泥岩少女のヒーローアカデミア   作:中澤織部

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へ、へへへ……一日でハロウィン任務終わらせたぜ。
いうて宇宙ギガン使わないんだけどね、ぶっちゃけ本当に欲しかったのはマフティーカボチャ頭。


岩繰泥花と個性把握テスト

──成績最下位の者は見込み無しとして除籍する。

 

相澤の言葉に反論する声もあったが、無情にも個性把握テストは始まった。

皆が己の個性をなるべく活かして記録を伸ばそうと模索するなか、泥花は己の個性で可能な種目と、そうでないものを早期に分けた。これは無理に個性を使って記録を落とすよりかは、素の身体能力の方を活かした方が良いと判断したからだ。

先ずは立ち幅跳びだが、これは跳ぶ瞬間に個性を使って地面を競り上げ、勢いに乗って距離を延ばした。続く50M走はゴーレムの足の遅さを考え、そのまま走ることにした。

握力は素で60Kgを出せはしたのだが、クラスで一番身長が高い八百万百が万力を使い出した。果たしてそれはいいのだろうかと相澤への視線が集中したが、彼曰く「個性で生み出したからOK」だそうだ。

反復横跳びは左右にゴーレムを置いて交互に押し引きし貰ったのだが、一番背の低い峰田が同じ考えをしていたようで、泥花よりも高い評価を出していた。

 

「左右に揺れる度にバルンバルンって……」

 

「すっげー揺れ方してたな……」

 

峰田と共に金髪で軽薄そうな印象の上鳴という生徒が泥花を見て共感しあっていたが、彼女にはそれが何を理由にしているのか解らなかった。

幾つかは個性を使って記録を延ばせはしたものの、上体起こしや長座体前屈などは屋内で行ったため、個性を活かせず平均値よりも高めの数値に留まった。

続く持久走は50M走と同様、個性を使うよりは素で走った方が良いと判断し、そのまま走った。バイクは流石にズルいのではなかろうか。

 

 

……

 

 

ちょっとした出来事があったのはハンドボール投げの時だった。これに関しては、泥花は最初のデモンストレーションがてら投げ終えているために免除となった。

少し地味めの朗らかな少女──麗日お茶子が∞という大記録を出したりするのを視界の端に捉えながら、暇を持て余した泥花は何となしに個性で造り出した小さな友人と戯れていた。

 

「なあ、ちょっといいか?」

 

泥花の背に、相澤には聞こえないぐらいの小声で声がかけられた。

視線を向けると、ガタイのいいタラコ唇が特徴的な少年がいた。

種目ごとに砂糖を口に含んでいた彼は、確か砂藤力道という名前だった筈だ。

 

「何だ?」

 

「……それって個性で作ってんだよな?」

 

砂藤の指先と視線は、泥花の指にじゃれつくゴーレムに向かっていた。

 

「うん?ああ、この土か……彼はささやき、踊る。私の友人だ」

 

ゴーレムに優しい表情を向ける泥花に、今度はひょろりとした体つきの少年が声をかけてきた。

肘からテープのようなものを出していた彼は、瀬呂範太と名乗った。

 

「俺も砂藤も入試の時に同じ会場だったんだけどよ。あのデカいのもそうなのか?」

 

デカいの、と聞いて泥花は実技試験で0Pヴィランを相手にした時に造り出した巨大なゴーレムのことを思い出した。

静かに頷くと、瀬呂と砂藤は得心がいったかのような表情をした。

 

「ところでよ、何で“友人”って呼んでんだ?」

 

ちょっとした問いかけに、泥花は直ぐに答えを返せなかった。

泥花にとって、“友人”とは泥土や岩石そのものを指している。しかし、彼女がそれらと直接的な交流をするためには、個性の特性状、自分の意識を割いて特定の意思を持った形にする必要があった。

自分の意識が介在するそれは、“友人”というよりも分割した自分と言えなくはないだろうか?

普段から何気なくやっていることだけに、どう説明すればいいのか解らず、顎に手を当てて考え始める。

 

「──そう言えば、何故だろう」

 

何処か頭の奥でチクりと痛みが走ったのも束の間、彼女の思考は中断された。

 

「SMASH────!!」

 

泥花にとって見覚えのある癖っ毛の少年──緑谷出久が、個性を発動してボールを投げたのだ。

個性を使用した測定としてはごく普通の光景のようでありながら、ただ一点、彼の指の一つが酷く傷ついているのを泥花は見た。

 

「どーいうことだ、ワケを言えデクてめぇ!」

 

そんな彼に果たして何を思ったのか、爆発の個性を持ったイガグリのような頭髪の少年──爆豪勝己が掴みかかろうとした。しかし、相澤が首元に巻いていた布と個性を使って彼を取り押さえる。

この時になって、泥花は相澤がイレイザーヘッドと呼ばれるヒーローだということに気がついた。

もっとも、クラスメイトの大半はイレイザーヘッドというヒーローの存在すら知らなかったようだが。

 

 

……

 

 

全ての種目を測定し終え、総合成績を一括して開示することになったのだが、ここで相澤が一言発した。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

「!?」

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

「「「はーーーー!!!???」」」

 

唐突なことに生徒たちは騒然となる。

指を損傷までした緑谷に至っては、原型すらわからないレベルの名状しがたい表情になっている。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない……よく考えればわかりますわ……」

 

八百万が半ば呆れたようなように言うが、泥花には相澤の目が嘘を吐いてる者の目つきには到底見えなかった。

 

(恐らく本気で除籍を考えていた。でも、だとしたら何で考えを変えた?)

 

泥花は緑谷の方を見た。彼は指の怪我を治すようにと相澤から保健室利用書を貰っていた。

 

「緑谷出久……か」

 

保健室に小走りで向かっていく彼の背中を目で追いながら、泥花は他のクラスメイトとともに教室に戻った。

 

 

……

 

 

初日が終了し、下校時間。

フラワースコアの新アルバムの続きを聞きながら校門に向かっていた泥花は、校門の前でクラスメイトである飯田天哉と歩く緑谷の姿を見かけた。

そのまま通り過ぎようかとも考えたが、しかし、ふと個性把握テストの際に彼の指の怪我を思い出し、声をかけることにした。

 

「緑谷、指は大丈夫か?」

 

「あっ、岩繰さん。うん、リカバリーガールに治してもらったから……」

 

飯田には既に話したようだが、リカバリーガールの個性は人の治癒力を活性化させるものらしく、大きな怪我を繰り返すと消耗して死ぬ可能性が上がるデメリットがあるらしい。

故に、今の緑谷は治癒力を活性化させた影響でかなり疲れているそうだ。

 

「しかし相澤先生にはやられたよ。教師が嘘で鼓舞するとは……。」

 

顎に手を当てて唸る飯田。彼は見た目にそぐわずかなり真面目なようだった。

途中、後ろから後を追うように麗日お茶子が加わった。

彼女は、個性把握テストの時に爆豪が緑谷のことを『デク』と呼んだことから、彼の名前を『緑谷デク』と勘違いしていた。

 

「あの……本名は出久で、デクはかっちゃんが馬鹿にして……」

 

「蔑称か」

 

「小さい頃によくあるやつだな」

 

泥花はうんうんと頷く。彼女も小さい頃は名前と個性のせいで悪ガキから『泥ん子』だの『泥女』だのと呼ばれていた。

二度とそう呼ばないように彼らを『教育』したのが最早懐かしいとすら思えた。

 

「でも『デク』って『頑張れ!』って感じで好きだ私」

 

「デクです」

 

天然なのか悪意なく笑顔で言ってのける麗日に、緑谷は顔を真っ赤にして『デク』だと名乗ってしまった。

 

「緑谷くん浅いぞ!? 蔑称なんだろう!?」

 

「コペルニクス的転回……」

 

「単純すぎないか? 緑谷」

 

「コペ?」

 

他愛もない会話をして、四人は駅まで向かう。

そこからは方向の違う飯田と麗日と別れ、泥花と緑谷は同じホームにいた。

 

「あの、岩繰さん」

 

不意に、緑谷が話しかけてきた。

どうしたのかと思い視線を向けると、彼は鞄から焦げ付いた見覚えのあるノートを取り出した。

 

「こ、これのことで、もう一度お礼を言いたくて……」

 

「いや、気にしなくてもいい。……ところで、中身は無事だったのか?」

 

「あ、それは大丈夫。全部頭の中に入ってるから、後で別のノートに写したんだ」

 

「……そ、そうか」

 

初日の最後になって、泥花は少しだけ緑谷に引いた。




・補足

個性把握テストにおける泥花の成績について。
素の身体能力が高く、個性のサポートもあって総合成績は二位。けれど本人は少しだけ不満。創造はズルいよ創造は。
また、泥花は緑谷や爆豪と同じ中学出身なのですが、緑谷が無個性であったことは知りもしません。だってクラス別だっし。
爆豪の素行の悪さは少しだけ知っている。
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