C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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インド洋、血に染めて

「コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて待機せよ!」

 

カーペンタリアを出航して少し。そんな声が艦内に響き渡る。待機命令が出ていた俺たちは急ぎ乗機の元へ、その間に情報を集める。

 

「各機に通達、どうやらボギー1がウィンダムを大勢引き連れて来たようだ。」

『また待ち伏せされたんですか!?』

「分からんが、その可能性は高い。まぁ突発的遭遇かも知れんが……流石に母艦がなけりゃ近くに基地が出来たと見た方が良い。」

『インパルス、セイバーは発進どうぞ!ザクは別命あるまで待機せよ。』

「了解。セイバーホーネットはヘキサ、発進する!」

『シン・アスカ、インパルス、出ます!!』

 

機体がカタパルトから押し出され、装甲が紫色に染まっていく。

 

「良いか、2対30だ。互いにカバー……いや、好きに暴れろ。俺は適当に援護する。」

『了解!』

 

シンの潜在能力は非常に高い、それに動きが派手だ。故にシンを狙う敵は多くなるので、そこを俺が掻っ攫う作戦で行かせて貰う。

 

カオスが突出、だがMAになれる相手なら俺の方が良い。

 

「シン、俺がカオスを引き付ける。あのリーダー機は任せた。」

『は、はい!』

「だが突出し過ぎるな、俺やミネルバが援護出来る範囲に留まれ。」

 

カオスの射撃は正確、故に少し捻るだけで外れる。

 

「……やはり、幼稚すぎる。」

 

カオスもアビスも、ガイアも射撃が馬鹿正直だった。所謂“置きAIM”をしていない。いや、確かに弾速を考慮した射撃はしているが回避行動の上に置くことがほぼない。まるで子どもを相手にしているかのような……

 

「とは言え、油断は禁物だな。」

 

逆に言えば、回避しなければ確実に当たる。故によく動く事にした。

 

「ADMM発射用意、ドライヴ!」

 

夥しい数のマイクロミサイルが、シンを狙うウィンダムの群れに殺到する。撃破したのも居れば、単純に損傷した機体も多い。そんな機体は全て下がっていった。島の方向に。

 

「お優しい指揮官様……いや待てよ。ミネルバ聞こえるか!」

『どうしたの!』

「離脱する敵がいる。方位は……チィ、とにかく島だ、戦闘区域に近い島だ!基地や空母が隠れてるかもしれん!」

『分かったわ……今度は何!?』

 

ミネルバの通信を一度切断、突っかかるカオスを適当にあしらいながらシンの方を見る。ウィンダムの群れを順調に食っている。

 

「……成長を見せつけてくれるな!もっと暴れるか!」

 

スプリットSで下を取れば、予想通りカオスは追従する。向かうは……ウィンダムの乱戦真っ只中。

 

「大丈夫かシン!」

『このくらい楽勝です!』

「軽口が叩けるあたり強くなったな!カオスを引き連れてそっちに向かってる、流れ弾に注意しろ!」

 

背後からのビームを、下部にマウントされた盾で流す。一機のウィンダムの近くを掠めたのを見れば、カオスの射撃が止まった。

 

「撃て!」

『ぉおおおお!!』

 

カオスのポッドにビームが直撃、撃墜は出来ずとも戦闘力を奪えた。と思えば下方からビームが発射される。アビスが上がってきたのだ。

 

『こちらミネルバ、レイは潜水艦の援護を、ルナマリアは狙撃による援護を開始します。』

「オーケー、ガンガンやってくれ!」

 

すぐに赤いビームがウィンダム2機を巻き込んで到達する。射撃の腕も良くなってきたな。そしてまた下方からアラートだ。

 

「ガイアも来やがったか、残り8機……いや引いてくな。ミネルバ、どうする?」

『島の陰から空母が出現したわ。でも逆方向に向かってるわね。とりあえず基地の様子をヘキサとシンで見てきて頂戴。』

「ラジャー、行くぞ。」

 

機体を向かわせて、間もなく島の様子が見えた。

 

『民間人だ……民間人が居ます!奴ら……クッソォ……!』

「落ち着けシン。確かにそう見えるが銃を突き付けて来るかもしれんし、爆弾を腹に抱えてるかもしれん。命令に従え、まずは制圧から始める。」

 

対空砲と戦車を少しずつ潰す。動いている戦車は撃って来たのを確認してから撃破。外部スピーカーを起動し、基地に降り立った。上空に向かって一発照明弾を撃つ。

 

「こちらはザフト軍だ。その場でいい、民間人は両手を上げて、膝をつけ。そこの赤ん坊を抱えてる母親は特別に免除してやる。」

『隊長……!?』

「諦めろ、俺たちの身が最優先だ。自分の身を守る事も出来ん軍人は無価値だ、覚えとけ。」

 

下でざわめきが広がるので、今度はもっと圧を掛ける事にする。一歩前に出て、右腕を少しだけ上げた。

 

「……テロリストか、お前ら?」

『ッ隊長!』

「騒ぐな、流石に俺もそうは思ってねぇよ。でもな……安全の確保くらいは少し荒くともしなければならん。」

 

テロリスト、の単語が理解出来ていたのか直ぐに両手を上げる現地人。怯えているようにも見えるが、その目の奥には確かな闘志も見える。これは……何かを守りたい奴のする目だ。余程自分たちの街が恋しいのか、それとも踏みつぶされていて、再興させたいのか。どちらにせよ、追撃の可能性は限りなく低いか。

 

「敵性反応は?」

『……沈黙です。』

「よし、身体検査を終了する。シン、帰るぞ。」

『えっ!?検査なんてやって…』

「済んだし、さしたる危険性もない。完全な制圧も侵攻の意思があると見做されかねんし、無用な労力は出さない方が良い。」

 

そう言って、機体を基地の外まで出すと一気に上昇する。

 

「ったく……案外牙を隠してるもんだな。連合が来ても、割と大丈夫そうだ。」

 

逞しく戦車に乗り込んだり、基地の中へと入って行く彼らを見てそう呟いた。

 

 


 

 

ムハマール基地に到着、直ぐに基地司令との方針の共有が行われた。

 

簡潔にまとめれば……スエズが孤立しない為にガルナハンと呼ばれる場所に連合が橋頭保を築いた。そこをどうにか落とせば、連合にかなりの打撃を与えられる。しかし、山間にあるためアプローチできるのは渓谷からのみ。そこには陽電子砲とリフレクターを装備したMAが配備されている為、突破が出来ていなかった。

 

俺たちはその手伝いをして欲しい、との事だ。そもそも、俺たちもジブラルタルに行くのが難しくなるのは確かなので、断りもできない。

 

「……全く、ここの司令も中々無茶を仰るもんですなぁ。」

「そう言わないの。どちらにせよ、あの人の立案でしょうし、仕事ならやるしかないわ。」

「言ってみただけですよ、政治的思惑が現場を辛くさせるのはいつもの事ですし。なぁアーサー?」

「えっ!?あ、ソ、ソウデスネ……」

 

基地を歩きながら、地上戦力の把握をする。バクゥにジン、ガズウートと戦闘ヘリ。戦艦はレセップス級とピートリー級か。

 

「……我々が突っ込んで、機動力の低い彼らには後方火力支援に徹してもらうのが道理ですかな?」

「そうなるでしょうけど、やはり陽電子リフレクターが厄介ね。」

「MA、となるとやはりオーブ沖で見た蟹みたいな……」

「MSにMAくっつけた出来損ないだな。まるでアラクネみたいだぜ。ほら資料。」

 

逆に言えば、手持ち武器による広範囲への対処が可能、という事でもある。中々手厳しい相手だ。

 

「……レジスタンスが協力してくれるのが、やはり一番心強いんでしょうか?」

「確かにそうだけど、そう簡単に行くかしらね?」

「敵の敵は味方とも言うでしょう、一時的な協力体制にはなりますよ。」

「だと良いのだけれど。」

 


 

とある宙域。一つの組織が新たにターミナルへと加わった。名前は“ACES”。

 

「これからよろしくお願いします、皆さん。」

「……しかし、ターミナルでもない組織がここまで勢力を広げられたものだ。」

「そうですね……プラントの一つの思想組織とも言えますから。」

 

ターミナルから派遣された男は、秘匿工場を見て嘆息する。アメノミハシラやファクトリーにも劣らない、非常に高度な工場だ。

 

「しかし……こんな手土産を貰えるとは思いませんでした。」

「あなた方のナチュラルに歩み寄ってくれるコーディネーター、という点は我々としては非常に評価したい一点ですから。」

 

それに、とやや色黒な男性は眼鏡を掛け直してから言った。

 

「我々も修復しようかと思っていましたが……既に色々とレーンが立て込んで居まして、持て余していたのですよ。」

「私たちからすれば、この一隻で元々作ろうとしていたジャンクチャ3隻分の戦力になりますからね……」

 

運び込まれた積み荷を見下ろしながら、ニコルは少しだけ頭を抱えた。現在作ろうとしているジャンクチャのプロジェクト解消、二隻あるジャンクチャの保管。そして“手土産”の修理部品に、彼自身の苦い思い出。

 

「……まさか、アークエンジェル級とは。」

「首領であるヘキサ殿が上手い具合に破壊していましたから。修復箇所は装甲と艦橋部分くらいですかね。」

「元の名は?」

「ドミニオンと。」

「……この艦の名前はプリンシパリティとします。ある程度これでMSに力を入れられます。」

「ドムの設計図を提供出来ますが?」

「いえ、それには及びません。既に3種のラインが出来上がってますから。」

 

手脚を喪失した帰還兵用のファイター“PW-MK.1”、そして一般兵用の“ゲイツJ(イェーガー)”。そして、ヘキサ専用MSが一機。

 

「機体名はフェイス。結局武装が決めきれなかったので、いっそのこと近遠で武装パックを変更する形にしました。」

「……フリーダム(自由)ジャスティス(正義)と来てフェイス(信仰)ですか。」

「自由であり、正義でもあり、だけれどそのどちらでも無い。仕事人で、責任に縛り付けられている苦労人にも見えて、案外わがままで振り回されたりもするんですよ。正義を護る様で、悪にも堕ちれる。ひとえに、何かへの信仰が無ければできない。僕はそう考えているんです。」

「ともすれば一体何を信じて進んでいるのか……」

「少なくとも神を信じてたそぶりはありませんでしたね。」

 

時に羽ばたくための翼を広げ、時に居場所を守る為に鎧と大砲を身に纏う。彼の精神が映し出される様な機体になる。ニコルはそう感じていた。

 

「遠距離武装パッケージ“オープン”、近距離武装パッケージ“クローズ”。ヘキサの嫌う換装系ですが……仕方ありませんね。」

 

パッケージ嫌いの彼を思い浮かべて、足りない人手を補うための策を練り始めた。

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