遠吠えは遥か彼方に   作:劇鼠らてこ

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10.糸伊豆阿派青磁負不伏零矢堕千経度戸地内途.

「何事ですの?」

「指令塔が何やら慌ただしい。遠征組に何かあったのかもしれない」

 

 国家防衛機構・浮遊母艦EDENには、五つの監視塔が存在する。

 その中の一つ、指令塔。学園塔の隣にあるソレに、慌ただしく人が出入りしていくのが散見できた。

 

「……何があったら、こんなに慌ただしくなると思いますの?」

「わからん。調査先で何か進展があったか……だとすれば、誰か死んで、情報を持ち帰ってきたという可能性はあるな」

「それが指令室をこうさせる要因、と?」

「余程の緊急事態、だろう。すぐにでも多数の魔法少女を動かさなければならないような」

 

 たとえば、前回のように魔物が徒党を組んでこちらに向かってきている、とか。

 たとえば、国に対して何か攻撃が行われている、とか。

 

 遠征組が持ち帰った情報が何かはわからない以上はなんとも言えないが、非常事態であるのは間違いない。

 となれば、SS級には招集がかかるだろう。

 

「フェリカ」

「ええ、ちょっと行ってきますの」

「いや、私も行く。死んで還ってきたのが梓という可能性もある。正直に言って、一番弱いからな。だが……」

「そういえば梓さんは、まだ死んでないと言っていましたわ!」

「そうだ。初めての死と蘇生なら、動揺も激しいかもしれない。フェリカ、お前は指令塔に。私は中央塔へ」

「私も中央塔へ行きますの!!!」

「……そうだな。二人で梓を慰めに行こう」

 

 中央塔。監視塔に囲まれる、エデンの中心部。

 そこに魔法少女たちが蘇生される部屋がある。

 

 私達はそこへ向かって。

 塔を出た時には、走り出していた。

 

えはか彼

 

 結論から言えば、撃たなくて正解だった。

 撃てなかった。撃てなかったんだ。ホントは。敵だってわかってたし、蘇るって知ってたのに、撃てなかった。撃たなくて良かったけれど、撃てなかったのは事実なんだ。

 

 そしてまだ、その脅威は去っていない。心臓はバクバク言ってる。悔恨に浸る暇なんか与えてくれない。アイツはまだ、この森にいる。

 

「みんな、絶対見つけてね。それがゆくゆくは、私達のためになるんだから」

 

 冷静な声だ。さっきまでのうるせェのとは違う。キンキンさせてたのもブラフか。

 さっきまで俺が狙ってたのも、最初からデコイになってる方も未だ健在。やっぱりこれも魔法か。

 

 どうなってるんだ、っつー疑問はまァ、自己解決している。

 さっき言ってた。【即死】は役に立つ、って。

 

 ……つまりまァ、奪えるとかその辺だろ。【簒奪】とか。魔法少女の魔法を奪えるんだ。で、その方法は殺しではなく何かしらの準備が必要。殺して奪えるんだったらこんな面倒なことはしない。生け捕りにしてその魔法を俺に使って、【即死】を奪い取るつもりってのはわかった。

 多分、【隠蔽】も【統率】あるいは【洗脳】も湧きポ作成も、どっかの魔法少女から奪った魔法かね。……いや、となると湧きポ作成ができた魔法少女がいたってことになるが……。ソイツからも奪ったのか? 明らかに人類の敵っぽい魔法な辺り、コイツと仲間だのなんだのの可能性の方が高そうだが。

 いや待てよ、化け物統率してるのが本来の魔法なら、それは魔法少女にも及ぶって可能性もあるな。それで【隠蔽】や湧きポ作成の出来る魔法少女を操ってて、【即死】の使い手である俺も操ろうとしてる、ってことなら理解できる。それなら殺さねェのも納得だ。殺したらエデンに還っちまうから。

 

 ……全部不確定だ。情報が少なすぎるのもそうだが、敵の全容が一切掴めねェ。個人なのか組織なのかすらもあやふやだ。ワンチャンこの魔法少女が狼に操られてるって可能性もある。……無いか。

 

「ね、かくれんぼ名人さん。別に痛い事をするってわけじゃないんだ。むしろとーっても気持ちいいコト。だから、そろそろ出てきてほしいな。じゃないと──この森焼き払っちゃうかもよ?」

 

 はっはっは、そういうセリフを言うにァ、ちょいと年齢が足りな過ぎるな。

 もっとバインバインの姉ちゃんなら……ってェ、何考えてんだ俺ァ。歳考えろよおっさん。つか場を弁えろ。

 

「言っておくけど、脅しじゃないからね。そういう魔法がこっちにはある。貴女みたいな弱い魔法少女は、すぐに焼け死んじゃうかも。あ、でも大丈夫。死なないギリギリで助けてあげる。でも、限界まで苦しめる。炎で息が吸えなくて、肺を焼かれて痛くてつらくて……ね? 怖いでしょ。今ならそれナシで、きもちーことだけで済むの。どう? 魅力的じゃない?」

 

 魅力的だ。魅力的過ぎて反吐が出る。

 みんながいなくなってからそろそろ三時間くらいか。っとに根気のある魔法少女だことで。三時間探し回っていなかったら帰るだろふつー。身体が疲労しないつったって脳は多少疲れんだから。

 

「ん、わかった。丸焼きがいいんだね。じゃ──精々苦しんで」

 

 熱。

 端っこから燃やしていく、とかじゃない。

 森を囲うようにして炎が走っていく。まさかとは思うが──これが範囲、じゃ、ねェよな?

 

「【皇爛】」

 

 瞬間、全てが炎に包まれた。

 

 

 

 ……視界いっぱいが。

 

 いんやさ、ソレが範囲ですよ、ってわかったら、その外に逃げるのは普通だよな。

 まだ俺の【隠蔽】は切れていないようで、狼共も魔法少女もこっちに目線を向けて無い。んじゃあ一目散に逃げる──。

 

「ってのは無理そうだなァおい!」

「やっと見つけた。そこにいたのね」

 

 あァさ、俺が使った方法だ!

 あんときは背中メッシュの【神鳴】だったが──この、俺にかけられた魔法は急激な周囲風景の変化にァ対応出来ねェ。光学迷彩の類だ。だから、こんな突然真隣に炎の柱が現れたら、影が出来る。

 まだ魔法は解かれてねェのかつい出しちまった声は聞こえてねェようだが、完全に位置がバレた。

 

「みんな!」

 

 その、声と同時。

 おうおう、集まってくるわ狼の群れ。それだけじゃねェな、他の種類の化け物もいる。透明じゃねェのが救いか? いんやさ、俺にかけられたくらいだ、遠隔での透明化も可能と見て間違いない。となると、相手が突然消えるかもしれねェのか。

 そいつァやべーな。

 

「行って!」

「安藤さんに感謝ァ、つってな!」

 

 だが、纏まってくるってんならこっちにも勝機がある。前方ではなく後方の狼の群れに対し、炸裂弾を発射。拳銃だ。もうSRは背負ってる。

 それは物の見事に着弾した狼と周囲の狼六匹くらいを【即死】させ、穴を作った。

 まだだ。右に左にと、ガンガン撃ち続ける。

 

「ッ、逃げた方に集中!」

「まだ見えねェのは愚策も愚策だなオイ。隙だらけだぜアンタの周り」

 

 撃つ。炸裂弾じゃねェ方の弾込めた拳銃で、魔法少女の……足元を。

 

「なんだ、ただ逃げるだけじゃなかったのね。それなら──私と遊びましょうか、かくれんぼ名人さん?」

「だァから、そういうのはもちっと歳食ってから言えっつーの」

 

 相手が挑発してきてる内に、狼の輪を抜ける。その際、進行方向に近い狼を撃って【即死】させる。範囲はきっちり5mだ。流石安藤さん、腕がいい。

 これで、相手は俺が反対方向に逃げたって思う──あぶねっ!?

 

「……避けられた? 完全に当たったと思ったのだけど」

「馬鹿が、一番危ねー奴から目ェ離すわけねェだろ。つかそんだけ魔法持っててまだ隠し玉あるとは驚きだよ。どんだけ持ってんだい?」

「……やっぱり銃って嫌い。狙って撃たないと当たらないとか、武器として欠陥にも程があるわ」

「狙わねェで当たる魔法がおかしいんだよ」

 

 聞こえてねェからこれ幸いと声を出しちゃいるが、いつ【隠蔽】が解けるかわからん以上止めといた方がいいのかもしれん。わからん。単純にそろそろストレスだったんで愚痴を吐いてたんだが。

 だが、これでわかったことは一つ。

 コイツマジで俺と考える事一緒だ。俺が安直に考えた作戦は全部見抜かれてるって思った方がいい。

 が、おじさんは銃好きだぜ。遠くまで飛ぶからな!

 

「ん-、適当にもう一回【皇爛】いっとこうかな」

 

 狼の群れに炸裂弾を当てる。あんだけの規模の魔法だ、チャージに時間はかかるし、魔力消費も馬鹿にはなんねェはず。問題はコイツが撃ってるかどうかわかんねェって点か。魔法名言うのを合図にしてるだけで、他の魔法少女がいる可能性もある。

 となると、もうチャージは終わってるかもな。適当にもう一回、ってのは嘘じゃなさそうだ。

 

 ならまァ、逃げるか。

 

「【皇爛】──あっ、そこ! みんな追いかけて──海の方よ!」

 

 こっから先は下り坂。多少の擦り傷は構わねェんで、逃げる。

 相手が火なら弱点は水だろ、つってな。こんだけ海が近いんだ、わざわざ丘上だの森だので戦うかよ。

 

「と見せかけて、こっちだったり?」

「イッ!?」

「あ、今のは掠めたんじゃない?」

 

 相手の魔法に合わせて狼の死体ぶん投げて囮にする作戦失敗。銃弾が頬を掠めたよ。あァ痛ェ。

 

「でも、いいの? そっちは──私達のホームだけど」

「はン、だからだよ!」

 

 逃げる。いんやさ、向かう。

 向かう先は──触腕の森。既に再湧きして、これまたウネウネグニャグニャと気持ちわりーことこの上ないそこに、突っ走っていく。

 

 追い縋る狼の群れには炸裂弾を、適当に乱射してくる銃はもうどうしようもないんで射線切りながらお祈りして、向かう。

 いやマージで。

 諦めてくんねェかな、ホントに。

 

 俺は諦めないんだけどさァ。

 

「どこまで逃げても、私は諦めないよー?」

 

 ……つくづく気の合うこって。

 

えはか彼

 

 炸裂しない方の通常弾を撃ちまくる。

 ウネウネと気持ち悪い触腕に。死んでも死んでも湧いてくるコレに、知らねェ知らねェと撃ちまくる。撃ちまくって、歩く。

 背後からの銃声は止んだ。狼の唸り声も聞こえない。触腕も無尽蔵に湧いては来るが、俺を捉えることは出来ていない。

 

 壁だ。

 高くまで立ち昇る赤と白の触腕。肉厚でひしめきあってるコレなら、狼も入って来れやしねェと踏んだ。単なる銃弾も通らねェとな。

 そいつァ正解だったらしい。俺の考えている事がわかったとしても、わかったからっつってどうしようもないモンに囲まれちまえば関係ない。アイツと俺の違いは、【即死】ってピーキーな魔法の有無だ。考えが一緒である以上、ああやって先手を取られ続ければ一生後手に回る。昨夜から今朝方みてェに俺が先手取ってりゃ完全に封じ込める。

 だから、一旦のリセットが必要だった。

 そのためにここへ来た。

 

 そして。

 

「お、有った。これか」

 

 触腕の森の中心。

 そこでようやく見つけるのは、真っ白な鉱石。

 反魔鉱石だ。

 

「……よし」

 

 覚悟を決める。

 この触腕のどこに獲物を感知する器官があるのかはしらねェが──まァ、キラキラツインテが捕まってた以上、あるにはあるんだろう。

 その上で。

 

 その上で──触れる。

 

 反魔鉱石に。

 

「──止まれ!」

 

 止まる。

 何がって、俺に殺到してた触腕の全てが。もう、今まさに俺を押し潰さんとしていた全てが、ピタリと止まる。

 俺にかかっていた魔法が解けたのだ。仮称【隠蔽】が。反魔鉱石は、魔法を打ち消す力を持っている。

 

「もしかして、馬鹿なの? かくれんぼ名人ちゃん。死ぬ気としか思えない……今私が止めなかった、貴女は死んでいたのよ?」

「私が死んだら困るのはそっちだろゥ? 【即死】はなんとしてでも手に入れてェもんな。死んだらまた囲いの面倒臭ェエデンに還っちまう。だから止めたんだ。コイツラが私を殺すに足ると理解しているから」

「……かくれんぼ名人ちゃん、とっても粗暴な話し方なのね。さっき見た時は私と同じくらいだと思ったのだけど」

「アンタは見た目が語彙に追いついてねェな。きもちーことだァ? そういうのは大人になってから言えよ、ちびっこ」

「野蛮ね。嫌になるわ。私、もっと文明のある人と喋りたいのに」

「自ら魔法の解除も出来ねェ奴連れてきといて文明人気取りかよ。学園じゃ初歩の初歩として習うぜ、知らねェのか?」

「あだ名、かくれんぼ名人から野蛮人に変えてあげる。ね、野蛮人ちゃん。取引をしましょう。文明が無くても物々交換くらいはわかるでしょう?」

「あァそいつァ残念だちびっこ。俺からやれるもんは死くらいでよ、ソイツを交換しちまったらアンタが死んじまう。それで良けりゃ今すぐにでもプレゼントするぜ」

「あら、素敵ね。是非頂戴な。今すぐに」

「何言ってんだ、物々交換なんだろ? とりあえずこの壁の向こうに控えさせてるウルフの群れ引かせてから話そうぜ。対等な取引にしよう」

「対等? 野蛮人と私が? 何故?」

「何故ってそりゃァお前」

 

 発砲ではなく魔法の方の【即死】を発動する。

 消える触腕。当然の様に殺到する狼の群れ。

 

「可哀想だからだよ。無為に死ぬこいつらが」

 

 撃つ。

 炸裂弾──【即死】の込められたそれは、入って来た狼の全てを殺し尽くす。

 

「ッ、どこに──」

「おォっと注意報だ。晴れ時々鉛、所により死──っつってな!」

「上!?」

 

 そう、上だ。

 話してる間に頑張って上ったんだ。はン、いっつも監視塔の上登ってサボってる俺をなめんなよ。吸盤なんて足場のついてる壁なんざ楽勝だっての。

 

「もう動いていいわ! ソイツを殺さない程度にぼこぼこにしなさい!」

「そいつァ不味いな。じゃあ仕方がねェや。死んでくれ」

 

 撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。

 四発──それは正確に。

 

「く──、ぅ!?」

「アンタの適当ショットと一緒にすんなよ。こちとらコレばっかりが命綱なんだ。こんだけ近けりゃ、手足ぶち抜くくらいワケねーんだわ」

「……驚いた。貴女、人を撃てないのだとばかり思っていたのだけれど」

「あァそりゃわりィ事をした。アンタ()()を人体だと思ってたのか。うっかりうっかり、あぶねェ玩具だと思ったんでつい壊しちまったよ。すまねェな」

 

 撃ちぬいたのは、やっこさんの手足。

 もう【即死】の弾丸なんざ残ってねェからな、ただの威力の低い弾丸を撃ち込ませてもらった。

 この威力でも頭だの目だのに当たれば死ぬ。それは恐ろしかったが、まァ流石にそんなヘマはしねェ。アレが義手義足だってのもわかってたしな。

 銃が下手なのも、俺を追いかける時にてめェで走らねェのもそういう理由だろう。あんだけの魔法使える奴だ、普通にA級以上はある。つーことは身体強化に使える余剰魔力もあるはずなんだ。それを使えば、わざわざ狼操って見えない敵捕えようとするより、自分で叩きに行った方が早い。

 

「手足を潰せば──魔法が使えないとでも?」

「いんやさ、逃げさせてもらうよ。アンタさえ追っかけてこなくなれば、少なくともこの化け物共に追加の命令は出せねえだろ?」

 

 自分にひっついてる虫を叩き落とそうとビタンビタンしてる触腕からうまいこと飛び降りて、返事も待たずに逃げる。四肢の無い少女を置いてけぼりにする、っつーのはおじさんとしてはかなり心苦しいんだが、同時に命狙ってきた相手だ。容赦はいらねェだろ。

 

「──あぁ、わかった。貴女、人を撃てないんじゃなくて──殺せないのね」

「はァ!? 後ろッ──!?」

 

 ああ。

 そればっかりは、普通に驚いてしまった。

 完全に勝ったと思った。完封したと思った。完璧だと思った。

 だから、背後から聞こえたその声に余りに驚いて。

 

 振り返るよりも早く。

 

 塵一つ残さず──切り刻まれた。

 

 

えは

 

 

 いやまァ、お察しの通りソイツが、なんだが。

 

「危ない所でしたの!!」

「お、おゥ。お嬢……か。あぁ……ありがとう、お嬢」

「いいえ、いいえ! 当然の事ですのよ!」

 

 金色の風だった。

 触腕の森も、狼の群れも──ちびっこも。

 その全てが細切れにされた。たった一人の少女によって。

 

 金髪お嬢様。SS級魔法少女【神速】のフェリカ・アールレイデ。

 いやはや。

 

「やっぱ、すげェな、お嬢様は……」

 

 その殲滅力も。その殺傷能力も。

 敵を──ヒトを殺す、という事に対して、一切躊躇の無い所も。

 

 俺とは全く違う。

 そうありたいとは、まだ思えない。けれど、やっぱりすごいと思う。

 

「あー。お嬢様。一個頼んでいいか」

「はい! なんですの?」

「その辺の、湧きポ。あれまで連れてってくれ」

「……わかりましたの」

 

 幸い、ここに設置されてる湧きポは多くない。四つか。廃墟群の四方にあった、って感じかね。

 となれば、やっぱりこれは故意に創られたもの。知ってたが、アイツラによるもんだろう。

 

 じゃ、殺しとかなきゃな。

 

「魔力は大丈夫ですの?」

「今からクソ不味い草食べて回復するよ。ただ、その間に化け物が湧いたら」

「一瞬で切り刻みますわ!」

「あァさ、頼むぜ」

 

 亜空間ポケットは使えないので、身体中に仕込んであるフリューリ草を取り出す。取り出して食べる。

 森で狼の群れから逃げてる時にも食べてたけど、コレ、本当に不味いので思考をクリアにしてくれる。そういう……それこそ気付け薬としてもいいんじゃないか? キラキラツインテに食わせりゃよかったかな。

 

「──死ね」

 

 まず一つ、殺す。

 湧きポ一個殺すのに大型の化け物【即死】させた時と同じくらいの魔力消費するの、結構やべェよなァ、とか思いながらモシャモシャ。

 

「──死ね」

 

 金髪お嬢様が湧こうとする触腕を全て叩き切ってくれる。安心だ。安全でもある。

 

「──死ね」

 

 死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。

 消えろ。この世から。この世界から。生まれる前に──死ね。

 

「最後だ。──後は任せた、お嬢様」

「え?」

「──死ね」

 

 言いながら──崩れ落ちる。ぶっ倒れる。

 フリューリ草が底尽きてたからな。丁度、ギリギリ、最後の魔力って奴だ。あァ魔煙草はまだあったな。ソレ使えばよかった。

 なんにせよ。

 

 これで──ミッション達成、っつーことで。

 

えはか彼


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