C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「艦長、鎮静剤及び保安要員のスタンバイは?」
『出来てるわ。着陸地点の座標は……今送ったわ。』
「了解、こちらでも視認できた。四肢を捥いでるとは言え、パイロットはまだ生きてるかもしれん。俺とシンはここで待機。」
『……了解。』
インパルスの動きがやや鈍いか。ともかく、着陸してガイアを下ろす。コックピットが開けられ、中から女の子が担ぎ出された。
『あれは……!』
「シン、待機だ。」
『ステラッ!!』
「待機!!」
インパルスのコックピットを右手で押さえつける。シンがインパルスから飛び出そうとしていたからだ。グフのスレイヤーウィップがインパルスに巻き付く。インパルスが動き出せば内部メカを焼き尽くすことだろう。
『隊長ッ!でもあれは』
「何があったかは後で聞く。だがあれはガイアのパイロットだ。お前の友人だろうが、例え恋人であろうが、それは変わらん。今お前は軍人だ。押し殺せ、さもなくば俺たちは滅びる。」
『とは言うけどさ、まさかあんな幼気な少女がガイアにねぇ……ちょっとかわいそってね?』
「それは俺も同じだ。ハイネと俺で何とか出来ねぇか上申してみるが……あまり期待はするな。」
『ま、とりあえず何があったか話してくれよ。』
『……イオキアの海で、海に溺れそうになっていたのを助けて、取り乱して……』
「戦争の被害者だと思ってた、って訳か。」
話を遮るように、休息を取らせているレイから通信が来た。
『隊長。』
「どうした、敵襲か?」
『いえ、この施設のデータを調べていたところ……ガイアに乗っていた少女と似たデータがあったようです。』
「マジか……やはりエクステンデッドか。鎮静薬はどこまで効くかは?」
『未知数と言えます。やはり拘束する他ありません。』
『そんな……ッ!』
「落ち着け、軍医が総出で解決策を探す。堪えろ。門外漢のお前が出たところで出来る事はない。」
とは言え、ガイアを盗み出したと思われる張本人。罪状を積み上げているザフトにとっては助ける義理もなし、いいとこ被検体送りか。ここでシンが騒動を起こすのはやめて欲しいもんだが、どうすべきか……
「ともかく、この施設の情報をもっと抜き出す他にねぇか。諜報班、情報収集しっかり頼むぞ。」
『了解です!』
「ルナマリア、別の部隊が来た。交代して休め。ミネルバのMSはこれより休憩に入る。アウト。」
艦長と共に医務室から出て来たシン。やはりと言うべきか、その表情は暗い。
「やっぱ顔見知りか?艦長、彼女の容態は?」
「最悪もいいとこね。何がどうなっているのか……専門的な設備が必要よ。」
「ジブラルタル基地からプラントに送るしかねぇって訳か……」
「それでも間に合わないでしょうね。」
しかし、一度顔を合わせただけの子をここまで想うとは……ガイアのパイロットに妹を重ねているのか。是が非でも救ってやりたいが、立場的には捕虜だしな。
「……割り切れないもんだな。」
「……えて、なかったんです……!」
「何?」
「ステラはッ!覚えてなかったんですよ……俺の事を!!」
艦長に何があったかを粗方聞いてから、俺は考え込む。
「記憶と感情の操作か……なるほど、幼児性もそれが由来か。となると連合はどうやって記憶の処理を行っている?研究所での経験によるトラウマ?メンタルケア等に加えて、薬の副作用を利用して激情を誘えば身体や思考の硬直など簡単に出来る。加えて戦闘時における反応速度上昇も視野に入れ、かつ量産が効く程度の費用に抑えるには精製が簡単な物質が候補に挙げられる……」
「ヘキサ。考察するのは良いけど、シンの前よ。慮ってあげなさい。」
艦長の声で思考の海から引き揚げられた。全く、年上としての立つ瀬がないな。
「あぁそうだった。スマンな。で……シン。お前はどうしたい?」
「そんなの、助けたいに決まってますよ!!でもどうすれば良いんですか!?ここじゃ治療できなくて、プラントに送っちゃ間に合わない!」
「とにかく最善を尽くそう。が、どうする?恐らくジブラルタル基地まで連合とオーブがうじゃうじゃいやがる。この子が居ると言っても、鉄砲玉扱いじゃお守りにもならん。」
「待って頂戴、この子を乗せていくつもり?」
「じゃないと命を救うどころか、今後の治療法さえも作れんのですよ。勿論、戦場に出て来る以上は撃ちますが……あなたは、衰弱した年幾ばくかの子どもを見捨てられますか?」
「はぁ……仕方ないわね。ミネルバに乗せる以上、万が一の事態が起こった場合にはあなたに責任がある事は憶えておきなさい。」
「勿論ですよ。とにかく……シン、近くで見守っててやれ。人間忘れたことでも思い出す事があるかもしれん。」
「……はい。」
医務室の隣にある独房で、エクステンデッドの少女は拘束及び治療がされる。シンが一度自室に向かうのを見送ってから、俺も溜息を吐く。
「しかし堪えますな、戦場は。人の醜い部分が露呈する場所だ。」
「同感ね。でも覚悟を決めた以上、はね?」
「えぇ。俺も腐りきらん様に、強くあらねばと。」
「なら良いわ。直ぐに出航よ、少し休んで頂戴。」
「そうさせて頂きます。後の事はハイネに。では。」
「あれがアークエンジェル……なるほど、いかにもな貫禄があるっすねぇ……」
ヘキサの手先とは言えこの男をアークエンジェルに招き入れて良いモノか、と改めて思案している。いかにも軽薄という言葉が似合いそうなこの男、ヤキンの戦いではヘキサを拾った艦の火器管制を担当していた様だが、そもそも後方の艦だったのだから腕が良いかは分からない。
とは言え、着艦してからでも制圧は簡単に出来る。そもそも、もしスパイだとしたらどこの軍からも孤立した艦に一人で乗り込んできていることになる。流石にそんなリスクを冒す事はない……はずだ。流石にアークエンジェルやフリーダムという戦争の英雄であるからして注目は集めるだろうが。
ムラサメをアークエンジェルに入れる。隣にはミリアリアを乗せたフリーダムも一緒だ。
「なるほど、確かにミネルバよりかは旧式……でも改修が重ねられてて……ほー……」
「……ねぇアスラン。」
「ヘキサのところから来ているから、大丈夫……だと思いたいが……」
ともかく、彼の持ってきた暗号回線があればターミナルと緻密な通信が出来そうだ。今後についても色々と話し合いたいものだ。
「とりあえず、コンソール借りるっすよ。でもかなり強固に暗号を設定してるんで、数時間くらい。」
「分かったわ。通信用コンソールはそれだから、頼んだわ。」
「りょーかいっす。」
ところで、とマリュー艦長が席に座った彼に声を掛けた。
「自己紹介、互いにしていなかったわね。私はマリュー・ラミアス。アークエンジェルの艦長をしています。」
「あー、ヴォータン・トーレスっす。元ザフト緑服、現在はターミナル所属でACESではプリンシパリティで砲手を担当するっす。」
「プリンシパリティ?」
「この艦の同型艦っすよ。この前ターミナルが拾って、ACESで運用する予定なんすよ。んで、砲手がいないって事で一回こっちで慣れとこうってゆーわけっす。」
「ドミニオン……ね。」
「そうそう、元々そんな名前だったような……」
キーボードを叩く音が少しの間響き渡る。しかし、同時にマリューの顔も沈んだものになった。ヤキンの事を思い出しているのだろう。
「……ムウを撃ち落としたのは、あなた達のリーダー、でしょ?」
「あんたが見たまんまっすよ。もしブリッツの改造機がやったんなら、そうっすね。」
「マリューさん……」
「まぁ希望はあるんじゃないっすか?撃破されたストライクの残骸を漁ったみたいなんすけど、コックピット周りの残骸がなくなってたみたいっすから。もしかしたら連合あたりに拾われてるかもしれないっすね。」
「そんな事を聞いているんじゃ…!」
「ラミアス艦長!確かにあなたの言いたい事は分かる。でも……今はこれが最善手なんだ。」
「っ……そうね。悪かったわ。」
「言いたい事は分かるっすよ。でも、戦争ってのはこういうもんっすから。撃てば相手が死ぬ、撃たなければ後でより大勢が死ぬ。例えそれがかつての仲間であろうと、引き金は退かなければならないんすよ。」
どこか哀愁を漂わせる彼の背中に、非難の言葉を投げる事は出来なくなった。ともかく、ターミナルとの通信が確立できそうなのだ。と言うときに限って連合に動きが出来るものだ。この艦はそういう運命にあるのかもしれない。
「前方に艦影!空母1、護衛艦3!」
「MS部隊は各機モビルスーツの中で待機だ!急げ!」
艦橋に居た俺の発進順は最後尾だ。まぁしゃーない。先にインパルスとグフが出る様だ。
「準備終わるまで持たせとけよ!」
『当たり前だ、急げよヘキサ!』
『シン・アスカ、インパルス行きます!』
『モビルスーツ発進停止!回避運動開始!』
強烈な衝撃が艦内に走る、何とかセイバーに乗り込んで俺は通信機で叫ぶ。
「飽和攻撃が来る、3時と9時方向にも注意しろ!」
『3時方向にオーブ艦船3、2時方向にムラサメ9!』
「シン、直ぐに出ろ!ハイネは合体の援護、俺が出たら出て来る連合のGを相手だ!俺が露払いをする。レイとルナマリアはまだ待機だ。」
『隊長、上申を。我々は甲板に出て、直掩をハイネに。シンと隊長が遊撃を。』
『良い判断だ、成長してきたじゃん?』
「そうだな、許可する。」
シンがブラストシルエットを装備したのを確認して、直ぐに発進する。
「アビスは任せるぞシン、俺はカオスを片付ける!」
『了解!』
ムラサメの群れに突貫し、マイクロミサイルをマルチロックして発射。変形してカオスのビームライフルを躱し、反転しつつSMGで牽制する。
「なるほど、即興にしてはまぁまぁな連携だ。だが!」
カオスの射撃は味方であるはずのムラサメを無視したもの。故に流れ弾を避けるのに大きくバンクしたムラサメ。直線的に動けば近付くのはたやすい。そして機首を掴んだ。コイツが指揮官機だ。
「もっと緻密な連携を心がけるんだな!」
ムラサメをカオスに蹴り飛ばし、そのままビームサーベルを抜く。周囲から援護のビームが殺到するが、稲妻の様な機動で回避する。
「流石オーブ軍、練度が高い。予測射撃も正確だな。」
カオスにムラサメが激突した瞬間、一気に後方にブーストしてアークライトを2機に向かって発射。ムラサメは爆散、カオスが墜落した。
「カオスを撃墜。シン、援護は要るか?」
『要らない!』
『それよか敵艦をやってくれよ、こっちは任せときな!』
「了解した。指揮権をハイネに任せる。死ぬなよお前ら!」
ムラサメをいくらか撃墜しながらセイバーを翻し、敵陣の中へと突貫した。