交友関係NTRアンハッピーセットを食らって女性不信拗らせた親友と朝起きたら女になってしまった俺 作:北京院
5年前に投稿した短編だけど……!
コレ……女性不信になった親友とTSした主人公の不器用な恋愛小説だったってことにはなんねェかなァー!!!ダメかなァー!!!
下書き直書きしてたら間違えて投稿ボタンを押してしまいました。少しだけ書き溜めがあるので、しばらくは定期的に投げます。よろしくなァ!!
─―女になってしまった。
なってしまったものはなってしまったので仕方がないとして、学校に行かないわけにはいかない。先生達にも話をしたところ戸惑いつつもなんとか納得はしてもらえた。
説得や説明を手伝ってくれた翔太やおばさんには感謝してもしたりないほどだ。
一応はしばらく病欠してもよいとは言われたけれども、学校にはいきたいと思っているのは確かだ。友達もいるし、勉強は……あまりしたいとは思わないが、まぁ必要なのはわかるし。
女子の制服は昨日の今日では用意できなかった。というか女子の制服を自分が着る未来が一昨日の俺に想像できたわけもないし、用意できていたらそっちの方が怖い。
とりあえずこの格好で行くしかない、となった時点で「まあ、美少女がでかい服着てるのも可愛いといえば可愛いかもしれないしな」と鏡の前でポーズをとってみる。本当に素材がいい。ちょっと跳ねた髪すらチャームポイントになるレベルだ。
しかし可愛さと動きやすさはまったくの別問題である。
ベルトで無理やり胴にしばりつけたズボンはぶかぶかだし、ブレザーは彼シャツもかくやと肩がおちて手先のでない萌え袖状態。この土日で制服を新調する必要がありそうだ。裾を踏まないためにつま先立ちをしていると身体測定で一ミリでもごまかそうとした思い出を刺激する。……いや本当に歩きにくいなこれ。
一応は捲ってあったりはするのだけれどそれでも不便で、中学校に入学したてでサイズがあっていない新入生よりもずっとみっともない様相になってしまっていた。
このままではさすがにまずいだろう、と裾をもう一段捲って田んぼに入るいなかっぺか、作業に入る職人かという大げさなロールアップをしたところでインターホンが鳴る。
さて朝から何事かとドアを開けると翔太が立っていた。
去年ぶりか、下手をすれば中学校以来か? 翔太に彼女ができてからはめっきり減っていたが、そういえば昔はよく一緒に登下校したものである。
おばさんにでも頼まれたのか、迎えに来るとは殊勝な心掛けだとほめてやりたいぐらいだ。
「らっしゃい。迎えかよ?」
「……まぁな。お前……」
翔太が俺の顔を見るなりビクっと震える。なんだよなんかついてるか? 整いすぎてるぐらい可愛い目と鼻と口ぐらいだろ、ちゃんとさっき鏡を見たから知ってるぞ。……いや寝ぐせがちょっとうまくおさえられなくって
「……本当にその格好でいくのか?」
まぁ、それはうん……しょうがないだろ、服がないんだから。
さて登校せねばと並んで歩くとわかるが、本当に歩きにくくてしょうがない。
早くも「やっぱり休んでたほうがよかったんじゃないか?」という考えが鎌首をもたげる。なるほどこれは一人だったら途中であきらめて家に帰ってたかもしれない。
「はぁー……服。土曜日におばさんに連れてってもらわないとダメだな」
「……まぁ、歩きにくそうだな」
愚痴る相手がいるだけで幾分楽だ。翔太が少し離れて歩いている。
……俺に気を使ってるのか、こいつが無意識に距離を取ってるのかは知らないがまぁ昨日の今日でよくなるものでもないだろう。
本人があれこれ言わないのであれば、俺もあれこれ言う必要はない。
くだらない話をしながらなら歩きにくさも少しはましに思えた。
――――
――
――さて、学校に到着したわけだが。
朝のホームルームの前に先生が説明をしてくれるということなので教室前の廊下で待機する。中からクラスの声がくぐもって聞こえてくる。賑やかそうで何より。あっちはいつも通りの朝なんだよな。こっちはそうじゃないけど。
考えている間に先生が教室に入り、声をかける。
「みんな席につけ。今日は知らせたいことがある」
不良校というわけでもない我がクラスで、先生に促されてもバカ騒ぎを続けるようなやつはいない。
さてどうしたんだと興味ありげに、もしくは楽しいおしゃべりを邪魔されたことへの不満をあらわに、クラスメイト達は席についた。
「実は四ツ谷くんについてなんだが……はいってくれるか」
促されて、教室に入る。戸惑いの視線が刺さる。そりゃあ、そうだろうとも。クラスの冴えない男子が呼ばれたと思ったらとんでもない美少女が明らかにサイズの合っていない男子制服を着て入室してきたんだから。
小さくひそひそ話しているのだって聞こえる。「誰?」「転校生?」いや、ご期待には沿えないよ。そういうイベントではなく……とは言えないか。大イベントではある。
「あー、四ツ谷樹です。なんか、女の子になっちゃいました。ははは……」
笑いながら冗談っぽく言ってみる。クラス中から驚きの声が上がる。当然の反応だろう。
なんかってなんだよ、って思うだろう? 俺もそう思う。なんなんだろうね。
「性別が変わってしまう非常に珍しい病気だそうだが、うつったりはしないそうだ。みんな、変わらずに接するように」
うつったりしないって、風邪じゃないんだから。
他人事のように──実際、他人事なのだけれども。先生が俺の状況を説明する。
様々な目が俺に向いている。好奇の目、疑念の目、あるいは値踏みをするような目。
注目を受けるのに慣れてない俺としては、とても居心地が悪い。こんなことなら説明もなく「いやぁ別に昨日まで通りの樹ですけれど?」という顔をして出席してしまった方がずっと楽だったのではないかとすら思う。
幸いにして今の俺は美少女であるからして、なんだか知らない転校生が当たり前のようにクラスにいても嫌がるやつはそうはいないだろうし。
興味の渦が巻いてにわかにまた騒がしくなりかけた教室だが、先生の咳払いひとつでまた静けさを取り戻す。
しかし視線の数は変わらず、自分の席に向けて歩くだけのことがいやに注目されていてしまっていた。
勤めて気にしないようにして、自分の席に着く直前。俺の前の席の翔太が心配そうな顔を向けてきた。
……いやいや、大丈夫だっての。お前こそ同じクラスの彼女さんは──今日は休んでるのか。まぁ負担が増えなくてよかった。
先生がいくらかの連絡事項を話してクラスを出ると、俺の現状に興味を持ったのかまあまあの人数がすぐに近くまで来て質問してきた。
「どうして」なんてのはこっちが聞きたいし、「本当に?」なんてのは俺も信じられないからわかるとも。病気って突然なるものなのかと聞かれれば「たぶんそう」としか言えない。心配と好奇心が混ざったワイワイとした質問ショーが起きている。
元から友達だった男子生徒からは下ネタ混じりだったり「俺と付き合ってよ!」なんて切実な願いまでささげられた。冗談なのはわかる。こんだけ美少女相手でワンチャンあるならって気持ちも理解する。でもないな。ワンもニャーもないよ。そう言葉にするよりも女子からの冷ややかな目と「男子サイテー」という声がインターセプトした。特にこたえている様子はなさそうだ。たくましいなお前たち……
さてすぐ近くの席で騒がれて、翔太は面白くなさそうな表情を隠さない。
……というか、不機嫌なわけでもなくちょっと調子が悪そうだ。
「普段から仲いいやつがこんだけ可愛くなっちまったら、女子的に彼女さんも嫉妬するかもな」
そんな軽口をたたきながら俺と翔太の共通の友達である武夫が笑った。
翔太は調子の悪そうな顔色のまま笑顔を作って口を開いたあと、何も言葉がでずに乾いた笑いだけで返した。
無理しやがって、とは思うが本人も知られたくはあるまい。
武夫だってからかっている相手が彼女を寝取られた上に先輩と後輩まで謎のNTR報告までしてきたせいで女子に対してグチャグチャの感情を抱いているなどと想像できるわけもないだろう。
いや、俺も証拠を見てなければ信じられなかっただろうし。
翔太は声が出なかったのが自分でもショックだったのか、他の理由があるかは知らないが顔を伏せた。
「ま、とりあえず女子初心者だからお手柔らかに頼むよ……服からして困ってんだから、さ」
冗談めかして笑うと、笑いが起きた。翔太は伏せたままだった。
それから、おすすめの化粧品なんかの話をしてくれる女子もいた。制服の相談に乗るよ、という子と、今週末どうするの、と話しかけてくれる子と。クラスで顔を知っている程度の相手だったが、こういう時に素真にありがとうと言える人間でよかったと思う。
髪のことも聞かれた。どうするの、セットとか。正直さっぱりわからんと答えたら「教えてあげようか?」と言われた。ありがたい申し出だったが、それはもう少し落ち着いてからでもいいだろうかと笑って流した。
近くで盛り上がっている間、穏やかに話しているにも関わらず翔太は相変わらず顔色が悪かった。机に女子がもたれかかったら席を立ってどこかへ行ってしまった。
大げさに距離を取って、間違っても女子に触らないように、足早に。この場から逃げ出した、というのが正しいかもしれない。よくもまぁ、そんな状態で半分は女子の場所へ足を踏み入れたものだ。戻ってきたのは休み時間ギリギリで女子たちが「またね」なんて言って解散してからだ。
戻ってきた翔太を武夫が「おい、大丈夫か」と心配していた。友情に篤いやつやつだ。
翔太がごまかそうとするよりも早く「一昨日のツナサンドやっぱりあれ痛んでたんだな……」と言い出した。ちょっと待てそれお前がおごりだって言って持ってきて俺と翔太が食ったやつじゃないか?
「ふざけんなよ……」
心の底から声が出た。「いや廃棄だって言われてもらったけど食いきれなくてさ」と言い訳する姿に殺意が沸いた。翔太も多分キレてた。顔を見る余裕すらなかった。授業が始まらなければ校舎裏に連れ出してやったところだ。
対応に追われているうちに、いつの間にやら授業は終わっていた。
授業中もなんだかんだで視線を感じたし、休み時間のたびに誰かしら来た。
別のクラスのやつまで来ていてどこからどういう経緯で聞いたのか知らないが来て早々「誰かわかんないけど本当に可愛いね!」と来たもんだ。お前こそ誰だよ! 女子になる前からお前のことは知らねぇよ!
悪意はないとわかっていてもずっと注目されているのは、慣れていない人間にはしんどいものだ。俺は慣れていない。
帰り支度をしていたら、前の席でがたりと音がして翔太が立ち上がった。俺の机の横に来て立っている。
「……帰るか」
「帰るかぁ……」
なんだかどっと疲れが出た気がする。移動教室もないのに、ほぼ歩いていないのに。
服のサイズが合っているかどうかとか、質問攻めにあったとか、それ以上になんだかひどく疲れた。
校門を出たあたりで二人になった。並んで歩く。しばらく何も言わなかった。
「疲れた」
言うつもりじゃなかったが、口から出た。
「だろうな」
翔太が短く返す。近くの席で女子が集まっただけで顔色を悪くしていたくせに送り迎えはする気満々らしい。
ズボンの裾を踏まないように、ちょっとだけ気をつけながら歩いた。この格好はやっぱりみっともないので、今週中に制服をなんとかしよう。女子の制服を自分のサイズで作るという、一ヶ月前には想定していなかった未来が俺を待っている。