C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話   作:QAAM_M1911

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謀る蜂は天使と踊る

「……シン、またお咎めなしですね。」

「特別扱いも程々にしてほしいですなぁ、議長殿には。」

「前もそうだったから、そんなもんだと言えばそうなんでしょうけど。」

「建前上は違うとはいえ、軍隊だからこそこういう事はちゃんとしないとならん。でなきゃプラントは終わりだ。」

 

前の戦場で俺がシンの行動を反抗として認定したのにはいくつか理由がある。まず、前科があること。これについては言うまでもなく、作戦前に忠告はしている。それを汲み取れたかは問わない。軍隊とはそう言うものだ。

 

そして、作戦の目標を庇うような行動を行ったこと。確かに、フリーダムやアークエンジェルは幾度となくこちらに襲い掛かってきている。だが、アークエンジェルらはまだ敵性勢力ではなく“アンノウン”として扱わなければならない。したがって、こちらに発砲してこない限りは事前通告してから攻撃せねばならない。しかも、あの状況では明らかに巨大MAを狙い、こちらに攻撃する意思は見られなかった。故にあの処分となる。

 

「……大分身内に厳しいんですね。」

「身内だからこそだ。少なくともこういう場に居て、ああいう行動をするのなら自らの命を賭けるもんだよ。俺ならそうする。自分の信念を貫きたいならここに居るべきではない。あいつは優しすぎるからな。アークエンジェルに居たほうが、よっぽどストレスもないだろうよ。」

「アークエンジェル……隊長の中ではけっこう評価高めです?」

「戦場を混乱させる元凶ではあるが、あのベルリンの動きの早さは評価に値する。戦後にそういう組織を作るのもアリだな。」

「……やっぱ、戦いたくはないですよね。」

「まぁな。だが同時に人類の可能性でもある。戦争があるから技術が発展しているのも否めん。」

 

医療だって元は負傷した者を生かす為、場当たり的な臨床試験を積み重ねてきた歴史がある。それが大量に発生する戦場は、絶好のテスト場。この怪我はあの対処法、あの症状にはこの薬を処方する。非人道的行為だって、“人を生かすため”だと思えば常人でも出来てしまう。

 

「嫌な話だろうが、世界はそうやって回っているのさ。ケータイを見てみろ。どんだけバッテリーが長持ちするようになった?」

「軍需産業が、民間事業にいい影響をもたらすってことですか?」

「スクールだとやってねぇのか……NJCだって本来なら最高の発電所を作れる。核ミサイルやらフリーダムやらに使うだけが能じゃないだろ。」

 

今期の赤服の中では一番の常識人と言っていいルナマリア。シンもそうだし、レイも比較的直情的だが、ルナマリアはしっかり俯瞰した物の見方ができる。俺が次点のインパルスのパイロットに推薦しているのもこれに起因する。というか3人の中では一番俺に近い戦い方ができる。

 

「ゴミにも適切な使い方がある。残飯はいけねぇがコンポストに出来るし、軍じゃオンボロのジェネレータだって民間じゃコストが安かったりで現役なんてことはよくある。逆に宝がゴミ以下になることだってある。ジャングルの中にギラギラした宝石なんざ持ってくやつはいない。無価値な上に、獣を呼び寄せるだけだ。」

「適材適所、ってことですね?」

「そう。電子レンジをバカみたいな出力にしたのがサイクロプス……まぁ使い方ってことだ。俺からしたら、議長のシンの扱い方は確かに効果的かもしれない。だが、長い目で見りゃ最悪の結果を引き起こすだろうな。今、俺たちの敵は?」

「そりゃあ連合……と、アークエンジェル。」

「そう。となると、次の作戦は?」

「……天使を撃つ。」

「賭けてみるか?」

「分かり切ってますよ。」

 

招集がかかるが、俺は気にせず愛機の元に立った。どうせ議長が本格的に戦争おっぱじめようって魂胆だ。ラジオでも聞けるしな。

 

「坊主、行かなくていいのか?」

「内容、賭けるか?」

「ははっ、今度はなんだ?スコッチか?」

「どうせ痛み分けになるだろうがな。」

「だろうな。」

 

急場しのぎであるが、一基失われたSMGの代わりにインパルスのライフルが使えるようにおやっさんが改良を入れている。セカンドステージ同士、少しOSをいじれば使えるようになるのだとか。

 

「……おやっさん。」

「んだ?あっちの話か?」

「まぁな。そろそろだと思ってよ。」

「分かった、用意しとく。で、どれにする?」

「保険で二つ。飛べる奴と、小さいやつ。」

「はいはい。仕事は絶えねぇなぁ。」

 


 

アークエンジェル追撃命令。まぁ思った通りだ。今回の作戦は俺とシン、ハイネで行う予定だ。が、シンが本当に兵士に値するのか俺は測りかねている。

 

「……まぁそうさねぇ。俺もどうかとは思うよ?でも、もうシンだってエースだぜ?議長が言うんなら止めらんないよ、俺らだってさ。」

「あいつがPTSDを背負ってるのはわかっている。だからこそ今対処出来ん。あぁいう手合いは最初っから弾くもんなんだよ。」

「だよなぁ……でもザフトは人手不足だしな。仕方ないさ。」

「更に重くなった病状に、医者でもない俺が……それどころか親愛を見出した子を助ける手をブチ斬ったんだ。もう靡かねぇよ。もし出来るんならやってくれ。」

「不器用の極みかよ。」

「よくある話だ。憎まれ役の教官と信頼を集める隊長。お前が隊長役ってだけだ。」

「ま、とりあえず後ろから撃たれないようには見張っとくぜ。」

「頼むぞ。」

 

 

 

セイバーがカタパルトから射出される。今回の主役はシンとハイネ。まぁハイネはフリーダムには敵わないと自分から言って、後方からガナーによる援護射撃に留まったが。俺はアークエンジェル本体をミネルバや先に居る隊と共に破壊する。

 

「あの艦にはオーブの姫様も乗っている……通告なしで撃沈すれば今後とのオーブとの軋轢を生じる。唯一と言っていい地球上の架け橋だ。故に一度艦長が降伏勧告を出すだろう。受け入れられなかった場合、総攻撃を開始。いくら不沈艦といえど、全方位からの攻撃は防げまい。」

『了解した。しかしあの艦はそれほどかね?君がフリーダムにかかった方が良いと思うが。』

「母艦を失ったMSの活動限界など知れています。」

『なるほど……それも道理だ。総員、逃げ道を塞いでおけよ。』

 

ここの艦長はヤキンの生き残り。判断力も即応性もいい。だが部下の質が悪い。落とせはしないだろう。そこに俺が助太刀……と見せかけた偽装撃墜を行う。プリンシパリティが製造されている以上、アークエンジェルと互換性のあるパーツが確実に届けられる。バイタルヒットさえしなければよい。というかそもそもセイバーの装備ではラミネート装甲相手じゃ火砲破壊程度しか出来ん。やろうとすれば、盾を投擲してブリッジ破壊は出来るだろうが。

 

「さぁて、見せ場だ。アスラン、出てくるか……?」

 

居るであろうアスランを待ちつつ、アークエンジェルにアークライトを照射。ろくなダメージにはならないが、これで俺の意図は伝わっただろう。無駄な時間を過ごしつつ、SMGを発射する。が、アスランが一向に出てこない。どういう事だろうか。

 

「……いや、MSがねぇのか?あの3機いたムラサメは出さない……オーブの姫が乗った上での攻撃はオーブ軍の攻撃とみなされると考えてるってところか?いや、だとすれば猶更地球連合との確執は大問題だ。目的は違うところにある……今までと同じ?」

 

いやはや、ここまで優しいとなると拍手を送りたくなる。そうなりゃ次の行き先が分かった。オーブだ。姫さまが戻り、政権を取り戻せればどうにか方針転換が出来て完全な対立は避けられるからだ。となればそこで修復だっていくらでも出来る。

 

「……ミネルバ!砲撃はまだか!」

『逃げられます!艦長!』

『……タンホイザー照準。目標、アークエンジェル。』

「早くしろ!」

 

左舷をビームサーベルで斬りかかるが、対空砲が丁度右手部分に被弾。ビームサーベルの発振ができなくなった。デッドウェイトとなったそれを投擲して対空砲を一基破壊して叫ぶ。

 

「こちらヘキサ、右腕部に損傷。効果を有する武装なし!遠方からの牽制射撃にとどめる!」

 

アークエンジェルの装甲を蹴って、変形しつつ離脱。それと共にアークエンジェルが海にたどり着いた。

 

「砲撃はまだか!」

『タンホイザー準備完了!』

『撃てェーっ!』

 

赤い光線がアークエンジェルを穿つ。が、水中に差し掛かったところだ。水という冷却材が豊富にあるため、無事だろう。破片が多数浮遊してはいるが……どっかを切り離したか?

 

「……フリーダムは?」

『撃破だ!シンがほぼ単独で撃破だ!』

「大戦果じゃねぇか!よくやったシン!」

 

が、シンからの応答はない。機体を寄せ、インパルスをセイバーの背に乗せて帰還を行う。インパルスがフライヤーとなって着艦した後、セイバーも続いてハンガーへと搬送されていく。

 

「応答くらいしろシン。どんな気持ちになってるかは知らんが……あまり自分の世界に閉じこもってると身を滅ぼすぞ。今日くらい皆で騒いどけ。」

『まぁまぁ、そこまでにしとけよ。少しくらい感傷に浸らせてやってもいいんじゃないの?』

仕事を最後(デブリーフィング)まですれば、の話だ。お前ら!ジブラルタルに行ったら祝勝会だ!デザートはパンプキンパイでいいな?」

『おいおい、俺のテキーラまだだったよな!』

「今日清算してやる!」

 

整備の若造が歓声を、おやっさんが抗議の声を上げる。まぁそこでザフトでの生活は終わりだ。別れ際くらい、飴を渡してやってもいいだろう。

 

あとは俺が生きてシンとレイが厳罰に処されるか、俺が死んで二人が勲章をもらうか。その二つだけだ。今のプラントにはもう居られない。アスランに託した皆も心配だ。

 

屍は焼かれて灰となってないものとなるが、再びそこに山が積みあがるだろう。行きつく先はか、それとも破滅か。賭場は一度きり、相手の手札はどうなるか。俺は、機体の整備をするおやっさんと共に計画を練りはじめた。

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