遊☆戯☆王デュエルモンスターズ【Highlander・Twelve】   作:CO2

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一応この小説は五龍の世界観を踏襲しています。


―第一章― 龍と獣
Episode1 Rejected from peace


 

 4階の病室から、エレベーターを使って2階へと降り、デュエルスペースへと移動する。

 デュエルスペースは、5m四方の広い空間を挟んでテーブル型のデュエルデバイスが、2メートル四方のスペースを挟んで設置されていた。

 

「デッキはきちんと用意しているな、遊香」

 

「まあ、一応。」

 

 ホントに「一応」としか言えない。今、僕が持っているのは、入院前に持っていたデッキ数個のみ。

 もちろんアカデミアでずっと使用してきた以上、このデッキが弱いわけではないのだが、残りのカードは船に乗る前に郵送で実家へ届けてしまったため、細かい調整が一切行えない。

 まあ、これから行うのは気分転換に行うデュエルだ。

 そこまで気負う必要も無いんだけど、どうせなら勝ちたい。

 気付けば、既にデュエルスペースにたどり着いていたようだ、王流は既に準備を終えて片方のデュエルテーブルで僕の準備を待っていた。

 

「どうした?ボーっとしていたようだが…?」

 

 初対面レベルと言っていい関係にも関わらず心配そうに見つめてくれる王流に思わず顔が綻ぶ。

 ……不審に思われるわけにもいかないので直ぐに顔面を矯正して準備を始める。

 テーブルの凹みの部分にデッキをセットすると、テーブルから光の筋がフィールドへと流れ、モーメントシステムの特徴である淡い虹色の光がフィールド全体を包み、パネルが起動して文字が表示される。

 

  『Please enter your Duelist name』

 

 あなたのデュエリスト名を入力しなさい?

 えっと、ローマ字入力か。『sanada yuka』と。

 

「よし、準備はいいな」

 

「うん」

 

「「デュエル!」」

 

 デュエルテーブルが指定した先攻は僕だ。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 勢い良くカードを引き抜く。王流は僕の様子を見て口角を上げニヤリと笑う。

「そうだ、楽しめ」と、その瞳は言っているようだ。僕も彼女に瞳で答える。「ああ、もちろん」と。

 

「魔法カード、増援を発動!

 デッキの戦士族モンスター、エヴォルテクター・シュバリエを手札に加える

 そしてカードを2枚伏せ、エヴォルテクター・シュバリエを召喚!」

 

 紅の鎧を纏う騎士が現れる。

 左腕には炎を纏い、右手には剣を掲げ、その切っ先を王流へと向けている。

 

「ターンエンドだ」

 

 遊香LP4000

 モンスター:【エヴォルテクター・シュバリエ/攻1900】

 魔法・罠:伏せ2枚

 手札:3枚

 

 ターンは王流に移る。王流は僕のターン終了を確認すると、自身のターンの宣言と同時、テーブルに置いたカードの束から勢い良くカードを引き抜く。

 

「私のターン、ドロー!

 私はコア濃度圧縮を発動!手札のコアキメイルの鋼核の公開、及びコアキメイルと名のついたモンスター1体をコストとし、カードを2枚ドローする。

 私はコアキメイル・ガーディアンを捨て、2枚ドロー!」

 

 いきなりドロー補助を行うか。手札から捨てたのが岩石族であるコアキメイル・ガーディアンだということは、手札にそれ以外の岩石族が存在していなかったのだろうか。

 

 王流が用いるカードは「コアキメイル」。

 コアキメイルと名のついたモンスターは、エンドフェイズ毎にそれぞれが指定する種のカードを手札から公開するか、「コアキメイルの鋼核」というカードを墓地へ捨てなければ持続させる事ができず破壊されてしまう共通の効果を持つ。

 例えば、先ほどのコアキメイル・ガーディアンを持続させるには岩石族モンスターを手札から公開する必要がある。そのデメリットの大きさから敬遠される事も多いカードシリーズだが、そのデメリットと引き換えにコアキメイルの能力は総じて高い。まさしくハイリスク・ハイリターン。

 

「よし、D.D.アサイラントを召喚する」

 

 王流の場に現れるのは、|大鉈(おおなた)を構えたー鎧の戦士、D.D.アサイラント。

 ちなみに『D.D.』とはDifferent Dimensionの略で、異次元という意味だ。

 アサイラントはAssailantと訳し、加害者を意味する。

 つまりD.D.アサイラントとは、異次元の加害者を意味する。

 うーん、異次元出身の殺人鬼ってことだろうか?

 

 D.D.アサイラントは戦闘で破壊された時、その時の相手モンスターを除外するという、相対的に防御能力の高い効果を持つモンスターだ。

 恐らくこの除外効果は名前からきているんだろう。あるいは効果から名付けられたモンスターなのか。

 

 本来、王流のデッキはコアキメイルモンスターで占められているが、D.D.アサイラントはコアキメイルではない。

 だがコアキメイルには、持続に戦士族モンスターを必要とするものも存在する。

 その事から、戦士族であり性能の高いD.D.アサイラントが採用されているということだろう。

 

「バトルフェイズに移る。D.D.アサイラントでエヴォルテクター・シュバリエを攻撃だ!」

 

 大鉈を構えた女戦士が焔の騎士に迫る。

 この場合、戦闘結果により王流は200ポイントのダメージを負うが、D.D.アサイラントの効果でエヴォルテクター・シュバリエを除外することはできる。

 つまり戦闘を行う事が出来れば、200ポイントのダメージを対価に、エヴォルテクター・シュバリエを確実に除去する事が出来るのだ。

 

 しかしそう簡単には通さない。

 戦闘を行わせてはならないなら、戦闘が出来ないようにしてやればいい。

 

「速攻魔法発動、月の書!」

 

 D.D.アサイラントは姿を消し、代わりに裏側となったカードが現れる。

 アサイラントが裏側守備表示になった証拠だ。

 

「むう……、メインフェイズ2、カードを2枚伏せてターン終了だ」

 

 王流LP4000

 モンスター:裏側守備表示モンスター1体

 魔法・罠:伏せカード2枚

 手札:3枚

 

「僕のターン、ドロー!よし…」

「むっ……」

 

 王流の表情が軽く引きつったように見えたが、まあ気にしない。

 

「装備魔法、スーペルヴィスを発動!エヴォルテクター・シュバリエに装備!これにより、通常モンスター扱いだったエヴォルテクター・シュバリエは、効果を得る!」

 

 デュアルモンスター。一度目の召喚で通常モンスターとして現れ、更に召喚権をスイッチとして消費することで、効果モンスターとして力を発揮するようになる特殊なモンスター。

 今回はデュアルモンスターを効果モンスター化させる効果を持つスーペルヴィスを使ったが。

 

「更にヴァイロン・プリズムを召喚し、装備魔法、ヴァイロン・セグメントをヴァイロン・プリズムに装備!これにより、ヴァイロン・プリズムは相手の罠、効果モンスターの効果の対象にならない!

 更にエヴォルテクター・シュバリエの効果発動!自分フィールド上の装備魔法を墓地へ送る事で、相手フィールド上のカード1枚を破壊する!セットモンスターを破壊!」

 

 シュバリエが持つ剣の切っ先から、裏側になったD.D.アサイラントへ向けて炎が放たれる。D.D.アサイラントは姿を現すことなく粉々になった。

 

「更にコストとして墓地へ送られたセグメントの効果を発動!このカードが墓地へ送られた時、デッキからヴァイロンと名のついた装備魔法を手札に加える!

 僕はヴァイロン・マテリアルを手札に加え、再びヴァイロン・プリズムに装備する!」

 

 ヴァイロンと名の付く装備魔法には全てヴァイロン・セグメントと同じ効果が存在する。

 つまりヴァイロンと名のついた装備魔法はデッキから尽きない限り、いくらでも消費する事が出来る。

 

 こうして【装備、墓地へ送って破壊、手札に加える、装備、……】と循環させる事で、デッキからヴァイロンの装備魔法が尽きない限り、相手のフィールドをいくらでも焼き尽くすことが可能なのだ。

 

 非常に強力なコンボだが、やはり弱点はある。

 今回は序盤でここまでの布陣を敷く事ができたが、実は妨害策などいくらでもある。

 例えばエヴォルテクター・シュバリエの効果を無効化され破壊されてもこの戦術は簡単に崩壊するし、そもそもバウンスや除外など、装備魔法を墓地へ送らせない方法で除去されれば元も子もない。

 場に大量のカードを用意する必要があるため、一度妨害されれば建て直しは難しい。

 

「これ以上はやらせん!魔法発動、サイクロン!スーペルヴィスを破壊だ!」

 

 言わんこっちゃ無い。

 あっけなくエヴォルテクター・シュバリエに装備されていたスーペルヴィスが破壊され、シュバリエはたじろぐ様に片足を下げる。その様子はまるで油断していた相手から思わぬ反撃を受けたかのような動揺が感じられた。

 こういうリアルな表現……、流石は創業数十年以上の海馬コーポレーションだ。

 

 さて、本来ならスーペルヴィスには破壊された時、墓地の通常モンスターを復活させるという置き土産的な効果が存在するのだが、生憎と僕の墓地に通常モンスターはおろか、墓地では通常モンスターとして扱われるデュアルモンスターも存在しないので不発に終わってしまった。

 D.D.アサイラントを除去できているだけまだマシと言うべきだな。今のところライフも減っていないし。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 遊香LP4000

 モンスター:【エヴォルテクター・シュバリエ/攻1900】

 【ヴァイロン・プリズム/攻2100】

 魔法:罠:伏せ1枚

 ヴァイロン・マテリアル

 手札:1枚

 

 さて、フィールドは起点となるエヴォルテクター・シュバリエ、装備魔法であるヴァイロン・マテリアル、その装備対象のヴァイロン・プリズムが存在する状況。

 僕が次のターン、シュバリエを再度召喚すればコンボの復活が可能だが、それは王流も当然分かっているはず。ヴァイロン・プリズムと違い、他で替えが利かないシュバリエを消しに掛かってくるだろう。対抗策は伏せカード1枚のみ。少し不安。

 

「ドロー!よし、コアキメイル・ガーディアンを召喚!」

 

 2mを越える岩の巨人が、同質の剣と楯を携え現れる。

 たいていの人間が想像する神話上の『ゴーレム』はこんな姿をしているのだろう。

 

 しかし困った事になった。コアキメイル・ガーディアンは、リリースする事で発動した効果モンスターの効果を無効にし、破壊する効果を持つ。こいつが居るだけで、僕のデッキのコンボは瓦解してしまう。

 

 ヴァイロン・プリズムが攻撃力で勝ってはいるが、だのに王流は攻撃力が下回っているはずのコアキメイル・ガーディアンを召喚した。攻撃表示で。つまり何らかの防衛手段か、除去手段を持っているのか。いや、そもそも破壊されても構わない戦術を取ってくる可能性もある。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。コアキメイル・ガーディアンの維持には、ギガンテスを公開する」

「…………」

 

 王流LP4000

 モンスター:【コアキメイル・ガーディアン/攻1900】

 魔法・罠:伏せ2枚

 手札:2枚

 

 そうか、防御を固めたと言う事か。ならコアキメイル・ガーディアンよりも、あの伏せカードを警戒する必要があるかもしれない。

 

「僕のターン、ドロー!

 エヴォルテクター・シュバリエを再度召喚!」

「掛かったな遊香」

「えっ…!?」

「罠カード発動、奈落の落とし穴!相手が攻撃力1500以上のモンスターを

 召喚・反転召喚・特殊召喚した時、そのモンスターを破壊しゲームから除外する!」

 

 しまった、召喚に対する罠だったのか!奈落の男落とし穴は対召喚の罠としては最も安定したものだ。

 デュアルモンスターの再度召喚も通常召喚の一つに含まれる。つまり落とし穴などにも引っかかってしまうのだ。しかし、今シュバリエを失うわけには行かない。

 

「カウンター罠発動!神の宣告!ライフを半分払い、魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する!」

 

 遊香LP4000÷2=2000

 

「ふっ、こんな序盤にライフ2000は辛いな?」

「何それいやらしい」

 

 いやホントいやらしい。確かに2000ライフの損失は辛い。だが、エヴォルテクター・シュバリエを守る事は出来た。あとはコアキメイル・ガーディアンを突破しなければならない。

 だが、あのもう一つの伏せカードも気になる。あのカードは最初のターンから伏せられていた。そして僕はまだこのデュエルが始まってから戦闘を行っていない。つまりあの伏せカードは攻撃対処のカードである可能性がある。

 だからこそコアキメイル・ガーディアンを攻撃表示で出したのだとすれば辻褄が合う。

 ならば、モンスター効果でもない、戦闘でも無い方法で突破する必要がある。なら……

 その時、ふと地が揺れた。

 

 ドドオオオオオオオオオオオ!!!

 

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