遊☆戯☆王デュエルモンスターズ【Highlander・Twelve】   作:CO2

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Episode3 Preface

 証拠を見せろという僕の言葉に、深森握徒(しんもりあくと)は応えた。

 彼は無言で、掲げた左腕の決闘盤(デュエルディスク)のボタンを押し込み、そしてこう宣言した。

 

「トラップカード発動!」

「なに?」

 

 王流が怪訝な表情で疑問を発したと同時、彼の言葉に呼応し、息を吹き返したかのように地面が振動を始める。

 いや、地面ではない。船だ、船自体が動いている。僕たちが乗る船自体が揺れているのだ。

 その現象に、甲板上に居る者は騒ぎ出し、更には船の異常な現象に危機感を抱いてか船内から出てくる者もいた。そんな中でも船は揺れ続けるが、やがてその振動は動きを止めた。

 

「……深森、いったい」

 

 これは何だ…?と言葉を続けようとした僕の言葉は遮られた。

 船は再び、しかし先ほどとは違う種類の振動に襲われ、僕は不思議な感覚に襲われる。…これは、浮遊感…?

 そう、まるでエレベーターで上階へ昇り始める瞬間に感じるような浮遊感が感じられたのだ。

 そして僕はそれに気付く。…海面が下降を始めたのだ。いや、海が下がっているのではない、この船自体が、巨人の指で摘み上げられるようにして上昇しているのだ。

 今度こそ、僕は深森に対し疑問を投げかける。

 

「一体何をしたんだ?」

「……罠カードを発動した。これをな」

 

 そう言って彼が決闘盤(デュエルディスク)から引き抜いたのは、罠カードを表す梅色の

カード『異次元からの帰還』。その効果はまさしく異次元からの帰還。ライフポイントを半分払って発動、ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚するという効果を持っている。このカードは除外されたカードを置く場を異次元に例えているわけだ。

 そして深森は、自らはカードの現実化を行えると言う。つまり、『異次元からの帰還』を現実化しようというのだ。

 

「俺はこの力によって、この船を元の空間へ戻す」

 

 元の空間…?待て、おかしい、彼はいったい何を言っているんだ?

 その新たなる疑問を口にしたのは、僕ではなく王流(おうる)だった。

 

「元の空間とは、どういうことだ?」

「そのままの意味だ。ここは異次元、お前達がいた世界とは違う世界だ。それに、元の世界では既に半日が経過している。いまごろ真夜中だろうな。」

「そんな馬鹿なことが………」

 

 2人がそんな問答を続ける間にも船は動き、反転し、やがて進路を定め始める。

 船首が向いているすぐ先には次元の裂け目がある。そしてやがて、船はそこ向けて進み始めた。裂け目はそれ従順するように、まるで無理矢理こじ開けるかのように範囲を広げていく。

 5秒も経たぬうちに船首部分が裂け目の中に潜り込み、やがて僕達にも裂け目が迫り、そのまま吸い込んでいった。暗闇に投げ込まれるように、僕は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海の上。見渡しても島影一つ見えない海の上に、一つのコテージが存在した。

 そのベランダ部で、髪の右側を深紅に、左側を深緑に染めた少女が、双眼鏡で北の方角を見つめながらこう言った。

 

「……面白くないなあ。」

 

 その一言に、髪の上側を蒼に、下側を金に染めた少女が応える。

 

「……エミル、面白そうだから連れてきたわけじゃありませんわよ。まあ、あのように早々に帰られては確かにそういう意見にも頷けます。そういう意味では同意見ですわ」

 

 その言葉に、少なからず機嫌を良くした(あか)と緑の少女、エミルは双眼鏡から視線を外して蒼と金の少女に顔を向ける。

 

「そうよ、ルミエの言うとおりよ。あいつら帰るの速過ぎなのよ。せっかく私達のお家に招待してあげようとしたのにね。」

(わたくし)が見たところ、誰かが介入してきたようですわよ。先ほどのあれは、恐らく守護精霊による現実化の術だと思いますわ」

「ルミエ、そういうの詳しいもんね。私はカードの精霊とかさっぱり」

「第一、(わたくし)と違ってエミルは精霊が見えないじゃありませんの」

「そうなんだよねえ……」

 

 その言葉を最後にエミルは再び機嫌を沈めてしまう。

 彼女の機嫌を浮かせるにはどうしたものかとエミルを見つめるルミエだが、精霊の可視不可視は生まれつきのものなのでどうしようもないものだと諦める事にする。

 ならばと、ルミエは話題を変えることに決めた。

 

「でしたらエミル、次は私達が向こうに遊びに行きましょう?そうすれば、きっと面白くなりますわよ」

「あ、そっれいい~!」

 

 一瞬で機嫌を復活させたエミルの様子を見てルミエは微笑む。

 妹エミルと姉ルミエは双子で、いつも2人きり。2人で居ると楽しい。2人で話しているだけで楽しい。2人で決闘(デュエル)をしているのが楽しい。

 2人は楽しい事が好きだ。でも外の世界に行く気は無かった。

 彼女達は母と姉妹だけで暮らすので一番楽しかったし、何より彼女達は外の世界を知らない。

 人間というのは分からないものに恐怖するものだ。赤子を除けば、人間は皆そうだ。だからエミルもルミエも、外の世界というものに興味を示していなかった。

 だが突如、彼女達にとって人生最初の転機は訪れた。

 信愛する母が、外の世界に行ってきたというのだ。母はここに帰ってきた時こう言った。「凄く楽しかったわ」。

 2人はすぐにその心境を変えた。そして彼女達は考え、お互い話し合った。

 そんなに楽しい世界だというなら、私達も行ってみようではないか。 何より、信愛する母が楽しかったと言っているのだ。楽しいもの好きの私達が行かないでどうする。

 結論はすぐに出た。あとはその日程だ。

 するとそばで2人の様子を見ていた母が言った。「いきなり行くのは気が早いわ。まずはお友達をここに招待しなきゃ。」

 母の意図は分からなかったが、二人はそういうものなのだと結論付け、母の意向に従う事にした。

 

「今回の招待は失敗に終わりましたけど、招待はしたのですからきっとお母様も許してくださいますわ」

「よ~し!そうと決まれば、いつにしよっか!?」

(わたくし)、1日以上も待っていられませんわ。明日早朝に出発いたしましょう」

「やった~!私もそう思ってたんだ~!」

 

 やはり(わたくし)達は気が合いますわ。と、そうルミエは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕達卒業生が、異次元空間へと遭難してから、約3日が経過しようとしていた。

 僕は2日眠って、病院のベッドにて目を覚ました。その時、看病してくれていた王流(おうる)が言うには、異次元の裂け目を潜った(のち)、僕を含む数十名が意識を失っていたそうだ。

 ちなみに、僕が一番最後に目を覚ましたらしい。

 深森に聞いたそうだが、気絶したのは何でも『次元酔い』というものなのだそうだ。ああいった方法で次元の境目を潜ると『次元酔い』によって気絶してしまう事があるとか。

 俄かには信じがたいが、確かに深森の言う事は正しかったらしい。

 何故かと言えば、他でもない王流(おうる)が彼の言っていた事を今では信用していたからだ。実際、聞けば裂け目を潜った先の時刻は午前3時だったそうだ。僕に色々話した後、王流は帰って行った。

 僕はこのまま1日だけ様子を見て、問題が無ければ退院だそうだ。そして今は正午。退院は翌日だね。

 

「はあ……。しかし……」

 

 いや、しかし……、暇である。何もする事がない。母は昨日、連絡を受けて着替えを持ってきてくれていたみたいだが、ゲームや本などの娯楽品などは持ってきてはくれなかった。目覚めたらすぐ退院だと思っていたらしい。

 医者は数十名が同時に運び込まれていたにもかかわらず、単なる疲労による疲れと診断したらしく、そのせいで誰も見舞いに来る事は無かった。一人を除けば……。

 

「やあ、待たせたな真田」

 

 病室の扉をガラガラピシャン!!と開けて入ってきたのは、他でもない王流だった。

 もう少し静かに開けてもらえないだろうか……。そんな視線を送っていると当然の如く

 

「……?」

 

 と、キョトンとされたので諦めるように視線を外す。

 王流(おうる)って、ホントに感性だけで動いてるんじゃなかろうか。

 何と言うか、人間の本能に逆らわず動いているような感じだ。口調と違って行動は野性的だし。

 この時点で、僕の彼女に対する第一印象(イメージ)は、もはや崩れ去ってしまっていた。

 

「ふむ、もう疲れは取れているようだな。しかし、どうやら暇みたいだな?

そろそろ1日中ベッドの上の生活は飽き飽きしている頃か。」

 

 だのにこの観察力である。これも彼女の感性の最たるものか。

 

「よし、ならば決闘(デュエル)でもするか」

「え、い、いまから?」

「そうだ、今からだ。オマエ卒業決闘(そつぎょうデュエル)以降は決闘(デュエル)してないだろう?そろそろ腕が鈍るぞ」

 

 確かに王流の言う通りだな。丁度よく、この病院には患者の娯楽用に衝撃効果無しのテーブルデュエルスペースが設けてあるため、可能ではある。そうと決まれば。

 

「分かった、デュエルスペースに行こう」

「ふむ、2回にあった設置スペースだな。心得た。」

 

 王流のこの口調にも慣れたな。………流石に『心得た』はないと思うけど―――。

 

 

 

 

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