C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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憎しみと血縁

核攻撃防衛戦を終え、その翌日。俺は議長から言われてとある人物を迎えに行くことになっていた。

 

「久しぶりだな、アスラン。いや、アレックス。」

「あぁ。」

「しかしどうしてここに来た?議長との会談を望むって事は、なんかまた考えてんのか?」

「……そうだな。あのテロリストの音声を聞いた。」

「おいおい、お前はお前だろ?親父さんとは違う人間だろ、あまり気に病むなよ。」

「それと……来てから知った事だが、またプラントに核が撃たれて……俺はただ見ていることしか出来なかった!撃って撃たれてまた撃って……またあんな戦争を」

「分かった分かった。まぁ一つだけ言っておく。アスラン、議長の言葉には乗るな。」

 

先程まで張り詰めた表情をしていたアスランが、俺の顔をまじまじと見た。こんな黒髪黒目の普通の男なんか見て何が面白いんだか分からないんだが、まぁ困惑しているんだろう。

 

「議長だが……まぁとにかく、お前にはやる事があるとだけ言っておこう。」

「何を……言ってるんだ?」

「後で話す、とにかくお前はどんなに美味しいとしても話には乗るな。お前にはオーブと言う国もあるだろ、お前にしか出来ない事はそこにこそある。お前がこっちでやろうとしていた事を俺が引き受ける事くらい、出来るさ。」

「やるべき事……カガリの事か?」

「よし、分かった所で行くぞ。」

 

 

 

「やぁアレックス君。ヘキサ、案内役をどうもありがとう。」

「いえ、この位休暇扱いできますからね。」

「ハードスケジュールにはなるが……済まないね。君も掛けたまえ、アレックス君。あの攻撃もひとまずは終わった事だ。」

 

アスランは極めて平静を保っている。まぁ内心穏やかとは言えないだろうが、それでも先ほどよりはマシにはなっている。

 

「予想していなかった訳ではないが……やはりショックなものだよ。こうまで強引に開戦され、核まで撃たれるとは。この状況で開戦するとは、常軌を逸いているというのにその上これでは……」

「ユニウスセブンの落下被害も、一応は大きく抑えられましたからね。亡くなった方々と遺族には申し訳ないが、地球の世論も開戦には傾きすらしていない。彼らも、先の大戦でかなり疲弊してますからね。」

「あぁ、これではもうまともな戦争ですらない。どこか強引過ぎる。」

 

実際その通りだ。民意がない戦争など、ただの政治家の暴走でしかないのだから。

 

「連合は一旦軍を引きはしたが、これで終わるとは思えんし……今度はこちらが大騒ぎだ。防げたとはいえ、再び核を撃たれたのだから。問題はこれからだ。」

「それで……プラントは…この攻撃、宣戦布告を受けて、プラントは今後、どうしていくおつもりなのでしょうか。」

「我々が報復を応じれば、世界はまた泥沼の戦場となりかねない。……分かっているさ、無論私だってそんなことにはしたくない。しかし事態を隠しておけるはずも無く、知れば市民は皆怒りに燃えて叫ぶだろう。許せないと。それをどうしろと言うのだ?どうすれば止められると言うのだね?既に我々は撃たれてしまったのだぞ、核を……」

 

俺もその点については同意する。不必要な戦争はしたくない、がこの戦争は必要になってしまう。何故なら、民意がそうしろと言っているのだから。

 

「……しかし議長、怒りや憎しみだけで撃ち合う事だけは駄目なんです!撃ち合ってしまったら、世界はまた…何も得る事のない、戦うだけのものになってしまう。」

「アレックス君……」

「私からも現場の兵士に伝えておきます。が、感情と言うものは中々に御し辛いもの。出来る限りの事はしますが……」

「……あぁ、戦争と言うものは人が死ぬ。どうしてもそれは避けられない事だ。」

「お願いします……憎しみは、悲しみを生む連鎖……どうか、プラントでその連鎖を断ち切って頂きたい。オーブも出来る限り、戦争を止める為に尽力します。」

「……そうか。私も努力しよう。おっと……彼女が出る。」

 

『私は、ラクス・クラインです……私の話を聴いてください。』

 

俺は既に彼女が偽物であることを議長から伝えられている。ならばこの演説も虚偽のもの……まぁ議長の思いは本当なんだろうが、一枚毒のフィルターを噛んでいるとどうしても別の意味に捉えてしまう。

 

「笑ってくれて構わんよ。君には分かるだろう?アスラン・ザラ君。」

「議長……」

「我ながら小賢しい事をと情けなくなるよ。だが仕方ない。彼女の力は大きいのだ、私などより……遥かに。馬鹿なことをと思うが、今私には彼女の力が必要なのだよ。本来なら君の力も必要だったが、君にはやるべき事がある様だな。ここは素直に引いておこう。」

「オーブも一枚岩ではありませんからね。特にあのお転婆な姫君……アスラン。お前が守る盾となるんだ。」

 

俺のやって欲しい事。それが先言った事だ。恐らくだが、あのまだ政治家として若いがオーブの象徴となっている姫君を巡り、オーブ内で抗争が巻き起こる事になるだろう。アスランは、そこに居て欲しいのだ。アスランが居れば、間違った道を内部から正してくれるだろうから。

 

「さて、会談の後は共に食事をしながら互いの意見を聞きたいと思っていたが、状況が状況なのでな。済まないね。」

「いえ、貴重な時間をこんなことに割いて頂いて……恐縮です。」

「いや、私にまた認識を強くすると言う意味でも有意義な時間だったよ。私からも感謝したい。」

 

礼節通りの言葉を互いに述べ……まぁ様子からして双方共に本心なのだろうが、会談は終わった。共に退出しようとした時、ふと議長から声を掛けられた。

 

「ヘキサ、レイの調子はどうか聞いてもいいかな?」

「ミネルバのパイロットととしてでしょうか?それとも軍人として?」

「両方だよ。」

「そうですね……パイロットとしては及第点をあげます。状況をよく見て、先のテロリストとの戦闘では彼一人で大幅にメテオブレイカー隊の被害を減らしたと言って良いでしょう。軍人としても模範的に一番近いルーキーと言えます。」

「そうか……ありがとう。ではな。」

「はい、失礼致します。」

 

 

 

 

どうも議長は俺の周りを嗅ぎ回っている様だ。だが、俺たちが運用する艦、ファイターはプラントとは別の場所で製造をしている。俺も詳しい場所は知らないが、ニコルがそちらの主任になっている。既に計画は俺の手を離れている。離れたとは言っても、それは自ら手放したと言った方が良い。立場上、俺が立案して指令を出すと議長に勘付かれる。だからこそ、首謀者である俺は駒となるのだ。計画を知らぬ事でとにかく任務に忠実な人間を演じ続けられるのだから。

 

しかし、事が大きくなりすぎている。宣戦布告と同時の核攻撃で、ナチュラルへの憎しみは日々増すばかり。だからこそ、地球の同志の動きに掛かっているのだ。ザフトに味方しなくとも、サボタージュしてくれる国家が多ければ多いほどいい。

 

俺の予想も、背後に反コーディネーター主義の連中が居ると睨んでいる。彼らが居る限り、ナチュラルとコーディネーターの戦争は絶対に終わらないものだ。そして、双方における希望の象徴とも言える人物が手を取り合わなくてはならない。プラントの場合、現在偽物のラクス・クラインが出回っている為彼女が適任だと思われる。万が一の場合は、本物に来てもらうか。若しくはFAITHの顔である俺が先頭になる可能性もある。しかし、ナチュラルにはそんな存在は居ない。だからこそ、中立の理念があるオーブにナチュラルの先導を執って貰わなくてはならないのである。

 

 

 

あの会談の後、仕事に追われながらもまた来た仕事の内容にうんざりした。

 

「……しっかし、前線から呼び戻されたと思えば、まさかアイツに会いに行く事になるとはね。」

「イザークもだんまりだしな。」

「うるさい!」

「まぁまぁ、そうカッカするなよ。ほら、この部屋だぜ。」

 

そう言うと、イザークはドアをノックした。すぐにドアが開けられると、イザークはいきなりアスランに掴みかかった。

 

「イザーク?」

「貴様ぁ!一体これはどういう事だ!」

「ちょ、ちょっと待てよおい!何だって言うんだ……」

「それはこっちの台詞だ!こっちは無茶苦茶忙しいってのに、コイツに呼ばれて来てみれば!」

「コイツ……ってヘキサか?」

「あぁ。ま、今後についてな。それと護衛監視も兼ねて、評議会から名指しされたんだよ。連絡は俺からだったんだがな。」

「護衛監視?」

「外出を希望してんだろ、お前。」

「ディアッカ。」

「おひさし。けどま、こんな時期だから。いくら友好国の人間でも、勝手にプラントの中をうろつかれちゃ困るってな。」

「あぁ、それは聞いている……だがそれはてっきりヘキサだけかと。」

「そうだ!フン。」

 

エレベーターに乗り込み、荷物を港行きのトラックに預けてホテルを出る。既に黄昏時、宇宙に浮かぶ鉄の塊だというのに景色は綺麗だ。

 

「で、どこ行きたいんだよ?」

「これで買い物に行きたいとか言ったら俺は許さんからな!」

「そんなんじゃないよ。ただ……最後にラスティたちの墓に。あまり来られないからな、プラントには。だから行っておきたいと思ったんだ。」

 

近場の花屋にて献花を買い、ラスティ、ミゲル。そして隊長の墓に捧げた。俺らとしてもあの人が蘇ってはほしくない、だがそれはそれだ。特に、俺は世話になりすぎたからな。

 

「積極的自衛権の行使……!?やはりザフトも動くのか。」

「仕方なかろう。核まで撃たれて、それで何もしないという訳にはいかない。」

「第一波攻撃の時も迎撃に出たけど、俺たちは……奴らは間違いなくあの攻撃でプラントを壊滅させるつもりだったと思うぜ。」

「で、貴様は?何をやっているんだこんな所で!オーブはどう動く!?」

「……俺には分からない。だが、帰ったらできる限りの事をするさ。」

「なら、ちょいと早く帰った方が良いかも知れねぇな。オーブのお姫様には、お前が必要だ。経験が足りねぇからな。」

「プラントに戻って欲しい気持ちはある。だがプラント、ひいては世界の為だというなら……それがやるべき事なら、お前はその使命を果たすべきだ。」

「ま、こっちは任せろって事さ。」

「あぁ、分かった。」

 

夕暮れ時の墓。そして男四人が話している最中だというのに。

 

「ここがヘキサの戦友さんの墓、で合ってるわよね?」

「む?」

「お、来たか。合ってるぞアリ―。」

 

ここにアリーが来てるのには訳がある。流石にもうこのプラントも危なくなっている訳だ。スタンピーダーもなく、俺も居ない時にあんな核攻撃などされては守り切る事は出来ない。

 

「俺の居る孤児院の副院長だ。キアル・クラウゼヴィッツ。まぁ俺はアリーと呼んでるが。」

「よろしく。中々良い男ばかりじゃない。」

「あ、あぁ……」

「ナンパは後にしやがれ。んでアスラン。厄介事にはなるがやって欲しい事がある。」

「え?まさかと思うが……」

「孤児院の奴ら、全員オーブに連れてってくれ。」

「ま、賢明な判断だな。もうプラントも安全じゃない……というか、この世界に安全な場所はあるかって話にはなるけどさ。」

「あぁ。取り敢えず……これを。」

「分かった。」

 

中には例の勧誘書がある。分厚い為、路銀に偽装させた……というか、路銀も同封している。

 

「中身は確認しとけよ。一応言っとくが、お前が乗るのは孤児院のチャーター機だ。パイロットと乗務員も俺らの息が掛かってる。とは言え、子どもたちには視られない様にな。」

「分かってるさ。それと……一つ良いか?」

「なんだ?」

「孤児院と言うには少しアレだが……一つ当てがある。そこを頼っても良いか?」

「当て……だと?おいアスラン、まさか……」

「あぁ……」

 

アスランの言う当て、とは俺にはイマイチピンとこない。だが、イザークには分かる様だ。しかし当の本人は止めはしない。であれば……

 

「……分かった。お前を信じる。皆の事、頼んだぞ。」

「やるからには、きっちりやるさ。」

「おっし、アリー。このぼんくらを頼むぜ。」

「お礼はお金でしか受け取らないわよ?」

「アスランから分けて貰え、お前の分があったらな。」

 

監視の視線を感じながら、俺たちは船に消えるアスラン、そして子どもたちの姿を見送った。

 

「……行ったな。」

「あぁ。もう後腐れなく暴れられる。アスランなら守り通してくれるだろうからな。」

「ま、今は雌伏の時って訳ですわ。今はとにかく、目の前の仕事をしないとな。」

「そうだな。」

「全く、呼び出されてどうするかと思えば……まぁ良い。俺はもう前線に戻る。」

「分かった。俺も出発に向けて準備しますか。お前ら、死ぬなよ!」

 

街灯が点き始めた頃。俺は残った仕事を片付ける事およそ9時間。宿舎にてようやく眠りに着けた。三日間の徹夜は流石にキツイぜクソッタレ。

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