遠吠えは遥か彼方に   作:劇鼠らてこ

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魔法少女☆即死のあずさ ~喫緊具字抜刀負不阿須多賀倫布留- 『そろそろうざいです!』

 ゲヘナからの連絡が入った。

 学園の司令塔……つまり広報担当をぶち抜いて学園長殿にまで届けられたソレは、昼休みの対談時間を利用して俺に渡される。この時点でゲヘナの立ち位置がもう絶対普通のお巡りさんじゃねェのがわかるし、まーたEDENに入り込んでンだろうなァとか色々杞憂しちまう。

 とはいえ、依頼した内容──安藤アニマの捜索について、を見る。丁寧に封筒に入れられたそれを開封し、調査結果、と書かれた書類を読んで……愕然とした。

 

「……これ、どォいうことスか」

「私にもわかりません。この世界で()()()()()()()()()()()()()()なのだけど……」

 

 簡素な文字で書かれているのは、故人の2文字。

 以下、どのように調べたかなど……警察ってよりは探偵の報告書みたいなアレソレがずらり。

 

「死んでる……ってな、あり得るのか?」

「……私がこの世界で己を取り戻した時……少なくとも、人間が死ぬ、ということはありませんでした」

「いや、死にはしてるだろ何回も。そうじゃねェ、死んだまま、ってながあり得ねェんだろ?」

 

 即時蘇生する世界において、故人であることはできない。

 初めからいなかった、ならわかる。だが、死んだってのは……。

 

「人間ではないのなら、あり得るかもしれません」

「……」

 

 ポマネイ・リコの話で、安藤さんが神なるものである事でわかっている。クロムクラハの話で、安藤さんがL・アルカナと同じく世界の外から来たものであるとわかっている。

 それが……この世界では魔物として殺された、とか?

 

 けど、死因は。

 

「腹部に多数の銃弾を……って、コレ」

「誰かに殺された、ということでしょう」

「銃弾なンて使うのは、俺か、あるいは魔法使えねェ奴らくらいだろ? 安藤さんがそんな奴らに殺されるなンて……」

「安藤アニマ。……朧気ですが、覚えているような気がします。私の【畏相】に干渉する可能性があるため、ゲヘナから特別措置を図るよう言われていた、ような」

「……それ、安藤さんも言ってたな。あんまり変なことすると学園長から怒られちまう、って」

 

 その辺、どういう関係だったンだ。

 結局恵理須の頃の学園長殿って謎多き存在なんだよな。

 

「この件はこちらでも調べてみますね」

「え、なンで」

「貴女にとっては……あまり快くない話ではあると思いますが、この世界において人間が死ぬ可能性がある、というのは、国民にとっても恐怖の種になります。それを調べることは、私にとっても益のあることだということです」

「……ま、好きにしろよ。お察しの通り気分は悪いが」

 

 それは死の恐怖とは、やっぱり別物な気がするから。

 別に恐怖してほしいってわけじゃねェんだけどな。

 

 ……あと、その考えってちょっと越権行為というか、今のEDENは国家防衛機構でもなンでもないのに、国益をって……なンか国の上層部とかと繋がってンのか?

 

「俺はちょっと行くところができた。梓・ライラックは早退だってな、先公に伝えておいてくれよ」

「ふふふ、学園長を1生徒の伝言に使いますか?」

「あァさ。大事な生徒だろ」

「わかりました。扉の前にいるローグンさんが伝えてくれるでしょう」

「……聞かせてたのか?」

「いいえ? 彼女はプロフェッショナルですから、私達の会話を耳に入れるようなことはしませんよ」

 

 どーだか。

 盗み聞き盗み見出たり入ったり上等って認識だがな。

 まーいーや。それを知って、冷静メイドが色々思い出したら御の字だ。

 

「んじゃ」

「はい、お気を付けて」

 

 ──マッドチビ先生のトコ、行きますかね。

 

 

 

えはか彼

 

 

 

「いなかったと」

「いなかったっつーか、死んでたっつーか」

「死んでいた。それはそれで興味をそそられる話だけど──とりあえず今の所、貴女から出せる技術や情報は無いってことでいいのよね?」

「まァ、うん」

 

 マッドチビ先生の家を拠点に、マッドチビ先生に頼る──その対価として技術力を提供する、という取引は失敗に終わったワケである。

 ……まァ、丁度良かったのかな、とも思ってる。

 世界を巡ってみる。それには──この国にずっといるってなできねェ。

 

「旅に出るの?」

「あァ。……ん。え?」

 

 今何があってその答えに辿り着いた?

 

「だって、数日前の貴女、今にも心が折れてしまいそうで、頼れる相手が欲しくて欲しくて仕方がない、って感じだったのに……見違えるように逞しくなって、今は別の所を見ている。拠点なんかいらないし、心の拠り所も必要ない。そんな雰囲気をひしひしと感じるもの」

「へェ、聡いンだな」

「当然でしょ。私を誰だと思ってるのよ」

「マッドになりかけチビ先生」

「……」

「おお拗ねるのはいいけど彫刻刀持ち出すのはやめてくれ」

 

 っていうか彫金を彫刻刀でやってンの? そうじゃなくない? 彫金ってそうじゃなくない?

 

「まァお察しの通り旅に出るンだがな。ちょいと頼み事があってよ」

「へぇ? 対価も用意できないのに?」

「ある意味で対価さ。情報でもある。得られるかどうかはマッドになりかけチビ先生次第だが──」

 

 言って。

 壊れかけのシエナを出す。

 

 ──"……あの、梓・ライラック様?"

 

 サブメモリーだけは首にかけて、炉心の爆発によってボロッボロになった──たまに金属類を与えることで自己修復を行っていたらしいそのボディが、出る。

 

「……これ、は」

「人格分割型戦闘用ガーゴイル・死得無(Ashes)──自立し、人格を持つ"彫刻"だ。ちょいとしたアクシデントでぶっ壊れちゃいるが、自分で自分をある程度直すってなことまでできる。シエナ。マッドになりかけチビ先生に指示を出せば、自身を完全修復することは可能か?」

「……材料と、技術次第、ですが」

「喋った!?」

「そりゃァ喋る。人格を持ってるからな。……なンで、これが取引だ。マッドになりかけチビ先生はシエナの体を直す。マッドになりかけチビ先生はそれにより異世界の技術を得る。どうだ、悪くねェだろ」

 

 マッドになりかけチビ先生はシエナのボディを隈なく見て、触って、ごくりと生唾を飲み込む。

 実際この技術ってなマッドチビ先生のものじゃねェ、あの負け犬と安藤さんのモンだからな。たとえマッドになりかけチビ先生が記憶を取り戻していたとしても、垂涎モノの代物であるはずだ。 

 

「──アンタのメリットは?」

「シエナは友人なンだ。壊れてる状態を見ていたくない。直してほしい。ホントはここに連れてくる予定だった人が直せたンだけど、死んじまってると来た。んじゃまァ、次の矢が立つのがどこかって」

「私……ね」

「そゆこと」

 

 ホントはポマネイ・リコでもよかったんだけど。

 所在知れず。……というより、隠されてるって感じだった。ゲヘナに聞いても学園長殿に聞いても、曖昧な答えしか返ってこねェ。暗躍してるってよりはなんか腫れ物を扱うような感じだったからそこまで気にしちゃいねェんだが、どうなんだろうな。

 

「いいわ。ここで釣り上げをしていても意味がないし。──契約成立よ」

「あァさ、頼んだ」

「そして」

 

 さっきの彫刻刀が俺に向けられる。

 鋭い視線。

 

「ちゃんと戻ってくること。この子のためにもね」

「……勿論。家族もいるンだ、戻って来るさ。単純な旅だよ、今回は」

「今回は? 前回があったの?」

「あァさ。楽しい旅だったたァ言わないが、……いや、楽しい旅だった。2回ともな」

 

 つらい記憶にはしたくないから。

 わかんねェだろうけど、口には出しておく。

 

「よくわからないけど……覚悟が決まっているようで何より。あ、そうそう。この前来た時から気になってたんだけど、アンタって髪留めとかしないの?」

「話唐突に変えるなァオイ。しかも温度差すげェし」

「だってこのままさようなら、になる流れだったじゃない。で、はいこれ。どうせ持ってないだろうから、あげるわ」

 

 言って、渡されるのは……シンプルないくつかの髪留め。寒色系が多く、中にはリボン、に見せかけたクリップなンかもある。

 ……これつけろって?

 

「おしゃれ、してみなさいな。アンタ素材はいいんだから。流石にその歳の子に無理矢理化粧しろ、とかは言わないけれど、それくらいはいいでしょ」

「えー」

「モテるわよ。アンタくらい可愛かったら」

「要らねェ」

 

 野郎にモテたくない。かといって14歳前後の子にモテたってなァ。

 俺は……やっぱ、性格抜きにした零とか、着物狐とか、ちょっと若くても冷静メイドとか……そんくらいの歳のが。

 

「いいから、貰っておきなさい」

「……ま、ありがとよ」

 

 言って亜空間ポケットにしまおうとして、その手を掴まれる。

 

「まず、1個、つけなさい」

「……じゃ選んでくれ。俺わかんねェから」

「いいわ。じゃあコレ!」

 

 これ。

 まァ、特に変哲もない髪紐だ。

 それを、俺の背後にササっと回って、勝手に髪へと結いて行く。

 

 ……髪ねェ。

 銀髪で綺麗だってなまァ自慢できることだと思う。誇らしいことでもある。神さんと一緒の髪色だしな。

 けど別におしゃれってな……なァ?

 

「はい、できた」

「……ポニテか」

「ええ。簡単だし、覚えやすいでしょ」

「ん-。まァ、ありがとさん」

 

 なンか後ろに引っ張られてる感じして違和感あるけど。

 ……視界が広がった、ような気もする。戦闘においてもいいのか? でもぶんぶん回って邪魔そう。掴まれたら痛そう。

 

「んじゃ、そろそろ行くよ。──シエナのこと、頼むぜ、マッドになりかけチビ先生」

「ディミトラって呼びなさいよ」

「……」

 

 その身体を見る。

 死の気配は──無い。お嬢にはあンだけ見えていた死の気配。いんやさ、それを"そう"だと認識していない頃は恵理須の中でも纏いに纏わりついていた死の気配が、少女の体から消え去っている。

 ……なら。

 

「あァ、頼むよ、ディミトラ。生涯の恩師の1人よ」

「どういう意味?」

「そのまんまさ。じゃァな」

 

 背を向け、部屋を出る。お屋敷クルメーナをでる。

 後ろから追いかけてきそォな雰囲気を感じ取ったンで、脚部強化で跳躍して逃げる。

 

 ──ありがとう。

 

 

 

えはか彼

 

 

 

「はァ!? 国を出る!?」

「おーおー、騒ぐな騒ぐな。人が来るだろ。つかお前変装はどォしたンだよ」

「ンなもん別にいいだろ今は! ……どういうことだよ。アレか、死に溢れたここが嫌になったのか? ンなのドコいっても同じだぞ」

「まァそりゃそうだろうけど……ちょいと確かめたいものがあるンだ。そのために各国っつか全土を回らなきゃいけねェ」

「おいおいそりゃ……菫たちはどォすンだよ」

「馬鹿か、お前がお姉ちゃんに決まってンだろ」

「何も言わないで行くつもりか?」

「梓・ライラックはここに残るンだ、言う必要がない」

 

 金属の腕を避ける。

 ……そいやコイツ、この世界でも義手なンだな。

 

「私は、別人だ。お前がそォ言ったんだろ」

「そりゃそうだが、同姓同名の別人だろ? ライラック家の家族なのはお前の方だってだけだよ」

「ふざけンじゃねェ。私はキマイラだぞ。肉体は元々お前の腕一本で、改造されまくってる。中身は人間たァ似ても似つかねェオリジンだ。ホントの梓・ライラック論争はもう終わってンだよ」

「そォいうがな、俺ァアンディスガルなんだよ。お前違うだろ? 俺は夜の使徒で、お前は恵理須出身。冥界で生まれた魂なめんなよ。死が好きすぎるンだ。この前発覚した」

「どォでもいい話で話逸らしてンじゃねェ」

「逸らしてねェよ。別に良いだろ? どうせミズメには家族いねェんだ、家族の温もりって奴を味わってろよ。俺にとってはどォやっても2人目ってな先入観が付いて回る。純粋じゃねェのさ」

「……何、意味の分からねェ事言ってやがる」

 

 まァ意味わからんだろうなァ。

 けどさ、流石にクロムクラハには頼めねェからよ。

 適任だし、本物は──お前だと思うンだわ。

 俺は結局、自覚がありすぎてな。"前"──43歳のおじさんだったって自覚が。

 

「すまん」

「……何謝ってンのかわかんねェよ」

「お前が守ってやってくれ。俺は壊す側なンだよ。お前さ、そもそも負け犬……ポマネイ・リコの方についたのだって、それが世界を救うことだって思ってたからだろ?」

「……」

「お前さ、ちゃんと梓・ライラックなんだよ。オリジンがどうとか腕がどォとか知らねェよ。俺興味ねェもん。……な、いつかさ、お前が俺にピザ持ってきたことあったろ?」

「……あったな」

「そん時思ったよ。コイツはまだ子供で、罪悪感とか抱えてられなくて、年相応の梓・ライラックなンだな、って」

 

 同じ状況で──俺は、そういう事をしただろうか。

 見舞いの品くらいは持ってったかもしれねェけど、この場所はアイツのモンだから、その場で出された料理を包んで持って行ってやろう、なンて──ハハ、絶対思わねェ。純粋で純朴なガキだよ。13歳、14歳。そのまんまさ。

 娘か、娘の友達。そォ思う。

 

 その上で託すのさ。

 ライラック家。俺にとって特別な──けれど、俺のモンじゃねェ家のコト。

 

「押し付けるよ。すまねェけど、俺には重い。俺より力持ちなお前が持ってくれ」

「……1回」

「ン?」

「1回、会ってこい。私達だけで決める話じゃない。1回会って来て、全部バラしてその上でそれ言え」

「ハハ、無理に決まってンだろ。ウチの家族は優しいからな、絶対受け入れてくれる。──俺がそれから抜け出せるとは思えねェ。振り切れるとは思えねェ」

「無理だから逃げるってか」

「あァさ。だから、すまん。バラすのも隠し通すのも任せる。その重責全部お前に押し付ける」

 

 ひでェ話だよなァ。

 こんな重い話、自分で話すの怖いから30歳年下の女の子に話してくれって頼んでンだぜ。

 ハハ、いつの間にそんな意気地なしになったよ。

 

 ハナからかねェ。

 

「じゃ。俺はもう行くけど……学園生活頑張れよ、ミズメちゃん」

「うるせェ。……ミズメって名前も、気に入っちゃいるが。お前がそーいう事いうなら、お前だけは私の事をアズサって呼び続けろ。それがけじめだ」

「いいよ。じゃあな、()。大丈夫、お前は幸せを掴み取れる」

 

 その気配に。

 一片たりとも──死がいない、少女に。背を向ける。

 

「ありがとな」

 

 自然と出たお礼を言って。

 その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、挨拶周りは続く。

 つってもそこまで口の堅い奴限定な。クラスの奴らとかに話すつもりはない。

 

「そうか。俺も特にこの国に用はないからな。俺は俺で魔物の動向なンかを探るとするよ」

 

 とはクロムクラハ談。

 

「……わかった。君は外側から、私達は国から。この世界に対して、色々考えることを試してみよう」

 

 とは班長談。

 

「ついていく、と言いたいのだがな。お前はお前の道を行け。私も私の道を行く」

「あ! ずるいのだカネミツ! その台詞、あたしの小説のパクりなのだ!?」

「娯楽小説など私は読まぬ」

 

 とは尖り前髪とピンクカチューシャ談。

 

「えーと、それ私に話してなんか意味ありますか? え、口が堅い人だけ? もしかして梓さん、私の事口が堅いって思ってるんですか!? 驚きです!! ──なーんて、いいですよ。お好きにどうぞ。あ、ですけど、私の口が堅いとは言ってないですからね!」

 

 とは太腿忍者談。よくわからん。

 

 そんな感じで挨拶周りは終わった。 

 思い残すことはまァあるンだけど、無い事にする。

 

「で」

「はい、ですの」

「……うん」

「……まァお嬢はついてくると思ってたけどさ」

 

 朝っぱらだ。

 2年生。2年目。1年生が全く学園生活できてなかったンでもちっと楽しみたかったトコだけど……俺はこのタチの悪い夢を終わらせに行きたい。

 悪夢はな。まっぴらなのさ。

 

 で、まァお嬢が張ってんじゃねェかってトコまでは予想ついてた。

 

「なんでお前いるんだ、背中メッシュ」

「いちゃ、だめ?」

「いやダメってこたないけど、何用だよ」

「私も、旅行いきたい」

「……」

 

 お嬢を見る。

 そっぽ向かれた。

 ……ははーん、さてはエデンを離れる旨を説明するとき、旅行って説明したな?

 

「いつまでうじうじしてるんですか? とっとと行きやがれください!」

「うっ!?」

 

 国の高い壁から、誰かが蹴り落とされてくる。

 蹴ったのは──得意気な顔をした太腿忍者。

 落とされたのは、ポニテスリット。

 

 直後、壁の上に、ズラりと並ぶは黒装束の集団。プラスあみあみ忍者。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! とっととその蟠り3人衆連れて旅行でもなんでも行っちゃってください! 紡ぐのが英雄譚なのか魔王物語なのかは知りませんけど──」

 

 壁の中から、3つの影。

 それは、全てシエナ。命の気配のしないシエナ。

 

「外出手続きをせずに──」

「ライトレーザー!!」

 

 一切の躊躇なくそれらを攻撃する太腿忍者。

 黒装束──忍軍もまた、苦無や手裏剣を投げまくる。お前らジパングにいなくていいのかよ。

 

「私、基本的に自分の事以外どうでもいいんですけど、私の周りでうだうだうじうじ悩まれてるとこっちまで気分落ち込んじゃうので、ソレも連れて行ってください。で、鮮烈な貴女の物語をまた見せてください。大丈夫です! ──私、夢とか一度も見たこと無いので」

 

 強化をし、しっかりと受け身を取って着地したポニテスリットが──どこか恥ずかしそォに、俺を向く。

 ……そんな楽しい旅じゃねェと思うンだけど。

 あとそんな大々的に見送られても困るンだけど。そんなつもりなかったんだけど。

 

 なかったけど、まァ。

 

「おい太腿忍者!」

「なんですか!」

「家族関係良好なよォで何よりだ!」

「うっさいですね! 早く行かないとそっちにも色々投げますよ!」

 

 そりゃ怖い。

 んじゃ、まァ。

 

「【槍玄】」

「【神光】」

「おい、何もそこまでしなくとも──」

「わ」

 

 一気に加速する。

 それは流星が如き光を纏い、EDENを秒で脱出する。

 

「それで、行先は決まっていますの?」

「あァさ。──目指すは北東。そこにあるだろう、元地脈吸入点だ」

 

 なりふり構わず、やらせてもらう。

 

 

 

えはか彼

 

 

 

 まァいつまでも飛んでるわけにはいかない。

 ので普通に降りて、普通に歩いている最中の話。

 

「で、結局なんでついてきたんだ。ンな面白い事しねェぞ?」

「……私は、蹴とばされただけだ」

「いやお前に聞いてねェよ。背中メッシュに聞いてンだ。お前、エデンでの生活に不満とかなかっただろ。旅行行きたいなら別に正式な手続きすりゃいい。俺についてくる必要なかっただろ」

「面倒。それに、梓の行く先なら、私の見たことの無いものが待っている」

「なんじゃそら」

 

 いや、ホント。

 初めて会った時からマイペースな奴だとは思ってた。太腿忍者はマイペースっつか自己中心的なマイペースだからアレは違うンだけど、背中メッシュはホントにマイペースで……何か芯があるってワケでもないし、かといって適当な奴ってわけでもない。

 S級魔法少女と、まァ強いんだけど、魔物殲滅に心を賭しているかっつったらンなことはない。過去を語らなければ自己も語らない。

 

 アツくなることはない。冷めているってワケでもない。

 俺の中の背中メッシュの印象ってな、いつも苦しんでる──怪我してる。そんくらいしかない。

 

「1つ、理由を述べるなら」

「あァさ」

「──"スポットライトが当たった"、かな」

「……どォいう意味だよ」

 

 そして、不思議ちゃんである。

 マイペースな言動は基本的には普通のコト言ってる……と思いきや、時たまこォいう意味の分からん事を言う。

 何を見ているのか。何を考えているのか。

 マージで何にもわからんのが背中メッシュ……シェーリースである。

 

「あ、そうそう。ミサキさん。ごめんなさいですの」

「ん……何がだ?」

「ミサキさんが梓さんを好いている事、梓さんに伝えておきましたの」

「──な、な、何を、というか、何故、いや、待て、梓がいる前で何を!」

「どうせこのまま一生言えずに終わるんだろうな、と思いまして。余計なお世話は焼いておいた方がいいかと思いまして」

「大きなお世話だ!」

 

 ポニテスリットは……まァ、ポニテスリットだ。

 記憶があろうとなかろうと、コイツは本当に変わらんなァと思う。

 其夢盗が再現できないのは当たり前だ。こんな面倒くさい奴早々いないからな。

 

 自分の気持ちには気付いている。あァいや俺への愛恋とかだけじゃなく、罪悪感とか咎める気持ちとか、その他諸々、自分の中ではわかってる。言語化までできている。

 けど言えない。言ったらどうなるのかが想像できない。否、想像できてもそれがあっているかわからない。けど言わないでおくのも不義理だ。けど言えない。不義理を貫いてでも、言えない。

 言って、今の関係が壊れる事の方が──自身の想いを伝えられない事より、よっぽど怖い。

 

 そォいう奴。

 

「今目指してンのは北東の元地脈吸入点なンだけどよ。そこでの用事が終わったらの予定ってな決まってねェんだよ。どっか行きたいトコあるか?」

「閻魔刃塔」

「……いやいいけど、珍しいな。背中メッシュが要望出すなンて。なんかあるのか?」

「母親がいる」

「マジかよ。行くか」

 

 知らなかった。

 恵理須じゃ閻魔刃塔は滅びてたからな。そのまま背中メッシュ達はEDENに移り住んだンだろうけど、背中メッシュの家族と会う機会なんてあるはずもなく。

 あー、そォ考えるとアールレイデ家にも行ってみたくなるよなー。

 

「ちなみにアールレイデ家に来ても冷たい目を向けられるだけなので悪しからず。あそこは才能主義なので、剣の才能がまるでない梓さんが行っても何も得られませんわ」

「そォかい。ポニスリのトコは?」

「……私には、両親がいない。捨て子だからな」

「マジかー。いきなり重くなったな。あれ、でもお前苗字あるじゃん」

「ミサキ・縁という名自体あだ名のようなものだ。誰にも縁が繋がっていない、未先・縁。ジパングの言葉でミサキというのは先が無いという意味を指す」

「お、おう。誰だよお前にそンなクソ重いあだ名つけた奴。俺の方がよっぽどセンスあるぞ」

 

 もうかるーく話題振ったらクッソ重いの返ってきてびっくりしてる。

 えェ。捨て子で、お前は天涯孤独、ってあだ名つけられて、律儀に真面目にソレ名乗って生きてンの……?

 お前大丈夫か? ストレスとかやばそうだけど。鬱になるぞ吐き出さないと。

 

「……私が知っている間に国を移動していなければ、エルヴンシードという国に住んでいるはずだ」

「何それ知らない国」

「知らぬのも無理はない。地下にあるからな」

「何それ知らない。行ってみたい」

 

 地下にあるって。

 俺恵理須に【占幽】したときンなもん見えなかったぞ?

 ……あ、あっちじゃ滅んでるってことか?

 

「まぁ、案内くらいはできる。シェーリースの家族に会った後に、訪れてみるのも良いだろう」

「あァさ。ただ1個聞いておきたいンだけどよ」

「なんだ」

「そのエルヴンシードに、青い水晶とか生えてねェよな」

「……見たことは無いな。とはいえ私も連れられたのは1度きり。くまなく探したわけではない」

 

 いやさ、地下っつーと、やっぱりな。

 どーしても浮かんじまうよな。

 

 ……大丈夫か。アイツも異空間にいるし。

 

「で、ソイツの名前は?」

「アールルゥ・ヘズナガル」

「へェ。俺の知り合いに名前が似てるな」

「そうか? この辺りではあまり聞かない名だと思うのだが」

 

 ま、そォいう事もあらァな。

 んじゃまァ──行きますか。

 

 1人欠けてのアールレイデ隊。久方ぶりの、遠征である。任務じゃないけど。

 

 

 

えはか彼




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