遠吠えは遥か彼方に   作:劇鼠らてこ

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魔法少女育成学園エデン ~全てを導いた英雄譚~ -二年生編- 『真面目なお巡りさん』

 お巡りさん。

 ……確かに格好は、この国でいう警察機構の制服だ。多少着崩しちゃいるが、ニヤニヤ丸眼鏡が定められた服を着ているという時点でかなり驚きが高い。なんつーか、そォいう規約規則ルール法則ってなを守らねェ奴って印象だったから。

 ただそれは油断する理由にはならない。ならないが、ここで「やっぱり用ァ無いんで帰るわ」もおかしいし、「ここであったが100年目、ぶっ殺してやる!」にもならない。ちゃんと夜の気配がするからコイツはニヤニヤ丸眼鏡で間違いないたァ思うんだけど、別に特に禁則事項に触れてねェ場合は殺したりしない。今まで会ってきた夜を殺したり異空間に飛ばしたりしすぎているから説得力無ェと思うけど、別に俺は殺人鬼じゃないンで見境ないなんてことはないっていう話で。

 

 で。そんな話はどうでもいい。

 どうやってこの場を切り抜けるか。

 

「ではまずこの紙に探し人の名と特徴を書け。特徴は何でもいいぞ。身長やよく着ている服、使う魔法などだ」

「……普通のお巡りさんみてェな対応してくんじゃねェよ」

「なんだ、普通じゃない対応がお好みか? 良いだろう」

 

 ニヤニヤ丸眼鏡の雰囲気が変わる。

 臨戦態勢は解かない。やっぱり──。

 

「──まず、お前のその銀髪の手入れ具合を見るに、相当な身分だ。まるで髪になど興味が無い、といった人相であるにもかかわらずソレであるということは、侍女の類がついている領域……その探し人となれば、それはもうやんごとなき身分に違い無い」

「普通じゃねェってアンタが推理するって意味かよ。あと一切当たってねェよここまで」

「当てる気がないからな。ふん、つまらんなら早く記入しろ。私とて暇ではないのだ」

「わかったよ。……あァさ、共通語でいいな?」

「閻魔刃塔でしか使われぬという田舎も田舎な言葉をお前が操り得るのならそれでもいい。私は読めんが」

 

 共通語で書く。

 なんか疲れるわコイツとしゃべり続けンの。

 

「ふむ。名は安藤アニマ。燃えるような深紅の髪を腰まで下ろす、40、50くらいの女性。使用魔法は……炎の腕? 魔法名は?」

「【業焔】」

「そんな魔法は無い。いや開発者によりけりではあるが、少なくとも私は知らん。プロミネンスとして再記入しておく。で……家族は無し? ふむ、移民か、難民か。まぁそういうこともあるだろう」

「無しっつゥか、俺が知らねェってだけだ。いるかもしれねェ」

「そうか。では不明にしておこう。ふむ、ふむ。良いだろう。身体的特徴が多く、名前もわかっている。これならばすぐに捜索できよう」

「……対価は?」

 

 警察機構への対価。

 まァこの国税金とかないからな。対価っつーかチップっつーか、完全ボランティアじゃない限り金はかかる。だから恵理須ン時もあの国あんなに治安悪かったンだけど。

 

「依頼料は学園につけておいてやる、といいたいところだが……お前、魔煙草を持っているな?」

「……持ってるが、なんだ」

「1本寄越せ。学生にそこまで高い金を集る気はない。それで手打ちにしてやろう」

 

 魔煙草を1本渡す。1箱じゃなく1本だ。……いや、追加でもう1本出しておく。

 ……ツイウから貰った魔煙草、そろそろ少なくなってきたな。おっちゃんトコで補充するか。

 

「1本でいいと言ったが?」

「俺はまだアンタを信用してねェ」

「……ふん、お巡りさんを信用しないというのは感心しないが、いいだろう。2本貰ったからには必ず探し出してやる。だが、会わせるかどうかは安藤アニマとやらに話を聞いてからだ。相手方が拒否した場合、あるいはお前が安藤アニマを害する目的で動いていた場合、私達はその者を保護する方向に動く。その場合、魔煙草2本程度ではどうにもならんと思え」

「真面目かてめェ」

「当然だ。個人の尊厳がかかっているのだ、その辺りの規約は守ってもらわねばならない。同意するか?」

「……あァ、するよ」

「いいだろう。ではここに署名しろ」

 

 っとに調子狂うなァ。

 喋り方以外普通で……ふゥ、落ち着け。油断するな。少なくともコイツはさっき俺の事を殺そうとした。その時点で"対象外"だ。

 署名する。

 

「梓・ライラック? ……成程、お前が件の"英雄"だったか」

「あン?」

「いや、いい。有名人になればなるほど行動がしづらくなるというもの。この依頼はお忍びだな? 加え、これでお前の信用度も上がった。……よし。では、安藤アニマを見つけ次第エデンに連絡を入れる。1週間探して見つからなかった場合も同じだ。その場合でも支払われた対価は戻らない。いいか?」

「いい」

「よろしい、契約成立だ。……なんだ、まだ用か? 用も無く屯されては困るな。ここは交番だぞ」

「別に、余韻だよただの。じゃァな」

「ふん、英雄サマは忙しいな。少しくらい雑談でもしていけばいいものを」

「自分の言葉くらい一貫しやがれ」

 

 あァ。疲れた。

 けど疲れたとか言ってらんないンだよなー。なんでってエデンの方から4人程飛んできているのが見えるから。

 一応こーやって依頼した以上捕まるのも吝かじゃァないんだけど……なんだ、探したいトコ調べたいトコいっぱいあンのに学園に拘束ってなキチい。んで。

 

 取り出すはフリューリ草の葉っぱ一枚。貴重品であることはわかっているが──アイツらの無力化にこれほど良いモンはない。

 4つに千切って【的中】をかける。で投げる。

  

 で逃げる。

 

「ま、味の良さがわからねェガキはそれで苦しンでな」

 

 俺も良さなんか欠片もわかってないけど。

 あばよー、っつってな。

 

 

 

えはか彼

 

 

 

 さて──とりあえず、だ。

 天幕の向こう側に行ってみたい。この世界に星がないってな1日目の夜に確認済みで、だからやっぱり恵理須と同じような作りになっていると仮定して、だから空へ近づけば魔力素が分解されるし、突き破ればそこに冥界があンじゃねェかな、という魂胆。

 恵理由知穏の時みたいな意思表明も今度やるとして──とりあえずは天幕を目指す。

 

 飛行魔法。

 ……これ、もうちょい改良できねェのかなァ。燃費悪いんだよな。こう、足から噴出するだけ、とかにして……いや考えただけでスッ転ぶなそりゃ。あるいはシエナみてェに背面噴射にするか?

 シエナ。

 そうだ、それずっと気になってたンだ。一切関係ない話だけど──なんであの場にシエナがいたのか。

 だってアイツは、亜空間ポケットの中で自爆を選択したはずだ。それが強制だったことは間違いないけど、少なくともシエナは確実に死んだ。それがなんであそこにいたのか。俺は何であの気配をシエナだと思ったのか。

 シエナってな人格自体はザグルスであるはずだ。負け犬があの局面で嘘吐くとは考え難いし、シエナも否定しなかった。

 

 気になることがあるとすれば。

 

「……人格分割型……」

「──はい。私は人格分割型給仕用アンドロイド・シエナです」

「おわっ!?」

 

 背後にいた。魔力の気配はまるでなかった。

 足音も、駆動音の1つだってなかった。

 なのに、いた。

 

「シ──エナ?」

「はい。私は人格分割型給仕用アンドロイド・シエナです」

「……今、どこから出てきた」

「外出手続きをされぬまま国外へ出る事は禁じられています。即刻国内にお戻りください」

 

 生物の気配ってモンを感じない。

 見てくれはシエナだ。だけど──違う。

 

「拒否する」

「では、貴女様のお名前をお聞かせください。所属機関へのご連絡及び軍事部による護衛の依頼を行います」

「要らねェ。見なかった事にしてくれ」

「不可能です。外出手続きをされぬまま国外へ出る事は禁じられています」

「なら逃げるまでだ」

 

 飛行魔法は初速が遅い。シエナの噴射機構に速度で負ける。

 だから、普通に脚部を強化して──。

 

 ──しゃがめ。そのまま左に転がり、飛び跳ねろ。

 

「ッ!?」

「上位入力を確認。法律を守り得ない国民の皆様方におきましては──身体機能を奪い、回収する事が許されています」

 

 今、何された?

 どれもが【即死】レベルの攻撃だったのァ間違いない。【即死】が戻ってきたことで、死の気配がありありとわかるよォになってる。

 何か、リーチのあるモンだ。刃のついた鞭かなンか持ってやがるな?

 分が悪い、か? いや悪いな。こっちの攻撃手段ァ威力がありすぎる。シエナを殺しかねん攻撃はナシだ。たとえコイツが俺の知る彼女ではないのだとしても、だからなンだって話だし。

 しかし、シエナの事考えてるときに出てくるたァ……都合がよすぎるっつゥか。やっぱどっかで見てるだろ、ピンクカチューシャ。

 

 首を傾ける。

 

「対象の戦闘力を上方修正。脅威度Aと判断。新規武装解放──」

「なンで給仕用アンドロイドが武装なンて持ってんだよ」

「国民の皆様におかれましては、多かれ少なかれ魔法あるいは魔力という攻撃手段を持たれています。人格分割型給仕用アンドロイド・シエナはそれらへの対処のため、ある程度の武装が許されています」

「誰が許してンだそりゃ」

「リコ様です」

 

 ……あー、もう!

 探さなきゃいけねェ奴がボロッボロ出てきやがるな!

 いやいいんじゃね? 天幕突き破りさえすれば冥界に出られンだから、もういいんじゃね?

 

 地面から飛び出してきた杭みたいなモンを避ける。避けた先にも出てくるンで流石に【光槍】を使用。槍ってなまたあんまり使ったことないんだが、ヴァスと同じ感覚で使えないことも無い。

 

「魔法を確認。対象魔法を検索中……記録庫に該当なし。新規魔法として登録。雷魔法、もしくは光魔法と仮定し、対光、対雷魔法装備を展開」

「おーおー、待て待て。知ってるか、シエナ。尖ったモンは人に向けちゃいけないんだぜ」

「そのような常識は登録されていません。──ミカラ配合絶縁金属槍射出」

 

 面での攻撃。無数の槍は──こちらの命を確実に奪わんとするもの。

 即時蘇生するから武装もインフレしてンだろうなァ。

 

「【光槍】弐式──杭柵(くいしがらみ)

 

 光と魔力で編まれた槍。太さもあるそれが、俺とシエナを隔てるよォに出現する。

 ミカラはただの絶縁体なので、光であり魔力である【光槍】にダメージを与えることはできない。威力は勿論あるンだけど、流石にこっちのが強い。

 

 ちなみに青バンダナや俺がたまに使う弐式云々ってな単純に「いつもと違う使い方」ってだけだ。言わずにやってる奴はごまんといる。俺は文字や言葉にした方が想像しやすいから使ってるに過ぎねェ。死飛沫とかな。

 

「対象の魔法を光魔法と判断し、対光魔法装備を展開」

「光への対策装備ってなちょいと気になるな。ンなもんあンのか?」

「──反魔鉱石配合槍装填。射出します」

「そりゃずるいぞてめェッ!」

 

 ただ、数は用意できねェのか、少ない。これなら活路はある。

 なんだよ、ちっと期待したじゃねェか。闇のなんたらみてェのが出てくるとか思ったじゃねェか!

 

 ──知覚強化。射出角度から計算して……右腕、右足、及び顔面を確実に射貫くコースと判断。半身になって避けた場合、炸裂などの危険性あり。無効化不能。脚部へ強化を流しつつ、更に観測を進行。反魔鉱石は槍全体に混ぜ込まれている。結合に脆弱性有り。耐久力診断……まァ、蹴った程度じゃ壊れねェとして。

 

 避ける算段は終わった。身体は回避に入っている。

 だから、こォいう時にこそ試しておくべきだ。

 

「流石に返してくれてると信じてるぜ──苦理主(クリス)!」

 

 世界に罅が入る。亜空間ポケットのそれとは違う、何か別の場所に繋がったソレ。

 見覚えのある柄に、思わず口角を上げる。

 

 この世界でもお前ァ──俺のエゴか。

 いいね、それでこそだ。

 

 避けかけた槍を全部クリスで弾く。

 魔法じゃないンだ、反魔鉱石なんて効かない。

 

「対象の戦闘力を上方修正。脅威度Sに設定。人格分割型給仕用アンドロイドでは捕縛が難しいと判断。応援を要請します」

「その必要はねェさ。何故なら──」

 

 纏うのは【槍玄】。かけるのは【的中】。

 対象は──天幕そのもの!

 

「もう、逃げるからな! じゃァな、シエナ! お前がどこの誰だか知らねェが、お前の親玉に言っておけよ! 余計なコトしてねェで幸せを享受してろ馬鹿が、ってな!」

 

 ──身体が勝手に持ち上がる。

 自分で行ったジャンプの勢いだけじゃない。明らかに別の力が加わった状態で、俺の身体は天幕へ突っ込んでいく。

 一瞬で小さくなるシエナ。そして国。

 そのまま雲を抜けて。

 

 ……?

 

「──これはやばい奴」

 

 亜空間ポケットに入る。

 そんで、いつかアズサの足枷になっていた反魔鉱石にタッチ。【槍玄】と【的中】が解除される。 

 

 いや、いや。

 やばかったね。

 

「天幕、無いのか?」

 

 少なくとも恵理須の天幕はあれくらいの高さにあった。

 それが無いとなると……いよいよ持ってやべェことになる。冥界ですらない、って可能性が出てきち舞う。

 冥界じゃなかったら……帰る手段が無い。

 いや、いや。早とちりするな。キラキラツインテだ。少なくともキラキラツインテは絶対何か知ってるはず。探し出しさえすれば……そうだ。天幕が無いンなら、授業完全無視してEDEN内部を駆けずり回った方がいい。どうせ鬼教官は【痛烈】もってねェだろうし、止められる心配もない。

 

 よし、んじゃ国に戻って──。

 

「梓・ライラック様」

「──!?」

 

 声がかかった。

 その声は。

 

「シ……エ、ナ?」

「はい。梓・ライラック様。お久しぶり、になるのでしょうか。このような姿で申し訳ありません」

 

 そこに、いた。

 そこにいた。

 

 手足も、胴体も、壊滅的にボロボロでバラバラな──機械の少女。

 その顔だけが、無事だった。爆発したのが炉心だったからだろう。あるいは何か別の理由か。

 でも、確実に。

 そいつはシエナだった。

 

「……大丈夫、なのか」

「あまり大丈夫であるとは言えませんが、問題ありません」

「あるじゃねェか」

「ありますが、問題ではありません。──梓・ライラック様。今全てをお話します。よく聞いてください」

「ン?」

「──私は。私の本当の名は、ザグルスといいます。現在梓・ライラック様のお体を乗っ取り、世界のどこかにいるであろう主ディミトラ、あるいはシエナを名乗る者の――娘です。娘と言っても人間ではなく、」

「待て待て、いつの話を」

 

 ……あァ、そうか。

 シエナの中では、そうなんだ。

 梓・ライラックは……というか恵理須はなーんにも片付いてねェ認識なんだ。

 

 それは俺が、メイアートであったことさえ。

 

「続けてもよろしいでしょうか」

「いや、要らん。全部知ってる」

「……流石です。梓・ライラック様」

 

 ポマネイ・リコの話では、シエナってなザグルスが端末として操ってるって話だったが。

 亜空間ポケットに入った事で切断されたのか?

 こう、接続が切れた、じゃなくて、トカゲのしっぽ切りみてェにぷっちんと。

 

「1つ聞きたい」

「幾つでもどうぞ。この空間内部であれば、私は言語の制限を受けないようです」

「人格分割型ってな、どォいう意味だ。詳しく話してくれ」

「文字通り、言葉の通りです。梓・ライラック様は見る機会が無かったかと思いますが、クルメーナ地下にはもう1機、人格分割型防衛用ガーゴイルというものが存在します。ダストというのですが、そちらと私は同時に存在し、違う事を行い得ます。更には本体たるザグルスがザグルスとして行動できます。遠隔から端末を操作している、というよりは、私達端末に自らの人格の一部を詰め込んで操作している、と判断してください。ゆえに私は──」

「複数存在できる、か」

「はい。その通りです」

 

 あんまし気分の良い話じゃないが、俺も似たようなモンなので何も言えない。

 つーことはなんだ。

 ワンチャン、この世界にはシエナがいっぱいいる可能性がある、ってことだよな。……あるいは恵理須にもいたのか? 始の点でもそォなってンのか?

 

「……シエナ、お前の機体を作れるのって、誰だ?」

「作成そのものは安藤アニマ様しかできませんが、修理や武装などの追加は母にも可能です。また、極一部の機能であればゲヘナ様、プリメイラ様、イントロストップ様、脳眠様にも可能です」

「つーことは、やっぱり安藤さんはいるってこったな」

「?」

 

 それは確定した。

 いいぞ。

 

「とりあえず、お前さんの体を直したい。お前はその状態を維持し続けられるのか?」

「問題ありません。また、鉱石の類があれば、ある程度は自身での修復が可能です。ただ、完全に、となると」

「安藤さんかポマネイ・リコの手が必要、と」

「はい、そうなります」

「わかった。じゃあどっちか見つけたら直してもらうから、それまで辛抱な」

「……あ、それなのですが」

「ン?」

 

 シエナは俺を引き留めて。

 少しだけ──恥ずかしそうに。

 

「私の……私の補助記憶回路を連れて行っていただけないでしょうか」

 

 そんなことを宣った。

 

 

 

えはか彼

 

 

 

「梓さん!」

「ン?」

「ン? じゃありませんわ! 探しましたのよ!!!」

「あァそうかい。そりゃごくろーさん」

「あれだけ探したのに、なんでエデンにいるんですのー!!」

 

 とりあえず、お嬢との確執は勝手に割り切ることにした。

 最初あんだけつんけんしといてなんだけど、天幕が無いとわかった以上ここは冥界じゃない可能性が高い。となるとマジで別人の可能性が高い。だから八つ当たりしても意味が無い。コイツ……じゃねェ、この子は似てるだけの別人だ。

 この子だけじゃなく、この世界の全員がそうである可能性が高い。ただしもってるスキル……魔法じゃなくて、技術の類はあっちと同じ、って感じかね。

 

「と・に・か・く! 午前の授業ぜーんぶすっぽかした罰として、学園長室の掃除! だそうですわ!」

「……へいへい」

「まったく……わかってますの? 単位が足りなければ留年ですのよ? そこなユノンさんのように」

「え!? なんで今飛び火したんですか!?」

「好例過ぎるからな。確か本来は2年先輩だったか?」

「なんでそんな詳しいんですか!?」

「ユクナから聞いたんだよ。ほら、ジパングからの交換留学生の」

 

 ……ジパング。

 そも、なんで俺が一日目にキラキラツインテを見つけられてないかってーと、学生はEDEN内部を自由に動き回れないってなと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのが大きい。

 先公と太腿忍者を除き、ジパングからの移民ってなはジパングが滅びたが故にこちらに来た、ってのばっかりだ。

 で、この世界じゃジパングも群塔魔閣も閻魔刃塔もノモスもウォムルガ族の戦士団も滅びてない。他の国々も困窮に瀕していない。

 

 だから、来てないんじゃないか、って。

 尖り前髪も、キラキラツインテも。

 

「ポニテスリット」

「うん?」

「ユクナって奴、どこにいる? ちょいと会って話がしたい」

「それはいいが、まずお前は学園長室の掃除だ。その後に紹介してやる」

「……ちぇ」

「な、なんだお前。変に可愛らしい反応をするな」

 

 可愛いかコレ?

 昔はたまにやってたンだよな。ちょいと思いついた社報のコラム案とかで変なの出して突き返される毎に、ちぇ、って。やると大体広報員の奴が「貴方がやっても可愛くないのでやめてください」とか言って来て……およよ。

 ……そうか。

 俺今可愛い女の子なんだった。

 

「梓。それ、何?」

「どれだ?」

「首の、飾り」

 

 首の飾り。

 ネックレス。

 

 十字架……ではなく、バッテンの形をした緑と金色のソレ。

 制服ン中に隠してたんだけど、目ざといなァ。

 

「曰く、サブメモリーらしい」

「サブメモリー?」

「俺も良くわからん。が、つけてほしいって言われたンでつけてる」

「え!? あ、梓さん! それもしかして──女性からの贈り物ですの!?」

「え、うん。そうだけど」

「ダダダダッダメですわ! 即刻私に渡してくださいまし!」

「ヤだよ。絶対壊すじゃんお嬢」

「壊しませんわ捨てるだけで!!」

 

 じゃァダメだ。

 もっかい襟の内側にしまう。

 

「ミサキさん。これは、もたもたしている内にぽっと出の女に先を越されてしまった、という奴ですね!」

「うむ。ああちなみに私は気にしないぞ。お前が誰もどんなものを着飾っていようと、お前はお前だからな」

「ポニテスリットなンか悪いモンでも食ったか ちょっとキモいぞ」

「口説き、失敗」

 

 この世界でも、そうなのか。

 とか。

 ……俺はこの世界でやった"俺の話"を知らないんでな。

 その好意は受け取れねェ。俺があっちに帰った時、目覚めたこっちの俺にぶつけな。

 

「んじゃ学園長室の掃除行ってくるよ」

「行ってらっしゃいです!」

「あの、あのあの、せめて誰から貰ったかだけ……」

「キモ、い……」

「撃、沈」

 

 さてはて。

 タヌ公とのお話の時間と行きますかね。

 

 

 

えはか彼

 

 

 

「ようこそ、梓さん。おかけになってください」

「あァ」

「……2度目にして随分と落ち着きましたね。足まで組んでしまって……」

「いや、アンタに会ったおかげで色々再認識したからな。感謝してるよ美味いなこの茶菓子。どこのだ」

 

 そうだった。

 学園長殿は自分が死んだことを知っている。

 だからここが完全に別世界ってなあり得ねェ。天幕が無い程度で何決めつけてンだ俺は。こっちのが証拠として強力じゃねェか。

 

「パルリ・ミラ、というお菓子を扱うお店が、最近新機軸として売り出したものですよ」

「──~~~懐かしッ!? え、やべェ言われたら行きたくなってきた。どこ? どこにあるンだ本店」

「それはお教えできませんね」

「なんでだよ」

「パルリ・ミラは幻のお店。一度店の所在地を他人に告げてしまうと、もうその店にはたどり着けなくなるのです」

 

 エ、なにそれ。

 そんなファンタジーな店なの? 暴走繭が結構簡単に取り寄せてくれたから国のどっか身分のたけェ奴の敷地内とかにあるもんだと思ってたわ。

 

「つまり、自分で見つけろって事か……」

「はい」

 

 クッ……しかしこの味は……。

 やっぱりここは別世界ではない可能性が高い。この完成度は……うん。うん。

 

「それで、今日はどんなお話をしましょうか」

「なんか聞きたくて呼び出したンじゃねェのかよ」

「聞きたいことならありますよ? ──たとえば、西の森周辺で起きた外出手続きをしていないエデン生について、とか。まさか貴女のような方がエデン生と一目でわかる制服を纏い、戦闘行為を行うとは考え難いのですけれどね」

「……おう。考え難いよな。だから違う」

「ちなみに写真があります」

 

 俺だった。

 

「一大事だったンだよ」

「いえ、理由を問うつもりはありませんし、咎めもしませんよ」

「でも聞きたいことなンだろ?」

「聞きたいのは──貴女が使用した魔法について、です」

「コレか?」

 

 手に【光槍】を出現させる。

 こーいうのは後出しになった方が負けるンだよ。威圧行為は先にやった方がいい。盤上がすでに後手後手なら猶更な。

 

「おっと動くなよ。お前らは即時蘇生できるかもしれねェが──この建物はそーじゃねェだろ」

「……流石です、梓・ライラックさん。皆、ベールを脱いで、姿を現してください」

「……グロアが言うなら」

 

 また──久しぶりに聞いた声だ。

 あァ。だろうと思ったよ。

 

「創設者たち、か」

「すごいね、君。この部屋に入った時には気付いていたよね」

「その魔法きになりますねぇ~。どういう構造式なんでしょうかぁ?」

「魔力量もかなりあるね!」

「……久しぶりね、梓」

 

 んー。

 これどっちの意味なのかなー。

 

 3人。紺碧ベルト、ビリビリタイツ、パッパラメガネは初対面っぽい。脳筋娘は違うっぽい。

 で、この神妙な感じ。脳筋娘は数少ないメイアート=梓・ライラックだって知ってる人物の1人だ。それを踏まえての久しぶり、なのか、この世界にいた俺っつー英雄サンと久しぶりなのか。

 

 ……うん。余計な事は言わんとこ。

 

「何用か、聞いている」

「ふふふ、そんなに急がないでくださいな。私が聞きたいことを答えてくださったら、私の貴女の聞きたいことに応えますから、ね?」

 

 脳筋娘には最大限注意を払って。

 使えないたァ思うが、実際に透明だったンだ。【隠涜】に似た何かがあると思っていいだろう。

 

「……あァ。んじゃ──お話と行こうか」

 

 

えはか彼

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