C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話 作:QAAM_M1911
「インフィニットジャスティス……凄まじい性能だ。」
『かつてオノゴロ島でお供したときを思い出します。』
『嘘言うなバカ、予備役で出撃してなかったろ俺ら。』
撃破した機体からデータを吸い出していく。が、やはり何も残っていない。ブラックボックスさえも搭載されぬ、無の機体だ。オーブの精鋭ですらも解析できないのだから、本当に紙媒体で焼き尽くされてしまったと考えられる。
「無所属のテロと言いますが……やはりギルバートの差し金でしょうか。」
「そう考えて差し支えないでしょう。どう対処すべきか……」
「取りあえずは、私の伝手で一か月ごとに拠点を移すことにします。あなたがたは……この戦いを止められる力をお持ちです。議長の演説で、世界は過激になっている。たった一つの言葉で、です。正義とは……私にも確たる意味はつかめません。ですが……迷い、間違えて。それでも、平和を求めて抗い続ける。それが正義の意味の一つ。そう感じています。」
「行ってください。あなたを必要とし、あなたが必要としている方々が待っていますから。」
「……シスターは、ヘキサ君をどう思っているんですか?」
「えっと……心配ですね。」
「え?」
シスターの言葉を聞いたアスランは首を傾げた。あいつに心配する要素などない……あるとすれば、今まさに敵中に居ることくらいだと考えていたからだ。
「やっぱり、わからないですよね。あの子、時々壊れるんです。」
「壊れる?」
「自分でもわからないらしいですが……ヘキサは、どこか普通の人と感覚が違うんです。最近だと……自分の生き死ににこだわりがなくなったというか……もちろん生きたいとは言っているんですけど、第一目標がそこじゃなくなってきてるというか……」
「確かに、あいつは“軍人として~”ってのが口癖だったが……」
「いや、そうじゃなくて。昔は、怪我も恐れる様な子だったんですよ?でも今は、自分が死んでも大丈夫なように、そうやって行動してるんです。だから……」
「軍人としての覚悟が極まった。そうもとれるが。と言うか、元々ザフトは志願制だろう?」
「だとしても、人の本能と言うものを超える事はそうそう出来ない事です。かつて私は宗教団体に所属していました。本当に命を投げ捨てられる……その様な人は、何かに狂っていた。神を信じてか、家族の為か、人生に絶望していたか。良くも悪くも、そう言うものなのです。」
マルキオ導師はアスランの肩に手を置いた。見えぬはずの目には、何が映っているのか。アスランには与り知れない事だ。
「彼は狂った。狂った者は救いを求めず、求められない。だからこそ、救いを求めた時にはすぐに手を差し伸べてください。彼を助けられるのは、その時しかないのですから。」
「……よろしくお願いします、アスラン・ザラ。」
「……分かりました。あなた方も、どうかご無事で。」
ジャスティスに乗り、少し後ずさってから飛び立つ。次の行き先は……ミネルバ。ヘキサを連れ戻す。デュランダルの演説を聞き、戦火を拡げようとする行為は最早見逃せない。
「エンジェル隊は着いてこい。護衛はしばらくの間皆を頼むぞ。」
『了解、ご武運を。』
(アークエンジェルは取り逃したが、フリーダム撃破は間違いなし。これでチェックメイト……というわけにはいくまいな。)
地球行きのシャトルの中で、デュランダルは一人考える。不安要素はいくつか残っている。まず、ヘキサ・ラプトリオ。自らFAITHに指名した人材であり、指揮官としてもMS乗りとしても有能。手放したくはない。だが、彼は反旗を翻そうとしているのだろう。それは目つき、態度からわかる。デュランダルも少しだけ違和感を覚え、注意深く観察してからようやく分かった程些細なこと。今回のエンジェルダウン作戦で彼の中で黒が確定した。彼なら最重要目標であるフリーダムの相手は彼自身がする、と言うからだ。本気で墜としにかかるならシンを宛がわない。そもそも軍規違反を重ねていたシンを戦場に出さないはずだ。
自らの諜報部隊を以てしても糸口も掴めぬような方法で、クーデター軍を指揮している。先日、アマルフィ元議員以下複数名が姿を消したのも、おそらくそれが原因だと言える……が、どこに、どれほどの兵力を隠し持っているのかはつかめていない。ただ、一度アマルフィ元議員とヘキサが通話を行い、何者かに接触したという情報はある。2人は黒、したがって行方不明の息子、ニコルも同じく黒。同期であるイザークとディアッカについての調査は白とも黒とも言えない……
(それだけではない。白のクイーンは強敵だ……そこに紫毒の狩人まで加わるとなると……)
最強の軍隊に、最高の象徴が兼ね備えられる。デスティニープランを推し進めるには最悪の相手だ。何せ残った支柱である2人は、自分自身によって作り出された存在……コーディネーターを超える為に作られた。1人は失敗したにせよ、元の才能は開花している。誅殺したキラ・ヤマトは、その下位互換と言えるか。
そもそも、自分自身で彼らを作ったのは失敗だとも考えている。いや、“彼女”に教育を委ねてしまった事が失敗だ。あれほど侮蔑的な人間に育ってしまった事が残念でならない。その様な中で、ラクスとヘキサ。この2人はあの魔の手から逃れた、貴重な存在だ。そもそもヘキサは……処分したはずの個体だったはずだ。それがどう言う顛末を辿ったかは知らないが……生きて、トップエースとして開花した。だからこそ、2人共に抹殺するべきだ。AIによる世界の整備構築、イレギュラーは不要だ。発生し得ない、継続的な世界を、悲しみのない世界を。作ると決めたのだ。たとえ息子、娘であろうとも、排除する。
ジブラルタル基地に入港し、付近の全艦隊が集結した。ロゴスという巨悪を処断する、そんな軍人としちゃあ分かりやすい目標が出来てくれればありがたい話だ。実際、俺もロゴスは討つべし悪魔と断ぜられる。あんな同胞殺しの輩は万歩、いや億歩譲っても仲間にしたくねぇ。
んで、俺とシンとハイネ、レイの4人はここに降りられた議長に呼び出されたわけだ。
「しかし、わざわざ来てくださるとは思いもしなかったな。」
「あぁ。しかもラクス・クラインも居るって話だろ?」
「それはまぁ正直どうでも良い。」
「なんだ、つれねぇなぁ……」
「相変わらずですね、隊長。」
「届かぬ場所にあるから花は美しい。FAITHに入れられてっからずっと関わりあるってから割と食あたり気味なんだよ。」
本物の性格はもっと穏やかだ。もちろん人間臭いところも多いが、そこまではしゃぐ様な人間ではない。元々アスランと婚約者であるってのもあって話くらいは聞いているからな。
「……隊長は、議長のお話を聞いてどう思ったんです。」
「あ?あー、ロゴスか。そりゃ討つべきヤツはいるさ。」
「戦争は割り切るってのは前話しただろ?でも今回は割り切る必要性が微塵もない。軍人としちゃあホントにここまで楽な話もないぜ?」
「戦争したくねぇってのがまぁ俺の啓示だが、やる時やらんと死ぬからな。」
「ですよね……!俺、感動したんです。難しいって言ってた事を、議長はやるって。戦争のない世界をつくるって、俺は……その為なら!」
マズいな。議長に洗脳されかかってやがる。とは言えこの状況下では仕方ないと言うか、マッチポンプだったとしても俺だって議長につくさ。
問題は、その後だ。ロゴスを排除出来たなら、議長はどう世界を動かす?その時、自分で考えられる頭を民衆は持つのか?明日の朝食のメニューすらAIに支配された世界は、衰退するばかりではないのか?そう問わざるを得まい。
その明日がない人間は……どうかな。未来を託す為に戦うのか。それとも絶望の果てに世界を破滅に導くのか。レイは……どうなる?
「セイバーはどうかね?」
「まずまず、と言ったところでしょう。無論良い機体ですがね、そろそろ限界と言ったところでしょうかね。」
「と言うと?」
「パワー不足。そして手数不足。コレに尽きます。多数を相手にするには、ビームサブマシンガンでは一発あたりの火力が足りない。」
「なるほど。まぁそう言うと思って、これを用意させておいた。先程から目がそちらにばかり行っている事だろう?」
新たなる4機のMS……2種類。
「噂に聞く、デスティニーとレジェンドですか。」
「そう。詳細は追って君たちに送らせてもらうよ。」
「……って事は、俺の……!?」
「新しい機体……」
「適正を見て、シン君とハイネにはデスティニーを。レイとヘキサにはレジェンドに乗って貰いたい。」
「……プロヴィデンスの、正当後継機ってところですか。扱えますかね、俺に。」
「新型の量子インターフェイスを搭載しているため、一般的な兵士でもドラグーン・システムを扱える様にしてある。君とレイなら、特に使いこなせるさ。」
クルーゼ隊長と縁が深いからこそ乗って欲しいのか、それともドラグーンが満足に使えないが故に、専用機というある程度の枷を与えて識別しやすくする為か。FAITHという地位があるにもかかわらず、高性能の新型を与えられないのは軍の士気にも関わることだし、ならデスティニーよりドラグーン主体のこちらをと言う事だろうか?
「しかし……これからの敵はロゴスですか。時に翻弄されるのは民衆も我々も同じですな。」
「皆不幸だよ。私の言葉を理解しないまま街を焼き、暴れて不要な殺戮を行う。ジョージ・グレンの時もそうだ。一度点いた火はそう簡単にはけせない。皆自分が何をすべきか、分かっていないからとにかく歩み、誰かを突き飛ばす。誰もが幸せを願っている。そのはずなのだから、備えておくのだ。」
「議長は……ビジョンが見えておいでで?」
「さて……ね。私自身この考えが正しいかは分からない。だが、ロゴスを討つ。それはやらねばならない。あの殺戮を再びは、望ましくない。平和を望みながら、矛盾した行いだとは思うがね。」
「では僭越ながら……アークエンジェルを墜す命令は何故?彼らとて一応は同じ道を歩む同志かと思えましたが。」
「彼らは私たちのところに来なかった。同じ志を持つなら、訪ねてくれて良かったと思うがね?」
「ごもっともで。」
「さて、脱走の時間だぜ坊主。」
「ワクワクしてきたな?」
「しかし足の選択肢が一つ増えたのは良いな。どうだ、新型使えそうか?」
「もちろん。このドラグーンシステムは中々良い。砲門数はプロヴィデンスより少なめだが……大気圏内でも砲塔として稼働するのは考えられている。できるだけ技術を向こうに持って行きたいところだ。」
「そうだ……ん?ちょっと待て。変なアクセス痕跡がある。逆探知行けるか?」
「多少は……いやマジで抹消されてんな履歴。これ相当手慣れてるぜ。」
「ここは基地外からのアクセスは無理……となると内部から誰かにすっぱ抜かれたって事か?」
「バレてる可能性も考えなきゃならんな……それみろ、警報だ。」
と思ったが、警報の元は真逆の港だ。俺の機体は一度調整と言う名目……まぁ本当に調整もしてるんだが、他の機体とは別の場所に移送してある。俺らの裏切りがバレたって訳ではないか?
「連合の中にスパイでも居たか?」
「俺らって訳じゃ無さそうだが……危ねぇな、スタンドアローンにしといて助かった。レジェンドを封じられたら結構危なかった。一応発進許可取っておくぞ。出なかったら速攻だ。」
「その後ディンギーにおやっさんは乗って……誰だ?」
拳銃を引き抜いて、開かれた扉に向けた。そこには緑服のザフト兵……メイリン・ホークが居た。雨の中でびしょ濡れ、しかも息を切らしている。
「どうした?何かあったのか?」
「はぁっ……はぁっ……へ、ヘキサ隊長……私も、連れて行ってください……!」
「「……はぁ!!?」」