C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「始まっちまったか……プロペラントタンクには燃料たんまりあるし、最大速度で行きますか。」
セイバーのコックピット内で、一人愚痴る。セイバーは大気圏突入も可能であるため、あの時の様にSFSを使用する事もない。そんな中で聞かされた降下作戦。旅路の半分で始まったらしい。プロペラントタンク内の推進剤はまだ三分の二はある、ここで加速しきる方が良いだろう。
「よーしよし、ミネルバはどうしてるんだ?確かオーブに居るとか言ってたが……アスランもまだ着く時間じゃねぇ、流石に開戦に踏み切っちまったかな。」
そうまではいかずとも、ミネルバは最悪拿捕されている可能性がある。そうなると、俺の役目はミネルバの破壊だ。しかし、そんな心配は杞憂だった様だ。降下体制に入った時、ようやくミネルバと通信が繋がった。
「こちらヘキサ、ミネルバ応答せよ。」
『こちらミネルバ!』
「おっし、無事だな。状況はどうなってる?」
『替わって。こちらタリア、オーブ領海を出立した後連合と戦闘になったわ。』
「んでオーブにも戻れないと。」
『高熱源体接近!アンノウン!』
「今は身を守る事を考えな、こっちは勝手に突入する。」
『分かったわ。降下後出来るならすぐに援護を。』
「はいよ。」
降下体制に入ったのち、シールドに付属しているバリュートの確認を行う。
「セイバーなら早めに切り離せる……戦闘区域には入らねぇな。こちらヘキサ、突入開始。戦闘可能時に再び連絡を入れる。バリュート展開!」
世界が赤く染まり始めた時、バリュートを展開した。この装備はバルーン・パラシュートとも言われ、バルーンを展開、底部から冷却ガスを噴射する事で加熱から機体を守る装備である。が、まぁMS運ぶなら4機運べて同じコストのカプセルでいいじゃんと言う事で単独突入用として開発がされたものである。しかし弱点としては、非常にバルーンが脆い事、そして身動きが取れなくなる事である。その為攻撃を受けると非常にマズイのである。
「こちらヘキサ、戦闘開始まで残り20。敵MAは?」
『現在インパルスが交戦中です!え、デュートリオンビーム照射!?』
「そっちに集中しな!」
そう言うと、カウントダウンを開始する。機体のアラートが解除されてから、バリュートを切り離す。
「5…4…3……2……1……作戦区域に到達。敵戦艦を捕捉。」
『了解!セイバーの降下を確認しました!』
『今丁度シンが敵MAを破壊したところよ。』
「了解。まさかタンホイザーを防いじまうとはな……まぁ良い、今は暴れるだけだ!ADMMスタンバイ!」
多方向多目的ミサイル(All Direction Multi-Purpose Missile)のラックを露出させ、敵MSにロックオン。
「発射!シン、艦船は任せるぜ!」
『了解!!』
「レイとルナマリアはこのままミネルバに敵を近づけさせるな。俺が数を減らす。こちらヘキサ、ドライブ!!」
ADMMの射出コールを口に出し、トリガーを引く。四門のミサイルラックから夥しい数のマイクロミサイルが発射され、敵MS群に殺到していく。
「撃墜数7、まずまずと言ったところか。」
速度を上げ、ミネルバの方向に突っ込んだ。ビームサブマシンガンを発射し、その間に2機撃墜。変形反転した後、アークライトをぶっ放す。当たらずとも、俺にヘイトを向けさせればいい。
「よし、追って来てるな。ルナマリア、俺を追ってる群れに砲撃!」
『了解!行くわよ!』
直後、セイバーのコンマ数センチの所にオルトロスの赤いビームが掠めた。機体のダメージを見るが、特に異常はなさそうだ。
「危ねぇな!?まぁ敵は倒したが……後で追加訓練だ。」
『うげっ。』
「支援要請はしたが俺を撃てとは言ってねぇんだぞ。ったく、シン!そっちの調子は?」
『敵艦3隻撃破しました!』
「上出来!俺もペースを上げるぜ!全員生かして帰すな!!」
「何!?戦争が始まって……プラントからの船は全て入港出来ない!?」
「えぇ、通達が突然。」
「クソッ、遅かったか!」
そう言うと、アスランは無線機を貸す様に機長へと請う。彼がどんな立場に居るかを理解している為か、すんなりと無線機は貸してもらえる事になった。
「こちら民間船XM63958よりオーブ国際空港。再度、入港の許可を求む。」
『こちらオーブ国際空港管制塔。戦争が始まった、民間船であろうと入港の許可は出来ない。』
「なぜだ!?オーブに正式に入港が許可されている民間船なんだぞ!?」
『軍部に訊いてくれ!こちらだって混乱しているんだ!』
「……分かった。怒鳴ってすまない。」
そう言って通信を切る。
「どうしますか?このまま入港したらそれは撃墜されますが。」
「……確か、軍部からの命令だったな。なら直訴するまでだ。無線、もう一度借りる。」
アスランに貸し出されたヘッドセットに、ノイズが走り始めてすぐに人の声が走り始めた。
「こちら民間船XM63958、オーブ軍司令部!聞こえるか!」
『なんだ!?これは軍用回線だぞ!ただちに』
『待て!軍用回線にまで飛び込んできたんだ……何かあったんだ。私が話す。』
『……回線を変更する。話はそちらで聞く。』
「今の声……カガリか!?」
回線を回しながら、何故カガリが軍司令部に居るのかと思考する。それはそうだ、戦争を一番嫌っているのがカガリだ。そんな彼女がそんな場所で指揮を執るなど、防衛戦以外ではありえないのだから。
「こちら民間船XM63958、アレックス・ディノ!」
『アスラン!?どうして戻って来た!?』
「そんな事はどうでもいい!それよりも、軍の命令で民間船がオーブに入れない!」
『なんだって!?ユウナ、どうなっているんだ!?』
『戦争が始まったんですよ?それも、当事者が相手なんですから当然でしょう。』
「なら俺がこの船の皆の身元は保証する!」
『どうやって?もう戦争なんですよ、オーブ内部に火種を持ち込む事は避けるのが当然でしょう?』
「くっ……」
ユウナのいう事は尤もである。国を守るという保安上、プラントからの船は全て絶ってしまった方が何かと都合がいい。それが、国の使者を乗せていても。
『……こか?声が……過ぎだ。よし、聞こえるかな?』
『この声……トダカ一佐?旗艦に居る貴方が、どうしてこんな無線に介入してきているんです?』
『上空に民間船の信号を見つけている。入港する気配もない上、このままそこに居ると流れ弾が飛ぶ。流石に民間人を死なせては困るでしょう?』
『……』
『XM63958機長、その船の乗客リストは?』
「チャーター便ですよ。プラントの孤児院と……」
「……俺だ。ヘキサ……ザフトのトップエースから預かって来た。」
そうアスランが答えると、ユウナは少し考えた風な間をおいて、そこから言葉を発した。
『……なるほど、良いでしょう。では入港を許可します。が、しばらく外には出れないですよ。全員の保安検査が終わるまでは、ね。』
『……ユウナが済まない。だが、アイツも国を考えてはいるんだ。許してくれ。』
「カガリ……お前が言う事じゃないよ。」
『出来る限り子どもの安全は守る様に言っておく。その間……』
「言うなよ、俺だって頑張ってみるさ。戦友から預かった命なんだからな。」
無線から発せられる音は、もうなくなった。代わりに、レーダー誘導の更新がなされた。燃料が切れる前に、なんとか着陸が出来そうだ。
「さて、ここからは私たちの仕事です。貴方はお休みになって。」
「あぁ。最後まで頼むぞ。」
アスランは客室に戻り、一息つくことにした。
「ったく、面倒な事になりよって。シン、お手柄だったな。敵艦5隻撃破、中々良いじゃねぇか。」
「あ、ありがとうございます。」
「そうやって仲間を守っていけよ。手近な人間からだ、良いな?」
「はい!」
「あと整備班!早く俺らの機体の整備!カーベンタリアまで敵襲がないとは限らねぇからな!」
そう言うと、俺は紫色のヘルメットを外しながらロッカーへと向かう。
「本当、どうしちゃったわけ?いきなりスーパーエース級じゃない、火事場の馬鹿力ってやつ?」
「いや、よく分からないよ自分でも。オーブの艦が発砲したのを見て、頭来て……こんなんでやられるかって思っただけだよ。そしたら急に……頭の中がクリアになった。」
「……はち切れたって事?」
「そうじゃねぇな、もっとこう……いやまさか?」
ヤキンの時に相対したジャスティスの事を思い出す。あの時、いきなりアスランの動きが良くなったのを俺は経験しているのだ。恐らく……シンもまた、アスランと同様に天性のパイロット適正を持っているのだろう。詳しい事はそうでない俺には分からないが、いわゆるゾーン的な、ルナマリアの言った火事場の馬鹿力を極限以上まで引き上げる力だと思う。
「何にせよ、お前が艦を救った。生きているという事は、それだけで価値がある。明日があるという事だからな。」
「明日、か。お前はそれを手に入れる事が出来たからな……次はシンの番って訳か。」
俺の呟きは、近くに居た2人にも聞かれることなく虚空へと消えた。