C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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非道を咎めし破戒者

「つまり……連合の廃棄施設がある?」

「みたいですね。現地住民からの情報ですが……どうやらかなり大規模な研究所、という事らしいです。車両もMSも多く出入りしていたという事です。」

「何でそこに俺とレイが?普通に斥候兵に向かわせればいいじゃないですか。」

「仕方ないだろ、本部からの正式な命令なんだぞ?」

「お前たち二人を向かわせる理由に関しては早急に解決したい問題だという事もあるが……未だに連合が居る、若しくは武装勢力が居る事を前提とした作戦だからだ。接敵した場合の発砲は許可されている。近辺にはないだろうが、民間施設などへの被害は出すなよ。」

「了解しました。」

 

レイとシンの2人の機体が飛び立ったのを見て、俺も準備を始めた。

 

「じゃ、俺も行くとしますか。」

「あれ、別の任務でもありましたっけ?」

「いいや、俺が探りたい事がありましてね。タリア艦長には通達済みだ、というか艦長の助言でな。」

「はぁ……」

 


 

話は襲撃事件後にさかのぼる。とりあえず全機の生還を喜んでから反省会が始まった。その渦中で、ハイネから俺に手痛い質問が投げかけられた。

 

「あのムラサメ、キッチリとどめを刺さなくて良かったのか?」

「……なんのことだ?」

「あのエースって言ってたやつ!俺の目は誤魔化せないぜ?達磨にしてから海中に叩きつけただけだったろ?」

「あぁ……まぁ簡単に言うと、あれに乗ってたのはアスランだ。」

「アスランが!?」

「アスラン……あぁ!パトリック・ザラの息子か!そういや同期って言ってたよな。そりゃ殺しにくい訳だ。」

「まぁ仲間意識ってのもあったが、あそこで殺すと外交問題にも発展しかねん。」

「そう言えば、以前オーブ首長の想い人とおっしゃられていましたね。となると……あの現場に居た姫君に配慮……いえ、アークエンジェルへ?」

「そういうこった。もし銃を向けてきたら、俺がそのツケを払う。きっちり踏み倒してやっから、安心しな。」

「はは……」

 

傲慢にも聞こえる言葉だろうが、今は構わん。ともかく、今度情報の摺り合わせをしたい。ザフト軍に潜り込ませられた工作員は少ない。というか前大戦で前線に出ていた生き残りしか居らん。故にこういった地球にある基地にはほぼ居ないと言っていい。民間人として地上に降りたACESの人員と合流したいもんだが……

 

『ヘキサ、通信が入ってるわよ。』

「はい、どなたからでしょうか?」

『ユーリ・アマルフィ議員からよ。』

「了解しました。」

 

通信機の電源を入れ、椅子に座った。ニコルの父さんと言う事は、確実にACES絡みの件だ。既にマイウスの代表の地位からは追われているが、未だに議員としての活動は行っている。忙しい合間を縫って、俺への通信。重要事項だ、これは。

 

「お久しぶりです、お変わりない様で……」

『ヘキサ君、単刀直入に聞きたいのだが……ニコルの行方を知らないか?』

「ニコルが……?」

『地球に少し気分転換に向かう、と開戦前にシャトルに乗ってから……行方が分からないんだ。』

「……具体的に、どこへ向かうとは?」

『汎ムスリム会議、イスタンブールと聞いた。今君たちはポートタルキウスに居ると聞いてね、捜索をお願いしたい。』

「……ミネルバ出航までの期間です。よろしいですか?」

『あぁ……もし見つかったのであれば、仲良くケバブでも食べてほしいものだ。』

「全力を尽くして、是非そうさせて頂きますよ。」

 

連絡は以上だった。なるほど、要するに“イスタンブールのケバブ屋に向かえ”という事か。

 

「……よろしいですかね、艦長?」

『本来なら許可できないわね。でも、あなたの同期、それも元最高評議員の息子。こちらからも捜索隊が出てない。よって捜索を許可します。誰か他に連れてくかしら?』

「手が空いてる奴が居るので?」

『そういう事。では、離艦を許可します。』

 


 

そして、イスタンブールで一日だけ地理を把握してから一番美味いと評されるケバブ屋を探した。そこに向かえば赤地に黒くAと印字されたバッグを持つ男が見えた。間違いない、ACESの人員だ。

 

「よぉ、あんたか?」

「合ってる。着いてきな。」

 

男が歩く後ろをついて行く。道行く人々の顔を見ても、中々疲弊しきっている。クソッタレな戦争のお陰で、この国もまた困窮に陥っているのだ。

 

「おい、ここで良いのか?」

「生憎ここ周辺にセーフハウスはなくて。カフェで堂々と話してた方が案外気取られんもんですよ。」

「……まぁ判断に従おう。取り敢えず情報の摺り合わせと行こうじゃないか。」

 

一時間ほど、情報の摺り合わせをし続ける。何と言うか、観光地だからか喧騒も中々のもので、隣の客の会話も聞こうと思っても聞けるもんじゃない。

 

「なるほど、ターミナルに合流……アークエンジェルは、敵じゃないってか?」

「勿論アンタは撃っていい、というか撃ってください。別に味方って事でもないんで。」

「ふぅむ……敵じゃないやつを撃つ、ねぇ。気が引けるもんだ。」

「あ、あとまだアンタの機体は完成してねぇみたいです。パッケージ機体の予定らしいですが。」

「……まぁ作ってくれたからには使いこなすさ。」

 

視界の端に、女が映った。俺よりも歳は若い、というか20に届いてないだろう。

 

「……なぁ、気付いてて?」

「それはどっちに対しての言葉だ?」

「両方っす。」

 

テーブルに代金とチップを置いて、無糖のチャイを一気に飲み干す。渋みが舌の上で踊り、心地よい香りが鼻を抜けた。次の瞬間には女が歩いて行った方に向かって早歩きだ。

 

しばらくして路地裏に差し掛かったところ、女もこちらを認識していたらしい。こちらに来いというハンドサインを取った。

 

「……若いのに度胸があるな。」

「いやアンタもそう変わらんでしょうに。」

「まぁ、前の戦争じゃ巻き込まれて最前線にいたわけだしね。このくらいはね?」

「最前線……あぁ、ヘリオポリスか。」

「そういう事よ、ザフトのトップエースさん?」

「なるほどな。名乗る意味は無いが、ヘキサ・ラプトリオだ。」

「ミリアリア・ハウよ。ディアッカはどうかしら?」

「ザフトに戻って、イザークの下で副官やってるよ。毎日働きづめって訳だ。」

 

アークエンジェルに乗ってた奴が今は戦場カメラマンとは……。しかもディアッカと知り合いか。相当な修羅場をくぐってきたのだと見える。

 

「もう一度聞くが、アークエンジェルの現況の情報はなかったんだな?」

「えぇまぁ……はい。」

「アークエンジェルと通信は取れるか?」

「え?私はもうあの艦を降りてるのよ?まぁ、手がないわけじゃないけど……」

「よし、お前。本部との暗号通信回線のコード、持ってるな?」

「……猛烈に嫌な予感がしてきやがりましたが。」

「よぉし行ってこい!本部とアークエンジェルの情報をバイパスしてやれ!」

「はぁ……もし衝突したらどうするんですかい。」

「いくらアークエンジェルとて、ターミナルと明確には衝突しまいさ。もしまずったら……いやまぁアークエンジェルだしな、あまり酷い扱いはされないと思うがね。」

 

これでアークエンジェルと情報共有が出来る。流石に俺が知る事は出来ないが、ニコルが知ってくれれば組織のかじ取りは任せられる。

 


 

ケバブを食ってから戻ってきたところ、ミネルバが発進したと通信が入った。現在シンとレイが作戦中の筈だが……恐らく何かトラブルがあったと考えられる。

 

「艦長、何がありました?」

『悪いな、艦長は今突入した部隊の指揮で忙しいから俺が答える。レイが倒れちまったんだ。端的に言えば、研究所だったみたいでな、今ガスやらウィルスが検出されてないか調べてる途中だ。』

「シンの方に異常は?」

『無いんだよなぁ、それが。レイの検査も終わったが、回復しちまってるしな。』

「そうか……となるとガスやウィルスの可能性はないな。シンの方が抵抗力ねぇし。着陸地点はどこにやればいい?」

『ミネルバの横にある、俺たちが居るテントよりちょっと先に頼む。』

「オーライ。」

 

恐らく、レイの体調不良はフラッシュバックに要因があると見える。元々クルーゼ隊長のクローンなんだ、呪われた人生の始発点。気分も悪くなるもんだ。セイバーを降り、部隊の報告を待つ。

 

「……エクステンデッドか。確か、ヤキンで戦いましたね。」

「連合の新型の方の事ね?そうね……あぁ、この子は廃棄処分と書かれてないわね。」

 

クロト・ブエルか……俺が撃墜したのか、それとも残った1機の方かは分からないが、少なくともあの時は絡め手を駆使したが、曲がるビームは冷や冷やしたもんだ。背後からの……誤射を顧みぬ攻撃も、強化された事に起因する、感覚の鈍化があって出来たものなのだろう。

 

「こりゃあ……またひでぇ話だな。」

「こんなのって……コーディネーターが、自然の摂理に反するものだって言っておきながら!自分たちはこれですか!!?」

「勝つためには手段を選ばない。これまたナチュラルらしいよな。」

「ナチュラルと言うよりは、ブルーコスモスだな。ったく、ゴミ拾いでもしてやがれ環境団体めが。」

 

データの吸い出しを急ぐが、連合が放置するはずもない。艦長に断りを入れて、MS隊を五角形に展開させる事にした。ハイネとレイがミネルバの直援、俺がその反対側。シンが右方で左方にはルナマリア。即応体制だが、先ほどまで体調が悪かったレイは後方だ。俺もそこまで鬼じゃない。

 

……んだが、状況が変わりそうだ。

 

「艦長、敵機接近。ガイアだな。」

『こちらでも確認したわ。後続は無さそうだけど、気を付けて頂戴!』

「シンを連れて行く。ハイネは俺らの居た場所に配置、レイはそのまま施設とミネルバの護衛!」

 

セイバーを変形させ、突貫する。

 

「目視した。特殊装備は……無さそうだな。」

『じゃあ一体何が目的で……ッ!?』

「とにかく掛かるぞ。施設に近づけるな!」

 

インパルスを踏み台にしたガイアがこちらに飛び掛かる。クルビットで変形しつつ、ガイアの尻を蹴り飛ばして地面へと墜落させつつ、両腕をサブマシンガンで破壊。地面へと降り立っていたシンへとパス。ガイアの足を斬った。流石に空中戦で後れを取る訳にはいかん。

 

「無力化完了。後続は?」

『今のところはないわ。本当に何が目的で……』

「……命令違反、とかでしょうか?例えば、この施設で育ったエクステンデッドとか。少々動きが実直すぎるところ、子どもみたいだ。データの中にあるか調べてみては?」

『えぇ。ガイアをこちらに運んで頂戴。今すぐサルベージ隊を向かわせるのは困難なの。』

「了解。運んでくれシン。セイバーじゃ持っていけん。」

『エクステン、デッド、か……』

 

思うところがある様なシン。何があったかは知らんが……ともかく、連合からここを守らねばならん。しばらく働きづめって感じだろうなぁ……

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