泥岩少女のヒーローアカデミア   作:中澤織部

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入試編です。
戦闘シーンって難しいんですね。精進します。


岩繰泥花の入試試験

年が明けて二ヶ月ほど経ち、入試のシーズンがやって来た。

自宅兼施設を出発し、電車を乗り継いで泥花は受験会場へと向かった。

雄英高校は中学よりも遥かに大きく、全国から集った受験生の影響で渋滞のようになっていた。

 

「あれは……?」

 

ふと視線をやると、イガグリ頭と癖ッ毛の二人の姿がちらりと見えた。

 

「あっ転んだ。……隣の女子が助けてくれたのか」

 

足を滑らせたところを助けられた上に、見知らぬ女子に話しかけてしどろもどろの癖ッ毛を視界の端に捉えながら、泥花は筆記試験の会場に向かった。

筆記試験は流石の最高峰というべきか、一般的な高校受験とは比べようもない程の難問が、小手調べとばかりに並んでいる。

 

(全国レベルだけあって難問ばかりだな。既に何人か退出している……)

 

恐らくは記念受験のつもりだったのだろうか、退出していく彼らは何処かさっぱりしたような、諦めの表情が哀愁を感じる。

直ぐに視線を問題と答案用紙に集中させ、見落としが無いかを確認する。

終了の合図とともにシャーペンを置き、ほうっと一息吐く。

既に相当なプレッシャーと疲労が押し寄せるが、席を立って次の場所に無かう。

次は実技試験だ。

 

 

……

 

 

他の受験生とともに講義室という名の巨大な空間に集められた泥花は、何気無く周囲を見やる。

筆記試験が幾つかのグループに分けられて別々だったのとは異なり、此処には全ての受験生が集められているらしく、ピリピリとした張り詰めた空気が部屋を覆っていた。

 

「今日は俺のライブにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」

 

受験生たちの視線が集まる壇上に、ヘッドホンをかけたトサカのように逆立った金髪とグラサンが特徴的な姿が現れた。

多くのファンを抱えるボイスヒーロー・プレゼントマイクだ。

 

「イェアー」

 

ラジオを聴いてる時と同じように応えてみたのだが、どうやら泥花以外は緊張のせいか反応しなかった。

 

「サンキュー受験番号6002番、ノリが良いリスナーは歓迎するぜー!!」

 

高いテンションで説明を始めたプレゼントマイクに耳を傾けながら、配られたプリントを見る。

実技試験は筆記試験と同様に幾つかのグループに分けられ、都市を模した演習場で行われるらしい。

生徒はそれぞれアイテムなどを持ち込み可能で、配置されたロボットにはそれぞれ難易度によってポイントが割り振られており、制限時間以内に稼いだポイントの数が合否に関わってくるそうだ。

途中、眼鏡の男子が記載されていないロボットに対して質問をしたが、それは倒しても恩恵のないお邪魔虫ポジションのロボットらしく、無視するか逃げるのがオススメだと言う。

其処まで聞いて、泥花は卒業生であり現役のプロヒーローでもある浮空の言葉を思い出す。

 

『入試の実技試験? そりゃあれだ。大量のロボットを倒してくんだけどな。あれって倒すだけじゃポイント稼げねぇんだよ』

 

『それはどういう意味だ?』

 

『これ以上は言えねぇよ。けど“ヒーロー”ってものが何か考えときゃ自ずと答えは出るだろうさ』

 

「……ヒーローとはなにか、か」

 

先輩にあたる彼女の言葉を脳内で反芻しながら、実技試験の会場へと泥花は向かった。

だだ広い演習場の入り口には集められた多くの生徒が犇めいて、集中している者もいれば、緊張で固まっていたり肩の力を抜いてリラックスする姿もあった。

泥花は準備の為に地面に手を当てて、アスファルト越しの友人たちに意識を向ける。

 

『ハイスタート』

 

カウントダウンもなしにプレザントマイクの合図が耳に入った瞬間、泥花は個性を発動させてゴーレムを起動させた。

 

「──沃土よ巌よ、立ち上がれ」

 

演習場の至るところで、アスファルトを突き破って岩のゴーレムが出現する。

彼らは至近のロボットに攻撃を加え、各所でロボットとゴーレムが殴り合う。

土と石塊のゴーレムは殴られ壊されても即座に再生が可能だが、ヴィランロボットはそうもいかない。

耐久力と再生力を兼ね備えたゴーレムが、次第にヴィランロボットを次々と破壊していく。

他の受験生が今更ながらに標的を探して走り出す中、泥花は悠々と歩きだす。

今の泥花が一度に造り出せるゴーレムは最大で五体。意識を割いたゴーレム越しに倒したロボットのポイントを数えていく。

 

「これで48Pか」

 

他の受験生に危害を加えないようにゴーレムを制御しつつ、他の受験生を吹き飛ばしながら近づいてきたロボットを、持ち込んだスレッジハンマーで粉砕する。

ゴーレムを操作している間、泥花は他のことに個性を使うことができない弱点がある。

そのことを浮空に指摘されて以来、彼女は護身術を学ぶと同時に、武器の携帯を心がけていた。

泥花は個性の影響なのかは不明だが、常人よりも筋肉の密度があるらしく、女性らしい見た目とは裏腹に相当なパワーを持つ。

視界の端に怪我をした他の受験生がロボットを襲われているのを見つけ、泥花はロボットをハンマーを振りかぶって殴り飛ばす。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ああ……」

 

「擦りむいているな。これで傷口を洗うと良い」

 

携帯していた水の入ったペットボトルを渡し、数を減らしたロボットを探しに行く。

他の受験生が苦戦しているロボットを殴り飛ばしながら、怪我をして動けない受験生は近くのゴーレムに運ばせる。

そうやってポイントを稼いでいくなか、試験終了まであと少しという段階で、丁度60P目のロボットを破壊したゴーレムの一体が、突然の攻撃に破壊されたのを知覚した。

その方向を見れば、演習場の建物よりも遥かに巨大なロボットが、ビル郡を破壊しながら立ち上がるのが見えた。

 

「あれがお邪魔虫か」

 

周りを見れば、他の受験生は巨大なロボットから距離を取ろうと我先に逃げ始めている。

残っていたゴーレムを自分の側に退かせていると、視界の端、逃げる途中で躓く女子の姿が見えた。

他の受験生は逃げるのに必死らしく、躓いた少女も足が捻ったのだろうか立てずにいる。

今動けるのは自分だけらしい。そう気付いた泥花の行動は早かった。

直ぐに残っていた四体のゴーレムたちを解除し、意識を一つに集中させる。

 

「──友人たちよ、連綿たる山々となれ」

 

アスファルトの地面を割いて、大きさにして巨大な0Pヴィランの半分ぐらいだろうか、それでも見上げるほどの巨大な岩の巨人が、直下立つ岩山のように現れる。

 

「巨人よ、私の声に応えろ!」

 

巨人は大きく右腕を振りかぶり、0Pに殴りかかる。

装甲をひしゃげさせる程の質量の打撃に思わずよろめいた0Pだったが、即座に持ち直してカウンターを巨人の鳩尾に叩き込む。

鋼鉄の拳が鋭く巨人の腹を抉り、巨人の体幹が僅かに崩れる。

 

「まだだ、耐えてくれ友人よ」

 

巨人に意識を割きながら躓いた少女を背負い、遠く離れるように駆け出す。

少女を他の逃げた受験生と同じ場所に連れていくと、丁度同じタイミングで0Pの拳が再生中の巨人の腹を貫いた。

 

「縫い止めて縛り付け、そして叩き潰せ!」

 

ゴーレムの再生速度を上げて、0Pの拳を腹の中に飲み込む。

片腕を呑み込まれて身動きの出来なくなった0Pに、ゴーレムが両腕を合わせて振りかぶり、それを勢いよく頭頂部に叩きつけた。

重力を活かした大質量の衝撃に装甲が耐えられず、0Pの頭部は胴体部にめり込んで沈黙する。

それと同時に、試験の終了を告げるアナウンスが響き渡り、残っていたロボットも悉くが沈黙した。

 

「終わったか……」

 

個性を解除して役目を終えた巨人を土に還した泥花は、雄英の養護教諭だという現役ヒーローのリカバリーガールからハリボーを貰いつつ、躓いて怪我をした少女のことを伝えた。

特に怪我もなかった泥花はタオルで汗を拭きながらアナウンスに促され、試験会場を後にした。




躓いた少女は名無しのモブです。
また、泥花と同じ会場にいた原作キャラはA組の砂藤や瀬呂に、B組の小森や凡戸あたりが該当します。

※泥花の個性について
意識を割いてゴーレムを操作することができる『泥岩操作』ですが、泥花の脳で複数体のゴーレムを操作する必要があるため、最大で五体を出せるものの、簡易な「敵を倒せ」「他の受験生を傷つけるな」といった命令を漠然と出すのが限界です。
その代わり、強力な一体のみに絞れば具体的且つ精密な操作も可能になります。
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