最新の内容につながるようにしました。ネタバレになるので詳しくは言いませんが
あ、明けましておめでとうございます。本年もこの作品を、どうぞよろしくお願いします
「チビイオナ、これはメンタルモデルの一種。つまりは自分で考え、自分で行動するんだ。言いかえよう。本体のイオナとは別の個体であり、独自に演算をしている。これを、艦載機に転用する」
この会議室にいる皆が、黙ってこちらの説明に集中している。そんなに見られるとなかなか恥ずかしいものがあるが、そう言ってる暇もない。俺は説明を続ける
「今まで艦載機にクライン・フィールドを搭載できなかったのは、単純に遠距離で演算が出来なかったからなんだ。強制波動装甲はナノマテリアル製である以上、搭載はそこまで難しい話じゃない。勿論、面積は艦船よりも小さくなる分蓄積できるエネルギー量も減って、防ぎきれる攻撃の総量は本体と比べるまでもなく低いだろう。それこそ、レーザーなんてものを喰らえば一発で飽和する程度」
「ああ。だが、それだけじゃないぞ」
無言であったイオナがここにきて発言をする
「私もその発想を昔したことがあってな。私の原型となった伊401は潜水空母として、"セイラン"なるものを運用していたと聞く。それならば私も、と思ったのだが上手くいかなくてな」
「セイラン....?日本語的には青嵐、あるいは晴嵐といったところか?すまん、俺の知らない艦載機だ。水上機か?」
シナノを運用する以上、俺も艦載機についてはそれなりに勉強していたが、艦上機のみの知識に偏っている。水上機に関しては、レーダー類が使えなくなった時に行う弾着観測射撃用の零式水上偵察機しか知らない。俺の知らないセイランなるものは、恐らく水上機なのだろうと思ったのだ
「晴れに嵐と書いた晴嵐だそうだ。我々はかつてのものと区別するために漢字を当てはめてはいないがね。その通り、水上攻撃機に分類される戦闘機だ。....話が大幅に逸れてしまったな。元に戻すが、上手くいかなかったというのは操作の面もあるが、演算装置を置くスペースが艦載機にはなかった」
「わかっているさ。それを解消するのが、チビイオナだ」
俺は群像、イオナ、ヒュウガを見渡し、みんながここまでの流れを理解したことを感じ取り、スライドを次に進める
「メンタルモデル、というのは霧の持つユニオンコアという我々の想像をはるかに超える演算力を使い、人間の持つ最も不可解で不安定なもの。思考と感情を理解するために、獲得するために作り出されたものだ。その性質上、常に自己判断を迫られる。その自己判断は勿論、感情シミュレータと思考シミュレータを基礎に行われる。その過程において、そのシミュレータに入れる情報は多い方がいい。その為に、可能な限り多くの情報を収集することに特化している面もある。合ってるか?」
一応、メンタルモデルの二人に問いかけたところ、頷きが帰ってきたので問題ないようだ
「艦載機一つにつき、一人のチビメンタルモデルを載せる。このチビメンタルモデルの思考ルーチンはクライン・フィールドの演算に必要な情報を集めることだけに特化させるんだ。そして、その情報を元に強制波動装甲に値を代入して、クライン・フィールドを発生させる。こうすれば、艦載機にクライン・フィールドを実装することができると、俺は考えた」
「そこまでは、霧の誰もが考えたことね」
ヒュウガの言葉と目からはその先を期待していることがよくわかる。その期待を裏切ることがないと信じて、俺は頷く
「でも、それだけじゃダメなんだ。船そのものを制御するための演算力が足りなくなるということに関しては対策できる。でも、ユニオンコアの補助が届く範囲の問題でアウトレンジ戦法を取ることができない、これに関して解決することができなかった」
「まず船の周囲、シナノのユニオンコア制御範囲ギリギリのところに艦載機を120°に一機ずつ配置する。それは戦闘能力をガン無視した、中継機みたいなものだ。機体面積も少し大きくする。その範囲内ではシナノのキャパが許す限り船本体と同等のクライン・フィールドを貼ることができる。でだ、その中継機を通して、制御範囲を伸ばす。本来、超戦艦なら静止衛星軌道上の"モノ"を使って演算力を遠くに送れるらしいんだが、俺たちは霧から溢れた存在。その代わりを中継機にやらせるんだ。それを使ってチビメンタルモデルの分の演算力を補助。そうすれば、理論上は可能なはず、だと思うんだけど.....」
途中までは自信満々に説明できたんだが、最後になるにつれて声が小声になる。自分でなんども考えたことで、矛盾点も無かったはずなのだけれど、こう他人に語るとだんだん自信が無くなっていく...
イオナは腕を組み静かに思案し、ヒュウガは頭を抱えて唸っている
俺はヒュウガに何かあったのかと思い声を掛けようとするが手で制される
「大丈夫よ。確かにそれなら可能だわ。本当、なんでこんな単純なことを思いつかなかったのかしら」
「我々は船の制御を手放さなければ不可能という結論に達した時点で、模索をやめたからな。なるほど、これが人とメンタルモデルの差というやつだな。我々は効率ばかりを優先してしまう気がある。群像と出会ってからは、それ以外にも優先されるべきことがあると学んだがな」
イオナが最後に少し微笑む。ヒュウガはどうやらそれに対してむすっとした様だが、直ぐに普段の表情に戻り
「そのプラン、確かに行けるわ。クライン・フィールドを発生させなければ、イオナ姉様にも応用できる」
「ああ。元々の俺のプランだと、全操縦を手動に切り替えない限り不可能だったが....。なるほど、その手なら少しは負荷を軽減できそうだ」
「群像もなにか考えていたのか?」
俺は問いかける
「イオナからセイランの話は聞いていてね。クルーと上手く活用できないか話し合ったことがある。その時の結論は船を自分達のみで動かして、イオナにはクライン・フィールドの演算と艦載機の操縦に集中してもらうってところまでしかたどり着かなかったんだ。でも、その頃はまだ本艦を動かせるほどに理解はしていなかったし、俺たち自身の練度も足りて無かった。それで今日まで諦めてたのさ」
群像は目を閉じて肩を竦めながらそう言った。このポーズが様に合うやつも中々居ないんだろうなと、余計なことを考えてしまった。直ぐに思考を切り替え
「作成したデータは渡すからそっちでも活用してくれ。多少ましにはなるはず、と信じたい。すまないな、長話に付き合ってもらって」
記憶媒体を外し、群像に手渡す。オリジナルのデータは自室のノートPCの中なので問題ない。群像はそれを受け取り、そういえばと俺に聞いてきた
「なんでシナノは居ないんだ?彼女に聞くのが手っ取り早いのでは?」
「あー.....。いやさ、あいつちょっと、いやかなりあれでな。そのー、なんていうの?ロマン思考?っていうのかな。あいつとこういう話するといつもそっち方向に話進んでさ、しかも性能のゴリ押しで再現できちまうからタチ悪くて、さらには妥協案すら聞いてくれないときた。だから、あんまり相談したくないんだよ....」
俺は苦笑いをしながら答える。会議室から出て、四人でドックへと向かう途中にも話は続く
「メンタルモデルが、ねぇ。一体どんなことすればそんなオモシロオカシイことになったのかしら?参考までに聞いても?」
ヒュウガがニヤニヤしながら聞いてくる。いや、お前も十分境界超えてるよ、と咄嗟に突っ込もうとしたけど、それこそ面倒なことになりそうなのでやめた
「ずっと前のアニメなんだけどさ、機動戦士シリーズって知ってるか?」
「ん、俗に言う"ガンダ○"というやつか。知っているし見たこともあるぞ。杏兵が持っていた」
どうやらイオナはアニメに興味を持っているらしい。曰く、人間の想像力は我々にない物だから学びたいし、純粋に興味がある。それが作られた時代には不可能なテクノロジーを想像し、絵にするのは生半可なことではないし、中には今の時代において再現可能な物さえあるというのは驚異的である、だとか
「そうそう。でさ、それの影響だと思うんだが、一時期、高火力かつ広範囲の武装を実装できないかと真面目に考えていた時期があってな、結局超重砲でいいよね、って落ち着いたんだが、今もまだその気が抜けなくてな。この間使ったレールキャノンシステムだって、元々はアニメのロマン兵器を無理やり実現可能なレベルに落としてまで作り出したからな。あれに関しては割と有効だからまた困るんだが...」
と、話に花を咲かせている内にドックに辿り着いた。401もシナノ、ついでにタカオも新品同然、とまではいかないが目に見える傷が無くなっている
「さて、暫くはお別れだな。通信回線は開いてあるからなにかあったら量子通信してくれ。特に、コンゴウと戦闘になったら、な」
「それはどういう意味だ?」
群像が厳しい顔つきになる。後ろにいるヒュウガとイオナは、俺が言わんとしていることを理解しているようだ
「今のコンゴウは本気だろう。そして、今回の海域封鎖限定解除から見て取れるに戦略も相当理解している。言いたくないが、現在の人類の状況と勢力間におけるいざこざ、つまりはふとしたきっかけで内部分裂が容易く起こるということも。お前達が予測したように、間もなくここには人類内における敵がやってくる。それを向こうが予測して戦略を立てているなら、お前達と戦闘になることを想定していない筈がない。となれば、確実にあれを用意しているはずだ。超戦艦ですら若干ひくレベルのキチガイ武装、霧が未だ人類に対して使用したことのないもの、艦隊旗艦装備が」
「艦隊旗艦、装備」
群像が息を飲む。ヒュウガとイオナも難しい顔になる
「ま、と言ってもレプリカイオナのプランが上手くいけばそんなものと対峙する必要はないし、コンゴウ型の大戦艦に使える旗艦装備は限られてるみたいだからそこまで理不尽な戦いを強いられることはないと思うよ」
「ま、そうね。ある程度はデータベースにあるから、どの種類を使ってるのか分かれば対策も取れる。イオナ姉様はきっちり守るから安心してください」
「そうだと、いいのだがな」
俺とヒュウガは声を軽めにするが、イオナと群像は未だ暗い雰囲気に呑まれている。少し、脅し過ぎただろうか。まあ、クルーと話し合えば大丈夫だろう。最後に群像と握手して、それぞれの船に向かう。入口にはシナノが立って待っていた
「おかえり」
彼女が微笑みながらそう言ってくれる姿に俺は少し安心する
「ただいま。拠点に戻ったら改修するぞ。プランが纏まった」
「分かった。さ、ブリッジへ」
「ああ」
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ーーシナノ ブリッジ内
「出航シークエンス完了 全システムオールスタンバイ」
「よし、こっちの準備は完了したぞ」
目の前のモニターに群像の顔と、タカオの顔がアップで映る
『401もスタンバイしている』
『こっちも大丈夫よ。401のデコイはきちんと横須賀まで運ぶわ。か、かん、ちょう』
タカオがなにやらモジモジしているが気にしない。どうせあいつらは気がつかんしな、火種に油を注ぐなんて愚行はしない
「じゃあ、こっちは通信を落とす。以後は秘匿性の高い量子通信だけで頼む。本艦の位置を探られる危険性は可能な限り無くしておきたい。俺たちの本拠点は一つしかないからな」
『了解した。また会えることを祈るよ』
「こっちもだ。お互い、無事にまた会おう」
通信が完全に途切れる。息を一つ吐き、これからするべきことを言葉にする為、口を開く
「前進微速。本艦はこれより、ソロモン諸島その中心、マライタ、ガダルカナル間海底に位置する拠点へ向け出航!航路設定、全行程は潜水行動で行う。敵との遭遇は極力避け、友軍艦と合流するぞ!」