C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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重なり、絡み合い、千切れる

「アスラン……そうか、オーブに居たのか、お前。」

「ヘキサ……」

 

思わぬ形の出会いとなってしまった。だがまぁもうアスランに固執する様なマネはしなくていいだろう。俺は俺だ。もし戦場で会うのだったら、それ相応の振る舞いをせねばならない。だからこそ、ここは矛を収めるのが一番だ。

 

「すみません、話を遮る様なマネをしてしまいまして。アスラン、また後で話そう。」

「……あぁ。」

 

議長が椅子に座り、姫君と対面する。

 

「本当にお詫びの言葉もない、姫までこのような事態に巻き込んでしまうとは。ですがどうか、ご理解頂きたい。」

「……あの部隊については、まだ何も分かってないのか?」

「えぇまぁ……そうですね。艦などにもはっきりと示すものは何も。ここは実際に戦った者に感想を聞いた方がよろしいかと。ヘキサ、君の感想は?」

 

いきなり言われた事。しかし、俺は隊長という立場な為戦況を見るのが仕事でもある。敵について、色々と考えている。

 

「これは本当に私見、という事を先に断らせて頂きますが……恐らく、連合軍の極秘特殊部隊ではないかと。」

「その理由はなんだ?」

「姫君、まずは色々な線を考えてみましょうか。まずザフト、これはまぁ言うまでもないでしょう。オーブ、これもあなたがプラントに居るのに事を起こすという点からないと断言できる。後は……連合軍、そしてテロ組織。しかし、テロ組織にしてはやけに手際が良いし、あの戦艦もミラージュコロイドや火砲の数、高速艦という事からかなり高コストのものと見て間違いない。」

「一理ある、が流石に決めつけが過ぎるのではないかね?」

「えぇ、完全な私の私見及び妄想に過ぎないこと。ですが有り得る点ではあります。特に、ブルーコスモスなんて連中がいますからね。」

「彼らの私兵という事か。確かにそれなら、連合がやったとは言い難い。」

 

議長は何かを俯きがちに考える様にした後、視線を上げた。

 

「とにかく我々は、一刻も早くこの事態を収拾しなくてはならないのです。取返しのつかない事になる前に。」

「あぁ、分かっている。それは当然だ。」

 

姫の表情は暗い。しかし、俺には少し為政者のする顔ではない様に思えた。もっと冷静になって貰いたいものである。

 

「……議長。今は何であれ、世界を刺激するような事はあってはならないんだ。……絶対に。」

「ありがとうございます。姫ならそうおっしゃっていただけると信じておりました。」

 

そう言うと、議長が立ち上がった。議長の行く手を開ける様にして、俺は艦長の横へと向かう。

 

「ブルーコスモスの特殊部隊……たしか、前の戦争にも連合軍にGが居たって話ね?」

「いや、同じ隊なのかは不明ですが……Gの新型を持ってました。俺が二機撃破、イザークが一機撃破。ですが、おおよそ同じかそれに近しい隊かと。なんせ、アークエンジェル級っていう最新鋭艦に乗ってましたからね。」

 

横で議長がミネルバを見ていくと良い、と姫君に言っているのを尻目にしながら、俺は艦長の質問に答える。

 

「…さて、では私は自分の機体の整備に向かいます。よろしいでしょうか?」

「あぁ、いきなり悪かったね。ボギー1との接敵に備えてくれ。」

「ハッ。」

 

 

 

「しっかしおやっさん、この機体癖が強いよ。もうちょいどうにかならん?」

「絶対に無理だ。お前さん、ヴェサリウスの時にもそうだったが無茶苦茶言いやがる。飯の奢りまだか?」

「おっと、覚えてたか。」

 

シュペアーのノズル調整をしながら、俺はおやっさんに愚痴る。まぁ愚痴りたいのは双方だろうが。なんせこんな機体なんだから可変翼の摩耗の修繕とか、焼け付きかけたエンジンの修理とか作業量は多いだろう。

 

「ミサイルくらい付けたいもんだがねぇ、ファイターなんだから。」

「俺もそう思う。こんな面倒な内部機構の修理より外に武装ポン付けの方がずーっと楽だ。」

「まぁセイバーが来るまでのつなぎだ、我慢しようぜ。」

「お前さんが言うな、大体例の……いや、忘れろ。」

 

尚、このおやっさんも共犯者である。FAITH権限で連れて来た。俺の信頼出来る整備士がおやっさんくらいしかいなかったし、ヴェサリウスに乗っていたって事で連れて来た。ヴェサリウスが撃破された時、艦外作業を行おうとしていたおやっさんは、搭乗していたヴェサリウスクルーの唯一の生き残りだ。すぐに近くの艦に救助されたため、酸欠にも陥る事なく戦線復帰出来たわけである。

 

「……しっかし、オーブの姫様がいるとは。どうするんだ?」

「何もしねぇよ。この前トダカ一佐と会食したってのは知ってるだろ?」

「シンがプラントに来る手助けをした奴だってな。なんか要らん事でも吹き込んだか?」

「いや、けどこの均衡がいつまで続くかって事だけは話したな。」

「ま、その均衡も崩れかけてるんだが。ったく、勘弁してほしいぜ。俺たち戦争屋が暇な世界が欲しいぜ。タダメシかっ喰らって、寝てが一番だ。」

「おやっさんはそれにスコッチでもありゃいいだろ?今度奢るぞ。」

「これは飯の奢りとは別だな?」

「……まぁ、良いぜ。ベクターノズル、少し右を機敏にしてくれ。そうそう……もうちょい!あぁやりすぎだ……おっけ、ノズル調整が終わったぜ。」

「よし、補給も頼むぜ。直ぐに警戒体制に入るだろうし、少し休憩してくる。」

 

 

 

あれから数時間が経過した。ボギー1の所在は掴めたには掴めたが中々追い付く事が出来ない。やきもきして推力比2.3を生かしてスクランブルでもしようかと思った矢先の事である。

 

「……何だ!?」

「これは……ユニウスセブンが落下!?」

「えぇ!?」

「慌てるなアーサー!」

「は、はい!」

「とにかく艦長、議長に連絡しろ!通信兵は本部との連絡を取れ!整備士はMSのスクランブルの準備!パイロットはブリーフィングの指示を待て!」

 

指示を出すと、少しばかり落ち着きを取り戻したアーサーが口にした。

 

「一体何で今頃動き出したんですか?」

「穏便に考えるなら隕石の衝突だろう。だが、隕石の衝突なら観測員が既に発見している……人為的なものか?」

「そ、そうだとしたら大分マズイんじゃないですか!?」

「あぁ、大分じゃなくて、相当にな。下手を打つとプラントに責任を押し付けられて連合から敵国認定されてもおかしくない。破砕作業をさせるだろうな。」

 

俺は副艦長席から通信兵に指令を飛ばす。

 

「本部や破砕作業隊から連絡が来たら、護衛隊にテロ組織が隠れている可能性を知らせろ。俺の名前を使って良い。とにかく、少しでも多く砕ける様に念には念を入れさせろ。」

「了解!」

「俺は新兵を見に行ってくる。アーサー、やる事は分かってるな?」

「はい!」

「直ぐに艦長も戻ってくる。まぁ判断ミスしたら……頭の中で俺の責任にでもしとくと良い。リカバリーを直ぐにすれば問題ない、頼むぞ。」

 

 

 

「よくそんな事が言えるな!お前たちは!しょうがないだと……案外楽だと!?」

 

新兵のあまりにも地球を軽視した物言いに、カガリ・ユラ・アスハは憤慨していた。

 

「それがどんな事態か、地球がどうなるか。どれだけの人間が死ぬのか、本当に分かって言ってるのか!?」

「カガリ、よせ。」

 

いくら皮肉であろうと、人命を軽視した言葉は国家代表として看過は出来ない。そんな事はアレックス……アスラン・ザラにも分かっている。でも、ここは別国家の戦艦内。あまり権力を振り回し過ぎると、安全が保障されなくなってしまう。

 

「やはりそういう考えなのか、お前たちザフトは!あれだけの戦争をして!あれだけの想いをして!やっとデュランダル議長の下で、変わったんじゃなかったのか!?」

「よせよ、カガリ。」

「あぁ、そろそろお止めになった方が良いですよ。外交上、あまりにも言い過ぎますとここが敵地になる可能性もまぁ有り得る事になってしまいますからね。」

 

不意に、背後から声がした。アスランは聞き覚えしかないその声に振り向き、カガリもその方をつられて見た。

 

「……ヘキサ。」

 

 

 

「取り敢えず、話は聞かせて貰いました。ヨウラン、発言には気を付けろ。お前のせいでオーブが敵になりかねなかったんだからな。作戦後、独房に入ってもらう事になるかもしれん。カガリ首長、此度の教育不足、申し訳ありませんでした。」

「……あぁ。」

「お前たちも発言には気を付けろ。シン、ハンガーの一件は聞いたぞ。まだトラウマは完治してないが、もうここは戦場で、お前はパイロットだ。吐き出して良い人間と悪い人間の違い、分かってるな?」

「……はい。」

「分かってるなら、これ以上は言わない。お前ら、休憩はそろそろ終わりだ。MSの整備とブリーフィングに急げ!」

 

新兵が一気に部屋から出ていく。溜息をつき、俺は2人の方に向き直る。

 

「重ね重ね、新兵が申し訳ない。」

「……いや、良いんだ。私にも非はあった……」

「首長として、舐められない国としての行動なら正解だと思いますがね。」

 

アスランがその翠色の目をこちらに向けて来る。その視線に気付いた俺は、アスランを見返す。

 

「ヘキサ、シン……と言ったか?あの子には何かあるのか?」

「あぁ……オーブからの移住者ってのは聞いたか?」

「議長からな。」

「あの子、オノゴロ島の戦闘で家族全員を亡くしてるんだよ。」

 

その言葉に、姫君が目を見開いた。瞳孔は揺れ、大きなショックを受けているのは火を見るよりも明らかである。

 

「しかも、妹が落とした携帯を取りに行ったせいで、自分だけが生き残ったって話さ。俺の居る孤児院に、住み込みのスタッフみたいな扱いで転がり込んで来てな。俺が色々と面倒見てるんだよ。」

「そうか、家族が……」

「元々家族が居なかった俺にはあまり分からない感情ではあるが……アスラン、お前には分かるだろ?アイツのトラウマの大きさが。」

「何となく、だがな。」

「アイツは敏感な爆弾だ。あまり大きな衝撃を起こさせると爆発しちまう。俺がどうにか信管の感度を下げようとはしてるが、中々上手く行かん。人の精神だからな。」

 

俺はコーヒーを三杯汲み、2人にも分ける。無論、俺のはミルクと砂糖たっぷりである。

 

「アスハ家はまぁあの状況下じゃよくやったとも言えるが、民衆を死なせてるようじゃねぇ。優秀な指導者とは言えないさ。」

「……お前!」

「人は国の為にあらず。国が人の為にある。そんな事はあなたとて知ってる事でしょう、カガリ首長。他人を思う気持ちは分かります、でもその前に身内を守らねば、指導者として失格なんですよ。」

 

コーヒーを口に含み、乾いた喉を濡らす。甘みが鈍らせた脳の思考を再び鋭敏にしてくれる。こういうものならいくらでも飲めるんだがね。

 

「ま、首長はまだ政治家として若い。これからですよ、これから。国民を思う気持ちがあるなら、自ずと歩むべき道は見えてくる。アスランもな。」

「え……」

「お前、燻ぶってるんだろ?自分に力があるのに、何も出来ない現状によ。」

 

アスランの表情は変わらない。対照的に、姫君は再び焦り始めた。

 

「……何でもお見通しって事か。」

「当然。同じ釜の飯を食ってたんだ。それに、あの面子を誰が面倒見てたと思ってるんだ?お前が裏切ったのも肯定は出来んがある話だって分かってたさ。だからこそ、今燻ぶってる。」

「おい待て!アスランをまたザフトに戻す気か!?」

「何もアスランに戻ってこいとは言ってませんよ。というか、前議長からアスランは国外退去命令下ってますし。いくら俺にFAITHの権限があると言っても無理ですよ。」

 

ブリーフィングが始まるという号令が下された。今回俺はほぼ出撃する事はないとは言え、出ない訳にはいかない。残った黒い水を胃に流し込んで、部屋から出る。いくら裏切り者とは言え、戦友。そんな彼にサービスする気持ちで、俺は去り際にこう口にする。

 

「……俺には無理だ。じゃあ誰に言えばいいか……分かるよな。」

 

そう言うと、俺はブリーフィング室まで駆け抜けた。

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