遠吠えは遥か彼方に   作:劇鼠らてこ

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159.内途大庭地燦.

 思わず、思ってもみなかった程に低い声が出たように思う。

 魔法名【召天】。否。

 

「これァね、魔法じゃなくて……俺の権能さ」

「権能。神の御業か」

「あァさ。っとに、どこで知ったンだよ。使う時は誰もいねェ時を狙って、いるとしても必ず死ぬよォな相手にだけ使ってたってのに」

「さてな。どこで聞いたかは伏せておこう」

「なンでだよ」

 

 いやホントに。

 

 ……。

 

「まァ、いいか。えーと、で。【天愍】についてだが、こっちァ無理だ。確かに殺す魔法じゃねェが、これを使えばジーウィースとニヤニヤ丸眼鏡……ゲヘナが出てくる可能性がある。なンだ、【亜空】の亜種みてェな魔法でよ、全てが繋がった異空間に対象を飛ばす魔法……っつか、これも権能なンだ。だから使えねェ」

「成程。確かに奴の【増幅】は厄介だ。英断やもしれん」

「だろ? で、【召天】は……。まァ、その名の通りさ。相手を強制的に冥界()に召し上げる権能。改宗をすっ飛ばしたこの権能ァ、【即死】、【死漸】、【世涯】のどれよりも強力だ。ただし、効果はそれだけじゃねェ。【召天】の最もやべェ部分は、()()()()()()()()()()()()()にある」

 

 だから滅多に使わない。

 ハイエンドにまで至った相手にしか使わない。なんなら普段の俺は忘れるよォに努めてる。

 この権能を受けた敵が最高クラスにあれば、【召天】は冥界送りとして機能する。

 

 しかしそォでないのなら。

 

「あンまし耳心地の良い話じゃねェんだがな。生物っつか魂っつーモンには、位階があるンだと。魔物なンかが良い例だな。EDENの等級区分が完全に合ってるたァ言わねェが、魔物って奴にァ確実に位階が存在するだろ? 弱い魔物、強い魔物。特異な魔物。オリジン」

「ふむ。まぁ、あるのだろうな。私も……なってみて、わかることもある」

「俺の権能は、それを強制的に引き上げる」

 

 あるいは【強化】とでもいうべきか。否、【突破】か?

 なんでもいいが、つまり、全ての生物に存在する位階を()()()()()()()()()()()()()。そこへもう一度使えば冥界送りだ。

 強制的に強くして、強制的に違う存在にして、強制的に冥界に送って。

 相手の意思など関係ない。これは神の権能なれば、そこの意思は介在しない。

 

 だから、切り札だ。それも格上相手にだけの。

 そして。

 

「そォだ。だから、尖り前髪。お前の言う通り……あるいは、守る事に使える可能性のある権能ではある」

 

 弱い仲間を。死にやすい仲間を。

 強化する、という意味で。

 

 この世界に治癒の魔法が無い以上、それは無類の強さを発揮するだろう。一回限りの最大強化。それでも使い時を見誤らなければ、と。

 

「でも、使わねェ。【天愍】も【召天】も、俺が使うべきじゃァ無い」

「そうか」

「……そうか、って。お前さんが聞いて来たンだろうよ、他に思うコトねェのか」

「お前が使わないと言っているんだ。大切な人が死ぬのが怖い。大いに結構。ゆえに恋愛をしたくない。結構だ。そしてたとえお前に守護の手段が存在するとしても、お前の信念に反するがゆえに使いたくない。ならば私がこれ以上言う事は無い。私は確認したかっただけだ。お前がそれを、リスクなどというくだらんものを恐れて使ってないだけなのではないか、とな。だが、少なくとも何かしらの信念はあるらしい。だから良い。詰まらん事を聞いた。忘れろ」

「無理だろ」

 

 久しぶりだ。

 こンだけ濃い話をしたのは。

 互いに魔物の身なれど、強く記憶に残る夜になったと言えるだろう。

 

「……夜の使徒」

「あン?」

「まだ、夜は明けないのか」

「まァなァ。……んじゃよ、俺が話したんだ、今度はお前の聞かせろよ。っと、あァ、ジパングでの暗い話ァ要らねェからさ、お前がエデンに入園した直後とか聞きてェ。昔の班長とかキラキラツインテとか、どんなだったンだ?」

「フ──本人のいないところで、というのは多少憚られるが……然して面白い話は無いぞ。抱腹絶倒するがいい」

「おお、自分でハードル上げるじゃねェか。楽しみだ」

 

 夜はまだまだ更けていく。

 朝が来るのはもっと先だ。

 

 ならばまァ、昔話こそが、花を咲かせるに最も適しているだろう。

 まだまだ、まだまだ。

 

 夜は長い──。

 

 

 

 

 

「長すぎるな」

「いや、流石におかしい。ここまで明けねェのは……まさか」

 

 長すぎる。長すぎた。

 昔話に耽って、けれどそれでも夜が明けない。

 閻魔刃塔からお嬢たちが出てくる気配もない。これは。

 

「よ、っと。おーいお二人さん。大丈夫?」

「プラチナオールバックか」

「うん。いやー、びっくりしたよね。アタシもびっくりしてるー。……明けない夜は無い、なんて言葉があるけど、あったね、これ」

「冗談言ってる場合じゃねェのよ。これ、なンだ?」

「わかんない。今レジスタンス、リマキア総出で解析中。けどちょっと厄介なコトがあってさー」

「厄介なコト?」

 

 俺達の巨体の前にァ流石に小さく見えちまうが、プラチナオールバック……ネベトフートはこれでも神だ。クロムクラハと同じく、夜にあっても威光みてェなのを強く感じる。

 

「今、この有至無死穏にいる魔法少女や魔法使いの全員が眠ってる。そうじゃないのか混ざりモノは平気っぽいけどね、だからレジスタンスも戦力ガタ落ちー」

「……まァ、南はそォだろうな。ほとんどが魔法少女だ。北は……ボーグルとツイウか。リマキアはそうでもないンじゃねェか? 神々ばっかだろうし」

「まーね。ただ問題は」

 

 プラチナオールバックが何かを口にしようとして──本気の表情で槍を構えるのがわかった。

 

「おーいアンディスガル! 大丈夫かい──ッ、須留途!!」

「引っ張らないで飛べるから引っ張らないでワオ槍」

 

 気付いた時には、その矛先ァその二人へ。

 安藤さんとL・アルカナ。

 

 槍は安藤さんの手に現れた炎剣に防がれ、微動だにしない。

 

「っとと……あっぶないねぇ。久しぶりだってのに随分なご挨拶じゃないか、ネベトフート」

「加具土命……1000年もの間見ないと思ったら、まさかグレムリンと一緒に行動してるなんてね」

「コイツといるのは成り行きだよ成り行き。他意は無い」

「同意する。それと、スパンデュルが貴女にやったことは私には関係ない」

「知ってるんだ?」

「フェリカから聞いた」

 

 神と神のぶつかり合い。その横にいる悪魔モドキと、俺達二人。

 ……まァ、なんぞあるンだろうけど。

 

「【死漸】」

「っ……何するんだい、危ないじゃないか」

「あっぶなー。退いてなかったら死んでたよ今のー」

「その辺見込んで、だ。今神々の戦いってなをやられても困ンのさ。槍を収めてくれよ、プラチナオールバック」

 

 渋々、と言った様子で槍を下ろすプラチナオールバック。

 そォだよな、コイツはグレムリンの村のせいで長年閉じ込められてたンだ。思う所はあろうさ。

 対してL・アルカナは何にも気にしてないってな悲しい話だがな。

 

「で、安藤さん。なんだ?」

「なんだ、じゃないよ。アンタの人形調整してたら突然魔法少女連中が眠りこけてさ。これはなんかあったなって外に出て見りゃこの有様だ」

「この有様、ってな、どォいうことだ。安藤さん、なンかわかンのか?」

「存彪位だよ、この感じは。何か大規模な術式だ」

 

 空を見上げる。天幕の無い空には、星々が輝いているが──。

 

「術式の発生源ァどこだ。ぶっ殺してやる」

「発生源は天体。天体の位置を用いた儀式魔法。変わり続ける星座を無理矢理他の天体に当てはめる事で、夜のある時間を継続する大規模術式」

「つまり──星を一個消しゃァいいわけだ」

「……恵理須生まれの君はわかんないかもだけど、天体って物凄くでっかいんだよ。それに遠い。無理だから、他の手段を」

 

 存彪位の引く術式なンざ、どうせロクなモンじゃない。

 だったら早めにぶっ壊すのが定石ってモンだろう。

 

「ふむ……アンディスガル。天体というのは、どれ程の距離にある。……たとえばアレは?」

「アレ?」

「あの赤いのだ」

「金髪お嬢様が全力で移動して642年くらいかかる」

 

 L・アルカナの言葉が本当なら、俺の夜驚声(トート)でも届くまでにかなりの時間がかかる。金髪お嬢様の全力は光に匹敵するンだ。まァ流石に光そのものたァいかねェが、【神光】の全速力となるとマジに光に近づく。ただンな事してたら一瞬でガス欠になるンだが。

 俺も600年も700年も夜驚声撃ってられねェしな。流石にソレを聞けば、諦めもつく。

 いや、他のもう少し近い天体なら……。

 

「アレは、あの位置にあるのか?」

「あるよ。多少は曲がっているかもしれないけど、あの位置にはある」

「そうか」

 

 尖り前髪が、ソードマスターが──全身の剣を構える。

 ……まさか【飛斬】を放つ気か? アレ、そこまで速度でないだろ。

 

「アンディスガル」

「ン?」

「今から行うコレは、方向の制御が難しい。万一狙いを違えたら魔法を殺してほしい」

「あァ、そりゃ良いが……【飛斬】か?」

「いいや」

 

 放たれるは──濃密な殺気。

 死の気配なンてもんじゃねェ、これは、必ず殺すという意思。殺意だ。

 相手は天体だぞ。生物ですらねェモンに、こうも殺気を放てるものなのか。尖り前髪にとっちゃ天体の概念さえさっき知ったばっかだ。

 それが。

 いや、そもそも何をする気なンだ。

 

 とりあえず【世涯】を構える。

 

「──【秘漸】」

 

 剣が振られる。

 幸いにして暴発はしなかったよォだが──。

 

 瞬間、星が消えた。

 ……たくさん。

 

「……やはり普段使わない分、制御が難しいな」

「いやいや」

 

 消えたぞ。星空から星が。

 アレ……どんな余波を齎すンだろうな。

 

「いやぁ、怖い魔法使うねぇ。流石はレイの劣化権能。世界から要素を切除する魔法か。視認する必要があるとはいえ……」

「いや、別に視認の必要はない。そこに存在していることが確定している、と私が認識しさえすればいい」

「そりゃ既に権能の領域だろ」

 

 彼我の距離を無視して斬撃を与え、それを切除する魔法。

 俺の魔法も十二分にアレな自覚はあるが、この【秘漸】のやべェ所は距離が関係ない所だ。

 

 というか俺の【死漸】、格落ちじゃねェ?

 

「あ、空が……」

 

 まるで黒い幕を横から引っ張るように、夜が溶けていく。

 既に昇っていたらしい太陽が突然陽光を降ろし、それで目がくらむ。

 

 ……いんやさ、今の【秘漸】に持ってかれたけど、この術式も相当だよな。一瞬で破れたたァ言え、夜を継続させるなンてことができていいのか。今夢になってるから、元がミニチュアだから、存彪位が神だから。

 そんな理由でどォこうなる事か?

 

「ちなみに今の夜を継続させる魔法ってな、何の効果があったンだ」

「単純に夜の属性持ちの力が上がっていく事と、逆に太陽の属性持ちが衰弱していく事だろうねぇ。夜の神、夜の使徒、そして悪魔。今クロムクラハがキスキルの結晶を破壊して回ってるのも理由だろう、思ってた通り、ソンヒューィの奴はキスキルと繋がってるねぇ」

「私は悪魔じゃないけど、神の敵たる悪魔がどんな取引をして取り入ったのかは気になる」

「なんだ、加具土命。キスキルと一緒に恵理須に行ってたクセに、何も知らないのか」

「おいおい、誤解を生むような言い方するんじゃないよ。アタシは召喚されただけだっての。キスキルがいたなんて知らなかったさ。コイツにだって会った時は驚いたんだから」

「私も驚いた。折角スローライフが送れると思ってたら、加具土命が人間になって、人間に従ってて」

「あーあー、神々の同窓会は後にしてくれ。とにかくこれで脅威は去ったんだな?」

 

 きゃいのきゃいのと騒がしくなってきた頃合いで、そう問えば。

 頷かんとしたプラチナオールバック達を、あざ笑うかのように。

 

 またも夜が昼を覆う。

 

「……去ってねェみてェで」

「みたいだねー。そんな連発できる術式じゃないと思うんだけどなー」

「もう一度斬るか」

「いやァ尖り前髪、無駄だと思うぜ。多分何度だって敷かれる。星ってな凄まじい数があるのさ。あるいはその全部を壊しちまえばいけんのかもしれねェが、そりゃ流石にこの宇宙がやべェ事になりそうだ」

「そうか。ではどうする?」

 

 どうするか、って。

 まァ決まってらァさ。

 

「L・アルカナ」

「なに?」

「これの術者はどこにいると予想する」

「それは勿論、この夜の範囲内。でなければ何の意味もない」

「確かにそォか。アイツ自身がその恩恵を受ける必要があるモンな」

「加えて、屋外である可能性は高いね。この術式は星座を無理矢理別の星に当てはめる必要があんのさ。だから、どれをどれに当てはめるかを視認してないといけない」

「んで、今アイツはキラキラツインテの身体だ。ってこた、どっか上空にいる可能性が高いな」

 

 さて、じゃァそれを捉えたらいいわけだ。

 

 ……ふむ。

 

「そういえば、【雲演】だったか? 雲を操る魔法」

「ああ……いたねぇ、そんなの。昔の昔に」

「夜空を視認しなきゃいけねェってンなら、曇らせちまえばいいと思ったンだが、ソイツに心当たりは無ェか?」

「生憎だけど、死んだよ。昔の話さ。……それよか適任がもう一人いる」

「へェ」

 

 こういう時に安藤さんはありがてェな。

 沢山の魔法少女を見て来たンだ。その是非如何はともかくとして、知識には長ける。

 

「リチュア・アールレイデ。【転候】という魔法を使う魔法少女さ」

「成程。もう一度私が夜を晴らし、」

「ソイツを爆速で起こして魔法使ってもらって、夜になる前に曇らせちまえばオッケーだ。そのあとゆっくりキラキラツインテを探すか」

「ソンヒューィが雲の上にいた場合は?」

「……」

 

 ……。

 

「ごもっともだ。つか、いるだろ。これほど大規模で天候に左右されちまうよォな魔法使うとは思えねェ」

「じゃあクロムクラハ呼んで探してもらうか。アイツの飛行速度なら割合早めに見つけられるだろ」

「アタシもそう思って、一番にクロムクラハを探したよー。そしたら、アオンって子を守らなくちゃいけないって断られてー、プラスしてクロムクラハも弱体受けてるみたいねー。ほら、クロムクラハって太陽の神の要素もあるじゃん?」

「……お嬢は、今ダウンしてる。他に魔物で高空を高速で飛びながら索敵できる奴ァ?」

「この世界に魔物なんてほとんど残ってないよ」

「だよなァ」

 

 さて。

 ふむ。成程、効果的だ。遠くにまで電波を飛ばす、みてェな技術の無いこの世界において、長距離間の連絡手段は飛行魔法に限られて来る。

 この夜増大の魔法はそォいうのも封じられるワケだ。今まで俺達の情報共有を担ってたクロムクラハのダウン、その他魔法少女のダウン。魔物が極限まで駆逐されてる世界ならではの方法。正直あの存彪位が考えついたにしちゃ効果的過ぎて怪しく思える。

 誰かの入れ知恵か?

 

「尖り前髪、お前は」

「無理だ。この巨体だと、さしもの私も魔力切れになる」

「……んじゃ俺か」

「ま、妥当だね。アンタの人形は出来てるから、それで行ってくると良い。魔力は冥界のを使えるんだろ?」

「あァさ。あと、L・アルカナ。お前さんも来いよ。飛べるンだろ?」

「私には存彪位と敵対する理由がない」

「おいおいつれねェ事言うなよ、元同僚」

「……ついていくのは構わないにしても、私に戦闘能力は無い。加え、貴女も人形に入っている以上魔法は使えない。魔法は肉体に宿る物だから」

「わァってるさ」

「魔法が使えない上で、存彪位に敵対してどうする気?」

「ま、考えがあンのさ。あァそうそう、プラチナオールバック。アズサの奴はどうなんだ? アイツは半分以上魔物の肉体だたァ思うンだが」

「ちゃんと寝てたよー」

「あァさいで。じゃあアイツ、もう完全に魔法少女か。あるいは肉体は寝てて精神は起きてるってパターンもあるが、確認のしようがないしな」

 

 んじゃあ決まりだ。

 安藤さんを見れば、亜空間ポケットを開き、そこからゴロン、と、少女の人形を出してきた。

 

 梓・ライラックとは似ても似つかない人形だ。

 

「急ぎだったからねぇ、アンタの見た目に寄せてる暇は無かったんだ。すまないね」

「いや、構わねェ。もう死んだ奴のことだ」

「そいじゃ、使い方を教えるよ。といっても特に変なことはしない。この人形に触れて、自身の魔力を馴染ませるんだ。それだけで、アンタはこれを使えるようになる」

「ほー」

 

 地に崩れ落ちる人形。

 それに──触れる。

 すると脳内にイメージのよォなものが浮かび上がって来たではないか。

 

 これは、地面?

 

「慣れない内は目を瞑ってやるといい。慣れてきたらブゥリみたいにどっちも動かせるようになるだろうけどね」

 

 言われた通り目を瞑る。

 すると、視界がその地面のものだけにすり替わったよォな感覚を受けた。そして鼬ではない、巨体ではない、懐かしきヒトの四肢を手に入れた、かのような。

 

「立ち上がってみな」

 

 立ち上がる。

 起き上がれば──目の前に、クソでけェ真っ黒い鼬が。

 

「おお」

「いいね。魔力は扱えるかい?」

「……苦理主」

 

 呼び出せば。

 ああ──懐かしの二丁拳銃。そして、全身に滾る冥界の魔力。

 惜しむらくは心の臓。生命の鼓動なきこの体は、冥界の土になってた頃の俺を思い出す。

 

「アルカナ」

「わかった」

 

 L・アルカナが、その不可視の翼を広げる。

 

「そういやお前、ふわふわ鼠はどォしたよ」

「あれは、今貴女が見ている私の身体を作る時に余った本体。今はそれを取り込んだから、もういらない」

「安藤さん」

「つまり、コイツの本来の姿はもうちっとグレムリン寄りなのさ。それを無理矢理人間っぽい形に成形したのが今のコイツでね。それでも余る部分がある。だから恵理須では、その余った部分を毛だらけの鼠の形にして携帯してたわけだ」

「……不思議生物か?」

「お互い様」

 

 まァ、そりゃそうだが。

 

「尖り前髪、俺の体の護衛は頼んだぞ」

「ああ」

 

 そんじゃま、準備完了だ。

 クロムクラハの頃を思い出して背中から冥界の魔力を噴き出す。お嬢の光と同じく、シエナの噴射機構と同じく。

 高速移動ならコレってな、相場が決まっててな。

 

「ちょっくら存彪位斬って来るからよ」

「アタシは陸路をついていくよー。万一があるだろうし」

「頼もしいよ、プラチナオールバック」

 

 そんな感じで。

 

 降って湧いた存彪位討滅の機会だ。

 無駄にはしない。

 

 さて──。

 

 

えはか彼

It's a story of prayer dedicated to the night.

 

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