだ。五メートルは行っただろうか。気付いたらいつもの姿に戻っているし。

「「「「「「「「「…は?」」」」」」」」」

「…あれ?」

『ひ、ひどいのう。ちょっとした冗談じゃろうが…』

その場に居た全員の声がハモり、俺は間抜けた声を上げ、茨木童子はのんびりと感想をこぼした。殴った感触は大男のようなずっしりしたものではなく、今目の前にいる少年のような軽い感触だった。どうやらあれは周りから見た自分の姿を変えるものらしい。

「あのなぁ…」

俺はこの事を理解した。使い方を誤らなければとても使い勝手の良いものをこの鬼はいたずらに使いやがった。俺はこの力の存在すらも聞かされていなかった。

「そういう事をするなら俺に断りを入れてからにしろ!!!」

『そんな事をしたら楽しめんじゃろ』

「じゃあ限度を考えろよ!!見ろ、竹井さん完全にノビちまってるじゃねぇか!!」

『この程度で気絶とは情けないのう』

「てめーの基準で物事を図るな!!」

「あー…使い魔と漫才してるところいいかい?」

『「漫才じゃない!」ぞい』

ぴったりとハモってしまった。

「とりあえず誤解を解く為にも説明しといた方がいいんじゃないかな?」

北郷さんは脱力しながらもそう言った。

『ふむ、それもそうじゃな』

茨木童子はみんなの方を向き声高らかに告げた。

『我が名は茨木童子、かつては京にてその名を轟かせし鬼、酒呑童子一派の副頭領務めし者。今は我が主、鈴木健人に仕えし使い魔なり!』

「…なんか大仰だな」

身振り手振りまでつけている。

『いずれ我が主はこの扶桑、否、世界最強の魔法使いになるであろう!』

ーとんだ爆弾発言をしやがった。

「お前何言ってんの!?」

こんな大勢の前でそんなこと言ってんじゃねぇよ!ああぁぁ若本さんこっちに刀向けないで!北郷さん笑ってないで助けて!なんか周りの訓練生からも殺気感じるから!

『まぁこんなとこかの、後は任せたぞい』

茨木童子は光となり霧散した。

「あっ、こら逃げんな!」

「へぇー、この俺を差し置いて扶桑どころか世界最強ねぇ…」

「いや、あれはあいつが勝手に…」

「問答無用!」

若本さんはいつの間にか刀を竹刀に持ち替え俺に振るってきた。俺はもう一人の俺を捻じ伏せていないので反撃ができない。つまり逃げに徹した。

「待ちやがれーーーーー!」

「誰が待つかーーーーー!」

気付くと坂本さんと竹井さん以外の訓練生全員から追いかけられていた。というか竹井さんはまだノビている。北郷さんはそんな俺たちを大笑いしながら見ていた。

「もういい加減にしてくれーーーーーーーーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに体力と運動能力は俺の方が圧倒的にあるので結局訓練生全員が倒れこむまで逃げ切るのに成功した。

 




 最近ドンドン筆が進み執筆が順調です。良し悪しはともかくとしてですがね…
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