C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「俺と一対一で食事…?」
「えぇ、議長が希望をしております。」
「分かった、断るほど俺は野暮じゃない。いつになる?」
「明日になるかと。」
「分かった、寄港してすぐになってしまう為予定時刻より少し遅れてしまうが良いかな?」
「はい、そうお伝えしておきます。」
そう言って通話を切った。深いため息が漏れる。議長はそこまで嫌いではない、ただ行動に疑問を持っているだけなため、今回の話には乗っておきたい。
「ギルバート、か。レイとシンはどうしてるかな。」
今は恐らくMS戦のノウハウを培っているのだろう。だがぶっちゃけ言ってレイは隊長と同じクローンだ。高い素質は持っていると思って間違いない。シンの方は…元は民間人のコーディネーターだ。だが人は執念で化ける為何も言えない。
「はぁ…結局、この先どうなるかは分からないか。」
再三のインパルスへの搭乗勧誘を断る為、メールを押した。
「遅れてしまい申し訳ありません、議長。」
「構わんよ、レイを成長させてくれた恩人。そしてラウの友人…後継者であるヘキサ・ラプトリオ君。」
「はは…隊長の後継者にはなれませんよ。失礼します。」
そう言うと、俺は議長の向かいの席に座る。
「君はインパルスへの搭乗を断っているが、何故かな?一つ理由を聞かせて貰いたい。」
「そうですね…まず、最高速がかつての俺の機体だったジンHMASより遅いというところでしょうか。合体機構も戦い方が変わってしまって俺ははっきり言って苦手です。そしてもう一つ、備え付けの大火力砲がないという事。」
「大火力…ブラストシルエットはあるが、それは気に入らないのかね?」
「俺はシルエットと言うものが少し苦手でしてね。その時その時で戦い方を大きく変えると言うのが苦手なんですよ。例えば…そうですね、狙撃手からいきなり騎兵になったら混乱しますでしょう?」
「…つまり、君はやはり戦闘中に空中換装を行う事を想定しているという事かね?確かに空中換装機構は採用しているが…それはシルエットをパージした時の想定だ。つまり戦闘中ではない。」
「正に、足付きのストライクにそれをやられましたからね。そしてそのシルエットでは弱点も発生してしまうのも嫌ですね。もしインパルスでやるならプログラムしっかりしといた方が良いですよ。無防備になりますしね。」
「…どんな誘い方をしても嫌かね?」
「本当に俺しか使えるのがいない、となれば受けますがなら今からそのパイロットへの教育を施した方が良いと存じます。シンプルな方が、俺の能力はもっと発揮できますよ。」
「…そうか。ならば他の機体に乗るのはどうかね?」
「他の機体…ですか?」
「今、我々はインパルスの他にも多くの機体を製造している。その中にセイバーという機体がある。まぁ開発が遅れているがね。」
「セイバー…データを見ても?」
「フッ…構わんよ。」
付き人からタブレットを手渡され、俺は斜め読みを行う。
「速度…MA形態時だがよし、大火力…及第点。汎用性も問題なし…良い機体だ。インパルスよりもこっちの機体の方が好みだな。」
「好感触でなによりだよ。そして、君にインパルスと同じ艦である“ミネルバ”への配属。そしてFAITHへの加入もお願いしたい。」
「FAITH…特務隊ですか。」
俺は考える。確かにFAITHへ入れば軍内部での自由な行動がしやすくなる。だがそれは同時に多くの人々からの注目を集める事にもつながる。だが一応俺も戦争の英雄として祭上げられている身ではある。特務隊へ入らないのであれば要らぬ誤解を生みかねない。例えば…俺が議長から信頼を置かれない様な何かを隠している、だとかの噂である。それは避けたいものだ。事は秘密裏に進めたいものであるから。
「…分かりました。セイバーとFAITHの入隊、謹んで受領しましょう。」
「やけに早く決まった、それ程セイバーが気に入ったかね?」
「えぇ、インパルスも良い機体ではありますがもっと良いパイロットが居るでしょう。そうですね…レイはどうでしょうか?」
「レイか…確かに能力こそ高いが、君と比べてしまったらまだまだだ。私は君にこそインパルスに乗って欲しかったのだがね。」
「それは失礼いたしました。代わりに、と言っては都合が良すぎますが…明日アカデミーで模擬戦を行います。その中で適任と思えるパイロットを推薦しましょう。」
「では新造艦ミネルバのクルー推薦も頼めるかね?」
「えぇ、折角の推薦を断ってしまいましたから微力ではございますが、これくらいは力になりましょう。」
「良い返事だ。期待をしている。」
料理が運ばれてきた。ぶっちゃけ俺は高級料理は苦手である。だが流石にテーブルマナーは弁えている。議長が食べ始めるのを待ってから、前菜を口に運ぶ。
「…あの、イザークとディアッカの事…ありがとうございました。」
「ン…構わんよ。未来ある若者を燻ぶらせている訳にはいかないからね。万が一の事もある、その為に新しく君をFAITHに迎えたのだ。元クルーゼ隊副隊長、ヘキサ・ラプトリオ。して…ブリッツはどうしたのかね?」
「ブリッツ…俺の終戦時に乗っていた機体ですか。研究所行きですね。内部機構をかなり改造したので連合にはバレずに行けるかと。」
「済まないが、あまり連合との間に火種を持ち込みたくない。返却は出来るかね?」
「分かりました、まだ処分されていなければ返却出来る様に要請しておきましょう。」
「もし核があればそれも解体をお願いしたい。」
そう言われて俺は心臓が飛び出るかと思った。これはブリッツに搭載されていたNJCを指しているのか、それとも純粋にマイウス市への研究所への警告か。どちらを答えるにせよ、はっきりと言う他ない。
「…えぇ、もし残っているNJCがあれば解体をする様に進言しておきますよ。」
そう言うと、主菜が運ばれてきた。
(セイバーか…積むには良い機体かもしれないな。)
肉を切り分けながら、俺は内心でそう思ったのだった。
「模擬戦の相手となるヘキサ・ラプトリオだ。今日一日、よろしく頼む。時間は少ないんだ、堅い言葉はなしにして早速訓練を行おう。」
そう言ってシミュレータへ座り込む。
「先日の告知通り3対1だ。こんなハンデがあるんだ、俺を撃墜する勢いで来い。」
そう言って、俺は対戦相手の機体目掛けてビームライフルを放った。
シミュレータの機体は現在開発が進んでいるザク。その中からパッケージを選んで戦うんだが、どうにも今季は良い原石が転がっている様だ。特に…今戦っているレイ、シン、そしてルナマリア・ホーク。
「もっと相手の動きを予測して撃て!無闇に位置を晒すな!」
「当たらない…!」
「ルナ!一回下がれ!」
「させんよ!」
後ろを向いた瞬間にビームライフルをパナしてザクに直撃。ルナマリアは戦闘不能。
「チィ…やっぱり英雄だ、動きが全然違う!」
「まだ腕は錆び付いていない様で何よりだ。終業まで20分を切ったか、そろそろ仕掛けさせて貰う!」
そう言ってザクファントムのファイターシルエットを大きく吹かした。俺専用のセイバーが納品されるまでの繋ぎ機体だ。まずウィザードシステムを廃止、完全に俺専用のパッケージであるファイターウィザードを採用。このシルエットはジンHMASのデータを元にして開発され、希望があった場合にのみ生産される特殊なウィザードだ。最高速はブレイズ以上で空中戦も出来るスペックはあるものの、稼働時間が短い、追加装備もなくハンドグレネードやトマホークなどの武装が装備出来なくなる等欠点も多い。
ジンHMAS譲りの高機動性で二人の銃撃を引き剥がし、懐に入ってビームサーベル(ファイターウィザードの場合はトマホークを廃止してビームサーベルが装備される)を抜く。レイがそれに反応してビームトマホークを抜くものの、反応が遅く鍔迫り合いにもならず腕から機体を両断される。
「早い!」
「どうした、確かに立ち回りは良い…が腕がついてきてないみたいだな!」
「くそっ、この!」
「感情に任せて撃つな馬鹿者!」
単調になったビームライフルの緑線をバレル・ロールで切り抜けて、お返しとばかりにビームライフルを放った。
「お前たち!今日はお疲れ様だったな。しかし、プラントを守る戦士がこうも弱くてはプラントは壊滅する事を肝に銘じておけ!今後もたまに稽古をつける、強くなれよ!」
「教官殿、俺から連絡事項が。シン・アスカ、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク。解散後もここに残れ。以上だ。」
「三名、分かったな?では解散!」
教官の号令と共に生徒は寮へと戻って行った。
「さて、と。お疲れ様だなレイ、シン。それとルナマリア・ホーク。」
「お疲れ様でした、強かったです。」
「ルーキーに遅れを取ってちゃ、エースは名乗れないよ。」
「ちょっと二人とも、知り合いだったの?」
「俺がお世話になってる孤児院の副院長だよ。レイもそこでカリキュラムをこなしてたんだろ?」
「あぁ。それでヘキサさん、話とは?」
「お前たち三人を新造艦ミネルバのパイロットに推薦したいと思ってな。今日やった中では一番強かった。」
「あんだけボコボコにされてましたけどね。」
「俺の射撃を避けられるだけ上手いさ。特にシン、君はいいもん持ってる。インパルスのパイロット推薦だ。」
「俺が…ですか?」
「最初はレイの方がいいと思ってたがな、感情的になりすぎなければ君は更なる力を引き出せる。それだけの反応速度はあった、と思う。」
「ヘキサさんがやればいいんじゃないですか?」
「どうも苦手でね、シルエットシステムもウィザードシステムもね。だから俺のザクもシルエット交換が出来ない設計なんだよ。とにかく、君たちを推薦したいと思っているんだ。返事を聞きたい。」
「そりゃ、願ったり叶ったりってやつよね。私はokです!」
「俺もはい、と返します。」
「シン、君はどうかな?」
「…あの時ヘキサさんが言っていた戦う理由の事、それがインパルスに乗ることで得られるか分からない…でも、進むのはやめたくないんです。諦めた時…本当に得られなくなるかも、しれないから。」
「…お前が努力しているのは火を見るよりも明らかだ。その手の血豆と傷の多さ、今日の訓練からも伝わってきた。それだけ努力しているんじゃ手に入るさ、報われない事程残酷な事はねぇんだからな。さ、君の答えを聞こうか。」
「…はい、俺…インパルスに乗りたい、いや乗ります!」
「よし、いい返事だ。お前らは特別に俺が訓練つけてやる、一人も死なせたくねぇからな!さ、明日から忙しくなるぞ!」
「はい!よろしくお願いします!」
三人の返事が、部屋の中に響いた。
主人公は換装系苦手。