遠吠えは遥か彼方に   作:劇鼠らてこ

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68.藍迂遠斗塔羽生阿番食和絵都. / 地番食和絵都負不地出土初琉微鍬家都. / 殊蟻.

「──そこまで!」

「……!」

「はっ、はっ……」

 

 今日の授業ァハナから実技。それも、身体強化のみを用いての組手っつー、B級以下のいない授業だ。私ァこんなんがあるって知らなかった。お飾りB級、お飾りA級にァ知らされない授業って事だろう。まァお飾りA級になった後すぐにクルメーナへの遠征任務だったから、アイツァ知ってんのかもしれねェけど。

 

 で、お相手ァ李・理央。同期の奴だ。

 北方で気功とか言うのをやってたってだけあって、目も良ければ筋肉の使い方も上手い。私だってそっちの達人ってワケじゃねェ、死ぬほど底上げされて爆上げされた身体能力と魔力量に物言わせてるだけだ。だからあンまし多くを語れるってワケじゃねェが、これァ強い魔法少女になるだろォよ、って感じ。

 

「ふぅ……負けたよ。ミズメ、強いね」

「……いえ。その、魔力が」

「多いだけだ、って? ふふ、私の目は誤魔化せない。君は要所要所でしか魔力を使ってないし、こっちの攻撃を見てから動いて、ちゃんと避けている。相当戦闘慣れしている……そんな感じがするよ」

「……いえ、ホントに、その」

「本当なら、センスの塊だ。これからも一緒に鍛え上げて行こう!」

「……はい」

 

 こっえー。

 鋭い奴しかいねェのかここァ。

 

 そりゃ戦闘慣れァしてるよ。アイツだった時を含めて、アイツ程じゃないにしても死線ァくぐってるし、アイツより多くの魔法少女を相手にしてきてる。魔法少女ァ魔力を感知できる分魔力の動きに目がつられやすいからな、そォいう騙しも使える。

 つったって今回ァそんなの使ってねェ、ただの動体視力だけの組手だったし、引き分けって形に持ってったつもりだったンだけど……理央からァ、わかっちまってたみたいだ。

 

「貴女」

「……はい」

「ああ、そんなに委縮しないで? えーと、ミズメ。ちょっと私とやってみない?」

「……え」

 

 そう声をかけてきたのァ──創設者が1人、ビーファン。本来の【隠涜】の使い手でありながら、もっとも気を付けるべきァその魔力量。隔離塔程たァ言わねェがそれなりに固いはずの中央塔の壁を殴り壊したり、終の因や始の点の迷宮の主を殴り飛ばしたりして調伏したっつー、マジモンのやべー奴。アイツがなンてあだ名付けたのか知らねェけどどーせ暴力娘とか殴り娘とかそンなンなんじゃねェかな。

 それと、組手。

 

 こえーよ。気付かれてねェみてーなのァありがてェけどこえーよ。変装道具壊れるンじゃね? 壊れた瞬間修羅場も修羅場だぞ。

 

「……いえ、その、怖い、ので」

「そっか。そうよね、ごめん! それじゃ、今日の授業はここで終わり! 各自復習と、修練塔で出来なかった部分の鍛錬をしておいてね!」

 

 助かった。

 ……いや。真面目に。

 変装道具ぶっ壊されンのが今んとこ一番マズいからな。だからこその遠隔魔法少女でもあるわけで。

 あァそうそう、そこも変わった点なンだよな。

 遠隔だろうが近接だろうが、余剰魔力ある奴ァ身体強化ちゃんと覚えて護身できるよォになりましょう、ってのが今のエデンの方針。だからこんなことやらされてる。

 

 ちなみにリキュアみてェに最初から得物持ってる奴ァ別クラス。流石に剣と拳じゃァな。怪我しちまうし、させちまうし。

 

 私の本来の得物ってなると銃なンだが、流石に持ってる奴ァいなかった。

 

「それと、ミズメ」

「……はい」

「貴女、本来の武器は拳じゃないでしょ。弓とかそういう狙いを定めるもの、って感じがする。もし本来の武器があるなら、早めに言ってね。そういうのが得意な先生に任せるから」

 

 ……こーわ。

 ダメだな私の演技力じゃ。マジの達人ァ騙せそォにない。

 

 なンか良い言い訳考えとかないと。

 誰かに相談……したいが、誰もいねェ。一旦拠点に帰るか? ……どォやって? 結構遠いぞ。

 あるいァ魔物に手紙を届けてもらって安直ちゃんに安直な考え出してもらう、とか。……いやいや、安直ちゃんが魔法少女の武器事情をわかってくれるたァ思えねェ。

 うーん。

 

「……大丈夫です」

「ん、それならいいわ! じゃ、ホントのホントに解散!」

「……はい」

 

 あと、知り合いってーと。

 

えはか彼

 

「お前さ、この前あンだけ俺に色々言っといて、よく来れたな。俺がこっそり行くより目立つだろ」

「だから窓からきたンだよ。つか、疑似【隠涜】で隠れてるから大丈夫だ」

「疑似、ね」

「……なンだよ」

「いや?」

 

 こいつに、なった。

 ……チクショウ、なンか仲良いみてェで嫌だな。あと馬鹿だな私。今結構な情報漏らしたぞ。

 

「俺の声も外にァ漏れねェのか?」

「あァ、大丈夫だ。……で、なンだが」

「あァさ。相談と。なンだよ」

「……言い訳を、一緒に考えて欲しい」

「はァ?」

 

 いや。

 いや。

 なァ私、冷静メイドに頼めばよかったンじゃねェか? そっちのが丸く収まったンじゃねェか?

 こいつに聞いたって、私の考え付く以上の答えっつーのァかえってこねェんじゃねェか?

 

「お前も知っての通り、私本来の得物っつーと拳銃とSRだろ。でもそれが使えない。使うのお前くらいだから」

「あーな。で、普通に拳で戦ってたら見抜かれたって?」

「……そォだ」

「だから銃じゃなくて、けど拳でもねェ、良い言い訳になりそォな武器を見繕え、ってことね」

 

 いやホント。

 私コイツのことちょっと信頼しすぎじゃね。敵だぞ。

 なんなら安直ちゃんに頼まれたら──その【即死】も奪う可能性のある相手、だってのに。

 

 今からでも遅くない、やっぱやめた、って言って。

 

「弓っつーと難しいだろォけど、クロスボウとかどォだ? 作れる奴いるのか知らねェけど」

「クロスボウ?」

「ん、知らねェのか。えーと、じゃあスリングショットとか」

「いや、クロスボウならわかるよ。あれだろ、こー持って、弓射る奴」

「そォそォ。アレなら拳銃と似た感覚で……使えるかどォかァ知らねェけど、偽装にァなるだろ。珍しがられァするだろォけど、銃よりァそんなにだろォし」

「ふむ。で、スリングショットってのァ? そっちァ知らねェんだけど」

「なンか、二又の棒にゴム紐くっつけて引っ張ってバーンの奴だ」

「わかるか」

 

 クロスボウか。

 あり、だな。

 

「どの道別にお前の魔法ってな銃も弓も要らねェんだろ? ならテキトーでいいんじゃね」

「いや、銃の方がしっくりくるってのァある。狙い定めないと上手く行かないし──ッ!」

「ハハ、なんて顔してやがる。コイツ巧みに誘導しやがって、か? 馬鹿が、ンなもンァ探り入れなくてもアタリついてるよ。どんだけ証言者いると思ってやがる」

「……それァ、そうか」

 

 記憶、あるンだもんな。

 あの日──私が仲間にしようとした魔法少女達には、全員。意識ァなくても、記憶は残る。マッドチビの作り出した精神体技術っつーのァそォいうモンだ。

 

 ……ふゥ。

 

「ありがとよ。ちったァタメになった」

「おォさ。こんなんでいーならまた来な。それで完全に隠れられンなら、いつでもな。俺ァ暇で暇で仕方ないんでよ、恋愛話の1つでもあったら尚良い」

「あるわけねーだろアホ」

「ハハ、別にお前の、たァ言ってねェよ」

「……!」

 

 落ち着け私。

 今のァ勘違いした私が悪い。悪いか? いやコイツが全部悪い。そう。コイツが全部悪い。

 

「じゃァな。今度来る事あったら、手土産ァ持ってくるよ」

「頼まァ」

 

 疑似【隠涜】を発動する。

 回数制限ァまだまだ余裕がある。安藤さんの魔道具っつーのァこの回数制限と劣化するのが厄介なンだよな。この【隠涜】だって、周囲の激しい変化にァ対応できねェし。

 あくまで魔法少女の魔法を魔工学で再現してるに過ぎねェんで、色々と条件がつくンだ。それにしたってすげーのァ変わりねェけど。

 

 ちなみに【即死】ァつくれねェのかって聞いたら「首落とすか心臓貫くかでいいだろ?」って言われた。

 

 ……さて、戻ろう。

 今日ァなんぞ、歓迎会ってのがあるらしィからな。遅れるのァ悪い。あと、なンだっけ。部活動、みてェなのもやるらしい。中学ン時ァやってたけど、魔法少女の部活動っつーとどンなんになるかまるでわからねェ。

 

 ま。

 ……できるだけ、重要な役割ァ貰わねェよォにしねェと。どうせ抜けるんだ、あんまり深めすぎると、つらくなる。

 

 

 

 

「ミズメ、こっちこっち!」

「わ! 貴女がミズメさんですか! 初めまして! 私はユノンといいます! S級魔法少女です!!」

「はじめまして。私はミサキ・縁という。あまり攻性に長けた魔法少女ではないが、よろしく頼む」

「ティアでーす。いえーい。私今日お酒飲むだけー」

「瀬尾アルカっていいます! よろしくお願いします、お3方!」

 

 会場ァもうできあがっていた。

 魔法少女っつーのァ酒飲める年齢ってのが明確に定まってない。国でァ17だったっけな。そんくらいなンだけど、それより手前で止まっちまった魔法少女ァどうすっかって法律ァ無いわけで。その上で、別に酒飲もうが煙草吸おうが魔法少女に健康被害ァ無いんで、飲みたきゃ飲めばいいし、飲みたくなきゃそれでいいし、って感じ。

 ゆるふわにゃんこことティアの尋常じゃねェ飲酒量もさることながら、リキュアと理央も結構飲んでんな。私ァ酒飲んでも一瞬で分解しちまうンでアレなンだけど、そォいやアイツァ飲むのかね。

 私ァ別たれた後に飲んだってだけだから、アイツがどォなのか知らねェんだよな。手土産ァ酒にするか?

 

「ミズメさーん、こっちですよ。さ、私の膝にお乗りください」

「……はい」

「ちょっとリキュア、君は胸が大きいんだから、座り難いだろ? その点私は椅子に持って来いだよ」

「何を言うのかと思えば。これは、柔らかい背もたれ、ですよ。ふふん、アムリタお姉様にもフェリカお姉様にも勝るコ・レに包まれて堕ちない少女などいませんから。ほら、どうですか、ミズメさん。気持ちいいでしょう?」

「……は、はい」

 

 実際に凄い。

 私にァ無いそれが。やーらかい。あったかい。

 身長差的にも頭を挟む感じでソレがあって、酒が回ってるせいか体温もかなりあって。

 眠くなるンだけど。目の前の料理を前に眠くなっちまうのァ勿体無いンだけど。

 

「そういえばユノン。ユクナは呼ばなかったのか?」

「げ、今ここでそんな話題出すとかもしかして私何かしましたか!?」

「いや、そういうわけではないが……。今度ユクナを皆に紹介する、などと言っていたのを覚えていただけだ」

「う、それはそうですけど。するにしても歓迎会じゃないですよ流石に!」

「そうか。……そうだな」

「ユノン。アインハージャ的諺で言わせてもらうのなら、宴とはどの場においても宴。……訳はこれで合ってる?」

「リジ、私に聞かれてもわからん」

「それはそう」

 

 アインハージャ。

 彼女らもいるのか。あの2人ァホントに接点無いからな。私の弾丸を弾いたくらいか、絡みって。

 ……彼女らも彼女らでマジモンの達人だから、気を付けないと。……つか、アイツあの2人のこと青バンダナと赤スカーフって呼んでなかったか?

 いやもっと特徴あるだろ。リジは紫の髪が綺麗だし、ウィジは浅黒い肌に、ちょっと露出の多い服が噛み合っててなんかかっこいいし。確かに青いバンダナと赤いスカーフつけてるけど、こう、もっとあるだろ!

 

「ウィジ、見られている。自己紹介の場だった気がする」

「リジ。それもそうだな」

 

 あ、気付かれた。

 ……視線に気付くってな、ホントどォいう事なンだろうな。アイツのいう死の気配ァ私もなんとなくわかるンだけど、そォいうのじゃないっぽいし。勿論殺気の類ァ私も気付けるけどさ。

 

「私はリジ。ウォムルガ族がアインハージャ。アインハージャというのは魔法少女のこと。そう呼ぶのは私達の慣習だから、慣れて」

「私はウィジという。同じくアインハージャだ。よろしく頼む」

「……はい。ミズメです」

 

 そォいや、この2人がいるなら、もしかしてナリコ……も、いる、のかな?

 いるんならその、ちょっと話してみたいんだけど……いなそう?

 

「あは、ミズメさん。そんなに髪を動かされますと、くすぐったいですよ」

「……ミサキさん! 私達は同盟を組みましょう!」

「え。ああいや、私はそういった事に関心は無いのだが」

「酒もっともってこーい!」

「ミズメ。ティアのようになってはいけないぞ。酒は飲んでも呑まれるな、だ」

「ウィジ。ティアは悪い例が過ぎる。汎用性に欠ける」

「おいそこ2人! もっと飲みなって飲みなって~! ほらほら新人ちゃんも! ヤなコトつらいコト、ぜんぶぜーんぶお酒でわすれちゃおー!」

「……えと」

 

 ゆるふわにゃんこってこんなヤツだったンだなァ。

 なンか。

 ……いや、そこまで人となりっつーのを知ってるワケじゃねェけどさ。酒ァ人を変える、って奴か。

 

 まー私ァ酒より食事かね。拠点じゃ安藤さんくらいしか飯作れる人いないンで、こォも豪勢なのァ久しぶりだ。安直ちゃんと食べた果実類ァ美味かったが。

 えーと? つかこれ誰が作ってンだろ。

 

「追加分、お持ちいたしました。どうぞご存分に」

「──」

「おや。初めまして、ですね。私はコーネリアス・ローグンと申しまして、A級魔法少女でございます」

「……あ、はい。初めまして、です」

「ミズメさん、名前、名前」

「……あ、ミズメ、です」

「はい、よろしくお願いいたします」

 

 なンでいるンだよ冷静メイド。……いや、そォか。再入園したンだったか。

 お前、鬼教官のメイドなンじゃないのかよ。つかA級って、あァなンだっけ、B級からS級への異例の飛び級を課されてたとかそンなンだっけ?

 

 びっくりした。素直に。

 

「あ、ミズメちゃん固まってる。かわいー。大丈夫大丈夫、ローグンさんは見た目ちょっと怖いけど~えい」

「!? ──ティア様。そのようなことはもうやめてくださいと何度も……」

「あはは! 怒った怒った~。ローグンさんはね、脇が弱いの。くすぐりするとめちゃくちゃ感じるんだ~」

「──わかりました。ティア様。酔いがさめたら、お覚悟を」

「きゃ~、めちゃくちゃにされちゃう~! 助けてミズメちゃ~ん!」

 

 ゆるふわにゃんこ、ちょいとウザめだな。酒飲ませちゃいけねェ奴だろコイツ。

 まァ絡んできてくれるだけ嬉しいけどさ。なんか本当に、迎え入れられたみてェで。

 

 そんなこた無いンだけど。

 

「……大丈夫。メイドさん、捕まえておきました」

「え~!?」

「はい、ありがとうございますミズメさん。では」

「ちょ、ちょいちょいちょい! 酔いがさめたら、じゃないの!?」

「覚めているくせに悪ノリしているのは目に見えているので、今からです」

「何故バレている──ッ!?」

 

 よし。

 悪ァいなくなった。

 

 さァて料理に舌鼓を。

 

「……」

「……」

「……」

「どうしたんだ、ミズメ。固まって。……ん? ああ、あるるららか。大丈夫、あれも魔法少女だぞ」

「ウィジ。誰でも暗がりにぼんやり浮かび上がる人影は怖いと思う」

「リジ、私ではなくミズメに言うべきではないか?」

「それはそう」

 

 見つめられている。

 ──マッドチビからの、注意事項が1つ。「それはあくまで変装道具であって、中身を変えるってワケじゃないから、一番気を付けないといけないのは──【透過】の子よ」。

 キラキラツインテ。あるるらら。

 確かにアイツに中身を見られたらおしまいだ。つかアイツ何しにきたンだ。学園生でもないのに。

 

 なんで見つめてきてンだよ。

 怖いだろ。

 

「うん。いいよ」

「……え?」

「じゃあね」

 

 そォ言って。

 キラキラツインテァ、消えて行く。

 

 な、なんだったンだ。

 こっわ。

 

「相変わらずよくわからない奴だが、悪い奴ではないぞ。多分」

「ウィジ。私もあの人はよくわからない」

「あるるららさんは不思議な人だが、悪い人ではないぞ」

「名前の響きからして、西方の方でしょうか?」

「西方! ジパング、という所、だよね。北方出身者としては一度お話してみたかったな」

「それならここにユノンが──」

「わー! わー!」

 

 もしかしてもうバレてたりすンのか?

 だったら──もう話が通ってたり? んでもしかして、このまま私を酔わせて……一斉に叩く、みてェな。やばい、緊急脱出機構使うべきか?

 

「皆さん、遅くなりましたわ。もう始めているようですわね」

「お酒、ある?」

「あら、フェリカお姉様。それにシェーリースさんも」

 

 お嬢と背中メッシュが来た。

 不味い、固められている、か? キラキラツインテにいつの間にか【透過】されて中身を見られていたとしたら……いや、アイツの【透過】ってななンか温かいモンを感じ取れたはず。あ、でも今リキュアの体温でわかんなくなってるから……ええと、ええと。

 

「食事を楽しんでね」

「!?」

「あるるららさん、ダメですのよ。ミズメさんは突然のことには驚いてしまうのですから、あんまり虐めると可哀想ですわ」

「うん。ごめんね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ふ、含みがありすぎる。

 絶対なンかあるし絶対なンかしてくるし一切大丈夫じゃねェ奴の言い方じゃねェか!

 

 ……う。

 

「……あるるらら。何用かと思えば……学園の歓迎会になど、私達が入っても邪魔なだけだろう」

「うわ、学園の大部屋懐かしいな。いいのかい? 卒園生の私達が参加してしまって」

「カネミツ、あまり固い事を言うな。隊長が行くのだから、私達が行かない理由もあるまい」

「ねむいんだけどー。あ、でもごはんはもらうねー」

 

 ……ぬ!?

 

「ええと、流石にこの雰囲気にはお姉さん入りづらいわね。学園なんて来たのどれくらいぶりかしら……」

「いいんじゃないですか? 突撃班もいるみたいですし。ぱーっと騒いでぱーっと帰ればいいんですよ」

「あ、なんか可愛い子いるじゃん! そ、それに──大きい子が!!」

「……」

「そそ、その、お邪魔します!」

 

 う。い、一番気まずい面子が。

 

「酒盛りだって聞いたぜ! ワハハ、なんも関係ないけど来ちまった! あれホントに知らん奴ばっかだけど大丈夫か?」

「ティケ、その空気の読めなさは流石すぎて敬服」

「隊長に何の許可も得ずにきちゃったけどよかったのかな」

「隊長の許可なら取った。楽しんできて、できればご飯持って帰ってきて、だって」

 

 ま、全く知らない奴らが。

 

「──なんですかこの大所帯は。このコーネリアス・ローグンに対する挑戦状とお見受けしました。今から20倍の速度でお食事を作りますので、お待ちのほどを」

「た、助けてみんな、ごはんにされる──!!」

「歓迎会……ではなくなったな」

「さっきの言葉を繰り返すけれど、アインハージャにはこんな諺がある。宴とはどんな場においても宴」

「ということで、申し訳ありません。母様。あるるららさんに呼ばれて、来ております」

「えー!? えぇー!!???!」

「今LOGOSが西方近くにいるから、守りは安心してね」

「母様? えっと、そちらの方のお母さんが、ユノンさん、なんですか?」

「それは……なんとも」

「……精々慌てふためくがいい、化け狸」

 

 これァ、緊急脱出機構使っても逃げられないンじゃねェか。

 やばいって。流石に。

 

「リキュアさん、理央さん、ミズメさん」

「あら、お姉様。姉妹なのですから、呼び捨てで構いませんのよ」

「私も理央で大丈夫です」

「ふふ、すみません。これは癖でして。──では、遅ればせながら、ですけれど」

 

 混乱の極致の中。

 金髪お嬢様が──誰もの目を引く優雅な礼をして。

 

「ようこそ、学園エデン、及びEDENへ。歓迎いたしますわ」

「乾杯!」

 

 ……そっからァもう、騒がしすぎて何話したかよく覚えてない。

 

えはか彼

 

「──お前さァ、そォ頻繁に来てっと流石に怪しまれるぞ」

「こんな頻繁に来る予定ァ私にもなかったよ。ほら、これ」

「ン。……なンか良い匂いするけど、なんだこれ」

「……今日、歓迎会があってさ。それで出た料理だよ。ホントなら……お前が食べるはずだった奴」

「ハハ、なんだお前。馬鹿が。ホントならお前が食べるはずだった奴だろォが」

 

 本当に、こんな頻繫に来るつもりァなかったけど。

 でもこれァ、私が受け取って良いモンじゃない、気がして。ミズメに出されたものだけど、本来ならあの場所にはコイツもいるはずで。

 それを……あの楽しい雰囲気も、食事さえも味わえねェのは、ちょっと……その、可哀想、だな、って。

 

「へェ、ピザか。いいね、こォいうジャンクフードァ大歓迎だ。──が」

「なンだよ。毒とか入れてねェぞ」

「ハハ、知ってるよ。ほれ、どこでもいいから座れ」

「?」

 

 よくわからんが、言われた通りに座る。

 ちなみに歓迎会の後、本当に何も無かった。キラキラツインテのあの思わせぶりな言葉ァなンだったンだ。

 

「客人に飯持ってこさせるだけ持って来させて自分だけ食えって? アホ言え、お前も食うんだよ。どうせ雰囲気に圧倒されてロクに食ってねェんだろ」

「……別に、私ァ」

「いーから食えよ。俺が気まずいンだよ。……で、どォだ。学園生活。楽しいか?」

「なンだよ急に。親戚のおっさんみてェな話の振り方しやがって」

「お、おゥ。随分と言葉が鋭利だな」

「ん、そォか?」

 

 まァ、毒なんか入れてねェつっても安心できねェのァわかる。

 私だったら安心しないし。今までどんだけ欺いてきたかって話だ。

 

 だから、まァ。

 一緒に食べるのも悪かねェ。

 

「楽しいかって聞いてンだよ」

「……わかんねェ」

「そりゃ、楽しんでいいのかがわかんねェってだけだろ。楽しいかどォか聞いてンだよチビ」

「ア? 背丈ァ一緒だろォが」

「なんなら俺の方が小せェな今」

「……そりゃ、そォ、だな」

「あァすまん。空気読めてなかった。そンな落ち込ませる気ァ無いんだ。マジで今楽しいか聞きたいだけでさ。うわこのチーズうっま」

 

 今、楽しいかどうか。

 楽しんでいいかわかんねェのァその通りで、けど、良いとした場合に──楽しいかどォか。

 

 そンなの。

 

「楽しい、よ。できりゃこの変装も無しで楽しみたいけど、それァできないから。でも──多分、人生で一番、今が楽しい」

「はン、いいね。それで良いよ。それが聞きたかった」

「……ヘンな奴」

 

 段々と、コイツの考えっつーのがわかんなくなってきた。

 コイツァ元私のはずなのに、なンか──ホントに別人、みてェな。そンな感じ。

 

「ハハハ、好い。好い。深夜ってのもいいね。この時間が一番調子いいんだ、俺ァ」

「それァ夜の使徒だから、か?」

「多分な。彼女が見ていてくれる時間で、もっとも彼女に近い時間。……そっか、お前わかんないのか」

「あァ、私ァ夜の使徒じゃないんでな。彼女っつーのが誰なのかもわからねェ」

「じゃあお相子だな」

「何が」

「俺ァ魔法少女じゃねェって気持ちわからねェからさ」

 

 ……気付いてンのか、コイツ。

 

「死者に近づいたせいだろォけど、そォいうの敏感になっててな。だからお前のEDEN入りも一瞬で気付いたよ。明らかに命の形が違う。俺の腕にあった魔法少女の因子ってなも、全部排出したのか」

「あァ。もう私ァ魔法少女でも、ヒトでもない。どちらかといえば魔物寄りだけど、魔物でもない」

「いいね、俺も俺以外の夜の使徒ってな見た事ねェんだ。だからやっぱりお相子さ。これでよーやく対等だ」

 

 何が対等だ。

 こいつァ隔離塔なンて場所に幽閉されてるよォなモンで。

 私ァ、楽しくて──楽しいって感じちまってて。あの時考えた、幸せの均衡って奴が、ちゃんと私に傾いちまってて。

 これじゃァやっぱり、私が全部奪った、みたいに……。

 

「だーから対等だっつってンだろ? お前にも俺にも傾いてねェよ」

「……何も言ってねェだろ」

「顔見りゃわかるっつの。13年付き合った顔だからな」

 

 それを。

 なんで、コイツァ──こんなにも快活に。

 

「いいか、今よォやく対等だぜ、アズサ。ミズメでもいいが。こっから先が、お前と俺の生存競争だ。お前がこの先ミズメとして仲間との信頼関係を築けば、あるいァ──俺を切り捨てる奴も出てくるだろう。マッドチビの狙いが何かまでァ知らねェが、どうせ神に仇為すなンかだろう。そこまでみんながついていってくれるかどォかァ知らねェし、お前がそれを許すかも知らねェ。だがな」

 

 こいつは。

 梓・ライラックは。

 

「ぜーんぶが終わった時に、どっちに誰がついてるか、ってな、誰にもわかんねェのさ。ケケ、2人とも誰かの虜、って事もあり得るぜ。着物狐とか、お前めちゃくちゃ靡いてンだろ?」

「な、ナリコァ関係ないだろ」

「あるよ。大ありさ。──こっからァお前の人生だ。どっちの名前で生きるか、どォいう道筋を辿るかァ知らねェけどな。お前が楽しいって思う限り、生きたいって思う限り──俺ァお前の敵だよ。よォやくだぜ、お前。生きてェって抗って、楽しい日常を自覚しちまったが最後さ。それを求めるお前の前に、夜の使徒ってな奴ァ立ちはだかる。せいぜい抗えよ、13歳」

「……何様だよ、お前」

「ハハ、何様だろォな。少なくともお前の知らないお前様かもしれねェなァ」

 

 ……やっぱりコイツ嫌いだ。

 意味わかんないから。

 

 話してると煙に巻かれる気がする。

 

「食事、ありがとな。一端でも雰囲気ァ味わえたよ」

「……あァ」

 

 やっぱりコイツ、意地でも礼言わねェと気が済まねェんだろォな。

 ふん。じゃァ言う通り、手に入れてやるよ。楽しい日常って奴を。──世界を救った後で。

 

えはか彼

 

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