遊☆戯☆王デュエルモンスターズ【Highlander・Twelve】   作:CO2

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Episode2 Apprehension

 

「これでよし…。とりあえず、これで救難信号が発信され始めた。あとはちゃんと拾ってくれる者がいればいいのだが……」

「だけど、よくこんな物を操作できたね。」

「私はこういうのに関して強くてな、昔から直感で理解できていた。…頭より身体が優先して動くような人間だからな、私は。」

 

 王流(おうる)は発信装置の操作を終えて立ち上がり、恥ずかしげに苦笑しながらそう言った。

 どうやら彼女は感性で動く人間らしい。もしかしたらアカデミアでの行動もそうだったのだとしたら、彼女は目立ちたがりと言うより、天然なのだろうか?

 まあ、どちらにせよ、この一瞬で僕の彼女に対しての印象が変わったのは間違いない。

 ……それはさて置き、第一目標は達成できたが、次はどう行動するかだね。

 

「僕はとりあえず、居なくなった船員を探そうと思うんだけど、王流、君はどうする?」

「うむ、私もオマエと同じ事を考えていたところだ。共に()こう」

「…あ、うん…」

 

 なんだその『ともにゆこう』って。やっぱり王流って宝塚出身?じゃないとしても演劇部か何かなの?

そんな視線を飛ばしていると怪訝な表情をされたので視線を外す。

 ともかく僕たちは共に操舵室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュエル・アカデミアの定期船の船首部甲板。そこにはボートに乗っていた少年、深森握徒(しんもりあくと)がいた。彼が裂け目を(くぐ)ってから、既に約30分が経過していた。

 彼は拳銃型のフレームとそこから(ボード)が伸びたガンマンズディスクを左腕に装着している。

 ガンマンズディスクには『次元の裂け目』と『異次元の指名者』のカードが挿さっている。

 そのため、握徒(あくと)がボートを着けた場所付近には、裂け目が現出したままだ。だから彼はいつでも元の空間に戻る事ができる。そして彼は船首部の甲板から甲板全体を見渡すが…

 

「…生徒――、卒業生は見かけるが、船員がいない…?」

 

 通常は船員が交代性で見回りを行っているが、今は船員を全く見かけない。何かしらの異常が発生していたのは明白だったのだが、握徒にこの状況は予測できていなかった。

 ともかくまずは更なる状況の把握が必要。そう感じた握徒は、まず船首部甲板から階段を降り、操舵室へつ続く扉を開けた。だが…

 

「…………」

 

 操舵室にもやはり影一つ無かった。しかし握徒は操舵席に一つの違和感を見つける。何かが赤い点滅を発しているのだ。

 近づくと、握徒はその光の正体をすぐに理解した。光っていたのは、操舵席のパネルに設置された救難信号発生装置だった。卒業生の誰かが異変を察知して救難信号を出したのだろう。操作はどうやったのかは分からんが。

 

「だが意味が無い……」

 

 そう、握徒の考えによればここは異次元。 つまり、救難信号を発生させようと、それを拾ってくれる船舶も恐らく存在しない。可能性が無いわけではないが確立は低い。なにしろ自分を含む船の乗組員には、ここは未開の空間だ、異次元なのだから。

 まあ、俺のこの話を信じる者は皆無に近いだろうが。

 しかし、この船の異次元への移動は、一体誰の手によるものなのか。彼の自らの知識に依れば、自然に起きたという事はまず無い。そういうものだとしか言いようが無いが。

 考えられるのは、何処かの誰かが何か膨大な力を使用した。それによる波がたまたま、または誰かが意図的にこの海域の空間に異次元への扉を開けた、そう考えるのが妥当。

 

 まあ、もしそうだとしても今の俺にその『膨大な力』がいったい何なのかを調べる術は無い。まずはこの船を元の空間に戻す事だ。

 

 握徒(あくと)はガンマンズディスクのリボルバーの部分に挿し込まれた自身のデッキに手を掛け

 

「ドロー!」

 

 引き抜き、握徒はそのカードを確認する。そして握徒は、ディスクの(ボード)の差込口の一つに引き抜いたカードを挿し込む。その後、一度構えを解いた握徒は、再びディスクに手を掛け、スイッチを一つ押し込む。そして彼は宣言する。

 

「罠カード発動!」

 

 だが彼の宣言は遮られる。

 

「待ってもらおうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕、真田遊香(さなだゆうか)は、船内で卒業式以来の再会をした月河王流(つきかわおうる)と共に、船員を探しに船内を回っていた。

 この船の内部はそんなに広くない。甲板に存在する操舵室から最深部である機関室へ向かうのにそう時間は掛からない。そして、機関室と操舵室以外の場所は船員個別の部屋などしか存在しない。だから僕たちが操舵室から順に個室の扉をノックして行きつつ機関室へとたどり着き、甲板まで戻ってくるのに5分と掛からないのだ。

 だから僕たちは、5分も掛けずにこの船を一周してきた。

 そうして甲板に戻ってきた僕たちを待っていたのは、僕や王流(おうる)の同級生の青年だった。

 すなわち彼も、僕たちと同じでデュエルアカデミアの卒業生だということだ。僕の記憶によれば、彼の名は深森握徒(しんもりあくと)。深き森を握る彼は、僕たちの級を代表する人物と言える。

 カイザーの再来と呼ばれる彼は、しかしカイザーとは違い、在校中は敗北どころか引き分けすらしなかった。首席卒業は僕が取ったのだが、それが霞むほど彼のアカデミアでの存在価値は大きかった。

 そんな彼が、今、僕たちと――いや、王流(おうる)と相対していた。

 

「オマエ、深森握徒(しんもりあくと)だろう?そこで何をしているんだ?んん?」

 

 王流の問いに対し、深森は口すら開かない。見れば、彼の左腕には独特の形状をした決闘盤(デュエルディスク)が装着されていた。彼は在学時にもそれを使用していたが、今、対戦相手は居ないようだ。

 ……え、てことは一人決闘(ひとりデュエル)

 いや、まあ僕も新しくデッキを作成した時とかよく一人決闘(ひとりデュエル)するけど……、屋外で、しかも決闘盤(デュエルディスク)付けてするのはちょっと引くというか……。

 うん、あれだね。カラオケボックスで力を込めて歌うのは違和感無いけど、道端で歩きながら全力で歌うのは変なのと一緒だね。…………この例えじゃあ分かりにくいか。

 まあともかく、彼が対戦相手を置かずに(ディスク)を起動させているのは明らかに不自然。

 一般人には彼が行っている事を理解できないだろう。っていうか僕ができてない。何してんの?

 

「……正直に言うなら、救援だろうか。」

「救援?」

「ああ、救援。お前達を助けに来た。」

「ふむ、救援か。安心しろ真田、彼はどうやら私達を助けに来たらしいぞ」

「えっ!?」

 

 え、し、信じちゃううんですか王流(おうる)さん!?っていうか何なのこの子?大らか過ぎるよ王流さん?

 っていうか何か名言らしきものできちゃったよ、「大らか過ぎるよ王流さん」って。

 それはともかくとして、本当に深森を信じて良いんだろうか?今のところ、彼から敵意は感じられないが、何をしようとしていたのか怪しい。第一、カードと決闘盤(でゅえるでぃすく)でどうやって僕たちを――いや、この船を助けるというのか?

 僕のこの思いを代弁するかのように王流が彼に問う。

 

「しかし、これから私達卒業生を救おうとしているようには見えないな。オマエは今、一人で決闘(デュエル)なんてして遊んでいるじゃないか。それに、どうやって私達を救おうというんだ?」

 

決闘(デュエル)をしているわけではない。」

「……オマエ、決闘盤(デュエルディスク)決闘(デュエル)以外の何をするって言うんだ?」

 

 王流のその問いに、深森は口を開こうとする同時、船尾付近の甲板で喧騒が巻き起こった。

 

「うおお?!なんだなんだ…!?」

「何か黒いのが浮かんでるわ!」

「ありゃ、確か次元の裂け目だよな!」

 

「次元の裂け目…?」

 

 疑問符を浮かべる僕と王流に、深森は更に答える。

 

「説明する手間が一つ省けたな。あれは俺が出したものだ」

「オマエが出したとは、ソリッドビジョンで…?」

「いいや、違う」

「なんだと?」

 

 見たところ、現出している黒いものは、次元の裂け目のカードのイラストに、空を背景に描かれているものと同じだった。アカデミアでも決闘(デュエル)中に現れているのを何度か見たことがあるが、元々、カードのイラストが現実に現れるのは決闘盤(デュエルディスク)によるソリッドビジョンシステムによるものだ。

 それ以外に現出させる技術はこの世界にはまだ存在しない。なのに、深森はソリッドビジョンによるものではないと言う。深森と王流の台詞は続く。

 

「あれはソリッドビジョンによって現れたものではない」

「……フン、馬鹿を言うな。ソリッドビジョン以外のシステムを開発しているという話は聞いた事が無い。

それにカードイラストの現出システムであるソリッドビジョンシステムは、海馬コーポレーションが特許を取得しているはずだ。あれがソリッドビジョンでないなら何だというのだ?」

「現実に、実際に現れているものだ」

「……オマエにそんなことができるというのか?何を世迷い言を……」

 

 王流(おうる)の言うとおりだ。カードのイラストが現実に現れるなんて。もしそうだというなら、あの黒い裂け目は異世界に通じているという事になる。そんな事はありえない

 と、考えたところで僕は思い出した。そうだ、ありえないなんて無い。この世界は不思議に満ちた世界。『不思議な力で何かが起こる』。それが起こりうる世界なんだ。僕の前世とは違う。

 何処でも起こりうるが、起こしうるわけではないだけ。そういう意味で、王流は深森の言動を世迷い言と称しているのだ。だから、僕は深森にこう問う。

 

「深森君」

「やっと口を開いたか真田遊香。何だ?」

「真田…?」

「本当にそんなことができると言うなら、証拠を見せてくれるかい?」

 

 その言葉に2人はそれぞれ違う反応を示す。

 王流は、ほう?というように目を見開き、深森は眉間の一つも動かさずに決闘盤(デュエルディスク)を装着した左腕を胸の前に構えて、一言だけ答えた。「いいだろう」と――――。

 

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