C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「ありがとう、ヘキサ。君の作戦立案のお陰で地球への被害は大幅に抑えられた。本来なら勲章を与えたいものなんだが、状況がな……」
「構いません。あんな要求がありますから…」
先程、大西洋連合がプラントに対して要求を突き出して来た。要求の内容は言ってしまえば属国化。それが吞めないなら戦争を仕掛けるというもの。予想は外れなかった。
「だからこそ、君にこの機体を托す。ミネルバは現在もオーブにある。セイバー・ホーネットを受領後、一度ゴンドワナに着任。その後ミネルバと合流してほしい。」
「畏まりました。ところで、ミネルバに補充メンバーは?」
「勿論送るとも。君と同行する形となる、良いかな?」
「異論はありません。開戦してしまった場合という、最悪の想定をしなければなりませんからね。」
「あぁ。ミネルバは最新鋭の艦で渡してはならないが、プラントを守らなければ意味がないからな。」
議長は一度間を置き、俺に問うた。
「開戦に至った場合、攻撃されるとしたらどこか分かるか?」
「分かりません、が月からの大艦隊。真正面から来るのは明らかでしょう。それと手段もね。」
「手段?」
「地球では確かに批判の声は上がっています。しかしそれは思った程ではないし、私の録音データの公開により更に規模は縮小しています。と、なると短期決戦になるのは明白です。」
「……核か!」
「恐らくは。ニュートロンスタンピーダーの配備の検討を。」
「手配しておこう。しかし、別働隊がいた場合はどうする?」
「恐らく、核は別働隊が使うかと。流石に真正面から撃っても撃破されるのがオチでしょうからね。」
「ふむ……分かった。だが一応の為に君をスタンピーダー隊の方に派遣したい。撃ち漏らしがあったら困るのでな。」
「承りました。ご要件は以上で?」
「あぁ、帰ってきて早々済まなかったね。」
「それが私の仕事ですから。では、これにて失礼します。」
敬礼を解くと、俺は議長室を後にした。やる事は山積みである。憂鬱な気分になりつつも、気合を入れなければ。
「……ヘキサ・ラプトリオ。コーディネーターになれなかった出来損ないにしてプラントのトップエース、か。」
暗い室内でギルバート・デュランダルは一人悩んでいた。前大戦の最中、異様な戦果を上げている新兵が居るとラウ・ル・クルーゼから知らされた。あまりの突貫だった為、軍部には無理な言い訳になってしまったものの、彼を召還して遺伝子検査をした。
「……私の思想は間違っているとでも言うのか?選ばれた道こそ、人間は幸福になる道。しかし、これは……」
その結果は彼の予想とは大きく違った、ほぼナチュラルと言うもの。それは、彼の思想に待ったをかけるファクターとなった。まだあの時の戦果だけであれば別に除外できた、だがトップエースにまでなられると話が違ってくる。彼の異常なまでに優れた状況を見る能力、そしてMSもファイターも問わずに乗りこなす戦闘能力。
「……これがお前の言っていた可能性か?ラウ。」
しかし、彼の哀しみは深かった。やりたい事をする為に結ばれたい者と結ばれない道を進まざるを得なかった彼は、独りよがりではありながらその決意は堅かった。
「……なら、その可能性とやらを見せて貰いたいものだな。少し彼の周辺を探らせてみるか……」
そう決意した時には、既に糸を巣と張られた後であった事は知る由もない。
「コイツがセイバー・ホーネットか。」
紫色と黄色の塗装が偵察用のジンを思い出させるその機体は、上場の仕上がりと言って良かった。殆どの造形は通常のセイバーと変わらない。だが、いくつかの変更点はある。まず、連射性能に優れたビームサブマシンガンを二挺持ちする点。それに伴いアムフォルタス及びフォルティスビーム砲の廃止。つまりMA形態の二つの出っ張りを総取り替えした。その代わり、長距離狙撃用収束ビーム砲「アークライト」を二門装備した。そして、アークライトにはミサイルラックが四つ装備されている。そこに特殊ミサイルを戦況に合わせて装備が出来る様になっている。
「中々良さそうな機体だ……試運転はどうなった?」
「ピーキーもいいとこですよ。でもカタログスペックではオリジナルより性能は少し引き上げられています。防御力的には少し下がってますが。」
「当たらなければどうと言う事はない、構わんさ。訓練を開始するぞ。」
そう言うと、セイバーを宇宙空間へと打ち出した。
「全システムチェック終了、全て正常に稼働中。武装チェック。」
両手のサブマシンガンをデコイに向けて発射する。連射速度は秒間五発程か。ライフルが秒間一発程だから、中々早いと言える。
「アークライト発射、目標まで距離16000。命中確認!」
『流石だな。』
「どっちに対してだ?」
『お前も機体も、両方だよ。』
「ありがとな。耐G試験開始!カタログスペック上の10Gまで試験をする!」
MA形態に変形し、一気にバーニアを蒸す。そして最大速度まで加速、一気に機首を上げた。胃が裏返る感覚はあるが、もう慣れたものだ。
「試験終了、まだまだ余裕があるな。」
『そりゃ、アンタ用にカスタムしたんだ。13Gまで機体は耐えられる、お前はどうか知らんがな。』
「そこまでやる事はしねぇよ。帰投する!」
『おうよ、試験御苦労さん!』
「宣戦布告か……月の艦隊の動きは?」
「月より大艦隊が出撃しております。どうしますか?」
「俺はこの艦に乗っただけだ。この艦の動向は貴方に任せますよ、艦長。」
「分かりました。別働隊がいる事を想定し、スタンピーダー隊はこの位置を維持する。本隊の接敵まであとどのくらいだ?」
「およそ200!」
「よし、総員戦闘に備えろ!索敵班、動きが有れば即座に報告しろ!ヘキサ殿、準備をお願いします。」
「艦長も、外さない様にお願いしますよ。コイツは一発限りなんですからね。」
そう言うと、俺は自分の機体へと向かった。
『全機警戒せよ!別働隊が発見された、核を確認した様だ!』
「やはりか……」
セイバーを向かわせようとしたが、散り散りになられると虎の子の一発の効果が失われる。俺のカラーリングを見られて警戒されてもダメだ、よってナスカ級の後ろにセイバーを付けた。
『敵核攻撃隊、ミサイル発射!』
『まだだ!もっと引きつけろ!』
ミサイルとの距離が狭まっていく、しかし死ぬ事はない。こっちには切り札ってものがあるのだから。
『今だ!撃てェー!』
目には見えないが、電磁波が照射される。幾許かもしない内に、核ミサイルが自爆していき、なんなら敵艦でさえも爆発の渦へと巻き込まれていった。
「よし!敵艦の全滅を確認!」
『やったな!これは勲章何個も出る戦果だぜ!』
『偵察機、効果報告!』
緊張感は一気に削がれていく。あんな百もありそうな爆発を見れば、当たり前の事だろう。だが、だからこそ気は抜けないのだ。第二波が来れば不味いからだ。
「偵察機、報告を。……偵察機!フリッパー!」
『こちらフリッパー!新たな敵艦を確認、数3!』
『何だと!?核は!?』
『核ミサイル……確認!』
「俺が行く、取りこぼしたやつの迎撃を頼む!」
『はっ!』
ナスカ級の陰から身を翻し、変形させると一気に加速する。敵艦をアークライトの照準に合わせて、距離17000で発射する。
「初弾命中!ドレイク級轟沈!向こうはどうなってる?」
『向こうの戦況は中々に良いぞ、だが……』
「分かってる。……さぁ来いよ!貴様ら全員、微塵切りにしてやるぜ!」
十数機のダガーが発進する。あんな距離から当たるとは思っていなかったのだろうか、はたまた届かないと思っていたから焦って発艦させたのか。無論それを狙わない筈はなく、再びアークライトを一発ずつ発射していく。
「一つ!二つ……いや二枚抜き。四つ……そろそろ交戦か!」
『こちらフリッパー!貴機を確認、データリンクによる支援開始!』
「頼むぞ!」
ダガーの位置がより正確に割り出される。残りは15機、先ほどまでで4機撃墜したので19機……
「……どっかにダガーが隠れてやがるな。こちらヘキサ。フリッパー、もう一機どこかにダガーはいないか機を張っていてくれ。」
『了解、データリンクは維持します。』
嵐のようなビームが俺の機体に殺到する。だが、なんら問題はない。一気に上昇した後、機体をロールさせて下降。その勢いのまま変形する。
「残念だが、テメェらじゃ相手になんねぇぞ。核なんて重り持ってるからな。」
手近に居たダガーの脚部を通り魔の如く切り裂き、返す刀でコックピットを溶断する。だが上部の核ミサイルはまだ無事みたいだ。周辺に群がるダガーをSMGで損傷を与えつつ、ダガーが十分に集まったのを見てから変形して離脱する。
「核を使うんなら、その炎に焼かれる覚悟もしてるだろうな?」
機体を翻し、HSRM(高速セミアクティブミサイル)を核に向けて放つ。コイツは加速するとビームとまでは行かないが、とんでもない速度まで一気に加速する。威力は通常のミサイルと比べれば少し低いが、貫徹能力に優れ、核ミサイルを誘爆させるには十分な衝撃になる。
「蒼き清浄なる世界の為に……と言うんなら、お前たちが朱い炎に焼かれて消えるんだな。」
ダガーの反応が14機消えた。核の連鎖爆発もあってか、一気に7割削った事になる。
「残りの5機は……成程、無視して特攻か。」
HSRMを撃った後に、アークライトを真ん中のダガー目掛けて放った。結果としては脚部損傷なので撃墜には至らずとも、威嚇にはなった。
「先に戦艦をやる!」
アークライトの使い勝手が本当に良い。対艦にはこれが最適かもと思いつつ、乱射していく。放たれる弾幕をロールやターンでいなしつつアガメムノン級に致命傷を与える。ダガーの方をちらと見るが、戦艦とはサイズが違い過ぎる。アークライトでの狙撃は不可能と判断して次の手を打つ。
「フリッパー、HSRMのレーダー誘導を要請!目標はダガー!」
『了解、目標はダガー!』
「発射!」
三つのミサイルが放り出された瞬間に、煙を吹きながら一気に伸びていく。
「よし、こちらも仕上げに取り掛かる。」
両手のSMGをネルソン級のエンジンに向けて発射。破壊した後、危ない対空砲に向けて乱射しつつ、右手にサーベルを抜いた。
「沈め、そして死ね!!」
艦橋を潰し、トドメにアークライトを発射。
「フリッパー、あの三機は!?」
『こちらフリッパー!ミサイル、三発共に命中!核の誘爆を確認、敵MSを巻き込んだ模様!』
「分かった。フリッパーはこのままここで索敵を行え。こちらヘキサ、敵軍は?」
『どうやらあの戦場も撤退した様だ。』
「……了解。帰投する。」
俺は上がりそうなバッテリーを補給するため、一旦前線を退いた。