私の姉が日本一のスクールアイドルだった件   作:裏面が下駄

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第二話 理想と現実

固まったお姉ちゃんを手で押しのける。

 

・・・屋上が人で埋め尽くされていた。

 

「穂乃果!」

「あ、うみちゃん!いったいどうしたのこれ?!」

「ど、どうしたのじゃありませんよ!貴女が屋上に集めたんでしょう!?」

「そうだけど、、よくて10人いればいいかなぁ~なんて思ってたから、こんなに集まってるなんて、あはは…」

 

「ま、ラブライブ優勝グループのスーパーアイドル、にこがいるんだしこれくらいはとうぜn…「にこっち、さっきまで人が来なかったらどうしようとか言ってたくせに~」

「うっさいわね!」

「にこも希も皆が見てるんだから落ちつきなさい!」

 

声のする方を見ると今年大学生になった東條先輩、矢澤先輩、綾瀬先輩の姿があった。わざわざこのために駆けつけてくれたのだろうか。

3人とも同じ東京の大学に入り華の大学生活を満喫している。矢澤先輩は志望校の難易度が高すぎたため、μ's解散後から綾瀬先輩に付きっきりで勉強を教えてもらってなんとか入れたのだとか。

 

(綾瀬先輩と東條先輩、大学生になって更に大人っぽくなったな~。矢澤先輩は、、うん。)

そんなことを考えながら、お姉ちゃんに声をかける。

 

「っ!あっ、そうだ!皆さん今日はこんなにも沢山集まってくれてありがとう!」

 

その一言でお姉ちゃんに一斉に注目が集まる。お姉ちゃんはこんなにたくさんの視線を浴びても、怖気ずくことなく話し始める。すごいなぁ…私なら絶対に頭が真っ白になっちゃうよ…。

 

「早速ですが秋葉原でのイベントで話した通り、私達μ'sはあのイベントをもって解散しました。だからこれからスクールアイドルを目指す子の後押しが少しでも出来たらいいなと思って皆さんに集まってもらいました。」

「ん~、といっても何を伝えたらいいかな~。 ……そうだ!まずは私達のパフォーマンスでも見てもらおっかな!」

 

予期せぬサプライズに、新入生たちはどよめく。更にはμ'sの人達でさえどよめいている。

「ハラショー!雪穂、知ってたの?」

知らん。絶対また思い付きだよ。ほら見てみなよ、あの海未ちゃんの間抜け面(笑)

 

思考を読んだかのような海未ちゃんからの熱い視線から目を逸らしつつ、暴走列車こと我が姉の話を聞く。

…お姉ちゃんは、思い付きで振り回される人の身になったことがあるのだろうか。

 

μ'sの面々が生徒の前に集まる。そして既定のポジションに着いたのを確認すると、亜理紗が曲をかける。

 

瞬間。

先程までの和やかな雰囲気は消え去り、会場全体に緊張が走る。

 

なんというか、異様な雰囲気だったのを覚えている。

曲がかかった瞬間、まるで人が変わったかのように感じるくらい、凄まじい集中力だった。

楽しそうに、時に儚げに見える表情。

それを裏付ける、指先まで張り巡らせた繊細な動き。

気が付くと、この瞬間を逃すまいと息を殺して見入っていた。

 

曲が終わると黄色い歓声が鳴り響き、あちこちから「さすがμ's!」「可愛い!」と聞こえてくる。

 

私はただただ圧巻された。普段家でゴロゴロしかしてないお姉ちゃんにこんな一面があったのだと。近くに居すぎたせいで分からなかった。

 

「凄い…」

 

やっと絞り出せた一言で、お姉ちゃんがいる場所の遠さに気付かされる。

 

呆気にとられる私を他所(よそ)に、まだまだ動き足りなさそうなお姉ちゃんは続けた。

 

「次に皆さんと一緒に、普段の練習をしたいと思います!」

 

μ'sのパフォーマンスを見た生徒たちの興奮がいまだ冷めない中、海未ちゃんが考案した柔軟や発声練習、

その後運動場でランニングなど休憩することなく行われた。

 

私も亜理紗も、付いていくのに必死だった。ランニングを終えると息が完全に上がり肩で息をしていた。

 

「では、次に体幹を鍛えまs…」「ちょ、ちょっと待ってください…!」

「はい。どうしましたか?」

 

海未ちゃんの声を遮る新入生。

「ハァハァ…これって、いつまで続くんですか…?」

「そうですね、あと半分と言った所でしょうか」

さも当たり前かのような海未ちゃんの反応に、私たちは絶望する。

 

助けを求めてお姉ちゃんを見ると、そこには息一つ切らさず、あまつさえじゃれ合う余裕まで見せていた。

 

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私は、誰よりもスクールアイドルという存在が身近にあった。だから自然とスクールアイドルに興味を持っていたし、亜里沙に誘われた時はすごく嬉しかった。お姉ちゃん達のライブを見ているうちに、私もこうなりたい、お姉ちゃん達と同じ景色が見たいと、そう思うようになった。

 

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甘かった。

そりゃそうだよ。いきなりステージに立っても、あんな風には絶対に踊れない。

亜里沙も思うところがあるのか、いつもの明るさは見られない。

 

沈み出した陽の元、私たちは屋上を後にした。

 

 

 


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