C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「……カガリ。」
「どうして戻って来た!?お前は……プラントを案じて行ったんじゃないのかよ!」
「いや……そうだ。」
ここで言い訳をしても良かった、だが敢えて彼はそうしなかった。
「だがもう、プラントは守られていた。俺の戦友たちに。」
「アスラン……」
「新しい母さんの墓も、戦死した仲間の墓も任せられる。その代わりに……」
「あの子、たちを頼まれたのか。ヘキサって奴の?」
シャトルの中に居る子どもたちを見て、カガリは少しだけ優しい目を見せた。だが、それが潜んだ後にまた苦しいような顔をする。
「でも……ユウナは何をするか分からない。」
「大丈夫だ、俺が身代わりになる。」
「アスラン?」
「俺のオーブ軍への配属と交換に、この子たちの安全を保障させる。」
「そんな……いくらアスランが強いからって、これからプラントと戦争するんだぞ!?」
「そんなに俺が心配か?」
アスランは何でもない事であるかの様に首をかしげる。
「当たり前だ!そうやって自分の身を削って……それしかやり方はないのかよ!」
「……自分の身を削ってるのは、向こうだって同じだ。それに、お前にやる事があるように、俺にもやる事が出来た。」
「アスラン……」
「……俺もお前が心配だ。ヘキサにも言われた事だが、お前は政治の経験が少ない。だから肩書きがオーブの首長であっても関白政治にならざるを得ない状況なんだ。君の一声と共に、もう一つカードが必要になる。」
「それが、アスラン……」
「あぁ。それに、会いたい人も居るしな。」
「会いたい人?」
カガリが疑問に思って首を傾げる。アスランはそれを見て話したい衝動に駆られた。だが、カガリは非常に感情に出やすい。アスランもそんなタイプではあるが、軍人である以上ある程度の節制は出来る。まだ話す時期ではない。
「……また今度話す。カガリ、その時はお前を頼る事になる。何処かで迎えに行くから、慌てず後を着いてきてくれ。」
「……分かった。アスラン、死ぬなよ。」
「俺がそう簡単に死ぬと思うか?」
「ふふっ……確かにそうだな。私も私で、出来る事はしてみる。」
子どもたちが全員シャトルから出て来た様だ。そろそろ憲兵が来る頃だろう。このシャトル便の添乗員全員がヘキサの息が掛かっているとは言え、隠しきれない事はある。ならば自分の身も賄賂として差し出し、潔白としてしまえば良い。
「じゃ、またな。」
歩み行くアスランを止める事は、到底出来なかった。これから、カガリはユウナと結婚せねばならない。アスランにこれを伝えれば、確実に彼の足を止める事は出来る。だが、果たしてそれは彼のやるべき事を阻むのではないか?国の為を想えば、彼女の身はセイラン家に捧げられるべきなのだろうか?しかし、それは腐敗した彼らにオーブの政治を許す事になる……が、最早時間はなくなっていた。
検査を諸々終えた後、アスランは真っすぐにキラとラクスの元へと向かっていた。元はオーブ元首のSPだったのだ。カガリの助けもあって、彼を咎められたのは誰も居ない。
(……あのMSは!?)
見えたのは、緑色の水陸両用機。形からして、ゾノの発展型だろうか。それが、キラとその両親、ラクスに子どもたちが住んでいる屋敷を取り囲んでいた。迷わず拳銃を装填してバイクを走らせるが、出来ることはないに等しい。そう考えて、尚も進んでいた時だった。山を突き破って出てきたのは、かつて共に戦ったあの機体だ。
「……フリーダム?キラ、なのか……?」
瞬く間に武装や手足を破壊し、敵機を無力化していくフリーダム。その行動とは裏腹に、機体は爆散し、パイロットの命は失われた。直ぐに立ち尽くすフリーダムの元へとバイクを進めた。
「ったく、置いてったからギリギリ間に合ったとは言え……遅いな。」
カーペンタリアの基地に入港してから1日。休暇はほぼなし。補充要員のシャトルもまだ到着せず。ミネルバで待機する日々だ。こればかりはセイバーの推力に驚嘆せざるを得ない。
「……おいシン。あれからどんな感じだ?」
「いえ、何とも言えないです……やっぱり、火事場の馬鹿力ってやつなんですかね?」
「かもな。」
「ヘキサはそういう事……ヤキンでありましたか?」
「いや、少なくともそういう事はなかったな。急に視界が広がる……俺も欲しいぜ、そういう“力”。」
アスランにも見られたあの……ゾーンに入ったかの様な反射神経と行動の取捨選択。戦士として使うなら誰しもが望むであろう力。
「ま、どちらにせよ俺としては花開いたようで嬉しいぜ。」
「……でも、オーブはもう滅茶苦茶ですよ!まさか地球軍を待ち伏せさせてるだなんて……」
「あぁ、まぁオーブ艦隊の現場は外してくれてたが……どうやら上層部がかなりマズイらしいな。」
「そんな……」
「カガリ・ユラ・アスハ。セイランの男と結婚したと聞いたが……どう動く、アスラン?」
「何、結婚!?カガリが!?」
タケミカヅチの一室に響き渡る叫び。多忙極まる入隊試験を終え、旗艦への搭乗が決まった途端にカガリの結婚を知ったアスランのものだ。
「落ち着いて欲しい、アスラン君。君とて覚悟はしていたんじゃないかな?」
「それは……そうですが。」
「とにかく、君はこのまま待機していて欲しい。なぁに、悪い方向には向かわないと思うんだがね。」
「……多分、キラも、黙っていないかと。」
「なら親友であり義兄でもある彼に任せてみたらどうかね?彼が怒ると怖いのは、君も知っているんじゃないかな?」
そうトダカ一佐に言われてしまえば、さしものアスランも頷くしかない。自らを人質としたのに、いの一番に脱走するわけにはいかない。せめて、マルキオ導師や孤児の脱出が終わるまでは踏ん張らなければならない。
「……分かりました。式は……」
「早速だが今日さ。君の初任務になってしまう。」
「……動いてるのか、キラ?」
警報がなる。第一種戦闘配備、安全帽やアーマーを着ながら急いで艦橋まで登る。
「どうした?」
「4時の方向にMS、フリーダムです!」
「本部より入電、フリーダムは式場よりカガリ様を拉致。対応は慎重を要する。」
「キラ……」
「カガリ様が?」
「撃ち方待て!」
「包囲して抑え込み、カガリ様の救出を第一に、との事です。」
トダカ一佐が肩を竦めたように、アスランの目には映った。
「トダカ一佐!アークエンジェル、潜航していきます!」
「これでは逃げられます、攻撃を!」
「対応は慎重を要するのだろう?」
そう言って、敬礼をした。見れば、タケミカヅチのクルー全員がそうしていた。この艦は、全てがグルだった様だ。襟を正したアスランは、それに倣って、アークエンジェルへ敬礼を送る。
親友と、愛する者の無事を願って。