C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「シンとレイがあの強化人間を逃がした!!?」
「とりあえず、ここで保安委員に捕らえられた。二人とも営倉行きだな。インパルスは既にオーバーホールが始まってる。」
帰投した後、直ぐに救助部隊や調査部隊を護衛に向かった。そしてミネルバの修理が終わるかと言うところに帰ってくれば、それはとんでもない事態になっていた。
「つか普通に銃殺モンだろ。何をそこまで入れ込む……」
「もう持たないって話だったろ?んで、生かしといても薬品の無駄だー、とか最悪サンプルだけで良い、とか廊下で鉢合わせたときに聞いてたみたいでな。」
「んな話を目の前でやったら俺だって気分悪いっての……つかそうゆうの医務室でやんねぇのな。」
「まーしょうがないんじゃない?俺らだってバタバタしてたしさ、ザクだって追えるように眠ってたファイターパック引っ張り出して付けてたんだぜ?」
「あったのかそれ。つか式典用に降ろさなかったのか?」
「降ろす前に、アーモリーワンの騒ぎってさ。」
どう責任をとったものか。もちろん、FAITH権限で二人の減刑を嘆願することはできる。が、ミネルバに配属されている俺とハイネ、タリア艦長には監督不行き届きという罪状がある。ほぼ詰みである。
かと思ったが、そもそもレイもシンもデュランダル議長の眼鏡に適った人間だ。そう手放すわけにもいくまい。
「ま、勝手に減刑されんじゃねぇか?」
「そのまま釈放だったらどうする?」
「少なくとも営倉入り1週間だな。」
「ま、議長の命令に反抗するなら最適くらいじゃねーの?」
「正直インパルスを降ろさせたいが。」
「代わりは俺ってか?」
「いや、ルナマリアだな。お前はもっと良い機体が用意されてるだろ。」
「そうかねぇ……」
結局シンと面会する暇はなかった。簡潔に言えば、仕事が入ってきた。それもどでかいものが。
「ベルリンにて大規模な戦闘だと?しかも都市丸ごとぶっ壊してるって?」
「艦隊司令部からの命令よ。我々はこれから、ベルリンに向かって制圧を行います。」
「っても、都市丸ごと焼いてるんじゃあ生き残りはなぁ……」
「期待出来なくても行くしかないわ。そもそも、これから叩く敵なのだから早いに越したことはないでしょ?」
「そりゃそうだが……MSはどうする?シンとレイはまだ独房入りだが……」
「ルナマリアはまだ安静措置よ。セイバーとインパルス。それと、ザクを共食い整備させればちょうど一機になるわ。」
「その、それなんですが……先ほど、議長から直接通信があり……」
「二人とも無罪放免ってか?」
「そうなんですよ……ってえぇ!!?どうしてわかったんです!?」
「顔に思いっきり書いてあんぞ。」
「とはいえ、寝かしておくには惜しい戦力には変わりないわ。次の出撃、シンはインパルスで出すわ。いいわね?」
「こんな状況だ、四の五の言ってる場合ではない。が、最低限再教育は必要だ。」
ブリーフィングルーム。確認に入る前にシンとレイを大振りで鉄拳制裁する。銃殺刑の代わりに拘禁と鉄拳で済んだことに感謝してほしいもんだが、まだ二人とも若い。理解は出来んだろう。
「今回の作戦は民間人を虐殺しやがった連合の蛆虫共に痛い目を見させてやることだ。いつも通りだ、暴れろ。だが、条件を付けようと思っている。シン、先陣を切れ。今回はそれで手打ちにしてやる。」
「……手打ちってどういうことですか。あの子を生かしたかった、あんたもそう言ってたじゃないですか。」
「トリアージは習ったな?確かに彼女は捕虜だった。だが味方を危険にさらしてまで守るもんじゃない。」
「両方生きれる方を選べばよかったじゃないですか!ステラは、あんな事をされて……望んで戦場に出たわけじゃなかった!ならせめて生きてて欲しかった!あの人だって、もう戦場に出さないって約束してくれた!」
「結果何人死ぬ?一つ道を切り開いただけでいくつの道が閉じる?あの人ってのは一体どこの馬の骨だ?敵だろ?そいつが戦場から離す事に同意しようとも、上官命令であれば使い道すらないあの子に爆弾を持たせてテロだって出来る。お前はその責任を持てるのか?今ベルリンで暴れてるやつらの中に、ステラが居ないと証明できるか?」
「じゃああのまま死ねば良かったって言うんですか!?」
「そうかもな。これ以上彼女の手を血で汚す気なのか?ならせめてやれるところまでやって、それでもダメだったらお前が見送ってやるべきだった。やりたくない事をさせる所にお前は彼女を送ったんだぞ。そもそもの話……」
「ヘキサ、そこまでにしろよ。作戦前に、あんまりピリピリしてちゃマズいっしょ?」
「……そうだな。反省の態度を示すなら、命令に従え。いつも以上に従順に、だ。状況開始!」
「ターミナルから通信、アスランさんを指名っす。」
「何だ急に?」
「ほら、早く。」
ヘッドセットをかけ、モニターを見つめる。画面に映ったのは、緑の髪をした同期の姿だった。
「ニコル!」
『アスラン!お久しぶりです。元気でしたか?』
「何とかってところだな。そっちこそ、元気そうで何よりだ。で、何があった?」
『地上の構成員が居る基地が破壊されたんです。通信が途絶したので先日、偵察機を向かわせたところ……』
「連合の戦力か?」
『ですね。ベルリンでも戦闘が行われているので……あなたには彼らを迎えに行って、共同作戦をお願いしたいんです。』
「了解した。生き残った隊の名前は?」
『エンジェル隊です。先日までミネルバが停泊していた基地で、ヘキサとも一緒にやったみたいですね。』
「分かった。追加作戦は?」
『マルキオ導師にヤマト夫妻、そして孤児院の子どもたちを狙った襲撃部隊が動いているようです。』
「今更っすか?そもそもそこを狙って何がしたいんだか……」
「ヘキサへの牽制、人質だな。」
「私たち、感づかれてるってことっすか?」
『おそらくは。ヘキサの周辺を洗っても、僕たちが行方不明ってこと以外に不審な点はないです。名こそ彼でも、運営は僕らですし。』
「“虎の威を借りる狐”ってやつだな。ともかく、議長はヘキサについて何か感じているみたいだ。不安要素を排除しておこう、という魂胆だろう。」
ターミナルではとうの昔にデュランダルがラクス暗殺部隊を送っていることを掴んでいる。それと同じ手口だ。おそらく、前の暗殺部隊を見られたことに対する口封じの意味も込められていると踏む。丁度はフリーダムという戦力はない。絶好のチャンスだ。
「迎えの準備もしたいっすね。オーブ軍に回収を頼むっす。」
「ジャスティスはどうなんだ?」
『もう地上に送ってます。丁度合流時に搭乗できる手筈ですよ。』
「仕事が早いっすね。」
『ファクトリー総出で仕上げましたから。エターナルが現在地球軌道上に向かっています。』
「そこから、ジャスティスが投下されるってわけか。」
『プリンシパリティのクルーも連れて行ってください。ストラトスに乗せてプリンシパリティに送り届けます。』
「了解。すぐに行く。」
「総員第一戦闘配備!選抜クルーは輸送機へ!ランチ射出後ベルリンへ最大戦速!」
マリューの掛け声とともに、船内が慌ただしくなった。
「とんでもない被害だな。前線は完全に壊滅状態ってわけだな。」
『だな。しかもあのデカブツ……全身ビーム砲で包まれてやがる。』
「それでいてMAの防御力もある。全く面倒な奴だ。」
『んで
「……少数で今まで切り抜けてきたとは言え、これは無理だ。今は敵を間違えるな、時期は来る。」
『了解っと。行け、シン。』
『言われなくても……!』
この惨状、シンであれば間違いなく飛び込んでいく。罪の清算としては丁度いい。
「……フリーダムと戦闘してるウィンダム、見えてるか?」
『バッチリ。やっちまったな、シンは。』
「若すぎる。俺も成人前に実戦に出たが、シンはより若い。正直、オーブが羨ましいぜ。トップエースは全員ベテランだぜ?」
『俺もお前も、まだ20超えたばっかだもんな。』
「まだ人生は長いはず……無駄話はここまでらしいな、来るぞ。」
現在のハイネの乗機はザクウォーリア。ミネルバに眠ってたファイターウィザードを乗っけている。おやっさんがずっと改良案を練ってから組んだ機体だ。欠点は改良されている。ウィンダム十数機がこちらを狙う。ストライクと同じ程の性能を持つ量産機として苦戦させられた相手だ。
「とは言え、相手にならん。」
『FAITHの名前ってのは重いんだよ!』
コンビを組んでいる俺たちを落とすなら中隊は持ってこい。でなけりゃとっくに死んでる。ハイネの撃墜数もそろそろザフトのトップレベルになるのではないか、というあたりで指揮官以外のウィンダムが全滅した。
「ハイネ、司令部の生き残りを調べてくれ。シンの様子がおかしい。」
『はいよ!援護がほしくなったら言いな!』
紫色のウィンダムに突貫する。フリーダムや巨大MAが居る空域に行くことになるが、致し方あるまい。
「シン!機動兵器で動きを止めるバカが居るか!もっと動け!」
『そんな……ステラが!』
「なら自分の手で尻ぐらい拭け!」
組みついた紫のウィンダムを狙ってSMGを撃つ。フリーダムも共に狙っているためか、一瞬で機体が達磨になった。
「全く戦争ってのはつくづく嫌になる。隊長が人に絶望するのも分かる話だ。」
だからこそ、フリーダムはそれでも、と戦っている。軍人である俺は唾棄すべき思考だとは思っているが、共感できなくもない。だから俺はACESを作ったのかもしれない。己の意思で、戦える場所が欲しい。そう願ってしまった。
「……だが、今は絶望してられる時間でもねぇ。」
サーベルを振りぬいて、ループ機動で巨大MAの円盤に付いた砲台とキャノン砲を破壊。これでMAに攻撃しやすくなる。フリーダムがMAに突貫する、がそれにシンがサーベルで襲い掛かった。
「……ヘキサ・ラプトリオより伝達。シン・アスカによる作戦命令への反抗を確認。敵性勢力と判断して督戦を開始する。」
『おいおいマジかよ……』
フリーダムに密着するシンに、SMGを発射する。私情もあるが、とりあえず生きて帰す。右方から接近しつつ、フォースシルエットと右腕を破壊。フリーダムが離れた瞬間に頭、そのまま左腕をサーベルで破壊した。
『なんで……やめろおおぉぉぉ!!』
「ハイネ、頼む。」
『はいはい、あと前線本部に生存者が居た。けど、ほとんど救助活動が必要だ。』
「まぁあの攻撃じゃあな……」
フリーダムの刺突が、巨大MAに突き刺さる。行き場を失ったエネルギーが暴走しているのか、内部から装甲が弾け飛びながら爆発した。もはや死体すらも残らぬ、大地を揺るがす大爆発だ。
「……肉体は焼かれたか?まぁそうなってるだろうが……これ以上弄ばれない、せめてもの救いか。」
眼下に広がる破壊の爪痕。これをシンや俺が、清算出来るのだろうか。せねばならない。幾万もの失われた命の上で飛んでいるのは、あまり良い気分ではなかった。それを見ていながらも、これからシンを保釈するであろう議長に付き合うのにも、堪忍袋の緒が切れそうだ。
「……何をしてるんだろうな、俺は。さっさと決めるべきことだろうが。」
そんな発言は、黒煙に乗った命への謝罪か。それともこれから散る命への敬意の現れか。自分への苛立ちを隠すことは出来なさそうだ。