C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「やめろヘキサ!なんでお前が戦う必要がある!」
「そりゃ、俺が隊長から鍵を托されたからだ!この惨劇を止める鍵、だが隊長や俺程度の壁を越えられぬ人類など隊長が手を下さずともいずれ滅びる!それを分からない程お前は馬鹿ではないだろう。」
「人は…それほど弱いものじゃないんだぞ!戦いは…絶対に平和は訪れる!」
「それを言い続けて何年経つ!平和を謳う者がずっと居たならば、なぜ戦争はなくならない!所詮戦争をやめた人類は問題が解決すれば進歩をやめる!そして発見と言う火の粉が舞えば人々の欲望と言う燃料に火がついて、戦争と言う火事が起こる!結局人類は争いをやめる事が出来ない!そう…結局全ての運命は収束する!」
「そんな事!過去にばかり囚われていてはだめだ!未来まで殺す気か!お前は!」
「腐った過去は新しい芽をも腐らせていく!なればこそこの腐った土壌ごと全てを入れ替え、新しい時代を托す!新しい時代を作るのは老人ではない!」
「過去を完全に清算する気か!良かった事も、全て!」
「良かった事…一体何がある?言ってみろ!!」
右腕に残っている巨大ビームサーベルがこちらに迫るが、その内側に避けてビームライフルを放つ。これでミーティアの武装殆どが沈黙した。
「人は日々を楽しく過ごしているんだ!だったらそれを壊してしまうのはダメだ!何故そう急ぐ!」
「何故日なただけを見る!日陰を見ろ!地球…プラント…どちらにも夥しい数の死人が出ている!何故お前はそう楽観的になれる!日々を過ごすのも厳しい人々が居るのに…上位種だというコーディネーターにさえ親の顔さえ知らない子どもが溢れかえっていると言うのに!」
「ヘキサ…」
互いのビームサーベルで切り結び、膠着状態が生まれる。
「俺だってな…親に育てられたかった!本当の家族ってものを体験したかった!それがお前らみたいに…権力に囚われていようと、親と言うものを知りたかった!それを捨てるなど…俺はお前に心底失望したよ。」
「ッそれはお前の親の問題だろう!何故それで世界を滅ぼす!」
「結局全て自分の願望で、一人の意思で全ては滅びるもの!俺も俺の意思で隊長の意思に従った…だが世界の行く末を決めたのは最終的に隊長だ!すべてはそこから始まった!結局全ては一人の意思に収束する!なら俺は俺のエゴで戦わせて貰おう!ダメか!ダメなんだろう!お前にとっては!!」
「アスラン!!」
背後からビームライフル。ストライクの同型機だ。声からして女か。
「邪魔だ!!」
アスランに蹴りを入れて反転するとバラエーナを照射し、撃墜を試みた。
「クッ…うわっ!?」
「カガリ!!」
しかし寸でのところで上昇し、両足をもぎ取るまでの結果に終わった。だがほぼ戦闘不能と見ていい。
「くそっ!」
アスランの動きが目に見えて良くなった。覚醒、と言う奴だろう。
「…小賢しい!」
余っているEW1を発射して退避、それを見たアスランはミサイルの後部を切り落として弾頭を残したまま破壊した。動いているミサイルに対してなんて反応だ。MRSMを装填して放ち、ガトリングで破壊して一旦目くらましにする。ジャスティスの位置は分かる、があまり迂闊に手を出したらやられかねない事は重々承知、離れた場所からバラエーナを照射する、が目視で避けられる。
「やっぱ化け物だな…」
ビームライフルの斉射が機体を襲い、ブースターパックに被弾する。直ぐに切り離して誘爆を免れた、その爆炎に紛れてすれ違いざまにビームサーベルでミーティアにダメージを入れ、痛み分けとする。
「特殊弾頭が空だったから良かったが…負けてられねぇ!」
EW1を装填してジャスティス向けて放ち、避けきれず右足の先端を破損させた。それと同時にこちらにビームライフルやらの斉射が襲って左足が全損する。
「私情のない戦争などありゃせん!お前の父親だってそうだ、失った妻の仇討ちをしないなどと…考えない奴は人間ではない!!」
「違う!人間は哀しみを乗り越えて強くなれる!哀しみを乗り越えずに…過去に停滞していては!何故分からない!それ程人間は弱い生き物なのか!?」
「弱いさ!そもそもが人間は欠陥の塊な生き物さ!自らの産む叡智に思考を囚われる程にはな!」
「だからと言って…!」
ビームブーメランが投げられ、俺はそれをビームライフルで撃ち落とす。その隙にファトゥム00が射出されて衝突、ビームライフルが右足を穿つ。
「それが多くの命を奪って良い理由にはならない!弱いから殺す?弱いのが悪いだと?そんな社会は動物と同じだ!もっと人らしく生きるのが人なんだ!」
「はぁ…何を言っているかさっぱりだ。何故弱肉強食がいけない、その理論では軍隊はやっていけないぞアスラン。戦場じゃ弱いから死ぬ、強くても死ぬ。でも強ければ生き残る確率は上がる。お前は軍人じゃないのか?ネビュラ勲章返却して、俺に寄越せよ。結局お前たちに賛同した人物が多かれ少なかれ、賛同するのは力のない者ばかりだ。だってそうだろう?お前たちの実働部隊で強い奴は多かれど、それ以外はもう全滅した。さっきの女だってそうだ。秒殺じゃないか。」
「…ヘキサ!!」
「逆鱗に触れたかな?そうさ、激昂するなんてそれこそ弱い証拠さ。強ければ激昂などしない、激昂するのは仲間さえ守れぬ証拠さ。お前は独りよがりなんだよ。結局手の届く範囲しか助ける事の出来ない…悪人よりも質が悪い偽善者なんだよ。」
「黙れ!!」
「…ッ!」
間一髪のところでビームサーベルの一撃を弾く。左肩あたりが少し破損した。左腕の動きが悪くなって戦闘力は激減だ。右腕の武装もあるが、これ一つでアスランとやり合うのはちょっと厳しい。
「データ更新…情報同期出来ず。そうか、陥落したか…」
判断は早くすれば良い、俺もまだ死ぬつもりはない。
「このデータを読んでみろよアスラン、約束の鍵だ。これを見ても…お前は俺に構っている暇はあると思うのか?」
「何ッ…ヤキンの自爆とジェネシスの発射が連動している!?データ出力元…ヤキンのメインコンピュータか!クソッ!」
「早く行けよ、どちらにせよ俺は見ている。その扉を封じれるかどうかはお前次第だ。まだ俺は死ぬことを選べる人間じゃない。じゃあな、せいぜい偽善を押し通す事だな。」
そう言って、俺はアスランの機体から離れた。
「…終わったか。隊長。」
十分な出力が出せないまま発射されたジェネシスに巻き込まれる二つの機影を見ながら、俺はため息を吐いた今、別宙域でこの戦闘の行く末を眺めていた。先ほど停戦協定が結ばれ、この戦争は終わった。だが、これで永久にはい、おしまい。という訳にはいかないのだ。隊長の夢見た世界になるのだろうか。隊長や俺の様に人の欲望に振り回された子どもはもう出ないのだろうか。
いいや、出るだろう。それを止め、子どもが欲望に吞まれない様にするのが生き残った俺の役目であり、隊長が残した光を守る唯一の手。
「隊長…俺、頑張ります。今はただ…安らかに眠れ、ラウ・ル・クルーゼ。」
頭の中に、何かが差し込んだ気がした。今の感覚は隊長の意思だと思いたい、そんな気持ちを掴んだまま。俺は近くの船に救援信号を出した。